CONTAX S2は、35mmフィルムを使用するマニュアルフォーカス一眼レフカメラです。
CONTAX誕生60周年を記念して1992年に登場し、電子制御化が進んでいた当時としては珍しく、電池を使わない機械式シャッターを採用しました。露出モードもマニュアルのみという、撮影者自身の操作を重視したモデルです。(カメラウィキ)
最高1/4000秒の機械式シャッター、TTLスポット測光、チタン外装、CONTAX/YASHICAマウントを搭載。Carl Zeiss T*レンズを、電池切れを心配せずに使えることが大きな魅力です。
CONTAX S2とは
CONTAX S2は、京セラが製造した35mmフォーカルプレーンシャッター式一眼レフカメラです。
CONTAXシリーズでは、RTSをはじめとする電子制御式カメラが中心でした。それに対してS2は、フィルム巻き上げ、巻き戻し、露出設定、ピント合わせ、シャッター制御を撮影者が行う機械式カメラとして登場しています。
電池が必要なのはTTL露出計とファインダー内LEDだけです。電池が切れても、単体露出計などで露出を決めれば、Bと1秒から1/4000秒までのシャッターを使用できます。
CONTAX誕生60周年の記念モデル
CONTAXという名称は、1932年に登場したZeiss Ikonの高級レンジファインダーカメラから始まりました。
S2は、その60周年にあたる1992年に発売された記念モデルです。初期には「60 YEARS」の記念表示を持つ個体も販売され、現在の中古市場では通常仕様と区別されることがあります。(カメラウィキ)
電池不要の機械式シャッター
CONTAX S2には、縦走り金属幕フォーカルプレーンシャッターが搭載されています。
シャッター速度はBと1秒から1/4000秒まで。すべて機械的に制御され、シャッターダイヤルに記載された速度を1段刻みで選択します。中間速度は使用できません。
最高速度は1/4000秒
機械式シャッターでありながら、最高速度は1/4000秒です。
晴天時でも大口径レンズの絞りを開きやすく、Planar T* 50mm F1.4や85mm F1.4などで背景をぼかした撮影に利用できます。動いている人物や乗り物を止めて写したい場合にも有効です。
ただし、中古品ではダイヤルが1/4000秒へ設定できても、実際の速度が正確とは限りません。高速側の露光むらを判断するには、実写またはシャッターテスターによる確認が必要です。
フラッシュ同調は1/250秒
電子フラッシュは、1/250秒以下でX同調します。
アクセサリーシューの中央接点と、ボディー前面のシンクロ端子を利用できます。CONTAX専用フラッシュでは充電完了表示をファインダー内に表示できますが、TTL自動調光やシャッター速度の自動切り替えには対応していません。
TTLスポット測光を搭載
S2の露出計は、ファインダー中央にある直径約5mmの範囲だけを測定するTTLスポット測光です。
測光素子にはSPDが使われ、測光範囲はISO100・F1.4レンズ使用時でEV4~20。フィルム感度はISO12~6400まで手動設定できます。
中央の狭い範囲を測る
スポット測光は、画面全体の平均的な明るさを測る方式ではありません。
人物の顔、白い服、暗い背景、舞台上の被写体など、露出の基準にしたい部分をファインダー中央へ入れて測定します。
狙った場所の明るさを正確に測りやすい一方、測る場所を間違えると写真全体が明るすぎたり、暗すぎたりすることがあります。中央重点平均測光に慣れている人は、S2独自の測光範囲を理解しておく必要があります。
ファインダー内LEDで露出を合わせる
シャッターボタンを半押しすると露出計が作動します。
ファインダー内では、撮影者が設定したシャッター速度が点滅し、露出計が適正と判断したシャッター速度が点灯します。
両者が一致するように、次のいずれかを変更します。
- シャッター速度
- レンズの絞り値
- 測光する被写体の位置
表示は半押しを解除してから約16秒後に自動消灯します。
マニュアル露出専用カメラ
CONTAX S2には、絞り優先AE、シャッター速度優先AE、プログラムAEはありません。
露出計は適正な設定を案内するだけで、シャッター速度や絞りを自動的に変更しません。撮影者がシャッターダイヤルとレンズの絞りリングを操作します。
このため、S2は「露出計を内蔵した完全マニュアルカメラ」と考えると分かりやすいでしょう。
露出をカメラへ任せたい人には不向きですが、シャッター速度、絞り、被写界深度、被写体の動きを自分で考えながら撮影したい人に適しています。
CONTAX/YASHICAマウントを採用
レンズマウントは、一般にC/Yマウントと呼ばれるCONTAX/YASHICAマウントです。
Carl ZeissのPlanar、Distagon、Sonnar、Tele-Tessar、Makro-Planar、Vario-Sonnarなどを装着できます。対応するヤシカ製MLレンズも使用可能です。
AEタイプとMMタイプのどちらも使える
C/YマウントのCarl Zeissレンズには、AEタイプとMMタイプがあります。
S2はマニュアル露出専用なので、どちらのタイプでも基本的な撮影が可能です。MMレンズに用意されたプログラムAE用の最小絞り連動機能は、S2では使用しません。
中古レンズを選ぶ際は、AE・MMの違いよりも、C/Yマウントであること、絞り連動が正常であることを確認しましょう。
明るいマニュアルフォーカス用ファインダー
ファインダーは固定式のペンタプリズム方式です。
視野率は約95%、倍率は50mmレンズを無限遠へ合わせた状態で約0.82倍。標準ではFU-4水平スプリットイメージ・マイクロプリズムスクリーンが装着されています。
3つの部分でピントを確認できる
標準スクリーンでは、次の部分を使ってピントを合わせます。
- 中央の水平スプリットイメージ
- その周囲のマイクロプリズム
- 外側のマット面
直線の多い建物ではスプリットイメージ、人物や花ではマイクロプリズムやマット面を使うなど、被写体に応じて使い分けられます。
フォーカシングスクリーンを交換可能
S2はフォーカシングスクリーンの交換に対応しています。
標準のFU-4以外に、45度スプリット式のFU-3、全面マット式のFU-5、方眼入りのFU-6が用意されました。これらはCONTAX 167MT用と共通です。
スクリーン表面は傷つきやすいため、交換時に指で触れたり、金属工具を使用したりしてはいけません。
チタン外装のコンパクトなボディー
CONTAX S2は、上部と底部の外装へチタンを使用した高級感のあるボディーを採用しています。
サイズは約134.5×89×51mm、重量は電池を除いて約565g。機械式一眼レフとして極端に軽いわけではありませんが、Carl Zeissの単焦点レンズと組み合わせやすい大きさです。(カメラウィキ)
チタンカラーの外装はS2を見分ける特徴でもあります。後に登場したS2bは黒を基調とした外装へ変更されました。
手動巻き上げと多重露出
フィルム巻き上げは上部レバー式です。
巻き上げ角は135度、予備角は30度。撮影するたびにレバーを操作して、フィルム送りとシャッターチャージを行います。巻き戻しも上部クランクによる手動式です。
多重露出に対応
巻き上げレバー付近の多重露出レバーを操作すると、フィルムを送らずにシャッターだけをチャージできます。
同じコマへ複数回露光し、被写体や背景を重ねた写真を撮影可能です。多重露出レバーは巻き上げ操作後に自動復帰します。
機械式セルフタイマー
ボディー前面には約10秒の機械式セルフタイマーがあります。
集合写真だけでなく、三脚撮影時にシャッターボタンを直接押すことによる振動を減らす用途にも利用できます。
CONTAX S2の基本スペック
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 発売年 | 1992年 |
| カメラ形式 | 35mmフォーカルプレーンシャッター式一眼レフ |
| 画面サイズ | 24×36mm |
| レンズマウント | CONTAX/YASHICAマウント |
| ピント合わせ | マニュアルフォーカス |
| 露出方式 | マニュアル |
| 測光方式 | TTLスポット測光・直径約5mm |
| 測光範囲 | ISO100・F1.4でEV4~20 |
| フィルム感度 | ISO12~6400 |
| シャッター | 機械式金属幕縦走りフォーカルプレーン |
| シャッター速度 | B、1秒~1/4000秒 |
| フラッシュ同調 | 1/250秒以下 |
| ファインダー | ペンタプリズム式 |
| ファインダー倍率 | 約0.82倍 |
| ファインダー視野率 | 約95% |
| スクリーン | 交換式・標準FU-4 |
| セルフタイマー | 機械式・約10秒 |
| 多重露出 | 対応 |
| フィルム巻き上げ | 手動レバー式 |
| フィルム巻き戻し | 手動クランク式 |
| 露出計用電池 | LR44またはSR44を2個 |
| サイズ | 約134.5×89×51mm |
| 重量 | 約565g・電池別 |
主な仕様はCONTAX S2の取扱説明書に基づきます。
CONTAX S2bとの違い
CONTAX S2bは、S2の基本構造を受け継いだ姉妹モデルです。
最大の違いは測光方式で、S2がスポット測光を採用するのに対し、S2bは中央重点平均測光を採用しています。また、S2がチタンカラーであるのに対し、S2bは黒を基調とした外装です。(Icon Publications Ltd)
| 項目 | CONTAX S2 | CONTAX S2b |
|---|---|---|
| 測光方式 | スポット測光 | 中央重点平均測光 |
| 外装色 | チタンカラー | ブラック |
| 露出方式 | マニュアル | マニュアル |
| 最高速度 | 1/4000秒 | 1/4000秒 |
| シャッター | 機械式 | 機械式 |
| 電池なし撮影 | 可能 | 可能 |
被写体の一部分を基準に露出を決めたい場合はS2、画面全体の明るさを平均的に判断したい場合はS2bが扱いやすいでしょう。
中古のCONTAX S2を購入するときの注意点
機械式シャッター
Bと1秒から1/4000秒まで順番に作動させます。
低速側では、設定に応じて開いている時間が変わることを確認します。高速側では幕の走行が不均一になると、画面の一部が暗くなる露光むらが発生します。
金属製シャッター幕は薄く、指やフィルム先端を当てると変形する可能性があります。裏蓋を開けた状態でも触れてはいけません。
スポット露出計
新品のLR44またはSR44を2個入れ、明るい場所と暗い場所で表示が変化するか確認します。
ファインダー内で、設定速度の点滅と適正速度の点灯が確認できることも重要です。針やLEDが動いても測光精度が正しいとは限らないため、単体露出計と比較しましょう。
ミラーとファインダー
ミラーの位置、表面の傷、戻りの遅れを確認します。
ミラーが正しい位置からずれていると、レンズ後部への接触やピント誤差につながる可能性があります。ファインダーのカビやクモリ、プリズムの腐食、フォーカシングスクリーンの傷も確認しましょう。
巻き上げとフィルム送り
テスト用フィルムを装填し、巻き上げレバー、スプロケット、巻き取り軸、カウンターが連動するか確認します。
巻き上げ途中で強く引っかかる場合や、フィルム終端でレバーが重くなった場合は、無理に操作してはいけません。
モルトと裏蓋
裏蓋周辺とミラー受けのモルトを確認します。
モルトが粉状に崩れている場合は光線漏れの原因になります。粘着質に変化したモルトは、ミラーやシャッター周辺を汚す可能性があります。
C/Yマウントの絞り連動
レンズを装着し、絞りリングを動かしたときに連動機構が正常に作動するか確認します。
シャッターを切ると設定値まで絞り羽根が閉じ、撮影後に素早く開放へ戻る必要があります。絞り込みボタンによる被写界深度確認も試しましょう。
CONTAX S2はどんな人に向いている?
CONTAX S2は、次のような人に向いています。
- Carl ZeissのC/Yマウントレンズを機械式ボディーで使いたい人
- 電池切れでも撮影できるカメラを求める人
- マニュアル露出とMF撮影を楽しみたい人
- 最高1/4000秒の機械式シャッターを使いたい人
- スポット測光を活用したい人
- チタン外装のCONTAXに魅力を感じる人
- 電子制御の少ないフィルム一眼レフを選びたい人
一方、絞り優先AEやオートフォーカスを求める人には向きません。
スポット測光は測る場所によって結果が大きく変わるため、露出操作へ慣れていない人にはS2bの中央重点平均測光のほうが扱いやすい場合があります。
まとめ
CONTAX S2は、CONTAX誕生60周年を記念して1992年に登場した、機械式35mm一眼レフカメラです。
最高1/4000秒の機械式金属幕シャッター、TTLスポット測光、交換式フォーカシングスクリーン、C/Yマウントを搭載。電池は露出計にのみ使用するため、電池切れでもシャッターを作動できます。
自動露出やオートフォーカスは搭載せず、絞り、シャッター速度、ピント、フィルム送りを撮影者が操作します。便利さよりも、Carl Zeissレンズと向き合いながら一枚ずつ撮影することを重視したカメラです。
中古で購入するときは、機械式シャッター、スポット露出計、ミラー、ファインダー、フィルム送り、モルト、C/Yマウントの絞り連動を確認しましょう。
正常に整備された個体なら、電子制御へ依存せず、Carl Zeiss T*レンズを本格的なマニュアル操作で楽しめる、CONTAXシリーズでも異色の一台です。









