富士フイルム「FUJI K-28」は、1991年に登場した35mmフィルムを使用する工事現場向けのコンパクトカメラです。
一見すると少し大柄なコンパクトカメラですが、その目的は旅行やスナップ撮影ではありません。
雨やホコリなどにさらされる工事現場で、作業状況や施工記録を撮影するために作られた、いわば「仕事のためのカメラ」です。
防塵・耐候性を意識した頑丈なボディ、大きく操作しやすいスイッチ、28mmの広角レンズ、そして1990年代のカメラとしては珍しい手動巻き上げと目測式フォーカス。
便利さよりも耐久性と確実性を優先した設計が、FUJI K-28最大の特徴です。
FUJI K-28とは
FUJI K-28は1991年に発売された35mmフィルムカメラで、主に建設・工事現場での記録撮影を目的としていました。
海外の資料では「Construction Camera」と紹介されており、日本国内向けに販売されていたモデルとされています。
主な仕様は次のとおりです。
- 使用フィルム:35mmフィルム
- レンズ:FUJINON 28mm F3.9
- レンズ構成:5群5枚
- ピント方式:目測式マニュアルフォーカス
- 撮影距離:約0.75m~∞
- シャッター速度:1/100秒
- 露出:自動
- フラッシュ:内蔵
- フィルム巻き上げ:手動
- フィルム巻き戻し:手動
- 電源:単3形電池2本
- 発売年:1991年
当時の価格については、日本カメラ社「カメラ年鑑1996年版」を参照した資料で、ケース付き29,800円と紹介されています。
工事現場のために作られたフィルムカメラ
FUJI K-28で最も特徴的なのが、その用途です。
一般的なコンパクトカメラであれば、
「小型化しよう」
「AFを搭載しよう」
「巻き上げも自動化しよう」
といった方向へ進化していた時代でした。
ところがK-28では、それとは異なる設計思想が採用されています。
工事現場では雨、水滴、砂、ホコリなどにさらされる可能性があります。
さらに作業員が手袋を装着した状態で操作する場合もあります。
そのためK-28には密閉性を意識したボディや、大きく操作しやすい各種操作部が採用されました。Camera-wikiでも、防塵・防滴構造を持ち、手袋をした状態で操作することまで考慮された可能性が指摘されています。
「おしゃれ」より「壊れない」が重要
1990年代初頭といえば、一般向けコンパクトカメラでは電子化や自動化がかなり進んでいた時代です。
しかし工事現場用カメラでは、電子部品やモーターが増えるほど故障の原因も増えます。
K-28はフィルムの巻き上げも巻き戻しも手動。
ピント合わせまでマニュアルです。
現代の感覚では不便に思えますが、
「現場で確実に動く」
という目的を考えれば、非常に合理的な構成だったといえるでしょう。
FUJINON 28mm F3.9を搭載
レンズにはFUJINON 28mm F3.9を搭載しています。
焦点距離28mmは35mmフィルムでは広角レンズに分類されます。
工事写真では、
- 建物全体
- 室内
- 設備
- 道路
- 足場
- 作業状況
など、ある程度広い範囲を1枚に収める必要があります。
そのため標準的な35mmや38mmではなく、28mmという広角レンズを採用したのは工事記録用として理にかなった選択です。
レンズ構成は5群5枚で、最短撮影距離は約75cmとされています。
ズームレンズではないのもポイント
現代なら工事記録用カメラでもズームが欲しくなりそうですが、K-28は単焦点28mmです。
ズーム機構を搭載すれば内部構造が複雑になり、レンズも大型化します。
一方、28mm単焦点なら構造を比較的シンプルにできます。
「被写体を大きく撮りたければ、自分が近づく」
そんな潔いカメラです。
オートフォーカスではなく「目測式」
FUJI K-28はオートフォーカスではありません。
ピントはカメラ上部にある大型のフォーカスダイヤルを操作し、被写体までのおおよその距離を合わせる目測式です。
撮影者が、
「被写体まで3mくらいかな」
と判断して距離をセットします。
レンジファインダーも搭載されていないため、厳密なピント位置をファインダーで確認する方式でもありません。
かなり原始的です。
しかし、ここにも工事現場用カメラらしい理由があります。
AF用モーターやセンサーを省略すれば機構を単純化できます。
また、砂やホコリの多い場所で繰り返し使われるカメラでは、高度な電子機構より単純なマニュアル操作のほうが耐久性という点で有利になる場合があります。
K-28についても、過酷な環境ではAF機構よりマニュアルフォーカスのほうが適していると考えられた可能性が指摘されています。
シャッター速度は1/100秒
さらに面白いのがシャッターです。
FUJI K-28のシャッター速度は基本的に1/100秒の単速とされています。
現在のカメラでは、
1/30秒
1/125秒
1/500秒
1/1000秒……
と状況に応じてシャッタースピードが変化するのが普通です。
しかしK-28は極めてシンプル。
シャッター速度を固定し、露出側で光量を調整する方式です。
趣味の写真なら露出表現の自由度が低いことは弱点になります。
しかし施工記録で必要なのは芸術的表現ではなく、
「何が写っているのか分かること」
です。
工事カメラならではの割り切りといえるでしょう。
内蔵フラッシュを搭載
K-28には電子フラッシュも内蔵されています。
工事現場では屋外ばかりではなく、
- 建物内部
- 床下
- 倉庫
- 設備周辺
- 薄暗い作業場所
などで撮影する可能性があります。
そのためフラッシュは重要な装備です。
カメラ上部にはフラッシュをON・OFFするための大型レバーが配置されています。
ここでも小型化より操作性優先です。
手袋をしたままでも操作しやすそうな大きさになっており、一般向けコンパクトカメラとはかなり異なる雰囲気があります。
フィルムは手動巻き上げ
1991年発売という年代を考えると、もうひとつ珍しいのがフィルム巻き上げです。
K-28では撮影するたびにレバーを操作してフィルムを巻き上げます。
巻き戻しも手動です。
1980年代後半から1990年代の一般向けコンパクトカメラでは、自動巻き上げが当たり前になりつつありました。
その時代に、
「撮る」
↓
「レバーで巻く」
↓
「また撮る」
という昔ながらの操作を採用しています。
これもモーターなどの機構を減らし、耐久性や信頼性を優先した結果と考えれば納得できます。
単3形電池2本で動く
電源は単3形電池2本。
現在中古のフィルムカメラを使ううえでは、これはかなり嬉しいポイントです。
古いカメラには現在入手しにくい水銀電池や専用電池を必要とするモデルもあります。
その点、単3形電池なら現在でも容易に入手できます。
ただし、古いK-28を購入した場合は電池室を必ず確認しましょう。
長期間電池を入れたまま保管されていた個体では、液漏れによる端子の腐食が発生している可能性があります。
フィルム感度については資料に違いがある
K-28について調べると、フィルム感度の仕様には資料による違いが見られます。
海外の資料ではISO100~400を自動認識するとする記述があります。
一方、日本国内のカメラ年鑑を参照した記事ではISO100のフィルムを使用する仕様として紹介されています。
古い業務用カメラで資料そのものが少ないため、中古で実際に使用する場合は、個体に付属する説明書やカメラ本体の表示を確認したほうが確実です。
ネット上の情報だけでISO400フィルムを使用できると判断しないほうがよいでしょう。
「現場監督」と同じジャンルのカメラ
工事用フィルムカメラと聞いて、
コニカ「現場監督」
を思い浮かべる人もいるでしょう。
実際、1980~1990年代には建設現場向けの防水・防塵カメラという独特の市場が存在しました。
FUJI K-28も、その流れに属するカメラです。
ただしK-28はオートフォーカスや自動巻き上げを搭載した一般的な後期型の現場カメラに比べると、かなりシンプルな構造をしています。
だからこそ現在見ると面白い。
外観だけは頑丈な90年代コンパクト。
中身を見れば、
「目測ピント+手巻き+単速シャッター」
です。
時代が一瞬わからなくなるような仕様です。
現代では逆にスナップカメラとして面白い?
本来は業務用カメラですが、現在では趣味のフィルムカメラとして使ってみるのも面白い存在です。
28mmという画角は街歩きのスナップにも適しています。
AFではないので、あらかじめピント距離を決め、
「このくらいまで近づいたら撮る」
という使い方もできます。
さらに工事現場用ならではのゴツい外観も、一般的なフィルムコンパクトとはまったく違います。
高級コンパクトカメラのような繊細さとは正反対。
「道具感」全開です。
傷だらけの個体なら、それすらK-28らしい経歴に見えてきます。
中古のFUJI K-28で確認したいポイント
FUJI K-28は発売から30年以上経過しています。
さらに本来が工事現場用カメラなので、一般家庭で保管されていたカメラ以上に酷使された個体が存在する可能性があります。
中古で購入するときは、
- レンズのカビ
- レンズのクモリ
- ファインダーの汚れ
- シャッター動作
- フラッシュ動作
- 巻き上げレバー
- 巻き戻し機構
- フォーカスダイヤル
- 電池室の液漏れ
- 裏蓋やパッキンの状態
- ボディの大きな割れ
などを確認しましょう。
特に注意したいのが防水・防塵性能です。
新品当時に耐候性があったとしても、数十年前のゴムパッキンやシール材が現在も新品時と同じ性能を維持している保証はありません。
そのため中古のK-28を、
「工事カメラだから雨の中でも大丈夫だろう」
と考えて積極的に水へ濡らすのは避けたほうが無難です。
現在では防水カメラではなく、
「かつて防塵・耐候性を重視して設計された古いフィルムカメラ」
として扱うのが安全でしょう。
まとめ
富士フイルム FUJI K-28は、1991年に登場した工事現場向けの35mmフィルムカメラです。
FUJINON 28mm F3.9という広角レンズを搭載し、防塵・耐候性を意識した頑丈なボディを採用。
一方で、
- 目測式マニュアルフォーカス
- 手動フィルム巻き上げ
- 手動巻き戻し
- 1/100秒の単速シャッター
という非常にシンプルな撮影機構を持っています。
発売された1991年は、一般向けカメラではAF・自動露出・自動巻き上げが急速に普及していた時代です。
その中でK-28は、
「便利なカメラ」ではなく「現場で使える道具」
として設計されました。
だからこそ30年以上経過した現在では、普通のコンパクトカメラとは違った魅力があります。
華麗なスペックはありません。
高級レンズでもありません。
しかし、雨や砂ぼこりが舞う工事現場で施工状況を記録する――。
その明確な目的から生まれた無骨なボディには、一般向けフィルムカメラにはない独特の存在感があります。
「写真機」というより「撮影する工具」。
そんな言葉が似合う、富士フイルムの異色の35mmフィルムカメラです。









