Canon Demi EE17(キヤノン デミEE17)は、35mmフィルムを通常の半分となる24×18mmで使用するハーフサイズカメラです。
1966年にデミシリーズの最高級機として登場し、30mm F1.7の大口径レンズ、CdS露出計によるシャッター速度優先EE、最高1/500秒のレンズシャッター、セルフタイマーなどを搭載しました。一般的な36枚撮りフィルムなら、約72枚を撮影できます。(Canon Global)
ピント合わせは距離計式ではなく、被写体までのおおよその距離を設定するゾーンフォーカス方式です。ただし、ファインダー内に距離指針を表示する工夫があり、一般的な目測式ハーフカメラより設定距離を確認しやすくなっています。
Canon Demi EE17とは
Canon Demi EE17は、1966年5月に発売された35mmレンズシャッター式ハーフサイズカメラです。
前年に発売された特殊なラピッドフィルム用カメラ「Demi Rapid」の機能を、一般的な35mmフィルムで使えるようにしたモデルで、デミシリーズの最高級機に位置づけられました。発売時価格は1万5,800円です。(Canon Global)
「17」はF1.7レンズを表す
Demi EE17の名称にある「17」は、搭載レンズの開放F値であるF1.7に由来すると考えられます。
後発のDemi EE28が28mm F2.8レンズを搭載しているのに対し、Demi EE17は30mm F1.7の大口径レンズを採用しています。(Canon Global)
24×18mmのハーフサイズカメラ
Demi EE17が使用する画面サイズは24×18mmです。
通常の35mmカメラが1コマに24×36mmを使用するのに対し、ハーフサイズではその半分を使います。そのため、24枚撮りフィルムなら約48枚、36枚撮りなら約72枚を撮影できます。
横に構えると縦位置写真になる
フィルムはカメラ内部を横方向へ移動しますが、画面は24×18mmの縦長で記録されます。
そのため、カメラを通常どおり横向きに構えると縦位置写真になり、カメラを縦向きに構えると横位置写真になります。
スマートフォンのように縦構図を多用する場合は横向きで撮影できるため、現代の感覚でも楽しみやすいでしょう。
SH30mm F1.7の大口径レンズ
Demi EE17には、Canon SH30mm F1.7レンズが固定装着されています。
レンズ構成は4群6枚。35mm判へ換算すると、画角はおおむね40mm台の標準域に相当します。風景を広く写す超広角ではなく、人物、旅行、街中のスナップ、日常の記録へ使いやすい画角です。(Canon Global)
F1.7で暗い場所にも対応しやすい
開放F1.7は、初代DemiやDemi EE28が搭載するF2.8レンズより多くの光を取り込めます。
室内や夕方でもシャッター速度を確保しやすく、近距離では背景をある程度ぼかした撮影も可能です。
ただし、Demi EE17は厳密なピント確認ができる距離計式ではありません。F1.7付近ではピントの合う範囲が狭くなるため、被写体までの距離を慎重に設定する必要があります。
最短撮影距離は0.8m
ピント調節範囲は約0.8mから無限遠です。
小物や料理へある程度近づけますが、マクロカメラのような接写には対応していません。0.8m付近では距離設定のわずかな誤差がピンぼけにつながりやすいため、目測に不安がある場合はメジャーなどで距離を確認すると確実です。(Canon Global)
シャッター速度優先EEを搭載
Demi EE17は、CdS受光素子を使ったシャッター速度優先式EEを搭載しています。
撮影者がシャッター速度を選ぶと、カメラが被写体の明るさを測定し、適正な絞り値を自動設定します。測光連動範囲はISO100でEV4.5からEV17、対応するフィルム感度はISO25から400です。(Canon Global)
基本的な撮影手順
通常のEE撮影は、次の流れで行います。
- 使用するフィルムのISO感度を設定する
- 絞り設定をオート位置へ合わせる
- 撮影に使うシャッター速度を選ぶ
- 被写体までのおおよその距離を設定する
- ファインダー内の露出表示を確認する
- 構図を決めてシャッターを切る
露出計の指針が適正露出窓へ入っていれば撮影できます。指針がオーバーまたはアンダーの警告域へ入った場合は、シャッター速度を変更します。ファインダー内には絞り値の目盛りも表示されます。(Canon Global)
AEではなく「EE」と呼ばれる
EEは「Electric Eye」の略で、被写体の明るさを電気式露出計で測定し、露出を自動制御する仕組みです。
現在の表現ではシャッター速度優先AEに近い機能ですが、発売当時のキヤノンではEEという名称が使われていました。
絞りを手動設定することも可能
絞りリングを自動位置から外すことで、F1.7からF16までの絞り値を手動で選択できます。
内蔵露出計が使用できない場合や、外部露出計で露出を決める場合、フラッシュ撮影などで利用できます。ただし、手動撮影ではカメラが絞り値を自動補正しないため、シャッター速度と絞りの組み合わせを撮影者が決めます。(Canon(Japan))
電池は露出計とEEに使用する
初代Demi Sはセレン光電池式で電池を必要としませんでしたが、Demi EE17はCdS露出計を採用しています。
そのため、露出計とシャッター速度優先EEを利用するには指定の水銀電池が必要です。現在は当時の水銀電池が一般販売されていないため、電圧調整型アダプターや対応する代替電池を検討します。(Canon(Japan))
電圧の異なる電池に注意
形状の近い1.5V電池をそのまま使用すると、当時の指定電圧との差によって露出計の表示がずれる可能性があります。
針が動くことと、測光値が正確であることは別です。使用する代替電池を決めたら、単体露出計やデジタルカメラの測光結果と比較しましょう。
距離指針付きゾーンフォーカス
Demi EE17には連動距離計やオートフォーカスがありません。
レンズのフォーカシングリングを回し、被写体までのおおよその距離を設定します。近距離は約1m、中距離は約3m、遠距離は約15mから無限遠を示すピクトグラムが用意されています。(Canon Global)
ファインダー内でも設定距離を確認できる
一般的なゾーンフォーカス機では、距離表示をレンズ側で確認します。
Demi EE17では、レンズのフォーカシングリングと連動する指針がファインダー下部に表示されます。近・中・遠のどこへ設定されているか、ファインダーをのぞいたまま確認できることが特徴です。(Canon Global)
ただし、この表示はカメラが被写体までの距離を測定しているわけではありません。
あくまでレンズ側で設定した距離を表示する機構なので、被写体までの距離そのものは撮影者が判断します。
1/8秒から1/500秒のレンズシャッター
Demi EE17には、セイコーシャ製レンズシャッターが搭載されています。
シャッター速度は1/8秒、1/15秒、1/30秒、1/60秒、1/125秒、1/250秒、1/500秒とB。セルフタイマーとX接点式フラッシュシンクロも備えています。(Canon Global)
全速度でフラッシュ同調しやすい
レンズシャッターは、フォーカルプレーンシャッターと異なり、シャッター羽根が画面全体をほぼ同時に開閉します。
電子フラッシュを幅広いシャッター速度で同調させやすいため、日中の逆光補助光や室内撮影にも利用できます。
ただし、アクセサリーシューは中央接点のないコールドシューです。フラッシュを使用する場合は、本体側面のX接点へシンクロコードを接続します。
ブライトフレーム付きファインダー
ファインダーは、ブライトフレーム付き逆ガリレオ式です。
倍率は約0.45倍、視野率は約90%。右側には露出計指針と適正露出窓、下側には距離設定用のピクトグラムと指針が表示されます。露出オーバーとアンダーの警告域も確認できます。(Canon Global)
ファインダーと撮影レンズの位置が異なるため、近距離ではパララックスが生じます。画面の端へ重要な被写体を置く場合は、構図へ少し余裕を持たせましょう。
Canon Demi EE17の基本スペック
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 発売年月 | 1966年5月 |
| カメラ形式 | 35mmレンズシャッター式ハーフサイズカメラ |
| 画面サイズ | 24×18mm |
| レンズ | Canon SH30mm F1.7 |
| レンズ構成 | 4群6枚 |
| レンズ交換 | 不可 |
| ピント方式 | ゾーンフォーカス |
| 撮影距離 | 約0.8m~無限遠 |
| 露出方式 | CdS式シャッター速度優先EE |
| 測光範囲 | ISO100でEV4.5~17 |
| フィルム感度 | ISO25~400 |
| シャッター | セイコーシャ製レンズシャッター |
| シャッター速度 | B、1/8~1/500秒 |
| セルフタイマー | あり |
| フラッシュ | X接点式 |
| ファインダー | ブライトフレーム付き逆ガリレオ式 |
| ファインダー倍率 | 約0.45倍 |
| ファインダー視野率 | 約90% |
| フィルム巻き上げ | 上部レバー式・分割巻き上げ可能 |
| 巻き上げ角 | 145度 |
| フィルムカウンター | 順算式・裏蓋開放で自動復帰 |
| フィルム巻き戻し | 上部クランク式 |
| サイズ | 約117×71×48mm |
| 重量 | 約445g |
主な仕様はキヤノンカメラミュージアムに基づきます。(Canon Global)
Canon Demi Sとの違い
Demi Sは、1964年に発売された30mm F1.7搭載の上位モデルです。
レンズとシャッター速度の範囲はDemi EE17に近いものの、Demi Sはセレン露出計による追針合致式で、撮影者が絞りを合わせます。Demi EE17ではCdS露出計とシャッター速度優先EEが採用され、絞り設定が自動化されました。(Canon Global)
| 項目 | Demi S | Demi EE17 |
|---|---|---|
| 発売年 | 1964年 | 1966年 |
| レンズ | 30mm F1.7 | 30mm F1.7 |
| 露出計 | セレン式 | CdS式 |
| 露出調整 | 追針合致式 | シャッター速度優先EE |
| 電池 | 不要 | 露出計に必要 |
| セルフタイマー | なし | あり |
| ファインダー | 実像式 | ブライトフレーム付き逆ガリレオ式 |
| 重量 | 約400g | 約445g |
露出を自分で合わせたい場合はDemi S、シャッター速度を選んで絞りをカメラへ任せたい場合はDemi EE17が扱いやすいでしょう。
Canon Demi EE28との違い
Demi EE28は、1967年に発売された普及型モデルです。
28mm F2.8レンズとセレン光電池式の完全自動プログラムEEを採用し、Demi EE17より薄く軽く仕上げられています。重量は約290gです。(Canon Global)
| 項目 | Demi EE17 | Demi EE28 |
|---|---|---|
| レンズ | 30mm F1.7 | 28mm F2.8 |
| 露出方式 | シャッター速度優先EE | 完全自動プログラムEE |
| 露出計 | CdS式 | セレン式 |
| 電池 | 必要 | 不要 |
| 最高速度 | 1/500秒 | 約1/300秒 |
| 重量 | 約445g | 約290g |
| 位置づけ | 最高級機 | 普及型 |
明るいレンズと露出の選択肢を重視するならEE17、軽さと簡単操作を重視するならEE28が適しています。
中古のCanon Demi EE17を購入するときの注意点
電池室の液漏れ
底部の電池室を開き、白色や緑色の腐食、接点の錆、電池蓋の固着を確認します。
Demi EE17では、液漏れによって電池室から露出計へ続く配線が腐食している場合があります。外観がきれいでも、適合電池を入れて露出計が作動するか確認しましょう。
CdS露出計とEE
明るい場所と暗い場所へカメラを向け、ファインダー内の指針が動くか確認します。
シャッター速度やISO感度を変更したときに表示が変わり、EE撮影時に絞り羽根が適切に動くことも重要です。
露出計の針が動くだけでは精度を判断できません。別の露出計と比較し、可能であればフィルムによる撮影結果まで確認しましょう。
シャッターと絞り羽根
1/8秒から1/500秒まで順番に作動させます。
特に低速側で、羽根が途中停止する、設定より長く開く、閉じないといった症状に注意が必要です。
絞り羽根に油が付着しているとEE撮影時の動きが遅れ、露出過多になる可能性があります。
30mm F1.7レンズ
レンズは固定式なので、カビや強いクモリがあっても別のレンズへ交換できません。
前玉と後玉のカビ、白いクモリ、拭き傷、コーティング劣化を確認します。強いクモリは逆光時のフレアやコントラスト低下につながります。
フォーカシングリングと距離指針
フォーカシングリングを0.8mから無限遠まで動かし、途中で引っかからないことを確認します。
同時に、ファインダー下部の距離指針が近・中・遠へ連動して動くか確認しましょう。
距離指針が動いていても、実際のレンズ位置が正しいとは限りません。開放F1.7で近距離撮影する場合は、実写によるピント確認が理想です。
フィルム送り
巻き上げレバー、スプロケット、巻き取りスプール、フィルムカウンターを確認します。
ハーフサイズでは通常の2倍近い回数を巻き上げるため、フィルム送り機構の状態は特に重要です。テスト用フィルムを装填し、1コマずつ安定して送られるか確認すると安心です。
Canon Demi EE17はどんな人に向いている?
Canon Demi EE17は、次のような人に向いています。
- ハーフサイズで多くの写真を撮りたい人
- 30mm F1.7の明るいレンズを使いたい人
- シャッター速度優先式の自動露出を利用したい人
- ゾーンフォーカスによる素早い撮影を楽しみたい人
- 1960年代の金属製コンパクトカメラが好きな人
- デミシリーズの最高級モデルに興味がある人
- 縦位置写真を多く撮影したい人
一方、オートフォーカスや連動距離計を求める人には向きません。
電池不要のカメラを選びたい場合はDemi SやDemi EE28、ピントを厳密に合わせたい場合は距離計を搭載した別のカメラが適しています。
まとめ
Canon Demi EE17は、1966年に発売されたデミシリーズ最高級の35mmハーフサイズカメラです。
4群6枚構成の30mm F1.7レンズ、CdS露出計によるシャッター速度優先EE、1/8秒から1/500秒のレンズシャッター、セルフタイマーを搭載。ファインダー内には露出計だけでなく、フォーカシングリングと連動する距離指針も表示されます。(Canon Global)
中古で購入するときは、電池室、CdS露出計、EE機構、低速シャッター、絞り羽根、レンズ、フォーカシングリング、フィルム送りを確認しましょう。
正常に整備された個体なら、36枚撮りフィルムで約72枚を撮影しながら、F1.7の明るいレンズとシャッター速度優先EEを楽しめる、デミシリーズ屈指の高機能モデルです。









