Canon IXYとは?
Canon IXY(キヤノン イクシ)は、キヤノンが1996年5月に発売したAPSフィルム対応のコンパクトカメラです。
キヤノンにとって初のAPS対応機種であり、発売当時は世界最小のオートフォーカス全自動ズームコンパクトカメラでした。
発売時価格はケースとリモコン付きで48,000円です。
現在では「IXY」と聞くとデジタルカメラを思い浮かべる人も多いかもしれませんが、IXYブランドの出発点はこのAPSフィルムカメラでした。
北米では「ELPH」、欧州・アジア・オセアニアでは「IXUS」の名称で販売されています。
APSの小型性を生かした超コンパクトボディ
初代IXYを語るうえで外せないのが、その小ささです。
本体サイズは、
90×60×27mm
重量は電池込みで、
約190g
しかありません。
APSでは、35mmフィルムより小さな24mm幅のIX240フィルムを専用カートリッジに収納します。
フィルム装填もカートリッジをカメラへ入れるだけのドロップイン方式となっており、従来の35mmフィルムのようにフィルム先端を引き出してセットする必要がありませんでした。
APSによるフィルムカートリッジの小型化と、キヤノンの高密度設計を組み合わせることで、従来のコンパクトカメラより大幅な小型化を実現したのです。
ステンレス合金を採用した高級感のあるデザイン
初代IXYは、単に小さいだけのカメラではありません。
外装には特殊ステンレス合金SUSを採用しています。
キヤノンの開発史によれば、従来のコンパクトカメラより約30%の小型化を実現しながら、あえてステンレス合金を使用することで適度な重量感と高級感を持たせました。
1990年代のコンパクトカメラには樹脂製ボディも多く存在しましたが、IXYは小型の金属ボディによって独特の存在感を持っています。
後にデジタルIXYへ受け継がれていく「小型・高品位」というブランドイメージは、すでに初代モデルから確立されていたといえるでしょう。
24~48mmの2倍ズームレンズを搭載
レンズは、
24~48mm F4.5~6.2
の2倍ズームです。
35mm判換算では約30~60mm相当となります。
レンズ構成は6群6枚。ズームは電動式で、24mm・36mm・48mmの焦点距離表示も備えています。
広角寄りの30mm相当から標準より少し長めの60mm相当までをカバーするため、旅行、街中のスナップ、人物撮影など日常的な用途に対応しやすい構成です。
現在の高倍率ズームカメラと比べれば控えめですが、小型ボディとのバランスを優先したIXYらしいレンズといえるでしょう。
ハイブリッドAFを採用
ピント合わせには、IREDとCCDセンサーを利用したアクティブ・パッシブ両用ハイブリッドAFを採用しています。
撮影距離は約0.45mから無限遠まで対応し、プリフォーカスも可能です。
測光にはSPC素子を使用した3分割評価測光を採用。
逆光を自動検知した場合には+1.5EVの露出補正を行うなど、基本的にはカメラ任せで撮影できる全自動コンパクトカメラとして設計されています。
電源を入れるとフラッシュがポップアップ
初代IXYには、リトラクタブル式の内蔵スピードライトが搭載されています。
特徴的なのが、メインスイッチのON・OFFに連動してフラッシュが自動的にポップアップ・収納される機構です。
低輝度時や逆光時には自動発光し、赤目軽減やスローシンクロ、日中シンクロにも対応しています。
小型ボディの中へズームレンズ、AF、フィルム送り機構、フラッシュまで詰め込んでいるところに、当時のキヤノンの小型化技術が感じられます。
APSならではのC・H・Pに対応
初代IXYではAPSならではの、
C・H・P
という3種類のプリントタイプを選択できます。
Cはクラシックタイプ、Hはハイビジョンタイプ、Pはパノラマタイプです。
撮影画面自体は16.7×30.2mmですが、IX情報として選択したプリントタイプを記録し、プリント時に指定した画面比率で仕上げる仕組みになっています。
さらに日付・時刻や6か国語のキャプション記録にも対応しています。
フィルムを単なる感光材料として使うだけでなく、撮影情報を記録できることもAPSの大きな特徴でした。
Canon IXYの主なスペック
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| メーカー | キヤノン |
| 製品名 | IXY |
| 発売 | 1996年5月 |
| 発売時価格 | 48,000円(ケース・リモコン付き) |
| 使用フィルム | IX240・APSフィルム |
| 画面サイズ | 16.7×30.2mm |
| レンズ | 24~48mm F4.5~6.2 |
| 35mm判換算 | 約30~60mm |
| レンズ構成 | 6群6枚 |
| AF | アクティブ・パッシブ両用ハイブリッドAF |
| 撮影距離 | 約0.45m~∞ |
| 測光 | 3分割評価測光 |
| シャッター速度 | 最長約2秒~最高1/500秒 |
| フラッシュ | リトラクタブル式内蔵スピードライト |
| プリントタイプ | C・H・P |
| フィルム給送 | 自動巻き上げ・自動巻き戻し |
| 電源 | CR2リチウム電池×1 |
| サイズ | 90×60×27mm |
| 重量 | 約190g(電池含む) |
主要仕様はキヤノン公式のカメラミュージアムに掲載されています。
CR2電池1本で動作
電源にはCR2型3Vリチウム電池を1本使用します。
CR2電池は現在でも入手できるため、中古でIXYを入手した場合も基本的な動作確認は比較的行いやすいでしょう。
フィルムの装填、1コマごとの巻き上げ、撮影終了後の巻き戻しはすべて自動です。
また、付属の赤外線ミニリモコンを使えば最大約5m離れた場所からシャッターを切ることもできます。
APSフィルムは現在生産終了
現在IXYを実際に使用する場合、問題となるのがAPSフィルムです。
APSフィルムはすでに生産を終了しているため、現行の35mmフィルムのように新品を普通に購入して使用することはできません。
撮影する場合は、中古市場などで未使用の期限切れAPSフィルムを探すことになります。
長期間保管されたフィルムは保存状態によって発色や感度が変化している可能性もあるため、現在の初代IXYは実用品というより、APS時代を楽しむカメラとしての性格が強くなっています。
中古で購入するときのチェックポイント
初代IXYは発売から長い年月が経過しているため、中古品では電気系統や駆動部分の状態確認が重要です。
確認したいポイントとしては、
- CR2電池で正常に電源が入るか
- レンズが正常に繰り出すか
- 電動ズームが作動するか
- シャッターが切れるか
- AFが動作するか
- フラッシュが正常にポップアップするか
- フラッシュが発光するか
- 液晶表示に欠けや液漏れがないか
- フィルム室が正常に開閉できるか
- 電池室に腐食がないか
などがあります。
特に初代IXYはレンズやフラッシュなど電動部分が多いため、単に「電源が入った」というだけではなく、一連の動作まで確認できる個体が理想です。
またAPSフィルムが入手しにくいため、フィルム給送を含めた完全な実写確認が行われていない中古品もあります。
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初代IXYはシリーズの原点として面白い
IXYの名称は、その後APSカメラだけでなくデジタルカメラにも受け継がれました。
そのため現在では「IXY=小型デジタルカメラ」という印象も強くなっています。
しかし、その原点となったのが1996年発売のこのAPS版IXYです。
キヤノンは初代IXYについて「小型・簡単・高品位」というコンセプトを掲げており、そのデザインと操作性は高く評価されました。キヤノンの歴史資料でも、発売後にAPS市場で大きな存在感を獲得したモデルとして紹介されています。
さらに1997年には、初代IXYをベースに18Kゴールドメッキを施した「IXY リミテッドバージョン」まで発売されています。機能は通常版IXYと同一でしたが、キヤノン創業60周年記念モデルとして国内1万台、海外2万台限定で販売されました。
それだけ当時のIXYが象徴的な存在だったことが分かります。
まとめ
Canon IXYは、1996年に登場したキヤノン初のAPSコンパクトカメラです。
90×60×27mmという小さなステンレスボディに、24~48mm F4.5~6.2の2倍ズーム、ハイブリッドAF、自動ポップアップ式フラッシュ、完全自動フィルム給送などを搭載。
発売当時は世界最小のAF全自動ズームコンパクトカメラとして登場しました。
現在ではAPSフィルムの生産終了によって実用のハードルは高くなっています。
しかし、後のデジタルIXYにもつながる「小さく、簡単で、それでいて質感が高い」IXYシリーズの原点として見ると、非常に興味深い一台です。
1990年代に各社が競い合ったAPSカメラの中でも、初代IXYはAPSの小型化というメリットを最も分かりやすく形にしたカメラのひとつといえるでしょう。










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