PENTAX 645Nとは?世界初のレンズ交換式AF中判一眼レフの特徴と中古購入時の注意点
PENTAX 645Nは、120・220ロールフィルムを使用する6×4.5判のオートフォーカス一眼レフカメラです。
1997年に発売され、ペンタックス公式の歴史では**「世界初のレンズ交換式AF中判一眼レフカメラ」**として紹介されています。
中判カメラでありながら、
- 3点オートフォーカス
- 動体予測AF
- プログラムAE
- 絞り優先AE
- シャッター優先AE
- マニュアル露出
- 6分割測光
- 中央重点測光
- スポット測光
- モーターによる自動フィルム巻き上げ
- 約2コマ/秒の連続撮影
- 撮影データのフィルムへの写し込み
などを備えています。
初代PENTAX 645が持っていた「中判なのに35mm一眼レフ感覚で扱える」という方向性をさらに進め、AFまで導入したのが645Nです。
一方、電子制御シャッター、AF、モーター巻き上げなど多くの機能を電気系統へ依存しているため、中古品では単にシャッターが切れるだけでは十分ではありません。
この記事では、PENTAX 645Nの特徴、6×4.5判の画面サイズ、オートフォーカス、露出モード、対応レンズ、フィルムバック、645NIIとの違い、中古購入時に確認したいポイントを解説します。
PENTAX 645Nとは
PENTAX 645Nは、6×4.5判を採用したTTL自動露出・オートフォーカス中判一眼レフです。
実際の画面サイズは56×41.5mmです。
一般的な35mmフィルムカメラの24×36mmより大きなフィルム面を使用するため、同じ大きさへプリントまたはスキャンした場合には拡大率を抑えやすくなります。
中判らしい大きなフィルム面を使いながら、カメラの操作系は35mm判AF一眼レフに近づけられています。
電池を入れ、AFレンズを装着し、プログラムAEへ設定すれば、
- フィルムを入れる
- シャッターボタンを半押しする
- AFでピントを合わせる
- シャッターを切る
- カメラが自動で次のコマへ巻き上げる
という流れで撮影できます。
取扱説明書の簡単撮影手順でも、絞りとシャッターをA、測光を分割測光、AFをSINGLE・3点AFへ設定する方法が案内されています。
1997年に登場した世界初のレンズ交換式AF中判一眼レフ
PENTAX 645Nは1997年に発売されました。
リコーイメージングが公開しているペンタックスの歴史では、645Nについて、
世界初のレンズ交換式AF中判一眼レフカメラ
と記録されています。
現在では中判デジタルカメラでもAFは一般的ですが、フィルム中判カメラの世界では、ピント合わせを手動で行う製品が長く中心でした。
645Nは中判カメラでありながら、撮影テンポや操作性を大きく自動化しています。
そのため、
「三脚へ据えて1枚ずつじっくり撮る」
という従来型中判だけでなく、
「手持ちで歩きながら次々撮る」
という使い方にも対応しやすいカメラです。
6×4.5判とは
「645」という名称は、6×4.5cm級の画面フォーマットを意味します。
ただし、645Nの実際の画面サイズは56×41.5mmです。
一般的な35mm判は24×36mmなので、645判はそれより大きな撮影面積を持っています。
35mm判より大きなフィルム面
フィルム面が大きいことには、
- 同サイズのプリントで拡大率を抑えやすい
- フィルム粒子が目立ちにくい
- 細部を残しやすい
- 階調表現に余裕を持たせやすい
- 大きなボケを得やすい
といった利点があります。
一方、
- フィルム1本から撮れる枚数が少ない
- ボディとレンズが大型になる
- 35mm判よりフィルム消費量が多い
といった違いもあります。
120フィルムで16枚撮影できる
PENTAX 645Nでは、120ロールフィルムで16枚を撮影できます。
220フィルムでは33枚です。
さらに専用の70mmフィルムバックを使用すると95枚まで撮影できます。
| 使用フィルム | 撮影枚数 |
|---|---|
| 120 | 16枚 |
| 220 | 33枚 |
| 70mm | 95枚 |
同じ6×4.5判でも、カメラによって15枚撮りとなる機種もあります。
645Nは120フィルムから16コマを撮影できる設計です。
120用と220用のフィルムバック
645Nでは、120・220用の専用フィルムバックを使用します。
フィルムバックはボディ後部へ差し込み、着脱つまみを約90度回して固定します。220用バックも基本的な着脱方法は同じです。
中古品を購入するときは、付属しているバックが120用なのか220用なのかを確認しましょう。
現在120フィルムを使用する予定なら、120用フィルムバックが付属していることが重要です。
バック単体の追加購入まで考えている場合は、型式と状態を確認してください。
フィルム装填も自動化されている
PENTAX 645Nはモーターによるフィルム送りを採用しています。
120・220フィルムではスタートマークへ合わせたあと、自動的に1コマ目まで送られます。70mmフィルムはオートローディングに対応します。
一般的な完全機械式中判カメラのように、撮影ごとに大きな巻き上げクランクを回す必要はありません。
シャッターを切ると、カメラが自動的に次のコマへ送ります。
約2コマ/秒の連続撮影
内蔵モーターによって、1コマ撮影だけでなく連続撮影にも対応します。
仕様では連続撮影速度は約2コマ/秒です。
中判フィルムカメラとして考えると非常に軽快です。
人物、動物、動きのある撮影で、
「もう1枚」
をすぐ撮れることは大きな利点です。
ただし120フィルムは16枚しかありません。
2コマ/秒なら理論上わずか数秒で大量のコマを消費するため、35mm判のモータードライブと同じ感覚で連写すると、あっという間にフィルムが終わります。
途中巻き取りにも対応
フィルムを最後まで撮り切る前に巻き取る「途中巻き取り」機能も備えています。
撮影途中でフィルムを交換したくなった場合や、誤って違うフィルムを装填した場合などに使用できます。
ただし、巻き取ったロールフィルムを同じ途中位置から再使用することを前提とした機能ではありません。
3点オートフォーカスを搭載
PENTAX 645Nの大きな特徴がAFです。
TTL位相差検出方式のSAFOX IVを採用し、3点AFとスポットAFを切り替えられます。AF作動範囲はISO100・F2.8レンズ使用時でEV-1~18です。
3点AF
通常撮影では3点AFを利用できます。
ファインダー内の3点AFフレーム内でピントを検出します。取扱説明書でも、一般撮影では3点AFを利用するよう案内されています。
中央一点だけへ毎回被写体を合わせなくてもよいため、人物撮影などで構図を作りやすくなります。
スポットAF
狙った位置だけへ正確にピントを合わせたい場合は、スポットAFへ切り替えます。
中央付近の狭い測距部分を利用するため、
- 人物の目
- 花
- 商品
- 建物の特定部分
- 前後に被写体が重なる場面
などに向いています。
AF-SINGLEでは合焦優先
SINGLEモードでは、シャッターボタンを半押しするとAFが作動します。
ピントが合っていない状態ではシャッターが切れない合焦優先方式です。
静止している人物、風景、建物などでは、このモードが基本です。
合焦するとファインダー内へ合焦マークが表示され、電子音でも確認できます。
SERVOモードで動体撮影
AFモードにはSERVOもあります。
仕様では動体予測機能を備え、連続撮影にも対応しています。
こちらは、
- 歩いている人物
- 子ども
- 動物
- 鉄道
- 車
- スポーツ
など、距離が変化する被写体を追う場合に利用できます。
ただし、現在の最新AFカメラほど測距点が多いわけではありません。
3点AFという世代のシステムなので、被写体をAFエリア内へ維持する撮影技術も必要です。
マニュアルフォーカスにも対応
AFだけでなく手動ピント合わせも可能です。
FA645レンズをMF位置へ変更すれば、フォーカスリングを手で操作できます。
また、従来の645Aマウントレンズも装着可能ですが、AレンズではAFは作動しません。取扱説明書でも、従来のAレンズは多くの機能を利用できる一方、オートフォーカスは働かないと説明されています。
それでもファインダー内のフォーカスインジケーターを利用できる組み合わせがあります。
つまり645Nは、
AFのFA645レンズと、従来のMF用A645レンズの双方を活用できるボディ
でもあります。
PENTAX 645AFマウント
レンズマウントはPENTAX 645AFマウントです。
FA645レンズではレンズ情報接点を利用し、AFや各種露出情報をカメラへ伝えます。
リコーイメージングの645用レンズ資料でも、FA645レンズは645N・645NIIとの組み合わせでAFが作動し、645用レンズ群を共用できることが案内されています。
75mmが標準レンズ
代表的な標準レンズがFA645 75mm F2.8です。
公式レンズ資料によると、
- 5群6枚
- 最短撮影距離0.6m
- フィルター径58mm
- 重量215g
という比較的小型な標準レンズです。
645判の焦点距離を35mm判へ換算する目安として、公式資料では焦点距離へ約0.6を掛ける方法が案内されています。
75mm × 0.6 ≒ 45mm
なので、FA645 75mm F2.8は35mm判の45mm前後に近い自然な画角となります。
人物、スナップ、風景、静物など、最初の一本として扱いやすいレンズです。
35mm判換算は約0.6倍が目安
645判では、同じ焦点距離でも35mm判より広い画角になります。
公式資料の目安に従えば、
| 645レンズ | 35mm判換算の目安 |
|---|---|
| 35mm | 約21mm |
| 45mm | 約27mm |
| 55mm | 約33mm |
| 75mm | 約45mm |
| 120mm | 約72mm |
| 150mm | 約90mm |
| 200mm | 約120mm |
| 300mm | 約180mm |
となります。
35mm判の感覚だけでレンズを選ぶと「思ったより広い」と感じることがあるため注意しましょう。
5種類の露出モード
PENTAX 645Nは、中判カメラながら複数の自動露出モードを備えています。
仕様では、
- プログラム自動露出
- シャッター優先自動露出
- 絞り優先自動露出
- マニュアル露出
- バルブ
に対応します。
プログラムAE
レンズの絞りリングとシャッターダイヤルを両方Aへ設定します。
カメラがシャッター速度と絞り値を自動的に決定します。
露出操作より構図とピントへ集中したい場合に便利です。
絞り優先AE
シャッターダイヤルをAへ設定し、レンズ側で絞り値を選びます。
背景をぼかしたい場合や、風景で被写界深度を確保したい場合に向いています。
シャッター優先AE
レンズ側の絞りをAへ設定し、シャッターダイヤルから速度を選びます。
動きを止めたい場合や、低速シャッターで流動感を表現したい場合に使用します。
マニュアル露出
絞りとシャッター速度の両方を撮影者が設定します。
スタジオ撮影や、露出を固定して複数枚撮る場合に便利です。
バルブ
長時間露光用です。
夜景、星空、光跡などに利用できます。
1/1000秒から30秒までの電子制御シャッター
シャッターは電子制御の縦走行フォーカルプレーン式です。
プログラムAE・絞り優先AEでは、1/1000秒から30秒まで無段階で制御されます。
シャッター優先AE・マニュアルでは1/1000秒から4秒までを設定でき、バルブにも対応します。
最高速度1/1000秒は、
- 晴天下で絞りを開きたい
- 人物の動きを止めたい
- 中望遠や望遠を手持ちしたい
といった場面で役立ちます。
電池がなければ撮影できない
645Nは電子制御カメラです。
シャッター、AF、露出計、モーター巻き上げなどに電力を使用します。
電源には単3形電池6本を使用し、アルカリ電池または単3形リチウム電池に対応しています。
電池切れになるとシャッターはロックされます。
OM-1などの完全機械式カメラのように、電池がなくても撮影を続けることはできません。
中古購入時には必ず新品電池を入れ、すべての電子機能を確認しましょう。
単3電池6本という入手しやすい電源
専用リチウム電池ではなく単3形を使用することは、現在でも実用上の利点です。
専用充電器を必要とせず、交換も容易です。
一方、6本すべてを使用するため、
- 新旧の電池を混在させない
- 異なる種類を混ぜない
- 長期間保管するときは外す
- 液漏れした電池を放置しない
といった基本管理が重要です。
6分割測光・中央重点・スポット測光
測光方式は3種類です。
- 6分割測光
- 中央重点測光
- スポット測光
を切り替えられます。
測光範囲は、75mm F2.8・ISO100でEV2~21です。
6分割測光
画面を複数領域へ分け、全体の明るさを判断します。
一般撮影では最も扱いやすいモードです。
中央重点測光
画面中央を重視しながら、周囲の明るさも測ります。
クラシックな一眼レフに慣れている人には使いやすいでしょう。
スポット測光
画面の狭い部分だけを測ります。
逆光の人物や舞台、雪景色など、明暗差が大きい場面で便利です。
±3EVの露出補正
露出補正は±3EVまで利用できます。
仕様では0.3EV単位で設定可能です。
逆光の人物ではプラス補正、黒い被写体ではマイナス補正など、AEを利用しながら仕上がりを調整できます。
オートブラケットにも対応
オートブラケッティングも搭載されています。
基準露出を中心に露出を変えながら複数枚撮影でき、±1/3EV、±2/3EV、±1EVを選択できます。
リバーサルフィルムのように露出許容度が狭いフィルムでは特に便利です。
ただし、中判では1コマあたりのフィルム消費が大きいため、ブラケットを多用すると16枚をすぐ使い切ります。
多重露出が簡単
ボディ側面には多重露出レバーがあります。
レバーを多重露出位置へ動かすと、シャッターを切ってもフィルムが送られず、同じコマへ重ねて撮影できます。
人物と背景を重ねる、月を合成する、抽象的な表現を作るなど、フィルムならではの撮影を楽しめます。
最後の露光前にレバーを通常位置へ戻すと、その撮影後に次のコマへ巻き上げられます。
撮影データをフィルムへ記録できる
PENTAX 645Nのかなり面白い機能が、撮影データのフィルムへの写し込みです。
撮影時のデータが画面外のフィルム余白部分へ記録されます。
記録できる主な情報は、
- フィルム枚数
- 露出モード
- シャッター速度
- 絞り値
- 露出補正値
- 測光方式
- 焦点距離
です。
たとえば現像後のフィルムを見れば、
「この写真は75mm、1/125秒、F3.5、+1EVだった」
と確認できます。
フィルム撮影では通常EXIFデータが残りません。
その弱点を、フィルムの余白へ直接撮影情報を印字することで補っているわけです。
撮影データの写し込みは解除できる
常に記録する必要はありません。
表示パネルの設定によって撮影データの写し込みを解除できます。
資料性を重視するならON、フィルム余白への印字を避けたい場合はOFFという使い分けができます。
視野率約92%×93%のファインダー
645Nは固定式のペンタプリズム系ファインダーを備えています。
仕様では、
- 視野率:約92%×93%
- 倍率:約0.76倍・75mm無限遠
- 視度調整:-3.5~+1m⁻¹
です。
視度調整リングがあるため、一定範囲なら眼鏡なしでもファインダーを見やすく調整できます。
取扱説明書では、AFフレームが最もはっきり見える位置へ視度調整するよう案内されています。
フォーカシングスクリーンを交換できる
フォーカシングスクリーンは交換式です。
仕様では交換式ナチュラルブライトマットフォーカシングスクリーンを採用しています。
一般撮影だけでなく、用途によってスクリーンを交換できるシステム性を備えています。
スクリーン表面は非常に傷つきやすいため、中古品で汚れていても指や布で直接こすらないようにしましょう。
フラッシュ同調は1/60秒
フォーカルプレーンシャッターのX同調速度は1/60秒です。
専用ストロボとの連動にも対応し、ISO連動範囲は25~800です。
対応するペンタックスAFストロボではTTLオートなどを利用できます。取扱説明書にはAF500FTZ、AF330FTZ、AF240FTなど各種ストロボとの連動方法が記載されています。
他社製ストロボを使用する場合は、高電圧・高電流タイプが故障原因になる可能性があるため注意が必要です。取扱説明書でも純正ストロボの使用を推奨しています。
レンズシャッター付き75mm F2.8も存在する
645システムには「645 LS75mm F2.8」というレンズシャッター内蔵レンズも存在します。
公式資料では、
- 1/60秒
- 1/125秒
- 1/250秒
- 1/500秒
のレンズシャッターを内蔵し、ストロボ全速同調が可能とされています。
明るい屋外で大型ストロボを使う撮影では、ボディ側の1/60秒同調より大きな自由度を得られます。
PENTAX 645Nと645NIIの違い
後継のPENTAX 645NIIは2001年10月に発売されました。
基本的な645判、AFシステム、露出方式などは645Nを受け継いでいますが、大きな改良点があります。
ミラーアップ機構
645NIIではミラーアップ機構が追加されました。
リコーイメージングは、645NIIについて、従来機よりミラー動作を滑らかにして振動を低減するとともに、ミラーアップ機構を搭載したと説明しています。
望遠レンズ、マクロ、風景撮影などで三脚を使い、ミラーショックを極力減らしたい場合は645NIIが有利です。
PENTAX Functions
645NIIでは10種類のPENTAX Functionsが追加されています。
シャッター速度ステップ、露出補正ステップ、プログラムシフトの可否などを撮影者の好みに合わせて変更できます。
645Nを選ぶ意味
645NIIの方が後発で機能は増えています。
しかし、
- 3点AF
- 各種AE
- 3種類の測光
- 自動巻き上げ
- 撮影データ写し込み
といった645Nの基本機能は非常に充実しています。
ミラーアップやカスタム機能を必要としないなら、645Nも十分実用的です。
PENTAX 645Nの基本スペック
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| カメラ形式 | TTL AE・AF 6×4.5判一眼レフ |
| 発売年 | 1997年 |
| 画面サイズ | 56×41.5mm |
| 使用フィルム | 120・220・70mm |
| 120撮影枚数 | 16枚 |
| 220撮影枚数 | 33枚 |
| 70mm撮影枚数 | 95枚 |
| レンズマウント | PENTAX 645AFマウント |
| AF方式 | TTL位相差検出・SAFOX IV |
| AFポイント | 3点・スポット切替 |
| AF輝度範囲 | EV-1~18・ISO100 |
| AFモード | SINGLE・SERVO・MF |
| シャッター | 電子制御縦走行フォーカルプレーン |
| P・Av | 1/1000~30秒・無段階 |
| Tv・M | 1/1000~4秒 |
| バルブ | あり |
| 露出モード | P・Tv・Av・M・B |
| 測光 | 6分割・中央重点・スポット |
| 測光範囲 | EV2~21・75mm F2.8・ISO100 |
| 露出補正 | ±3EV・0.3EVステップ |
| オートブラケット | ±1/3・±2/3・±1EV |
| 連続撮影 | 約2コマ/秒 |
| 多重露出 | あり |
| フラッシュ同調 | 1/60秒 |
| ファインダー視野率 | 約92%×93% |
| ファインダー倍率 | 約0.76倍・75mm無限遠 |
| 視度調整 | -3.5~+1m⁻¹ |
| スクリーン | 交換式 |
| データ写し込み | フィルム余白へ可能 |
| 電源 | 単3形電池×6 |
| 寸法 | 約150×111×117mm |
| 重量 | 約1280g・フィルムバック付き、レンズ・電池なし |
基本仕様はリコーイメージングが現在公開しているPENTAX 645N公式取扱説明書に基づきます。
PENTAX 645Nの基本的な使い方
単3電池を6本入れる
電池ホルダーへ単3形電池を6本入れます。
極性を確認し、ホルダーを確実にボディへ装着します。
液漏れ跡がある場合は、そのまま新しい電池を入れる前に接点と内部状態を確認しましょう。
120フィルムバックを取り付ける
120フィルムを使用する場合は、120用フィルムバック645を装着します。
赤点を合わせて差し込み、着脱つまみを約90度回してロックします。
フィルムを装填する
120フィルムをバックへ入れ、スタートマークを指定位置へ合わせます。
バックをボディへ装着すると、モーターによって撮影開始位置まで送られます。
ISO感度を設定する
使用するフィルムの感度へ合わせます。
ISO100なら100、ISO400なら400です。
デジタルカメラと違い、フィルム1本の途中でISO感度そのものを変更することはできません。
プログラムAEなら2つのAへ合わせる
簡単に撮影するなら、
- レンズの絞り:A
- シャッターダイヤル:A
へ設定します。
これでプログラム自動露出となります。
測光を6分割へする
一般撮影では6分割測光から始めると扱いやすくなります。
必要に応じて中央重点やスポットへ切り替えます。
AFをSINGLE・3点AFへ設定する
一般撮影ではSINGLEと3点AFを使用します。
シャッターボタンを半押しし、合焦表示を確認します。
シャッターを切る
大型カメラなので、右手だけで握らず、左手でレンズまたはボディ底部を支えます。
取扱説明書では、75mmレンズなら1/75秒、150mmなら1/150秒程度を手持ちの限界速度の目安として紹介しています。
低速になる場合は三脚を使用しましょう。
中古購入時に確認したいポイント
新品の単3電池6本で確認する
最初に電源系を確認します。
中古販売店の「電源入りました」だけでは不十分です。
新品の同一種類・同一銘柄の単3電池6本を使用し、
- 電源が安定する
- 液晶が正常に表示される
- AFが動く
- シャッターが切れる
- モーター巻き上げが動く
ことを確認します。
電池ホルダーの腐食
電池ホルダーを外し、
- 白い粉
- 緑色の腐食
- 端子の黒ずみ
- ばねの欠損
- 液漏れ跡
- プラスチックの割れ
がないか確認します。
単3電池を6本使うため、過去にアルカリ電池を長期間入れたまま保管された個体では液漏れに注意が必要です。
電源が突然落ちないか
AF、連続撮影、フィルム巻き上げなど、モーターへ負荷が掛かる操作を繰り返します。
電池残量が十分なのに、
- AF作動時に電源が落ちる
- 巻き上げ時に液晶が消える
- カメラの向きを変えると電源が切れる
場合は、接点や電源回路の不調が考えられます。
LCDの表示
上面液晶を確認します。
- 数字の欠け
- 黒いにじみ
- 一部だけ薄い
- 全面が黒ずむ
- ボタンを押すと表示が消える
といった症状がないか確認しましょう。
液晶自体が経年劣化している場合、清掃だけでは改善しません。
AFが3点とも作動するか
3点AFへ設定し、中央だけでなく左右の測距範囲でも確認します。
明るくコントラストのある被写体へ向け、
- すぐ合焦する
- 合焦マークが点灯する
- 合焦音が鳴る
- ピント位置を外すと再度AFする
ことを確認します。
中央だけ正常で左右が反応しない場合は注意が必要です。
スポットAF
AFエリアをスポットへ切り替え、中央で合焦するか確認します。
3点AFとスポットAFの両方で正常に切り替わることが重要です。
SINGLEモード
SINGLEではピントが合うまでシャッターが切れないことを確認します。
次に合焦後、正常にシャッターが切れることを確認しましょう。
SERVOモード
距離の違う被写体へカメラを振りながら、AFが継続して追従するか確認します。
モーター音だけしてレンズが動かない、途中で停止する個体は注意が必要です。
FAレンズのAF
AF確認にはFA645レンズを使用します。
A645レンズではAF自体が作動しないため、Aレンズを装着して「AF故障」と判断しないよう注意しましょう。
レンズ接点
645AFマウント周囲の電子接点を確認します。
- 強い腐食
- 汚れ
- 接点の沈み込み
- 欠損
- マウントの変形
がないか見ます。
接触不良があると、AF、絞り情報、焦点距離情報などが正常に伝わりません。
シャッター全速度
マニュアルへ設定し、1/1000秒から低速まで順番に確認します。
高速側ではシャッター音だけで精度を判断できません。
試写またはシャッターテスターで、
- 露出ムラ
- 一部の黒帯
- 高速側だけ極端な露出不足
- 低速側の時間異常
がないか確認するのが理想です。
30秒AUTO露出
絞り優先AEなどでは最長30秒まで電子制御されます。
暗い場所でAUTO撮影し、長時間露光後に正常にシャッターが閉じ、ミラーが復帰するか確認します。
長時間露光の途中で電源を切ったり電池を抜いたりしないようにしましょう。
ミラー
レンズを外し、ミラーを確認します。
- 強い傷
- ひび
- 腐食
- コーティング劣化
- シャッター後に戻らない
- 作動時に異常音がする
といった症状がないか確認します。
指で押し上げたり、表面を強く拭いたりしてはいけません。
ミラーショック
645Nは中判一眼レフなので、35mm判より大きなミラーを使用します。
シャッター作動時に異常な衝撃、引っ掛かり、二段階の不自然な音がないか確認します。
後継の645NIIではミラー動作のさらなる低振動化とミラーアップ機構が追加されています。
ファインダー
明るい壁へ向け、
- 曇り
- カビ
- 大きなチリ
- 接眼部の傷
- AFフレームの見えにくさ
- 液晶表示の欠け
を確認します。
チリだけなら写真には写りませんが、強い曇りはMFや構図確認を妨げます。
視度調整
-から+へ視度調整リングを動かし、AFフレームがはっきり見える位置を作れるか確認します。
リングが空回りする、途中で止まる場合は注意が必要です。
フォーカシングスクリーン
スクリーンに、
- 深い傷
- 強い汚れ
- 指紋
- カビ
- 欠け
がないか確認します。
交換式ですが、表面は非常に傷つきやすい部品です。
中古個体のスクリーンを安易に布で磨かないようにしましょう。
120フィルムバック
120フィルムを使うなら120用バックを重点的に確認します。
- 着脱つまみが正常
- ボディへ確実に固定できる
- ガタつきが大きくない
- 内部ローラーが回転する
- 圧板に傷や腐食がない
- 遮光部が傷んでいない
ことを確認します。
フィルム送り
実際に不要な120フィルムを入れて確認できれば理想です。
- スタート位置から1コマ目まで送る
- シャッター後に1コマずつ進む
- カウンターが正常に減る
- 16枚終了後に正常に巻き取る
ことを確認します。
モーター音がするだけでフィルムが送られていない個体は使用できません。
連続撮影
ドライブを連続へ設定し、複数回シャッターが作動するか確認します。
モーターが途中停止する、ミラーが戻らない、シャッターだけ動いて巻き上がらない場合は注意が必要です。
途中巻き取り
途中巻き取りボタンが正常に反応するか確認します。
通常撮影中に誤って押さないよう注意しましょう。
多重露出レバー
多重露出レバーを操作し、撮影してもフィルム送りが行われない状態になるか確認します。
元へ戻したあと、通常のフィルム送りへ復帰することも重要です。
撮影データ写し込み
表示パネルへデータ写し込みマークを出し、試写します。
現像後にフィルム余白へ、
- コマ番号
- モード
- シャッター速度
- 絞り
- 補正値
- 測光方式
- 焦点距離
が記録されるか確認できれば理想です。
この機能が故障していても通常撮影そのものは可能ですが、645N独自の魅力のひとつが失われます。
露出計
6分割・中央重点・スポットの3方式で確認します。
信頼できる露出計やデジタルカメラと比較し、
- 明るい屋外
- 日陰
- 室内
- 逆光
などで大きなずれがないか確認しましょう。
測光切り替え
6分割から中央重点、スポットへ切り替えたとき、明暗差の大きい被写体で表示値が変化するか確認します。
どのモードでも常に同じ値しか出ない場合は、切り替えや測光回路の不調が考えられます。
露出補正
-3から+3EVまで設定し、ファインダーまたは液晶表示が変化するか確認します。
補正終了後に0へ戻せることも重要です。
中古品では前の使用者が補正したまま販売されていることもあるため、撮影開始前に0を確認しましょう。
オートブラケット
ブラケット設定を行い、露出が段階的に変化するか確認します。
フィルムを消費するので、空撮りで確認できる部分と実写確認する部分を分けるとよいでしょう。
セルフタイマー
電子式セルフタイマーは約12秒です。
作動開始後、
- 電子音が正常
- 指定時間後にシャッターが切れる
- 撮影後に通常状態へ戻る
ことを確認します。
ホットシュー
ホットシューの接点を確認します。
純正ストロボを使用する予定なら、充電完了表示やTTL連動も確認できれば理想です。
古い他社製ストロボをいきなり取り付けるのは避けましょう。
三脚穴
645Nは約1.3kgあるボディです。
さらに大型レンズを装着するため、三脚穴へ負荷が掛かります。
底面に、
- ねじ山の潰れ
- 周囲の割れ
- 強いへこみ
- 三脚プレートによる深い傷
がないか確認しましょう。
外装の落下痕
大型中判カメラでは、落下の衝撃がマウント、ミラー、フィルムバック位置へ影響する可能性があります。
角部分の大きなへこみ、マウント周辺の変形、フィルムバックのズレがある個体は慎重に判断しましょう。
PENTAX 645Nが向いている人
645Nは次のような人に向いています。
- 中判フィルムへ挑戦したい人
- AF付き中判カメラを使いたい人
- 手持ち撮影を多く行いたい人
- 35mm一眼レフに近い操作感を求める人
- 人物撮影を行いたい人
- 風景とスナップの両方を撮りたい人
- プログラム・Tv・Av・Mを使い分けたい人
- FA645レンズを使いたい人
- A645レンズも活用したい人
- 撮影データをフィルムへ残したい人
- 120フィルムで16枚撮影したい人
特に、
「中判は使いたい。でも毎回ルーペでピントを合わせて、手で巻き上げて……という撮影は重い」
という人には魅力的です。
PENTAX 645Nが向かない場合
一方、次のような人には別のカメラが適している可能性があります。
- 完全機械式中判を使いたい人
- 電池なしで撮影したい人
- ウエストレベルファインダーを使いたい人
- 撮影途中でフィルムバックを頻繁に交換したい人
- ミラーアップを必須とする人
- とにかく小型軽量なカメラが欲しい人
- 1/1000秒を超える高速シャッターが必要な人
- 電子回路やモーターの経年故障を避けたい人
- フィルム1本から大量に撮影したい人
ミラーアップが必要なら645NII、完全機械式の中判を好むなら別系統のカメラも比較対象になります。
まとめ
PENTAX 645Nは、1997年に登場した6×4.5判のオートフォーカス一眼レフカメラです。
ペンタックス公式の歴史では、世界初のレンズ交換式AF中判一眼レフとして記録されています。
主な特徴は次のとおりです。
- 56×41.5mmの6×4.5判
- 120フィルムで16枚
- 220フィルムで33枚
- PENTAX 645AFマウント
- FA645レンズでAF
- 従来A645レンズも使用可能
- SAFOX IVによるTTL位相差AF
- 3点AF
- スポットAF
- SINGLE・SERVO
- 動体予測AF
- プログラムAE
- 絞り優先AE
- シャッター優先AE
- マニュアル露出
- バルブ
- 1/1000秒~30秒の電子制御シャッター
- 6分割・中央重点・スポット測光
- ±3EV露出補正
- オートブラケット
- 約2コマ/秒の連続撮影
- モーター自動巻き上げ
- 多重露出
- 撮影データのフィルム余白への写し込み
- 単3形電池6本
- ボディ+フィルムバック約1280g
PENTAX 645Nを中古で選ぶときは、外観のきれいさだけで判断してはいけません。
電子制御シャッター、AF、測光、液晶、フィルム送りモーター、120フィルムバック、電池ホルダーまで、カメラ全体がひとつのシステムとして正常に動くことを確認する必要があります。
特に、
「シャッターが切れる」
だけではほとんど確認になりません。
新品電池6本を入れ、FA645レンズで3点AFとスポットAFを確認し、各露出モードを切り替え、可能なら実際に120フィルムを通して16枚の送りまで確認する。
ここまで行えば、実用品としての状態をかなり判断しやすくなります。
巨大なフィルムをじっくり1枚ずつ撮るだけが中判ではない。
AFでピントを合わせ、AEで露出を決め、シャッターを切ればモーターが次のコマを送り、さらに撮影データまでフィルムへ残す。
PENTAX 645Nは、中判の画質を残したまま、撮影そのものを35mm AF一眼レフのテンポへ近づけたカメラです。









