キヤノン Canon 110ED

キヤノン Canon 110ED

Canon 110EDとは?26mm F2と距離計を搭載した高級110フィルムカメラを徹底解説

Canon 110EDは、110カートリッジフィルムを使用するレンズシャッター式ポケットカメラです。

キヤノンが1975年3月に発売し、当時の価格は34,000円。専用ケースは1,500円でした。

110フィルムカメラというと簡易的な固定焦点カメラをイメージしやすいですが、110EDはまったく違います。

キヤノンは110フォーマットへの参入に慎重で、「発売するならユーザーが納得できるだけの仕様と機能が必要」と判断しました。その結果、110EDには26mm F2・4群5枚のレンズ、二重像合致式距離計、絞り優先式EE、日付写し込み機構などが搭載され、高級110カメラとして発売されました。

主な特徴は、

  • 13×17mmの110フィルム
  • 26mm F2レンズ
  • 4群5枚構成
  • 二重像合致式距離計
  • 最短撮影距離0.6m
  • CdSによる絞り優先EE
  • 電子制御シャッター8秒~1/500秒
  • ISO80固定
  • 年・月・日の写し込み
  • フラッシュ用ホットシュー
  • 専用Canolite EDによるフラッシュオート
  • スライド式レンズ保護カバー
  • 295gのコンパクトボディ

です。

現在中古で購入する場合は、レンズのカビや距離計だけでなく、電子シャッター、電池、CdS測光、110フィルムへの対応、日付機構、巻き上げノブなど確認項目が多いカメラでもあります。

この記事では、Canon 110EDの特徴、レンズ、距離計、露出制御、デート機能、110E・110ED20との違い、現在110フィルムで使用するときの注意点、中古購入時のチェックポイントを詳しく解説します。

目次

Canon 110EDとは

Canon 110EDは1975年3月に発売されました。

110フィルムの元祖となるPocket Instamaticシステムは、Eastman Kodakが1972年に発表したものです。

キヤノン公式Camera Museumによると、キヤノンは当初この小型フォーマットへの参入に慎重でした。

110フィルムの画面サイズはわずか13×17mm。

35mmフィルムの24×36mmと比較すると非常に小さいため、拡大プリント時の画質では不利になります。

そこで110EDでは、110という小さなフォーマットだからこそカメラ側の性能を高める方向へ振りました。

その結果生まれたのが、

「ポケットカメラなのにF2レンズ+距離計+絞り優先EE」

という110EDです。

110フィルムとは

110フィルムは、フィルムをカートリッジへ組み込んだ小型フォーマットです。

Canon 110EDの撮影画面サイズは13×17mmです。

35mmフィルムのように、

  • フィルム先端を巻き取りスプールへ差し込む
  • パーフォレーションをスプロケットへ掛ける
  • 撮影終了後に巻き戻す

といった操作は必要ありません。

カートリッジそのものをボディへ入れて使用します。

純正説明書でも、裏蓋を開けて110カートリッジをそのまま装填し、巻き上げ操作によって撮影開始位置まで送る方法が案内されています。

フィルムの巻き戻しは不要

110フィルムでは撮影済みフィルムがカートリッジの反対側へ送られます。

そのため、撮影終了後に35mmカメラのような巻き戻し操作を行う必要がありません。

キヤノン公式仕様でも110EDの「フィルム巻き戻し」はなしとされています。

フィルムを最後まで撮影したら、そのままカートリッジを取り出します。

これは110システム最大の扱いやすさのひとつです。

現在でも110フィルムは入手できる

110フィルムは完全に消滅した規格ではありません。

2026年現在もLomographyが110フィルムを販売しており、カラーネガ、モノクロ、特殊カラーフィルムなど複数種類が確認できます。現在のラインナップにはISO100、ISO200、ISO400などがあります。

つまりCanon 110EDは、

フィルムさえ入手すれば現在でも実写可能

です。

ただし、ここには非常に重要な注意点があります。

Canon 110EDはISO80固定

110EDのEE露出制御はISO80フィルムを前提として設計されています。

キヤノン公式仕様にもフィルム感度ISO80と明記されています。

ISO感度を100、200、400などへ自由に変更するダイヤルはありません。

したがって現在販売されている110フィルムなら何でも同じ条件で適正露出になるわけではありません。

たとえば現在のLomographyにはISO100のB&W Orca、ISO200のColor Tiger、ISO400クラスの110フィルムなどがあります。

110ED本来のISO80へ最も近いのはISO100です。

ISO200や400を使用すると、110ED自身はあくまでISO80として露出を決めるため、フィルム側から見ればオーバー露出方向になります。

ネガフィルムならある程度吸収できる場合がありますが、「110フィルムなら何でも適正露出」ではない点は覚えておきましょう。

ISO変更ダイヤルはない

35mmカメラならISO設定を変えてフィルム感度差を補正できることがあります。

110EDにはその機能がありません。

しかも絞り優先EEなので、単にF2からF8へ絞っただけでは露出補正にはなりません。

カメラがその絞りに合わせてシャッター速度を変更するためです。

現在のフィルムを使用する場合は、使用フィルムのラチチュードも含めて実写確認すると安全です。

26mm F2の大口径レンズ

110ED最大の特徴のひとつがレンズです。

搭載するのは、

Canon Lens 26mm F2

で、4群5枚構成です。

110フィルムの13×17mmという画面サイズを考慮すると、35mm判ではおおむね標準レンズに近い画角となります。

つまり26mmという数字だけを見て、

「26mmだから広角カメラ」

と考えるのは誤りです。

フィルム面が35mm判より大幅に小さいため、実際の画角は50mm前後の標準域に近い感覚になります。

F2は110カメラとしてかなり明るい

開放F値はF2。

姉妹機Canon 110Eは26mm F2.7なので、110EDの方が明るいレンズを搭載しています。さらに110Eが4群4枚なのに対し、110EDは4群5枚です。

F2のメリットは、

  • 暗所でシャッター速度を確保しやすい
  • ファインダーで距離計を使いやすい
  • ISO80という低感度フィルムを補える
  • 被写界深度を浅くできる

ことです。

キヤノン自身もF2大口径レンズの性能を十分に生かすため、110EDに距離計を採用したと説明しています。

「110ED」のEDはEDガラスを意味するとは限らない

現代のカメラ用レンズでは「ED」という文字を見ると、Extra-low Dispersion、特殊低分散ガラスを連想することがあります。

しかしCanon 110EDについて、キヤノン公式仕様はレンズを単に**「26mm F2・4群5枚構成」**と記載しています。ED特殊低分散ガラス採用とは説明していません。

したがって、

「Canon 110EDはEDレンズを搭載している」

と説明するのは避けた方が安全です。

この場合のEDはモデル名の一部として扱いましょう。

二重像合致式の連動距離計

110EDには本格的な二重像合致式距離計があります。

純正説明書のファインダー図でも、中央部の距離計像を重ねてピントを合わせる構造が確認できます。

使い方は一般的なレンジファインダーカメラと同じです。

被写体へカメラを向けると、中央部に二重像が見えます。

距離ノブを動かし、

2つの像が完全に重なれば合焦

です。

最短撮影距離は0.6m

距離目盛りは、

  • 0.6m
  • 1m
  • 3m
  • 10m
  • ∞

が用意されています。

最短撮影距離60cmなら、

  • 人物
  • 料理
  • 花
  • 小物
  • ペット

なども比較的近距離から撮影できます。

110フォーマットは被写界深度が深くなりやすいため、35mm判F2ほど極端にシビアではありません。

それでも開放F2・0.6m付近では正確な距離計が役立ちます。

ゾーンフォーカスマークもある

110EDは距離計だけでなく、近・中・遠を示すピクトグラムも備えています。

純正説明書では距離目盛りにゾーンフォーカスマークが設けられ、ファインダー内にも対応表示があります。

急いで撮影するときは、

  • 近距離
  • 中距離
  • 遠距離

という大まかな距離合わせも可能です。

精密に合わせたいなら距離計、素早く撮りたいならゾーンフォーカス。

小さな110カメラながら、かなり凝った構成です。

絞り優先式EEを採用

Canon 110EDはプログラムAEではありません。

露出方式は絞り優先式EEです。

撮影者が絞りを選び、CdS露出計が測光してカメラ側が適切なシャッター速度を自動設定します。

現在でいう絞り優先AEに近い考え方です。

F2・F4・F8・F16に対応する「お天気マーク」

操作を簡単にするため、絞り値には天候をイメージしたマークが使われています。

純正説明書では、

  • 室内:F2
  • 曇天:F4
  • 晴天:F8
  • 明るい条件:F16

に対応する目安が示されています。

つまり露出の知識がなくても、

「今日は曇っているから雲マーク」

という感覚で絞りを選べるわけです。

一方、絞り値そのものが分かる人ならF2・F4・F8・F16として理解できます。

AUTOなのはシャッター速度

撮影者がF値を決定すると、電子シャッターが自動的に速度を決定します。

「EEだから全部カメラ任せ」というわけではありません。

絞りは人間。

シャッター速度はカメラ。

この役割分担です。

電子シャッターは8秒~1/500秒

シャッターはキヤノン自社製の電子制御式です。

速度範囲は、

8秒~1/500秒

です。

絞り優先EEなので、通常撮影では撮影者が直接1/60秒や1/250秒を指定するわけではありません。

カメラが光量に応じて自動制御します。

暗所では8秒まで自動露出

開放F2なら、非常に暗い条件ではシャッター速度が最大8秒まで伸びます。

公式仕様ではISO80・F2でEV-1まで対応します。

これは小型110カメラとしてかなり本格的です。

ただし、8秒を手持ちで撮影するのは現実的ではありません。

低速警告を確認し、三脚などで固定する必要があります。

ファインダー内に低速警告

110EDのファインダーには黄色LEDがあります。

黄色LEDは、

  • 低輝度連動範囲外
  • 手ブレ警告
  • バッテリーチェック

を兼ねます。

暗い場所で黄色ランプが点灯したら、手持ち撮影は慎重に判断しましょう。

明るすぎる場合は赤色LED

反対に被写体が明るすぎて自動露出範囲を超える場合は、赤色LEDで警告します。

ファインダーから目を離さず露出範囲外を確認できます。

F16まで絞っても赤色警告が出る場合は、光量を減らさなければ適正露出になりません。

電子制御なので電池切れでは撮影できない

ここは中古購入で非常に重要です。

110EDのシャッターは電子制御式です。

純正説明書には、

電池がなくなるとシャッターが開かず、写真が写らない

と明記されています。

Nikon FMのような完全機械式カメラではありません。

シャッター音らしきものがしても、実際に露光しているか確認する必要があります。

電源は6V電池

純正指定は6Vの4G-13型酸化銀電池1個です。

説明書ではEveready No.544なども例示されています。

現在中古で使用する場合は、同等サイズ・電圧の現行互換電池を確認する必要があります。

電池を購入するときは、単に「6Vだから」という理由だけで選ばず、寸法、極性、電池形式を照合しましょう。

バッテリーチェック機能

側面のバッテリーチェックボタンを押しながらファインダーを覗きます。

黄色ランプが点灯すれば、電池電圧が十分です。

中古テストでは非常に便利です。

ただし、

バッテリーチェックが点灯する=露出計と電子シャッターも完全正常

とは限りません。

その後、明暗を変えて実際のシャッター動作まで確認します。

スライド式保護カバー

Canon 110EDの前面には大きなスライド式保護カバーがあります。

収納時には、

  • レンズ
  • ファインダー
  • 受光窓

などを保護します。

撮影するときはカバーを完全に開きます。

カバーが完全に開かないとシャッターが切れない

純正説明書には、

保護カバーが完全に開いていないとシャッターが落ちない

と明記されています。

中古店でシャッターを試して、

「押しても切れない!故障!」

となった場合、

まず保護カバーの位置を確認しましょう。

110EDの初見殺しポイントです。

押し込み式のフィルム巻き上げ

フィルム送りも独特です。

一般的な巻き上げレバーではなく、ボディ上部のスライド式・押し込み式巻き上げノブを操作します。

純正説明書では、ノブを矢印方向へ1回押し込むことで1回分の巻き上げ操作を行います。

110カートリッジを装填した直後は、フィルムカウンターに「1」が出るまでこの操作を繰り返します。

フィルムカウンターはカートリッジの裏紙を見る方式

35mmカメラのような機械式カウンターではありません。

ボディ背面の窓から110フィルムの裏紙へ印刷された番号を直接確認します。

キヤノン公式仕様でも「フィルム裏紙ナンバー確認式」とされています。

非常に110らしい仕組みです。

デート機構を内蔵

110EDには年・月・日を写真へ写し込む機構があります。

1975年のポケットカメラとしてかなり贅沢な機能です。

キヤノン公式も110EDを高級機とした理由のひとつとして、この極小デート機構を挙げています。

日付は画面右下へ写る

純正説明書では、

画面右下へ、年・月・日の順で横方向に写し込む

とされています。

旅行写真、家族写真、記録写真では便利な機能でした。

現在のデジタル写真にある撮影日時情報を、フィルム面へ直接焼き込むような発想です。

デート機構は2026年用ではない

ここは現在中古で使うなら重要です。

純正仕様に記載された年表示範囲は当時の年代を前提としたものです。説明書の仕様欄にも「74~84」などの年表示が確認できます。

したがって、

現在の2026年を正規の日付として設定できるデート機構ではありません。

日付機構が正常に動いていることと、現在の日付を正しく記録できることは別です。

現在では遊びとして数字を写し込む機能と考えた方が現実的でしょう。

日付はシャッターが切れた後に写し込まれる

これも非常におもしろい機構です。

純正説明書では、シャッターが切れた後に日付が写し込まれるため、ブレを防ぐ目的でシャッターボタンから0.5秒以上すぐに指を離さないよう注意しています。

さらに次の巻き上げは、シャッターボタンが完全に戻ってから行います。

急いで巻き上げると日付が流れる可能性があります。

現在の電子デートバックとは違う、実に機械的な味があります。

ホットシューを搭載

110EDは上面にフラッシュ用アクセサリーシューを備えます。

X接点直結式なので、電子フラッシュを利用できます。

小さな110カメラながら外部フラッシュへ正式対応しています。

専用Canolite EDでフラッシュオート

専用フラッシュとしてCanolite EDが用意されていました。

純正説明書では、Canolite EDを装着するとEE撮影と同じ感覚でフラッシュオート撮影できるとされています。

室内マークへ絞りを合わせ、ピントを合わせて撮影する構成です。

撮影距離は約0.8~5mの範囲が案内されています。

中古でCanolite EDまで揃ったセットなら、コレクションとしても面白いでしょう。

Canolite ED以外のフラッシュも使用可能

純正説明書では、Canolite ED以外でも直接接点付きでガイドナンバー14のスピードライトなら同様に利用できる旨が案内されています。

ただし現在の電子フラッシュを古いカメラへ装着する場合は、トリガー電圧などの互換性も含めて慎重に確認した方が安全です。

Canon 110Eとの違い

110EDと同時に、普及型のCanon 110Eも発売されています。

キヤノン公式によれば主な違いは3点です。

項目Canon 110EDCanon 110E
発売1975年3月1975年3月
レンズ26mm F226mm F2.7
レンズ構成4群5枚4群4枚
ピント二重像距離計ゾーンフォーカス
デート機構ありなし
EE絞り優先絞り優先
ISO8080
価格34,000円26,000円
重量約295g約240g

110Eとの差は、まさに110EDを「高級機」にしている部分です。

特に、

F2レンズ+距離計+デート

の3点が110EDの存在理由といえます。

Canon 110ED20との違い

1977年には後継モデルCanon 110ED20が発売されました。

最大の違いはフィルム感度です。

110EDがISO80専用なのに対し、110ED20はISO80とISO400の両方へ対応しました。

さらにシャッターも、

  • 110ED:8秒~1/500秒
  • 110ED20:2秒~1/1000秒+機械式1/125秒

へ変更されています。

項目110ED110ED20
発売1975年1977年
レンズ26mm F226mm F2
光学系4群5枚4群5枚
距離計ありあり
EE絞り優先絞り優先
ISO8080・400
シャッター8秒~1/500秒2秒~1/1000秒
機械シャッターなし1/125秒
デートありあり・消去可能
重量295g340g

110ED20は、ISO400の110フィルム登場に対応するため開発された後継機です。

そして110ED20を最後に、キヤノンはPocket Instamaticカメラから撤退しました。

Canon 110EDの基本スペック

項目内容
カメラ形式110レンズシャッター式カメラ
発売年月1975年3月
当時価格34,000円
フィルム110カートリッジ
画面サイズ13×17mm
レンズCanon 26mm F2
レンズ構成4群5枚
ピント二重像合致式距離計
最短撮影距離0.6m
距離目盛り0.6・1・3・10m・∞
ゾーンフォーカス近・中・遠マーク
露出絞り優先式EE
受光素子CdS
フィルム感度ISO80
絞り目安F2・F4・F8・F16
シャッター電子制御
シャッター速度8秒~1/500秒
ファインダー逆ガリレオ式ブライトフレーム
倍率0.61倍
視野率約84%・3m時
パララックス補正マークあり
高輝度警告赤色LED
低輝度・手ブレ警告黄色LED
デート年・月・日写し込み
フラッシュX接点直結ホットシュー
専用フラッシュCanolite ED
フィルム送り押し込み式ノブ
巻き戻し不要
電源6V 4G-13型酸化銀電池
寸法約142×28×56mm
重量約295g・電池含む

主要仕様はキヤノンCamera Museumおよびメーカー公開の110ED/110E使用説明書に基づきます。

Canon 110EDの基本的な使い方

電池を入れる

6V電池を装填します。

110EDは電子シャッターなので、電池がなければ撮影できません。

バッテリーチェックを行い、黄色ランプが点灯することを確認します。

110フィルムを装填する

裏蓋を開き、110カートリッジを入れます。

裏蓋を閉じて巻き上げノブを繰り返し操作し、背面窓へ「1」が表示されるまで送ります。

保護カバーを完全に開く

前面カバーを白い指標が一致する位置まで完全にスライドさせます。

中途半端な位置ではシャッターを切れません。

天候に応じて絞りを決める

目安として、

  • 室内:F2
  • 曇り:F4
  • 晴天:F8
  • 非常に明るい条件:F16

を選びます。

距離計でピントを合わせる

距離ノブを回し、ファインダー中央の二重像を一致させます。

近距離ならパララックス補正マークにも注意します。

警告ランプを見る

赤や黄色の警告が出ていないか確認します。

黄色なら低速・手ブレに注意します。

シャッターを切る

シャッターボタンを押します。

デート機構を使っている場合は、日付写し込みが終了するまで急いで指を離したり巻き上げたりしないよう注意します。

次のコマへ送る

上部の巻き上げノブを1回押し込みます。

最後まで撮影したら巻き戻さず、そのまま110カートリッジを取り出します。

中古購入時に確認したいポイント

Canon 110EDは1975年の電子カメラです。

外観がきれいでも、内部電子系や距離計が正常とは限りません。

特に次の項目を確認しましょう。

まず110EDと110Eを間違えない

前面のモデル名を確認します。

110EDには、

  • 26mm F2
  • 距離計窓
  • デート機構

があります。

110Eは26mm F2.7・ゾーンフォーカスで、デート機構がありません。

110ED20とも区別する

110ED20は1977年の後継モデルです。

ISO80・400対応、最高1/1000秒、1/125秒機械シャッターなど仕様が異なります。

商品タイトルだけでなくボディ表記を確認しましょう。

新品または確実な電池でテストする

110EDでは最重要です。

電池がないとシャッターが開きません。

古い電池で動作確認して、

「シャッター不良」

と判断するのは避けましょう。

バッテリーチェック

側面ボタンを押し、ファインダー内の黄色ランプが点灯するか確認します。

点灯しなければ、

  • 電池消耗
  • 電池接点
  • チェックスイッチ
  • 配線

などを疑います。

電池室の腐食

古い電池を長期間入れっぱなしにした個体では重要です。

確認したいのは、

  • 白い粉
  • 緑青
  • 黒い腐食
  • 接点の欠損
  • 電池蓋の固着
  • 液漏れが奥へ侵入した跡

です。

電子制御カメラなので、腐食が内部基板へ進んでいる個体は慎重に判断しましょう。

シャッターが実際に開くか

音だけでは判断しません。

フィルム室側から確認できる範囲で、シャッターを切った際に実際に開閉するか確認します。

電子シャッターなので、電池不良ではシャッターが開きません。

明暗でシャッター速度が変わるか

絞りを一定にしたまま、

  • 明るい窓
  • 室内
  • 暗い場所

へ向けてシャッターを切ります。

明るい場所では高速。

暗い場所では低速。

と明確に変化する必要があります。

どこへ向けても同じ速度なら、CdSや電子制御系の不調を疑います。

8秒側

暗所で低速シャッターが長く開き、最後に正常に閉じるか確認します。

  • 開いたまま
  • 数回に一度停止
  • 電池を抜かないと戻らない

などは注意が必要です。

1/500秒側

最高速は耳だけでは精度を判断できません。

可能なら実写で露出を確認します。

EE露出精度

信頼できる露出計やデジタルカメラと比較します。

ただし110EDはISO80固定なので、テスト条件もISO80相当へ合わせて比較しましょう。

CdS受光窓

前面の受光窓に、

  • 汚れ
  • 傷
  • 曇り
  • 塗装
  • シール

などがないか確認します。

CdSが正常でも受光窓が塞がれていれば正しく測光できません。

赤色警告ランプ

非常に明るい方向へ向け、条件によって高輝度警告が動作するか確認します。

黄色警告ランプ

暗い条件で低輝度・手ブレ警告が作動するか確認します。

保護カバー

完全に開閉できることを確認します。

  • 途中で固い
  • 引っ掛かる
  • 傾く
  • 最後まで開かない

個体は注意が必要です。

カバー連動シャッターロック

カバーが閉じた状態ではシャッターを切れず、完全に開くと撮影できるか確認します。これは本来の仕様です。

連動機構が固着すると、カバーを開けてもシャッターが解除されない可能性があります。

レンズのカビ

26mm F2レンズを光へ透かして、

  • 糸状のカビ
  • 蜘蛛の巣状の模様
  • カビ跡

がないか確認します。

110は小さなネガを大きく拡大するため、光学系の劣化はできるだけ少ない個体を選びたいところです。

レンズの曇り

白い霧状の曇りがないか確認します。

110EDはF2レンズを搭載する高級機なので、せっかくの光学性能を生かすためにも強い曇りは避けたいところです。

前玉の傷

前面保護カバーを持つため、通常保管された個体ではレンズが比較的守られている可能性があります。

逆に前玉に大きな傷がある場合は、カバーを開けっぱなしにしていた、または乱暴に扱われた可能性も考えられます。

距離計二重像

明るい縦線などを見て、

  • 二重像が見える
  • 距離ノブで移動する
  • 合焦時に重なる

ことを確認します。

距離計の上下ずれ

二重像を一致させたとき、横方向だけでなく上下方向にも大きくずれていないか確認します。

上下ずれが大きいと非常に見にくくなります。

無限遠

遠くの建物へ向けて∞位置付近で二重像が一致するか確認します。

一致しない場合は距離計調整が必要な可能性があります。

0.6m付近

近距離でも距離計が正確か確認します。

無限遠だけ合っていて近距離がずれる個体もあります。

実写ピント

最終的にはF2付近で、

  • 0.6~1m
  • 3m
  • 遠景

を撮影すると距離計精度を判断しやすくなります。

110フィルムの小さな画面では被写界深度が比較的深いものの、大きくずれていれば実写にも現れます。

距離ノブ

0.6mから∞まで滑らかに動くか確認します。

  • 異常に重い
  • 途中で固着
  • 大きなガタ
  • 距離目盛りと実際の動きがずれる

個体は注意が必要です。

ファインダー

明るい壁へ向け、

  • 曇り
  • カビ
  • 大量のチリ
  • ブライトフレーム
  • 距離計像
  • LED

を確認します。

レンジファインダー機なのでファインダー状態は実用性へ直結します。

パララックス補正マーク

近距離用マークが見えることを確認します。

0.6m付近ではレンズとファインダーの位置差が無視できないため重要です。

絞りノブ

F2・F4・F8・F16相当の位置へ滑らかに動くか確認します。

クリック位置が不明瞭、途中で動かない個体は注意しましょう。

絞り羽根

可能な範囲で、

  • 油
  • 固着
  • 変形
  • 開閉不良

がないか確認します。

電子シャッターが正常でも絞りが正しく動かなければ露出は狂います。

フィルム巻き上げノブ

110カートリッジを実際に装填して確認するのが理想です。

1回押し込むごとにフィルムが送られ、正常に次のコマで停止する必要があります。

巻き上げの空回り

押しても、

  • 手応えがない
  • フィルムが進まない
  • 途中で引っ掛かる
  • ノブが戻らない

場合は注意が必要です。

110カートリッジ保持部

裏蓋を開け、

  • 割れ
  • 変形
  • 異物
  • 強い腐食

がないか確認します。

110カートリッジは正しい位置へ固定されなければフィルム面の位置にも影響します。

裏蓋

確実に開閉し、閉じた状態でガタがないことを確認します。

カートリッジ自体が遮光構造を持ちますが、ボディの変形は避けたいところです。

フィルム確認窓

背面窓から裏紙の番号を確認できることが重要です。

窓の、

  • 曇り
  • 割れ
  • 強い傷

を見ます。

デート表示

110EDなら日付表示窓と年・月・日ダイヤルがあります。

  • ダイヤルが動く
  • 数字が表示される
  • 固着していない

ことを確認します。

デート写し込みは実写で確認する

数字が動くだけでは、フィルムへ実際に写し込まれるとは限りません。

デート機構を評価するならフィルム実写が必要です。

現在の日付が設定できないのは故障ではない

1970年代のデート機構です。

2026年へ対応していないこと自体は故障ではありません。

中古販売時には、

「デート機構動作」

と、

「現在の日付として使用可能」

を分けて説明した方が親切です。

ホットシュー

  • 接点腐食
  • 変形
  • 強いガタ

がないか確認します。

Canolite ED付きなら実際に装着できることも確認しましょう。

Canolite ED

セット品なら、

  • 電池室
  • 発光
  • 充電
  • ネオンランプ
  • シュー
  • 外装割れ

を確認します。

ただしカメラ本体よりフラッシュの電池液漏れがひどい場合もあります。

三脚穴

110EDは小型ですが、低速EEが8秒まであるため三脚撮影も想定されています。

三脚穴のねじ山潰れや底部の変形を確認します。

Canon 110EDが向いている人

Canon 110EDは次のような人に向いています。

  • 110フィルムを楽しみたい人
  • 高級110カメラが欲しい人
  • 距離計でピントを合わせたい人
  • 明るいF2レンズを使いたい人
  • 絞り優先EEが好きな人
  • 1970年代のポケットカメラを収集している人
  • 小型でも本格的な操作を楽しみたい人
  • Canonの変わり種カメラが好きな人
  • 現代のLomography 110フィルムで遊びたい人

特に、

「110だから簡易カメラでいい、ではなく、110でもちゃんとピントと絞りを操作したい」

という人には非常に面白いカメラです。

Canon 110EDが向かない場合

一方、次のような人には別のカメラが扱いやすいでしょう。

  • 35mmフィルムの高解像感を求める人
  • フィルムをどこでも購入したい人
  • ISO感度を自由に変更したい人
  • 電池なしで撮影したい人
  • 完全マニュアル露出が欲しい人
  • シャッター速度を直接設定したい人
  • デート機能で2026年を正確に記録したい人
  • 電子回路の経年故障を避けたい人

110フォーマット自体の制約を理解したうえで楽しむカメラです。

まとめ

Canon 110EDは、1975年3月に発売された高級110フィルムカメラです。

キヤノンが110市場へ参入するにあたり、「出す以上はユーザーが満足できる性能を」という考えから、

26mm F2・4群5枚レンズ、二重像合致式距離計、絞り優先式EE、デート機構

を組み込んだモデルとして誕生しました。

主な特徴は、

  • 110カートリッジフィルム
  • 13×17mm画面
  • 26mm F2
  • 4群5枚
  • 二重像合致式距離計
  • 最短0.6m
  • ゾーンフォーカスマーク
  • CdS絞り優先EE
  • ISO80固定
  • F2・F4・F8・F16相当の天候マーク
  • 電子シャッター8秒~1/500秒
  • 赤色高輝度警告
  • 黄色低輝度・手ブレ警告
  • 6V電源
  • バッテリーチェック
  • 年月日写し込み
  • X接点ホットシュー
  • Canolite ED対応
  • スライド式前面保護カバー
  • 押し込み式フィルム巻き上げ
  • 巻き戻し不要
  • 約295g

です。

中古購入では、単に「シャッター音がした」で判断してはいけません。

110EDは電子シャッターなので、電源系が非常に重要です。

新品または確実な電池を用意して、

  1. バッテリーチェック
  2. 電子シャッター
  3. 明暗による速度変化
  4. CdS測光
  5. 赤・黄色警告LED
  6. 距離計
  7. 無限遠・近距離
  8. レンズのカビ・曇り
  9. 絞り
  10. 保護カバー連動
  11. フィルム巻き上げ
  12. デート機構

まで確認しましょう。

さらに現在実写する場合、最大の注意点はフィルム感度です。

110フィルムそのものは現在でも販売されていますが、110EDはISO80固定です。現在のISO100フィルムは比較的近い一方、ISO200・400などでは本来の設計条件から離れます。

だからこそ、このカメラは少し手間が掛かります。

110カートリッジを入れる。

保護カバーを横へスライドする。

天候を見て絞りを決める。

小さなファインダーの二重像でピントを合わせる。

シャッター速度だけはカメラへ任せる。

撮影したら、上面のノブを「ガチャン」と押して次のコマへ進む。

そして写真は、わずか13×17mmの小さなフィルムへ記録される。

Canon 110EDは、「110フィルムだから簡単なカメラで十分」という発想に逆らい、小さなフォーマットへ本格的なレンズ・距離計・自動露出を詰め込んだ、キヤノン流の高級ポケットカメラです。

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