Nikon L35 AD2

Nikon L35 AD2

ニコンから発売されたコンパクトカメラです。プラスティックでできているため安価で軽量ではありますが、黒いボディに赤いサイドラインは一眼レフのそれと同じであり、安くてもニコン製のカメラを所有する悦びが感じられる一台です。

Nikon L35AD2は、35mmフィルムを使用するオートフォーカス式のコンパクトカメラです。

35mm F2.8の単焦点レンズ、プログラムAE、自動ポップアップ式フラッシュ、フィルムの自動巻き上げ・巻き戻しなどを搭載。さらに「AD」の名称が示すように、撮影した写真へ日付を写し込む機能も備えています。

細かな露出設定をカメラへ任せられるため、基本的には構図を決めてシャッターを押すだけ。1980年代らしい電子式フィルムカメラを手軽に楽しめる一台です。

目次

Nikon L35AD2とは

Nikon L35AD2は、1985年に発売されたレンズ固定式の35mmコンパクトカメラです。

1983年に登場したニコン初のAF・AE搭載レンズシャッターカメラ「L35AF/L35AD」の後継モデルで、国内では「Newピカイチ」と呼ばれました。海外向けの名称は「One Touch」です。

L35AF2の日付写し込み対応モデル

同時期に販売された主なモデルは、次の2種類です。

  • Nikon L35AF2:通常のモデル
  • Nikon L35AD2:日付写し込み機能付きモデル

基本的な撮影機能は共通しており、L35AD2では背面に日付表示と設定ボタンが追加されています。

ニコン公式資料によると、「AD」は「Auto Date」を意味します。後年のニコン製カメラで使用された「QD」と同じく、日付写し込み機能を表す名称です。

11種類の自動機能を搭載

ニコンはL35AF2/L35AD2について、初代L35AFの9種類から増えた「11種類の自動機能」を備えるカメラとして紹介しています。

主な自動機能は次のとおりです。

  • オートフォーカス
  • プログラムAE
  • フィルム感度の自動設定
  • フィルムの自動送り
  • 撮影後の自動巻き上げ
  • フィルム終端での自動巻き戻し
  • 巻き戻し完了時の自動停止
  • 暗い場所でのフラッシュ自動ポップアップ
  • フラッシュ光量の自動調節
  • フラッシュ充電中のシャッターロック
  • レンズカバーと電源の連動

現在のデジタルカメラでは当たり前に見える機能ですが、フィルムの装填から巻き戻しまで自動化されているため、手動巻き上げ式のカメラより簡単に扱えます。

スライド式レンズカバーを内蔵

L35AD2では、カメラ前面にバリア式のレンズカバーが組み込まれています。

前面下部のスイッチを動かすとレンズカバーが開き、同時にカメラの電源が入ります。使用後にカバーを閉じればレンズを保護できるため、取り外し式のキャップを紛失する心配がありません。

初代L35AFでは別体式のレンズキャップが使われていました。内蔵レンズカバーは、後継機で追加された実用的な改良点です。

カバーが完全に開かない個体に注意

中古品では、砂や汚れ、内部機構の劣化によってレンズカバーの動きが重くなっていることがあります。

スイッチを動かしたときに左右のカバーが完全に開き、撮影レンズや測光部分へかかっていないか確認しましょう。

カバーが途中で止まる場合に、指で無理に広げると連動部品を破損する可能性があります。

Nikon LENS 35mm F2.8を搭載

L35AD2には、Nikon LENS 35mm F2.8が固定装着されています。

35mmは、一般的な50mm標準レンズよりも広い範囲を写せる焦点距離です。旅行、街中のスナップ、家族写真、室内撮影など、幅広い用途に対応できます。

開放F値もF2.8と比較的明るく、日中だけでなく、少し光量の少ない場面でも撮影しやすい仕様です。

レンズ構成は3群4枚

L35AD2の35mm F2.8レンズは、3群4枚構成です。

初代L35AFのレンズは4群5枚構成でしたが、後継のL35AF2/L35AD2では構成が変更されました。初代にあった46mm径のフィルターネジや+2EVの露出補正機能も省かれ、その代わりにDXコード対応や内蔵レンズカバーなど、手軽さを重視した改良が施されています。

単純に初代より上位または下位という関係ではなく、マニュアル操作の余地を残した初代に対し、L35AD2は自動化と使いやすさを強めたモデルと考えると分かりやすいでしょう。

オートフォーカスで0.7mから撮影可能

ピント合わせには、アクティブ式オートフォーカスが採用されています。

撮影可能距離は約0.7mから無限遠までです。シャッターボタンを半押しするとピント位置が決まり、ファインダー内の指標でカメラが判断した撮影距離を確認できます。

フォーカスロックに対応

主役となる被写体が画面中央にない場合は、フォーカスロックを利用します。

基本的な手順は次のとおりです。

  1. ピントを合わせたい被写体をファインダー中央へ置く
  2. シャッターボタンを半押しする
  3. 半押しを維持したまま構図を変更する
  4. シャッターボタンを最後まで押す

この方法なら、人物を画面の左右へ配置した構図でも、背景ではなく人物へピントを合わせられます。

近距離撮影では構図のずれに注意

L35AD2は一眼レフではないため、ファインダーで見ている位置と撮影レンズの位置が少し離れています。

被写体へ近づくほど、ファインダーで見えた範囲と実際に写る範囲のずれが大きくなります。最短撮影距離付近では、重要な部分を画面の端へ寄せすぎないほうが安全です。

また、被写体が0.7mより近い場合はピントを合わせられません。料理や小物を大きく写そうとして、必要以上にカメラを近づけないようにしましょう。

プログラムAEで露出を自動設定

L35AD2は、絞りとシャッター速度をカメラが自動的に組み合わせるプログラムAEを搭載しています。

撮影者が絞りやシャッター速度を直接指定することはできません。使用するフィルムの感度と被写体の明るさに応じて、カメラが露出を決定します。

露出設定を意識せず撮影できる反面、

  • 背景を大きくぼかす
  • 動く被写体を高速シャッターで止める
  • 意図的に明るく、または暗く写す

といった細かな調整は苦手です。

撮影表現を細かく作り込むカメラではなく、撮りたい瞬間に素早くシャッターを切ることを重視したカメラです。

DXコードでフィルム感度を自動設定

L35AD2には、フィルムカートリッジに印刷されたDXコードを読み取る機能があります。

対応するDXコード付きフィルムを装填すると、ISO50からISO1600の範囲でカメラが感度を自動設定します。感度を手動で選ぶためのダイヤルはありません。DXコードのないフィルムはISO100として扱われます。

詰め替えフィルムや期限切れフィルムに注意

市販されている一般的な35mmフィルムの多くにはDXコードがあります。

ただし、次のようなフィルムでは正しい感度が読み取られない場合があります。

  • DXコードのないフィルム
  • 手作業で詰め替えたフィルム
  • DXコード部分が傷んでいるカートリッジ
  • 別の感度で撮影したい期限切れフィルム

L35AD2では感度を手動補正できないため、DXコードと実際に撮影したいISO感度が一致しているか確認しましょう。

フィルム送りと巻き戻しも自動

フィルムを装填して裏蓋を閉じると、カメラが撮影開始位置まで自動的に送ります。

撮影後も内蔵モーターがフィルムを次のコマへ送り、最後まで撮影すると自動で巻き戻します。

手動巻き上げ式カメラのように、撮影するたびにレバーを操作する必要はありません。

フィルム先端を残して巻き戻せる場合がある

L35AD2には、底部のボタンとスイッチを使って途中巻き戻しを開始する機構があります。

個体や操作方法によっては、巻き戻し後もフィルム先端がカートリッジ外へ残ります。自家現像を行う人には便利ですが、現像店へ依頼する場合は、誤って撮影済みフィルムを再使用しないよう注意しましょう。

自動ポップアップ式フラッシュを搭載

暗い場所や逆光など、カメラがフラッシュを必要と判断した場合は、内蔵フラッシュが自動的に立ち上がります。

フラッシュのガイドナンバーは、ISO100使用時で約10です。電源には、カメラ本体と共通の単3形乾電池2本を使用します。

フラッシュ充電中はシャッターが切れない

フラッシュが上がった後、充電が完了するまではシャッターがロックされます。

シャッターボタンを押しても撮影できない場合は、故障と判断する前にフラッシュの充電完了表示を確認しましょう。電池が弱っていると、充電に長い時間がかかることがあります。

フラッシュが必要ない場面では、ポップアップしたフラッシュを収納することで発光を抑えられます。ただし、暗い場所ではシャッター速度が遅くなり、手ぶれや被写体ぶれが発生する可能性があります。

日付写し込み機能を搭載

L35AD2の背面には、撮影日などをフィルムへ写し込むオートデート機構があります。

日付表示用の電源は、撮影に使用する単3形乾電池とは別です。そのため、カメラ本体が撮影できても、日付表示だけが消えている場合があります。

現在の西暦を設定できない場合がある

1980年代に設計された日付機構には、設定可能な西暦に上限があります。

L35AD2のデート機構も対応年が有限で、現在の西暦を正しく設定できない個体があります。実用する場合は、年月日ではなく月日や時刻だけを写し込む、または日付機能を使用しない方法があります。

写真へ誤った年が写り込むと後から消せないため、フィルムを入れる前に表示内容を確認しましょう。

Nikon L35AD2の基本スペック

項目仕様
発売年1985年
カメラ形式レンズ固定式35mmコンパクトカメラ
使用フィルム35mm・135フィルム
レンズNikon LENS 35mm F2.8
レンズ構成3群4枚
ピント合わせアクティブ式オートフォーカス
撮影距離約0.7m~無限遠
露出方式プログラムAE
フィルム感度DX自動・ISO50~1600
DXコードなしISO100として設定
フィルム送り自動
フィルム巻き戻し自動
フラッシュ自動ポップアップ式
フラッシュガイドナンバー約10・ISO100
日付写し込みあり
本体電源単3形乾電池2本
本体サイズ約124×71×52mm
本体重量約335g

主な仕様はニコン公式の製品史と実機資料に基づきます。寸法や重量は、測定条件によって多少異なる場合があります。

初代L35AF/L35ADとの違い

L35AD2の前身にあたる初代L35ADも、35mm F2.8レンズを搭載したオートフォーカス式コンパクトカメラです。

主な違いは次のとおりです。

項目初代L35AF/ADL35AF2/AD2
レンズ構成4群5枚3群4枚
最短撮影距離約0.8m約0.7m
フィルム感度手動設定DXコードで自動設定
露出補正+2EVボタンありなし
フィルター46mmねじ込み式専用かぶせ式
レンズカバー別体式本体内蔵
自動機能9種類11種類

初代は感度設定や露出補正などを撮影者が操作できます。一方、L35AD2はこうした操作を減らし、フィルムを入れてすぐ撮影できることを重視しています。

中古のNikon L35AD2を購入するときの注意点

L35AD2は電子制御とモーターを多用したカメラです。

機械式カメラのように、シャッターだけ動けば撮影できるわけではありません。電池、オートフォーカス、露出、フィルム送りなどが連動して初めて正常に撮影できます。

電池室の液漏れと腐食

単3形乾電池を入れる電池室を開き、端子に白色や緑色の付着物がないか確認します。

長期間電池を入れたまま保管された個体では、液漏れによって接点や内部配線が腐食していることがあります。

表面を清掃して電源が入っても、内部まで腐食が進んでいる場合があるため、電池を入れてしばらく動作を確認しましょう。

電池蓋の破損

プラスチック製の電池蓋は、経年劣化や電池を押さえる力によって割れている場合があります。

蓋が閉まらないと電池接点が安定せず、撮影中に電源が切れる原因になります。テープで固定された個体では、蓋の爪や蝶番部分を確認しましょう。

レンズカバーと電源スイッチ

レンズカバーを開いたときに電源が入り、完全に閉じたときに電源が切れるか確認します。

カバーが途中で止まる、左右で動きが異なる、開閉しても電源が反応しない場合は、スライド機構や内部スイッチに問題がある可能性があります。

オートフォーカス

近くの被写体と遠くの被写体へ交互にカメラを向け、シャッターボタンを半押しします。

ファインダー内の距離指標が変化するか、撮影時にレンズが動くか確認しましょう。

AFの作動音がしても、正しい位置へピントが移動しているとは限りません。可能であれば、フィルムを使って近距離・中距離・遠距離を撮影した結果まで確認したいところです。

シャッターとフィルム送り

シャッターを切った後、モーターが作動してフィルム送り部分が回転するか確認します。

確認したい症状は次のとおりです。

  • シャッターが切れない
  • モーター音だけがして送り軸が回らない
  • 1回で複数コマ送られる
  • フィルムカウンターが進まない
  • 巻き戻しが始まらない
  • 巻き戻しが途中で止まる

空打ちだけでは判断できない部分もあるため、「フィルムを入れた動作確認済み」の個体が安心です。

自動フラッシュ

暗い場所でカメラを作動させ、フラッシュが自動的に立ち上がるか確認します。

充電完了表示、実際の発光、撮影後の再充電まで確認しましょう。

電池を新品へ交換しても充電に非常に長い時間がかかる場合や、フラッシュが上がったままシャッターを切れない場合は、コンデンサーなどが劣化している可能性があります。

レンズのカビやクモリ

レンズカバーを開き、前玉を光へ向けて確認します。

レンズ固定式なので、カビや強いクモリがあっても別のレンズへ交換できません。後玉側はフィルム室から確認しにくいため、撮影結果に白いにじみや著しいコントラスト低下がないかも重要です。

日付表示

背面の日付表示が点灯するか、設定ボタンが反応するか確認します。

日付機能は撮影機構とは別電源なので、本体が正常でも表示されない場合があります。また、現在の西暦に対応しないことは故障ではありません。

日付を使用しない場合も、誤った数字がフィルムへ写り込まないよう、写し込みを解除できているか確認しましょう。



Nikon L35AD2はどんな人に向いている?

Nikon L35AD2は、次のような人に向いています。

  • フィルムカメラを簡単に使いたい人
  • オートフォーカス式コンパクトカメラを探している人
  • 35mm F2.8の単焦点レンズを使いたい人
  • 旅行や日常のスナップを気軽に撮影したい人
  • フィルムの巻き上げや巻き戻しを自動化したい人
  • 単3形乾電池で動くカメラを選びたい人
  • 1980年代の電子式カメラに興味がある人

一方、絞りやシャッター速度を自分で設定したい人には向きません。

感度もDXコードから自動設定されるため、期限切れフィルムを意図的に低い感度で撮影するなど、細かな調整も難しくなります。

まとめ

Nikon L35AD2は、35mm F2.8レンズ、オートフォーカス、プログラムAE、自動フラッシュ、自動巻き上げ・巻き戻しを搭載した35mmコンパクトカメラです。

初代L35ADからレンズ構成や操作系を見直し、DXコード対応と内蔵レンズカバーを採用。撮影者が行う設定を減らし、構図とシャッター操作へ集中できる「Newピカイチ」として登場しました。

L35AF2との基本的な違いは、写真へ日付を写し込めるオートデート機構の有無です。ただし、現在の西暦を設定できない場合があるため、日付機能を使う際は表示を確認する必要があります。

中古で購入するときは、電池室、電池蓋、レンズカバー、オートフォーカス、フィルム送り、自動巻き戻し、フラッシュ、日付表示を確認しましょう。

正常に動作する個体なら、難しい露出操作を意識せず、35mm単焦点レンズによるフィルム撮影を軽快に楽しめる一台です。

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