MAMIYA M645 1000Sとは?1/1000秒を備えた中判一眼レフの特徴と中古購入時の注意点
MAMIYA M645 1000Sは、120フィルムで6×4.5cm判を撮影できる中判一眼レフカメラです。
初代M645の発展型として1976年に登場し、最高シャッター速度を1/500秒から1/1000秒へ高速化。さらにセルフタイマーと被写界深度確認レバーを備え、M645シリーズの完成度を高めたモデルです。(ウィキペディア)
交換レンズ、交換式ファインダー、交換式フォーカシングスクリーン、ミラーアップ、多重露光機構などを備えた本格的なシステムカメラでありながら、6×6判や6×7判の中判一眼レフよりも比較的コンパクトにまとめられています。
一方で、電子制御シャッターを採用しているため、電池がなければ正常に撮影できません。また、後のMamiya 645 Superとは異なり、撮影途中でフィルムバックを交換することもできません。
この記事では、MAMIYA M645 1000Sの特徴、初代M645との違い、ファインダーやレンズの仕組み、基本的な使い方、中古購入時に確認したいポイントを解説します。
MAMIYA M645 1000Sとは
MAMIYA M645 1000Sは、6×4.5cm判を採用したマニュアルフォーカス式の中判一眼レフカメラです。
使用するのは120または220ロールフィルムで、120フィルムでは15枚、220フィルムでは30枚撮影できます。実際の画面サイズは56×41.5mmです。
一般的な35mmフィルムの画面サイズは36×24mmであるため、M645 1000Sの撮影面積は35mm判のおよそ2.7倍あります。
大きなフィルム面を利用することで、細部の描写、階調表現、背景のボケ、引き伸ばし時の画質などに、中判カメラならではの余裕が生まれます。
それでいて、6×6判では120フィルム1本につき通常12枚、6×7判では10枚程度となるところ、6×4.5判では15枚撮影可能です。
中判らしい画質を確保しながら、フィルム1本を比較的効率よく使えることが645判の大きな魅力です。
初代M645を改良した上位モデル
初代Mamiya M645は1975年に登場しました。
初代モデルも交換式ファインダー、ミラーアップ、多重露光機構などを備えていましたが、最高シャッター速度は1/500秒でした。
M645 1000Sでは、最高シャッター速度が1/1000秒へ高速化されています。
さらに、次の機能が追加されました。
- 5~10秒のセルフタイマー
- ボディ側の被写界深度確認レバー
- シャッター速度ダイヤルのロック機構
- 1/1000秒を含む高速側の操作性向上
通常のM645、M645 1000S、廉価版のM645Jは外観がよく似ていますが、機能には違いがあります。(ウィキペディア)
| 項目 | M645 | M645 1000S | M645J |
|---|---|---|---|
| 最高シャッター速度 | 1/500秒 | 1/1000秒 | 1/500秒 |
| 最低シャッター速度 | 8秒 | 8秒 | 1秒 |
| ミラーアップ | あり | あり | なし |
| セルフタイマー | なし | あり | なし |
| 被写界深度確認レバー | なし | あり | なし |
| 多重露光 | あり | あり | あり |
| シャッターボタン | 2か所 | 2か所 | 1か所 |
中古販売ページでは、初代M645と1000Sがまとめて「Mamiya 645」と表記されている場合があります。
シャッター速度ダイヤルに「1000」があるか、ボディ側面にセルフタイマーレバーがあるかを確認しましょう。
6×4.5cm判の大きなフィルム面
M645 1000Sの最大の魅力は、35mmフィルムよりも大きな56×41.5mmの画面を使用できることです。
フィルム面が大きいほど、同じ画角と構図でも、より長い焦点距離のレンズを使用します。
たとえばM645シリーズの標準レンズである80mmは、35mm判では中望遠に相当する焦点距離ですが、645判ではおおむね50mm前後の標準レンズに近い画角です。
そのため、80mm F2.8や80mm F1.9を使用すると、自然な遠近感を保ちながら、中判らしい浅い被写界深度を楽しめます。
人物撮影では背景を柔らかくぼかしやすく、風景や建築撮影では細かな質感や階調を残しやすいフォーマットです。
120フィルムで15枚撮影できる
M645 1000Sは、120フィルムで15枚、220フィルムで30枚撮影できます。
120用と220用では専用のロールフィルムインサートが異なり、インサートを装着すると、露出カウンターも15枚または30枚へ自動的に切り替わります。
現在、実際に使用する機会が多いのは120用インサートです。
中古購入時には、単に「フィルムインサート付き」と書かれているだけでなく、120用であることを確認しましょう。
220用インサートしか付属していない場合、一般的な120フィルムを正しい位置に保持できず、フィルム面の平面性やピント位置に影響する可能性があります。
フィルムバックは交換式ではない
M645 1000Sは、交換式のロールフィルムインサートを備えています。
ただし、これは後のMamiya 645 Superや645 Proのような「交換式フィルムバック」とは異なります。
M645 1000Sでは、ボディ背面の裏蓋そのものはカメラと一体です。インサートを交換するためには裏蓋を開ける必要があるため、撮影途中のフィルムを感光させずに交換することはできません。
つまり、次のような使い方はできません。
- カラーフィルムとモノクロフィルムを途中で交換する
- ISO感度の異なるフィルムバックを使い分ける
- ポラロイドバックへ交換する
- 撮影途中で別のフィルムへ切り替える
予備のインサートへあらかじめフィルムを装填しておけば、1本を撮り終えたあとの交換時間は短縮できます。
しかし、途中交換はできないという点を理解しておきましょう。
8秒から1/1000秒までの電子制御シャッター
M645 1000Sは、ムービングコイル式の電子制御フォーカルプレーンシャッターを採用しています。
シャッター速度は次の範囲です。
- 8秒
- 4秒
- 2秒
- 1秒
- 1/2秒
- 1/4秒
- 1/8秒
- 1/15秒
- 1/30秒
- 1/60秒
- 1/125秒
- 1/250秒
- 1/500秒
- 1/1000秒
- B
シャッター速度は1段単位で設定し、中間速度は使用できません。ダイヤル中央のロックボタンを押しながら回す構造です。
1/1000秒を使用できるため、初代M645よりも明るい屋外で絞りを開けやすくなっています。
特に80mm F1.9のような明るいレンズで背景をぼかしたい場合、1/500秒と1/1000秒の差は小さくありません。
ただし、現代のカメラほど高速ではないため、晴天時に高感度フィルムを使用して開放撮影する場合は、NDフィルターが必要になることがあります。
電池がなければ正常に撮影できない
M645 1000Sは機械式カメラではありません。
電子制御シャッターを動作させるため、6V電池を必要とします。
対応電池として、説明書には次の形式が記載されています。
- 4SR44型の6V酸化銀電池
- 4LR44型の6Vアルカリ電池
- PX28相当電池
酸化銀電池の方が電圧特性と寿命の面で有利とされています。
電池を入れずにシャッターを切ると、ミラーが上がったままになり、シャッター幕も正常に動作しません。
電池が完全に消耗した状態でシャッターが開いた場合は、バッテリーチェックボタンを奥まで押すことでシャッターを閉じられる構造ですが、これは通常撮影用の機能ではありません。
撮影へ出る前には、ボディ側面のバッテリーチェックボタンを押し、緑色のランプが点灯することを確認しましょう。
交換式ファインダーを採用
M645 1000Sは、撮影目的に応じてファインダーを交換できます。
主なファインダーは次のとおりです。
ウエストレベルファインダーS
カメラ上部からスクリーンをのぞき込むタイプです。
標準レンズを無限遠に合わせた状態で約1.3倍の拡大率を持ち、折り畳み式のフードとピント確認用ルーペを備えています。簡易的なスポーツファインダーとして使用できるフレームも組み込まれています。
アイレベルファインダーより軽く、M645らしい中判カメラの撮影スタイルを楽しめます。
ただし、スクリーン像は左右が反転します。
カメラを左右へ動かすとファインダー像が反対方向へ動いて見えるため、初めて使用すると構図を合わせにくく感じることがあります。
プリズムファインダー
35mm一眼レフのように、カメラを目の高さまで上げて撮影できるファインダーです。
像は上下左右とも正しい方向に見えるため、動く被写体の追従や縦位置撮影が容易になります。倍率は標準レンズ使用時に約0.74倍で、上部にホットシューを備えています。
露出計は内蔵していません。
軽さを重視するならウエストレベル、35mm一眼レフに近い操作感を求めるならプリズムファインダーが向いています。
PDプリズムファインダー
PDプリズムファインダーは、シリコン受光素子を使用したTTL開放測光式の露出計を内蔵しています。
中央重点測光を採用し、ファインダー内の7個のLEDで露出の過不足を表示します。電源はカメラ本体の6V電池から供給されます。
PDプリズムを使用するときは、ボディ側シャッターダイヤルを専用の連動位置へ合わせ、ファインダー側のダイヤルでシャッター速度を設定します。
連動位置のままPDプリズムを取り外してシャッターを切ると、シャッターが開いたままになる場合があるため注意が必要です。
CdSプリズムファインダー
CdSプリズムファインダーもTTL開放測光に対応します。
針を合わせる追針式の露出計を採用しており、ファインダー側にSR44またはLR44電池を使用します。シャッター速度はボディ側とファインダー側の両方へ手動で設定します。
PDプリズムより古典的な操作ですが、LEDではなく指針で露出のずれを連続的に確認できます。
露出計はボディに内蔵されていない
M645 1000Sのボディ単体には露出計がありません。
ウエストレベルファインダーまたは通常のプリズムファインダーを使用する場合は、単体露出計やスマートフォンの露出計アプリを使用して露出を決めます。
一方、PDプリズムやCdSプリズムを装着すれば、レンズを通った光を測るTTL測光が可能です。
中古品で「露出計付き」と表記されている場合は、カメラ本体ではなく、付属するファインダーに露出計が内蔵されているという意味です。
ファインダーを交換すると、露出計の有無も変わる点に注意しましょう。
交換式フォーカシングスクリーン
M645 1000Sでは、ファインダーだけでなくフォーカシングスクリーンも交換できます。
標準スクリーンには、次の3種類のピント確認部分があります。
- 中央のスプリットイメージ
- その周囲のマイクロプリズム
- 外側のマット面
フレネルレンズを採用し、画面の隅まで明るく見えるよう設計されています。ファインダーで確認できる範囲は撮影画面の約94%です。
標準タイプを含め、当時は5種類のフォーカシングスクリーンが用意されていました。
ただし、スクリーンの裏面は傷つきやすい樹脂製です。
中古品のスクリーンを清掃するときは、布や綿棒で強くこすらないよう注意しましょう。傷が入るとファインダー像には見えますが、写真そのものには写りません。
ミラーアップ機構を搭載
中判一眼レフはミラーが大きいため、シャッターを切った際の振動も35mm一眼レフより大きくなります。
M645 1000Sには、撮影前にミラーを上げておくミラーアップ機構が備わっています。
ボディ側面のレバーを操作するとミラーが上がり、シャッターを切る際のミラーショックを抑えられます。
次のような撮影で効果的です。
- 三脚を使用した風景撮影
- 夜景や長時間露光
- 接写や複写
- 望遠レンズを使用した撮影
- 低速シャッターでの静物撮影
ミラーアップ後はファインダー像が見えなくなるため、先に構図とピントを合わせてからレバーを操作します。
撮影後にミラーが戻らない場合は、ミラーアップレバーが上げたままになっていないか確認しましょう。
被写界深度確認レバーを搭載
一眼レフカメラでは、通常は明るいファインダー像を保つため、撮影直前までレンズの絞りが開放されています。
M645 1000Sの被写界深度確認レバーを押し上げると、レンズが設定した絞り値まで絞り込まれます。
これにより、ピントが合って見える前後の範囲や、背景のボケ方を撮影前に確認できます。レバーを離すと、絞りは自動的に開放へ戻ります。
絞り込むほどファインダー像は暗くなるため、屋内や夜間では確認しにくくなります。
風景や商品撮影など、ピントの範囲を厳密に確認したい場面で便利な機能です。
セルフタイマーを搭載
M645 1000Sには、約5~10秒の範囲で作動する機械式セルフタイマーが搭載されています。
記念撮影だけでなく、三脚撮影時にシャッターボタンを直接押すことで発生するブレを抑える用途にも利用できます。
ただし、中古カメラではセルフタイマー内部の油脂が固まり、途中で停止する場合があります。
動作未確認の個体では、いきなりセルフタイマーを最大までセットしない方が安全です。固着するとシャッターが切れなくなる可能性があります。
2か所のシャッターボタン
M645 1000Sには、ボディ上面と前面の2か所にシャッターボタンがあります。
プリズムファインダーを装着して目の高さで構える場合は上面、ウエストレベルファインダーで上からのぞく場合は前面のボタンが押しやすくなります。
どちらのボタンも連動しており、ロックリングを操作すると同時にロックできます。前面のシャッターボタンにはケーブルレリーズ用のねじ穴も設けられています。
ファインダーやグリップの組み合わせにかかわらず、自然な姿勢でシャッターを切れる設計です。
多重露光機構を搭載
ボディ側面の多重露光レバーを「MULTI」へ切り替えると、フィルムを送らずにシャッターだけを再チャージできます。
同じコマへ複数回露光でき、露出カウンターも進みません。
多重露光を終えたら、必ずレバーを通常位置へ戻しましょう。
MULTI位置のまま撮影を続けるとフィルムが送られず、意図せず同じコマへ何度も重ね撮りしてしまいます。
また、フィルムが入っていない状態で動作確認するときも、多重露光レバーをMULTIへ合わせる必要があります。
Mamiya-Sekor Cレンズを使用する
M645 1000Sは、Mamiya M645バヨネットマウントを採用しています。
標準レンズとして代表的なのは、次の2本です。
Mamiya-Sekor C 80mm F2.8
比較的小型軽量で、645判の標準レンズとして使いやすいモデルです。
フィルター径は58mm。人物、風景、スナップ、商品撮影など、幅広い用途に対応します。
初めてM645システムを使う場合は、価格、重量、扱いやすさのバランスに優れた80mm F2.8が無難です。
Mamiya-Sekor C 80mm F1.9
中判用標準レンズとして非常に明るいF1.9を実現したモデルです。
フィルター径は67mmで、80mm F2.8より大きく重いレンズですが、開放付近では中判らしい浅い被写界深度を生かした撮影ができます。
人物撮影や低照度撮影では魅力的ですが、開放での正確なピント合わせは簡単ではありません。
中古価格もF2.8より高くなる傾向があるため、明るさを本当に必要とするか考えて選びましょう。
レンズシャッター内蔵レンズも存在する
M645用レンズの中には、レンズ内シャッターを備えた70mm F2.8も存在します。
通常はボディのフォーカルプレーンシャッターを使用しますが、レンズシャッターを利用することで、より高速なシャッター速度でもフラッシュ同調が可能です。
ボディ側の通常のX同調速度は1/60秒です。電子フラッシュを使用するときは、基本的に1/60秒またはそれより低速へ設定します。
日中シンクロやスタジオ撮影を重視する場合には、レンズシャッター付きレンズが有力な選択肢となります。
M645 1000Sの基本スペック
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| カメラ形式 | 6×4.5cm判電子制御フォーカルプレーンシャッター式一眼レフ |
| 使用フィルム | 120・220ロールフィルム |
| 実画面サイズ | 56×41.5mm |
| 撮影枚数 | 120:15枚、220:30枚 |
| レンズマウント | Mamiya M645バヨネットマウント |
| シャッター | 電子制御布幕フォーカルプレーン |
| シャッター速度 | 8秒~1/1000秒、B |
| フラッシュ同調 | X接点1/60秒 |
| 露出制御 | マニュアル |
| 露出計 | ボディには非搭載 |
| ピント合わせ | マニュアルフォーカス |
| ファインダー | 交換式 |
| フォーカシングスクリーン | 交換式 |
| ミラー | クイックリターン、ミラーアップ可能 |
| 多重露光 | 可能 |
| セルフタイマー | 約5~10秒 |
| 電源 | 6Vの4SR44または4LR44 |
| フィルムバック | 固定式・ロールフィルムインサート交換式 |
基本仕様はM645 1000Sの取扱説明書に基づきます。
重量はファインダーとレンズで大きく変わる
M645 1000Sは中判一眼レフとしては比較的コンパクトですが、決して軽量なカメラではありません。
80mm F2.8とウエストレベルファインダーを装着した状態では約1,405g、通常のプリズムファインダーでは約1,600g、PDプリズムでは約1,720gです。
80mm F1.9を装着すると、さらに重くなります。
35mm一眼レフに近い形で構えられるものの、実際の携帯重量は1.5~2kg前後になると考えておいた方がよいでしょう。
ストラップの金具が外れると落下時の被害が大きいため、純正金具や互換アダプターの状態も確認する必要があります。
中古購入時に確認したいポイント
電子シャッターが全速度で動くか
最も重要なのは電子シャッターの動作です。
新品の電池を入れ、8秒から1/1000秒まで一通りシャッターを切ります。
低速側では、それぞれ明確に時間が変わるかを確認しましょう。
- 8秒と4秒がほぼ同じ
- 低速でシャッターが閉じない
- ミラーが上がったままになる
- どの速度でも同じ音がする
- シャッター幕が途中で停止する
このような症状がある場合、電子回路、電磁石、接点、シャッター幕などに不具合がある可能性があります。
古い電子制御カメラは、機械式カメラよりも修理部品の確保が難しい場合があります。
電池室の腐食
電池室を開け、過去の液漏れがないか確認します。
白や緑色の腐食、端子の変色、ばねの欠損がある個体は注意が必要です。
電池を入れてバッテリーチェックランプが点灯しても、接触不良によって撮影中だけシャッターが不安定になることがあります。
新しい電池を入れた状態で、カメラを縦横に動かしながら複数回シャッターを切ると確認しやすくなります。
シャッター幕の状態
裏蓋を開けてインサートを外し、シャッター幕を確認します。
- ピンホール
- しわ
- たるみ
- カビ
- 汚れ
- 走行時の引っ掛かり
- 幕の端の剥がれ
シャッター幕は非常に薄く、指で触れると変形や破損の原因になります。
強い光を長時間当てることも避け、短時間で確認しましょう。
ミラーが正常に復帰するか
通常撮影では、シャッターを切った直後にミラーが元の位置へ戻ります。
戻らない場合は、次の点を確認します。
- 電池が消耗していないか
- ミラーアップレバーが作動していないか
- シャッターダイヤルがファインダー連動位置になっていないか
- 巻き上げが最後まで完了しているか
説明書では、電池なしでシャッターを切った場合や、PDプリズムを外した状態で専用連動位置を使用した場合に、ミラーやシャッターが開いたままになることが説明されています。
原因を確認せず、ミラーを指で押し戻してはいけません。
ファインダー内部の腐食や曇り
交換式プリズムファインダーでは、プリズムの腐食が発生していることがあります。
ファインダーをのぞき、次の症状を確認します。
- 黒い線や帯
- 銀色の剥がれ
- 全体的な曇り
- カビ
- 極端な黄変
- 視野の一部が暗い
プリズム腐食は表面を清掃しても改善しません。
ファインダー単体を交換できることはM645システムの利点ですが、状態のよい交換品も年々少なくなっています。
露出計付きファインダーの精度
PDまたはCdSプリズムが付属している場合は、露出計の作動だけでなく精度も確認します。
スマートフォンの露出計や、測光精度が確認された別のカメラと比較しましょう。
1段程度のずれならフィルム感度設定で補正できる場合がありますが、光の明るさによってずれ方が変わる個体は扱いにくくなります。
PDプリズムでは、レンズの絞りリングとファインダー側の連動ピンが正しくかみ合っていることも重要です。
フィルムインサートの種類
120用か220用かを確認します。
インサートの側面やフィルム圧板に「120」「220」の表示があります。
現在の実用を前提とするなら、120用インサートが付属する個体を選ぶのが基本です。
インサートが欠品しているボディは、レンズやファインダーが付属していてもフィルム撮影できません。
フィルムカウンターの動作
空のスプールと裏紙などを利用して、カウンターが正しく進むか確認できるのが理想です。
確認したいのは次の点です。
- Sから1へ正しく進む
- 1回転で1コマ送られる
- 最終コマでシャッターがロックする
- インサートを外すとSへ戻る
- 120用では15まで進む
説明書によると、カウンターはインサートを取り外したときにSへ戻る構造です。
カウンターが戻らない個体は、内部機構の固着や摩耗が考えられます。
多重露光レバー
多重露光レバーが通常位置にある状態では、巻き上げるとフィルムも送られる必要があります。
MULTI位置では、シャッターだけがチャージされ、カウンターは進みません。
レバー内部が固着していると、通常位置でもフィルムが送られず、意図しない多重露光になることがあります。
巻き上げクランク
巻き上げクランクを1回転させ、途中で引っ掛からず停止するか確認します。
説明書では、1回転でフィルム送りとシャッターチャージが完了する構造です。
途中で極端に重くなる個体や、何回転しても止まらない個体は避けた方が安全です。
交換式の巻き上げノブやパワードライブも存在するため、付属品が純正か、確実に固定できるかも確認しましょう。
モルトの劣化
裏蓋やミラー周辺には、遮光や衝撃吸収のためのモルトが使用されています。
古い個体では、次のような状態になっている場合があります。
- 粉状に崩れている
- 粘着質になっている
- 完全に消失している
- ミラーやスクリーンへ付着している
裏蓋のモルトが劣化すると、フィルムへ光が入り込む原因になります。
モルト交換自体は可能ですが、交換直後はフィルムを入れる前に裏蓋の密閉状態を確認しましょう。
レンズの絞り連動
Mamiya-SekorレンズのA・M切り替えレバーを確認します。
A位置では、通常は開放状態を保ち、シャッターを切った瞬間だけ設定絞りまで閉じます。
M位置では、常に設定絞りまで絞り込まれます。
絞り羽根の動きが遅い、油が付着している、シャッター後に開放へ戻らない場合は、露出のずれや連写不能の原因になります。
ストラップ金具
M645シリーズは一般的な三角環ではなく、専用形状のストラップ金具を使用します。
中古品では純正金具が欠品していることも珍しくありません。
ボディだけ購入したあとで持ち運べない事態を避けるため、専用金具付きストラップが付属するか、互換品を入手できるか確認しましょう。
MAMIYA M645 1000Sが向いている人
M645 1000Sは、次のような人に向いています。
- 初めて中判フィルムカメラへ挑戦する人
- 6×6判より撮影枚数を多く確保したい人
- 中判らしい背景ボケや階調を楽しみたい人
- ファインダーやスクリーンを交換して使いたい人
- 三脚を使った風景や静物撮影を行う人
- Mamiya-Sekor Cレンズを楽しみたい人
- 金属製の重厚なカメラが好きな人
- 露出とピントを自分で決めて撮影したい人
中判カメラとしては比較的オーソドックスな一眼レフで、35mm一眼レフから移行しやすい操作系を備えています。
特にプリズムファインダーを装着すれば、構え方やピント合わせは大型の35mm一眼レフに近い感覚です。
MAMIYA M645 1000Sが向かない場合
一方、次のような人には扱いにくい可能性があります。
- 電池なしでも撮影できる機械式カメラが欲しい
- 撮影途中でフィルムバックを交換したい
- オートフォーカスが必要
- 軽量な旅行用カメラを探している
- 高速な連続撮影を行いたい
- 1/60秒を超える速度で通常のフラッシュ同調を行いたい
- 整備費用をかけずに確実に使いたい
フィルムバックの途中交換を重視するなら、Mamiya 645 Super、645 Pro、645 Pro TLなどの後継モデルが適しています。(ウィキペディア)
一方、電子部品を極力避けたい場合は、完全機械式の中判カメラも比較対象になります。
まとめ
MAMIYA M645 1000Sは、6×4.5cm判の画質と、一眼レフらしい扱いやすさを組み合わせた中判フィルムカメラです。
初代M645をベースに、最高シャッター速度を1/1000秒へ高速化し、セルフタイマーと被写界深度確認レバーを追加しています。
主な特徴は次のとおりです。
- 120フィルムで15枚撮影可能
- 実画面サイズは56×41.5mm
- 8秒から1/1000秒までの電子制御シャッター
- 交換式ファインダー
- 交換式フォーカシングスクリーン
- ミラーアップ機構
- 多重露光機構
- 2か所のシャッターボタン
- Mamiya-Sekor Cレンズに対応
ただし、ロールフィルムインサートは交換できますが、フィルムバック自体は固定式です。撮影途中で別のフィルムへ交換することはできません。
また、電子シャッターを採用しているため、電池、電池室、電子回路、シャッター幕の状態が実用性を大きく左右します。
中古品を選ぶ際は、外観のきれいさだけで判断せず、全シャッター速度、ミラーの復帰、フィルム送り、カウンター、ファインダー、インサート、レンズの絞り連動まで確認しましょう。
M645 1000Sは、小さく軽いカメラではありません。
しかし、フィルムを装填し、クランクを1回転させ、大きなファインダーでピントを追い込み、重いシャッター音とともに一枚を記録する――その撮影体験には、中判一眼レフでしか味わえない濃さがあります。
中判画質は欲しい。だが6×7判の巨体までは背負いたくない。
MAMIYA M645 1000Sは、その絶妙な中間地点を突く、実用性と機械的な魅力を兼ね備えた一台です。









