CHINON 35F-II

CHINON 35F-II

CHINON 35F-IIは、チノンが1980年代に発売した35mmフィルム用コンパクトカメラです。

現在のフィルムカメラ市場ではオートフォーカス機や高級コンパクトが注目されることが多いですが、35F-IIはその対極にあるような一台です。

焦点距離35mmの単焦点レンズ。

固定焦点。

1/125秒固定の機械式シャッター。

手動巻き上げ。

手動巻き戻し。

撮影機構そのものは非常にシンプルです。

さらにフラッシュを使用しなければ電池なしでも撮影できます。

「カメラ任せの高機能機」ではなく、

フィルムを入れて、巻いて、構えて、押す。

そんなフィルム撮影の最低限の機能へ割り切った、1980年代らしい廉価コンパクトカメラです。

目次

CHINON 35F-IIとは

CHINON 35F-IIは1986年発売として国内の中古カメラ店などで紹介されている、固定焦点式の35mmコンパクトカメラです。

主な仕様として確認できるのは、

  • 使用フィルム:35mmフィルム
  • 画面サイズ:24×36mm
  • レンズ:CHINON LENS 35mm F3.8
  • レンズ構成:3群3枚とされる
  • ピント:固定焦点式
  • シャッター:機械式
  • シャッター速度:1/125秒固定
  • フィルム感度設定:ISO100・200系/ISO400・1000系の2段階
  • フィルム巻き上げ:手動
  • フィルム巻き戻し:手動
  • フラッシュ:ポップアップ式内蔵
  • フラッシュ用電源:単4形電池2本

などです。

現在の基準から見れば驚くほど単純ですが、それこそが35F-IIの特徴です。

「35FA II」とは別のカメラ

中古市場で特に注意したいのが、

CHINON 35F-II

と

CHINON 35FA II

です。

名前がほとんど同じですが、性格はかなり違います。

35F-IIは固定焦点、手動巻き上げ、1/125秒固定シャッターという非常にシンプルなカメラ。

一方の35FA IIは赤外線式オートフォーカス、自動巻き上げ・自動巻き戻し、プログラム電子シャッターなどを搭載した、より高機能な全自動コンパクトです。35FA IIには35mm F3.5レンズが搭載されています。

つまり、

35F-II
=簡素な固定焦点機

35FA II
=AF付き自動コンパクト

です。

型番に「A」が1文字増えただけで中身は別世界。

中古検索ではかなり紛らわしいポイントです。

35mm F3.8の単焦点レンズ

35F-IIには35mm F3.8の単焦点レンズが搭載されています。

35mmという焦点距離は、35mm判ではやや広角寄り。

50mm標準レンズより広い範囲を写せるため、

  • 日常スナップ
  • 家族写真
  • 旅行
  • 街歩き
  • 集合写真
  • 風景

などへ使いやすい焦点距離です。国内の中古カメラ店でも35mm F3.8搭載機として紹介されています。

ズームはありません。

撮りたいものを大きくしたければ近づく。

広く入れたければ下がる。

極めて単純です。

オートフォーカスはない

35F-IIにはオートフォーカスがありません。

ではフォーカスリングを回すのかというと――。

それもありません。

固定焦点です。

あらかじめ一定の距離にピントを置き、絞りによる被写界深度を利用して広い範囲をピント内へ収めます。

いわゆるパンフォーカス的な考え方です。

撮影者が行うのは、

カメラを構える
↓
シャッターを押す

だけ。

AFが迷うことすらありません。

なぜなら、

AFそのものが存在しないからです。

被写体へ近づきすぎるとピンボケになる

固定焦点なので、どんな距離でもピントが合うわけではありません。

フィルムカメラ専門店による実機解説では、少なくとも1.5m程度は被写体から離れることが推奨されています。

料理や花へ数十cmまで寄って撮影するようなカメラではありません。

人物なら少し距離を取る。

風景ならそのまま撮る。

このくらいの使い方が向いています。

スマートフォンのように、

「とりあえず近づけば勝手にマクロになる」

世界とは正反対です。

シャッタースピードは1/125秒固定

さらに割り切っているのがシャッターです。

1/125秒固定。

高速シャッターもありません。

スローシャッターもありません。

Bもありません。

基本的に1/125秒だけです。

現在のカメラなら、

1/30秒
1/60秒
1/125秒
1/500秒
1/2000秒……

と光の量や被写体の動きに応じて変更します。

35F-IIは、

1/125秒一本勝負。

潔い。

しかも機械式なので電池不要

1/125秒固定シャッターは機械式です。

そのためフラッシュを使わなければ、カメラ本体に電池を入れなくてもシャッターが切れます。

ここは現在中古で使ううえでも大きなメリットです。

古い電子コンパクトカメラでは、

電池を入れる
↓
電子回路が死亡
↓
何も動かない

というケースがあります。

35F-IIの場合、電子機能が死んでも機械式撮影部分まで即座に使えなくなるわけではありません。

少なくとも、

巻く→シャッターを切る

という基本動作は非常に単純です。

電池は何のために使う?

使用するのは単4形電池2本。

しかし主な用途は、

  • 内蔵フラッシュ
  • 暗所警告ランプ

です。

つまり、

晴れた日の屋外。

フラッシュなし。

なら、

電池なしでも撮影可能。

フィルムさえ入っていれば写真を撮れます。

電池規格が廃番になって使えない、という古いカメラ特有の問題も避けやすい一台です。

暗い場所では赤ランプが点灯

フラッシュ用電池を入れている場合、暗い場所ではファインダー内に赤い警告ランプが点灯します。

これは、

「そのままだと暗いぞ。フラッシュ使ったほうがいいぞ。」

という合図です。

カメラが勝手にシャッタースピードを変えてくれるわけではありません。

ISOを数千まで上げることもできません。

暗いなら、

フラッシュ。

非常に1980年代的です。

フラッシュはポップアップ式

フラッシュはボディに内蔵されています。

カメラ底部のスイッチを操作すると、

ポコッ。

とフラッシュが上へ飛び出します。

使用後は手で押し戻します。

単純な廉価機なのに、このポップアップ構造だけちょっと凝っているところが面白い。

外付けフラッシュを用意する必要はありません。

家族写真や室内撮影を想定した、ごく普通の家庭用コンパクトカメラとして必要な部分は押さえています。

ISO設定は2段階

フィルム感度も完全自動ではありません。

DXコード読み取りには対応しておらず、レンズ下部のレバーでフィルム感度を設定します。

設定は大きく、

ISO100~200

と

ISO400~1000

の2グループです。

たとえばKodak ColorPlus 200なら100~200側。

ISO400フィルムなら400~1000側。

細かくISO160、200、400、800……と設定する方式ではありません。

ざっくり2択。

ここにも廉価機らしい割り切りがあります。

実は絞りが切り替わっている

シャッター速度は1/125秒固定ですが、露出が完全固定というわけでもありません。

35F-IIではISO設定やフラッシュ操作に応じて、絞り値が切り替わる仕組みになっています。

資料では、

  • フラッシュ時:F3.8
  • ISO100~200側:F8
  • ISO400~1000側:F16

という3種類の絞りが利用されるとされています。

これは理にかなっています。

低感度フィルム
→ F8

高感度フィルム
→ F16

暗い場所でフラッシュ
→ F3.8

シャッター速度を変えない代わりに、絞り側で大まかに光量を調整しているわけです。

高感度側でF16になる意味

F16まで絞れば光量を減らせるだけでなく、被写界深度も深くなります。

固定焦点カメラにとって、これは重要です。

被写界深度を深くすることで、

多少被写体までの距離が変化してもピント内へ入りやすくなります。

つまり35F-IIの、

固定焦点+絞り込み

という組み合わせは、単なるコスト削減だけではなく簡単撮影を成立させるための合理的な仕組みでもあります。

「写ルンです」感覚で使える

国内中古カメラ店では35F-IIについて、

写ルンですと同じような感覚で気軽に使える

カメラとして紹介されています。

確かに操作はよく似ています。

ピント合わせ不要。

ズームなし。

露出操作ほぼ不要。

シャッターを押す。

違うのは、

フィルムを交換して何度でも使えること。

です。

使い捨てカメラより「ちゃんとしたカメラ」ですが、高級コンパクトのように撮影者へ知識を要求するわけでもない。

中間的な面白さがあります。

フィルム巻き上げは完全手動

35F-IIでは撮影するたびに、ボディ上部の巻き上げノブを操作します。

撮影。

↓

巻く。

↓

撮影。

↓

また巻く。

です。

1980年代にはすでにモーター巻き上げコンパクトが普及していましたが、35F-IIではそこも省略されています。

モーターがないので、

ウィーン。

という音もありません。

自分で巻かなければ次の写真は撮れません。

巻き戻しも手動

フィルムを最後まで使ったら、底部の巻き戻しボタンを押し、巻き戻しクランクを回してパトローネへ戻します。

これも完全手動です。

フィルム終端で無理に巻き上げノブを回すと、フィルムや内部機構を傷める可能性があります。

巻き上げが急に止まり、カウンターも撮影枚数付近なら、

「撮り終わったかな?」

と考えて巻き戻しに移ります。

昔ながらのフィルムカメラ操作です。

スライド式レンズカバー

前面にはスライド式のレンズカバーを備えています。

撮影時はカバーを開く。

収納時は閉じる。

レンズを保護できるため、別途レンズキャップを付け外しする必要がありません。

さらにカバーを十分に開かないとシャッター操作ができないため、誤撮影防止にもなっています。

バッグの中で勝手にシャッターが押される可能性を減らせます。

単純ながら実用的です。

35F-II ADというデート機能付きもある

中古市場では、

CHINON 35F-II AD

というモデルも見つかります。

こちらは背面に日付写し込み用のデータバックを備えた仕様です。中古個体でも日付設定用液晶を備えるADモデルが確認できます。

1980年代の家庭用カメラでは、

写真の右下に「’87 8 15」

のような日付を焼き込むデート機能が人気でした。

家族旅行。

運動会。

正月。

誕生日。

写真そのものが生活記録だった時代には便利な機能です。

ただし現在ではデート機構の対応年が終了している場合もあるので、中古でAD版を購入するなら日付機能を実用目的に期待しすぎないほうがよいでしょう。

「ヤングミニ」と呼ばれた?

35F-IIについては、

「ヤングミニ」

という愛称で販売されていたとする資料があります。

ただしメーカー一次資料を現在容易に確認できないため、この名称については断定よりも「そう呼ばれていた資料がある」程度に理解しておくのが安全です。

1980年代らしいネーミングではあります。

35Fシリーズはかなりややこしい

CHINONには、

  • 35F
  • 35F-II
  • 35F-EE
  • 35F-M
  • 35F-A
  • 35FA II
  • 35FA Super

など、似た名前のコンパクトカメラがあります。

しかも名前が似ていても、

固定焦点。

ゾーンフォーカス。

AF。

自動露出。

モーター巻き上げ。

と、機能がかなり異なります。

中古で検索する際は、

「CHINON 35Fシリーズだから同じようなカメラだろう」

と判断しないほうがよいでしょう。

特に35F-IIと35FA IIは完全に分けて考える必要があります。

中古で確認したいポイント

CHINON 35F-IIは構造が単純ですが、1980年代のカメラなので現在では40年近く経過しています。

中古購入時は、

  • レンズのカビ
  • レンズのクモリ
  • 拭き傷
  • シャッターが切れるか
  • 巻き上げ機構
  • 巻き戻し機構
  • レンズカバー
  • 絞り切り替え
  • フラッシュ
  • フラッシュ充電
  • 暗所警告ランプ
  • 電池室の液漏れ
  • ファインダーのクモリ
  • 裏蓋
  • フィルムカウンター

などを確認しましょう。

特に電池室の液漏れに注意

35F-IIでは単4電池をフラッシュ用に使用します。

長期間電池を入れっぱなしにされた個体では、液漏れによって端子が腐食している可能性があります。

ただしここで面白いのが、

フラッシュ電源が死んでいても、機械式シャッター自体は切れる可能性がある

ことです。

つまり中古では、

「電池室腐食=即撮影不能」

とは限りません。

昼間専用カメラとして使えるケースもあります。

もちろん正常個体を選ぶのが一番です。

絞り切り替えも確認したい

35F-IIではISOレバーとフラッシュによって絞り状態が変化します。

そのため、

ISO側を切り替えても絞りが動かない。

フラッシュを起こしても開放側へ変化しない。

という場合は機構に問題がある可能性があります。

固定シャッター機だけに、

絞りが正しく切り替わらないと露出が大きくずれる

ので注意が必要です。

レンズカバーとシャッター連動もチェック

35F-IIではスライドカバーが撮影ロックの役割も持っています。

中古では、

  • カバーが途中で引っ掛かる
  • 完全に開かない
  • シャッターボタンが戻らない

といった症状がないか確認しましょう。

実際に古い個体でシャッターボタンの動きが悪くなった例も報告されています。

電子部品が少ないからといって、機械部分が永久に壊れないわけではありません。

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現代ではむしろ「制約」が面白い

性能だけ見れば、当然ながら高性能なカメラではありません。

AFなし。

ズームなし。

高速シャッターなし。

露出計による自動制御なし。

自動巻き上げなし。

しかし現在フィルム撮影を趣味として楽しむなら、この制約が逆に面白くなります。

フィルムを選ぶ。

晴れた日に出かける。

人や街を撮る。

巻く。

撮る。

また巻く。

細かい設定で悩む必要がありません。

「写真を撮ること以外、あまり考えなくていい。」

スマートフォンとも高級フィルムカメラとも違う楽しさがあります。

ISO400フィルムとの相性も良い

現在比較的入手しやすいISO400クラスのカラーネガフィルムを入れれば、屋外撮影では使いやすいでしょう。

高感度側設定では絞りがF16になる構造とされているため、明るい屋外で固定焦点を生かしたパンフォーカス撮影ができます。

ただし日陰や夕方などで光量が不足したらフラッシュを使う。

非常に単純です。

写真を撮るたびに露出設定を考え続けるタイプのカメラではありません。

まとめ

CHINON 35F-IIは、1980年代に登場した非常にシンプルな35mmフィルムコンパクトカメラです。

35mm F3.8の単焦点レンズを搭載し、

  • 固定焦点
  • 1/125秒固定の機械式シャッター
  • 手動巻き上げ
  • 手動巻き戻し
  • 2段階のフィルム感度設定
  • ポップアップ式内蔵フラッシュ
  • スライド式レンズカバー

という構成を持っています。

そして最大の特徴のひとつが、

フラッシュを使わなければ電池なしで撮影できること。

です。

高機能化が進んでいた1980年代にあって、35F-IIはむしろ機能を徹底的に絞っています。

AFすらありません。

しかし固定焦点なのでAFで迷うこともありません。

シャッタースピードは変更できません。

しかし1/125秒固定なので設定を間違えることもありません。

巻き上げモーターもありません。

しかし電池が切れてフィルム送り不能になることもありません。

「できないことが多いから、操作することも少ない。」

これがCHINON 35F-IIの魅力です。

現在なら高級フィルムコンパクトとはまったく違う方向から、

“フィルムを入れて気軽に撮る”

という原点を楽しめる一台。

写ルンです的な気軽さを、繰り返し使えるカメラとして楽しみたい人には、なかなか面白い存在です。

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