





トプコン WINK MIRROR Eは、35mmフィルムを使用するレンズ固定式の一眼レフカメラです。
一般的なフォーカルプレーンシャッターではなく、レンズ内部にシャッターを置く「レンズシャッター式」を採用。セレン光電池式露出計、クイックリターンミラー、明るい48mm F2レンズを小型のボディーにまとめています。
現在ではあまり見かけない独特な構造を持ち、1960年代初頭の国産カメラ技術を味わえる一台です。
トプコン WINK MIRROR Eとは
トプコン WINK MIRROR Eは、東京光学機械株式会社が1961年に発売した35mm一眼レフカメラです。東京光学機械は、後の株式会社トプコンにあたります。
1960年に登場した「トプコン ウインクミラー」をベースに、正面へセレン光電池式露出計を追加したモデルです。カメラ上部のプレートには「WINK E MIRROR」と表記されていますが、一般的な製品名は「WINK MIRROR E」とされています。
レンズ固定式の一眼レフ
WINK MIRROR Eは、一眼レフの外観を持っていますが、レンズ交換はできません。
搭載されているレンズは「UV TOPCOR 48mm F2」。35mm判における標準レンズに近い自然な画角で、スナップ、人物、日常の記録などに利用しやすい焦点距離です。レンズ構成は4群6枚のガウスタイプとされています。
後に登場した「WINK MIRROR S」は交換レンズ式なので、中古品や資料を調べる際は混同しないよう注意しましょう。WINK MIRROR Eは固定レンズ式、WINK MIRROR SはトプコンUVマウントを採用した交換レンズ式です。
レンズシャッター式一眼レフを採用
WINK MIRROR Eの大きな特徴が、レンズシャッターを使用した一眼レフであることです。
通常の一眼レフでは、フィルムの直前に置かれた幕が走行するフォーカルプレーンシャッターが広く使われています。一方、WINK MIRROR Eではレンズ内部の羽根が開閉して露光します。
撮影時には複数の機構が連動する
シャッターボタンを押すと、次のような動作が連続して行われます。
- 絞りが設定値まで閉じる
- レンズシャッターがいったん閉じる
- ミラーが上昇する
- フィルム前面の遮光板が開く
- レンズシャッターが開閉して露光する
- 遮光板が閉じる
- ミラーが元の位置へ戻る
- 絞りとシャッターが再び開く
レンズシャッター、一眼レフミラー、フィルム前面の遮光板を連動させるため、一般的な一眼レフとは異なる複雑な機構になっています。
クイックリターンミラーを搭載
初期のレンズシャッター式一眼レフには、撮影後もミラーが上がったままになり、フィルムを巻き上げるまでファインダーが見えない製品もありました。
WINK MIRRORシリーズでは、撮影後すぐにミラーが元の位置へ戻るクイックリターン機構を採用しています。ミラーがまばたきするように動くことが、「WINK MIRROR」という名称の由来とされています。
セレン光電池式露出計を搭載
カメラ正面の特徴的な格子状部分には、セレン光電池式の露出計が組み込まれています。
セレン光電池は受けた光から電力を発生させるため、露出計用の電池を必要としません。電池の入手を心配せずに使える反面、長い年月によってセレン素子が劣化している個体があります。
ファインダー内の指針を合わせる
WINK MIRROR Eの露出設定は、現在の自動露出とは異なります。
最初に使用するフィルムのASA感度とシャッター速度を設定し、ファインダーを見ながら絞りリングを回します。露出計の針をファインダー内の指標中央へ合わせれば、適正露出となる仕組みです。
カメラが自動で絞り値を決定するのではなく、露出計の表示を見ながら撮影者が調整する「追針式」のマニュアル露出です。
シャッター速度と絞りが連動する
シャッター速度リングと絞りリングは機械的に連動しています。
一度適正露出へ合わせた後は、シャッター速度を変更すると、それに対応して絞り値も変化します。たとえばシャッター速度を速くすれば絞りが開き、遅くすれば絞りが閉じるため、同じ明るさを保ちながら組み合わせを変更できます。
被写体の動きを止めたいときは高速シャッター、背景までピントを合わせたいときは小さな絞りを選ぶなど、撮影目的に応じた調整が可能です。
UV TOPCOR 48mm F2を搭載
固定レンズは、UV TOPCOR 48mm F2です。
開放F2と比較的明るく、暗い場所でシャッター速度を確保したい場合や、背景をぼかして被写体を目立たせたい場合に利用できます。
開放F2からF22まで設定できる
絞りはF2、F2.8、F4、F5.6、F8、F11、F16、F22から選択できます。
撮影時には設定した絞りまで自動的に閉じ、撮影後はF2の開放状態へ戻ります。通常は明るいファインダーでピントを合わせられるため、常に絞り込まれた状態で撮影するカメラよりも扱いやすい構造です。
被写界深度プレビューを搭載
ボディー前面のレバーを操作すると、撮影前にレンズを設定した絞り値まで絞り込めます。
ファインダー像は暗くなりますが、背景や前景がどの範囲までピント内に入るかを確認できます。接写や風景撮影など、被写界深度を確認したい場面に便利です。
コンバージョンレンズも用意されていた
WINK MIRROR Eはレンズを交換できませんが、レンズ前面へ装着する広角用と望遠用のコンバージョンレンズが用意されていました。
現在では純正コンバージョンレンズを見つけることが難しく、装着部の規格や付属品の有無も確認する必要があります。通常は48mm標準レンズのまま使うことを前提に考えるとよいでしょう。
トプコン WINK MIRROR Eの基本スペック
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 発売年 | 1961年 |
| カメラ形式 | レンズ固定式35mm一眼レフ |
| 使用フィルム | 35mm・135フィルム |
| 画面サイズ | 24×36mm |
| レンズ | UV TOPCOR 48mm F2 |
| レンズ構成 | 4群6枚 |
| 絞り | F2~F22 |
| ピント合わせ | マニュアルフォーカス |
| シャッター | セイコーシャSLV・レンズシャッター |
| シャッター速度 | B、1秒~1/500秒 |
| 露出計 | セレン光電池式外光露出計 |
| 露出設定 | 追針式マニュアル露出 |
| フィルム感度 | ASA10~800 |
| ミラー | クイックリターン式 |
| セルフタイマー | あり |
| フラッシュ接点 | M・X切り替え式 |
| サイズ | 約130×82×71mm |
| 重量 | 約620g |
レンズシャッターならではのフラッシュ撮影
レンズシャッターは、シャッター羽根が画面全体を一度に開くため、原理上はすべてのシャッター速度でフラッシュと同調できます。
WINK MIRROR Eも、電子フラッシュを使用するX設定では、最高速度の1/500秒までフラッシュ同調が可能です。
日中に高速シャッターを使いながらフラッシュを発光し、人物の顔へ補助光を当てる撮影にも利用できます。フォーカルプレーンシャッター式一眼レフにはない、レンズシャッター式カメラの利点です。
中古で購入するときの注意点
WINK MIRROR Eは発売から60年以上が経過しています。
一見すると外観がきれいでも、シャッター、絞り、ミラー、露出計がすべて正常に動作するとは限りません。
セレン露出計の反応
明るい屋外と暗い室内にカメラを向け、ファインダー内の露出計の針が動くか確認します。
針がまったく動かない場合は、セレン素子、配線、メーター部分などに不具合がある可能性があります。
針が動いても正しい値とは限りません。スマートフォンの露出計アプリや、正常なカメラの測光結果と比較すると判断しやすくなります。
露出計が故障していても、外部露出計を使って撮影できる場合はあります。
レンズシャッターの粘り
Bから1/500秒までシャッター速度を変更し、羽根の開閉時間が変化するか確認します。
古いレンズシャッターでは、内部の油や汚れによって低速シャッターが遅れる、羽根が閉じない、開ききらないといった症状が起こります。
シャッターを切った後に羽根が開いたままになる個体は、フィルムが感光してしまう可能性があります。
絞り羽根の状態
絞り羽根に油が付着していないか確認します。
被写界深度プレビューレバーを操作し、設定した絞りまで素早く閉じるか、レバーを戻すとF2の開放状態へ戻るかを見ておきましょう。
シャッター速度リングと絞りリングが連動する独特な構造のため、どちらかが極端に重い場合は無理に回さないほうが安全です。
ミラーと遮光板の動作
シャッターを切り、ミラーが上昇した後にすぐ元の位置へ戻るか確認します。
ミラーが上がったままになる、ファインダーが暗いまま戻らない、撮影後にシャッターを再び切れない場合は、クイックリターン機構や遮光板に不具合がある可能性があります。
WINK MIRROR Eは複数の機構が連動しているため、一般的な一眼レフより修理や調整が複雑になることがあります。
レンズのカビやクモリ
レンズを前後から光に透かし、カビ、クモリ、傷、バルサム切れがないか確認します。
レンズを交換できないため、UV TOPCOR 48mm F2の状態はカメラ全体の実用性に直結します。
特に強いクモリがあると、逆光時にコントラストが大きく低下する可能性があります。
ファインダーとピント合わせ
ファインダー内のカビ、クモリ、プリズムの腐食を確認します。
WINK MIRROR Eにはスプリットイメージ式のピント合わせ部分が備わっています。中央の像が正しく合うか、無限遠でレンズとファインダーのピントが一致するかも確認したいところです。
セルフタイマーは無理に動かさない
古いカメラのセルフタイマーは、内部の油切れや固着が起きている場合があります。
レバーが極端に重い、途中で止まるといった個体を無理に動かすと、シャッター機構全体が動かなくなる可能性があります。実用上必要がなければ、動作不明のセルフタイマーは操作しないほうが安全です。
トプコン WINK MIRROR Eはどんな人に向いている?
トプコン WINK MIRROR Eは、次のような人に向いています。
- 珍しい国産フィルムカメラに興味がある人
- レンズシャッター式一眼レフを使ってみたい人
- 機械的な連動機構を楽しみたい人
- UV TOPCOR 48mm F2の描写に興味がある人
- 電池を使わない露出計付きカメラを探している人
- 1960年代の国産カメラを収集している人
- 有名メーカーの定番機とは違うカメラを使いたい人
一方、交換レンズを使いたい人や、修理しやすいフィルムカメラを探している人には向きません。
シャッター、ミラー、遮光板、絞りが複雑に連動するため、中古品では外観よりも動作状態を優先して選びましょう。
まとめ
トプコン WINK MIRROR Eは、UV TOPCOR 48mm F2を搭載した、レンズ固定式の35mm一眼レフカメラです。
レンズシャッター、クイックリターンミラー、セレン光電池式露出計、シャッター速度と絞りの連動機構など、1960年代初頭らしい意欲的な構造を備えています。
レンズ交換はできませんが、明るい標準レンズと最高1/500秒のシャッターを搭載し、全シャッター速度でのフラッシュ同調にも対応します。
中古で購入するときは、セレン露出計、レンズシャッター、絞り、ミラー、遮光板、レンズ内部の状態を確認することが重要です。
正常に動作する個体なら、一般的な一眼レフとは異なるシャッター音と複雑な機械動作を楽しめる、非常に個性的なフィルムカメラです。









