RICOH ELNICA F(リコー エルニカF)は、リコーが1974年3月に発売した35mmフィルム用のレンジファインダーカメラです。
40mm F2.8のRIKENONレンズを固定装備し、連動距離計、電子制御シャッター、プログラム自動露出を搭載。
1970年代前半のコンパクトカメラらしく、
「ピントは人間が合わせる。しかし露出はカメラに任せる」
という撮影スタイルを採用しています。
しかも単に従来機の外装を小さくしたモデルではありません。
リコー公式資料では、500Gから続く軽量コンパクトシリーズの頂点を目指し、電子シャッターを中心にボディを全面新規設計したカメラと説明されています。
RICOH ELNICA Fとは
ELNICA Fは1974年3月発売。
35mmパトローネ入りフィルムを使用し、画面サイズは一般的な24×36mmです。
主な仕様は以下のとおりです。
- 使用フィルム:135フィルム
- 画面サイズ:24×36mm
- レンズ:RIKENON 40mm F2.8
- レンズ構成:3群4枚
- ピント合わせ:連動距離計式
- フォーカス:ヘリコイド式
- ファインダー:採光式フレームファインダー
- シャッター:SEIKO ESF B電子シャッター
- シャッター速度:約4秒~1/500秒
- 露出:プログラム自動露出
- セルフタイマー:あり
- フラッシュ:フラッシュマチック対応
- 電源:HM-N1水銀電池2個
- サイズ:約111×71×58mm
- 重量:約400g
- 発売時価格:25,000円
- ケース:2,000円
リコー公式資料にこれらの仕様が残されているため、比較的正確に素性を追える1970年代コンパクトです。
「F」の付かないELNICA 35とはかなり違う
中古市場で最初に注意したいのが、
RICOH ELNICA F
と
RICOH ELNICA 35
の違いです。
名前がよく似ています。
しかし中身はかなり違います。
ELNICA 35は1972年10月発売。
レンズは、
COLOR RIKENON 40mm F1.8
4群6枚。
シャッターはSEIKO BSF電子シャッターで、約2秒~1/1000秒。
ボディサイズは129×77×61mm。
重量520g。
発売価格29,800円でした。
一方、1974年のELNICA Fは、
RIKENON 40mm F2.8
3群4枚。
約4秒~1/500秒。
111×71×58mm。
400g。
25,000円です。
つまり、
ELNICA 35
→ 明るいF1.8・大型・520g
ELNICA F
→ F2.8・小型軽量・400g
です。
単純な上位・下位の関係ではありません。
ELNICA Fは「小型化」を重視したモデル
この違いを見ると、ELNICA Fの狙いがはっきりします。
ELNICA 35より、
横幅で18mm小さい。
高さも6mm低い。
重量は120g軽い。
レンズもF1.8からF2.8へ抑えられています。
つまり、
大口径レンズを積んだ高性能コンパクト
から、
持ち歩きやすい電子式コンパクト
へ方向を変えたわけです。
リコー公式が「500Gにはじまる軽量コンパクトシリーズの頂点をめざした」と説明しているのも納得できます。
外観は似ていてもボディは全面新規設計
さらに重要なのがここです。
リコー公式によれば、ELNICA Fは従来のコンパクト機と外観こそ似ていましたが、
電子シャッターの採用を中心に、ボディを全面新規設計
しています。
つまり、
「ELNICA 35の中身をそのまま小さくした」
わけではありません。
小型化を前提としてカメラそのものを設計し直したモデルです。
RIKENON 40mm F2.8を搭載
レンズは、
RIKENON 40mm F2.8。
3群4枚構成です。
40mmという焦点距離は、35mm判では非常に使いやすい準標準域です。
35mmより少し狭い。
50mmより少し広い。
そのため、
- 街中スナップ
- 家族写真
- 人物
- 旅行
- 日常記録
- 風景
など幅広く使えます。
極端な広角でも望遠でもありません。
カメラを一台だけ持って歩くための焦点距離
として非常に合理的です。
40mmはリコーが得意とした焦点距離
1970年代のリコー小型レンジファインダーでは40mm前後のレンズがよく使われています。
ELNICA 35も40mm。
ELNICA 35Mも40mm。
小型ボディでスナップから人物まで対応できるため、コンパクトカメラと相性のよい画角でした。
現在でも40mm単焦点レンズを好むユーザーは多く、
35mmと50mmのいいとこ取り
のような焦点距離として人気があります。
F2.8は暗すぎるのか
ELNICA 35のF1.8と比較すると、F2.8は約1段以上暗くなります。
そのため暗所性能だけを比較すればELNICA 35のほうが有利です。
しかしF2.8へ抑えることで、
レンズを小さくできる。
軽くできる。
ボディ全体もコンパクトにできる。
というメリットがあります。
ELNICA Fでは最高性能よりも、
「持ち歩ける電子レンジファインダー」
を優先したと考えれば、この選択は合理的です。
レンジファインダーを搭載
ELNICA Fは目測式ではありません。
連動距離計式レンジファインダー
です。
ファインダーを覗くと距離計の二重像があり、
被写体を見る。
↓
フォーカスリングを回す。
↓
二重像を重ねる。
↓
ピントが合う。
という撮影ができます。
この点はOLYMPUS-35 ECのようなゾーンフォーカス機との大きな違いです。
AFではないが、正確にピントを合わせられる
1974年です。
当然ながら現在のようなオートフォーカスはありません。
しかし固定焦点や目測式と違い、距離計を使って撮影者自身が正確にピントを合わせられます。
特に、
人物。
近距離スナップ。
F2.8開放。
などではレンジファインダーが役立ちます。
「だいたい3m」ではなく、
二重像が一致した距離へ合わせる。
フィルムカメラらしい撮影操作です。
ファインダーは採光式フレーム
ファインダーは採光式フレームファインダーです。
ブライトフレームを使って撮影範囲を確認します。
一眼レフとは違い、撮影レンズを通した光景を見るわけではありません。
そのため、
絞りを変えてもファインダーが暗くならない。
撮影時にミラーが跳ね上がらない。
ファインダー像が比較的見やすい。
というレンジファインダーらしいメリットがあります。
一方、近距離では撮影レンズとファインダーの位置の違いによるパララックスが発生します。
露出はプログラムAE
ここからがELNICA Fの「電子カメラ」らしい部分です。
露出は、
電子シャッターによるプログラム自動露出。
撮影者が、
F5.6。
1/125秒。
などを細かく決めるカメラではありません。
カメラが測光結果に応じて、絞りとシャッター速度を自動的に組み合わせます。
つまり、
ピント
→ 人間
露出
→ カメラ
です。
1970年代前半は露出自動化の時代
この時期、各メーカーはコンパクトカメラの自動露出化を急速に進めていました。
撮影者に、
露出計を見る。
絞りを決める。
シャッター速度を決める。
という作業をさせるのではなく、
ピントを合わせてシャッターを押すだけ
へ近づけていきます。
しかしオートフォーカスはまだ普及していません。
そのため、
露出だけ先に全自動化され、ピント合わせは人間
というカメラが多数登場しました。
ELNICA Fもその典型的な一台です。
電子シャッターは約4秒~1/500秒
シャッターは、
SEIKO ESF B電子シャッター。
制御範囲は約4秒から1/500秒です。
明るい屋外なら高速側。
暗い場所では低速側。
へカメラが自動的に変化させます。
機械式固定速度シャッターの簡易コンパクトとは違い、光量に合わせてかなり広い範囲をカバーできます。
暗いところでは数秒開く可能性がある
低速側は約4秒。
つまり光量不足では、
カシャ。
ではなく、
カ……シャ。
となる可能性があります。
もちろん数秒を手持ちで撮ればブレます。
電子シャッターだから暗所でも魔法のように写真が止まるわけではありません。
暗い場所では、
カメラを固定する。
フラッシュを使う。
といった対策が必要です。
最高速度は1/500秒
高速側は1/500秒。
ELNICA 35の1/1000秒より遅くなっています。
ここも、
ELNICA Fは単純なELNICA 35上位機ではない
ことを示しています。
F1.8 → F2.8。
1/1000 → 1/500。
その代わり、
520g → 400g。
129mm → 111mm。
高性能一点張りではなく、小型軽量とのバランスを取り直したモデルです。
電池がないと通常撮影できない
中古で最重要なのがここです。
ELNICA Fは、
電子シャッター式。
シャッター制御そのものに電源を使用します。
指定電池は、
HM-N1水銀電池2個。
したがって完全機械式カメラのように、
「露出計が死んでいても勘露出で撮ればいい」
とは簡単にいきません。
電子シャッターが正常に作動することが、実用品として極めて重要です。
水銀電池は現在入手困難
HM-N1のような水銀電池は、環境問題から現在では通常販売されていません。
したがって現代では、
- 寸法の近い代替電池
- 電圧調整アダプター
- 空気亜鉛電池
- カメラ側の電圧調整
などが検討されます。
ただし、
「サイズが入ったからOK」
とは限りません。
元の水銀電池と現代電池では電圧特性が異なる場合があります。
しかもELNICA Fは測光だけでなく電子シャッター制御も行うため、実写するなら適切な代替方法を確認したほうが安全です。
電池室は中古最重要チェックポイント
1970年代の電池使用カメラで怖いのが、
液漏れ。
です。
長期間電池を入れたまま保管された個体では、
- 電池端子の腐食
- 緑青
- 白い粉状の腐食
- 配線断線
- 電池蓋の固着
などが起きている可能性があります。
外装がきれいでも、
まず電池室を開ける。
ELNICA Fでは非常に重要です。
シャッター速度が明暗で変わるか確認
電子シャッターの簡単なチェック方法があります。
明るい方向へ向けてシャッター。
↓
速い。
次にレンズ周辺の受光部を暗くする。
↓
シャッター。
↓
遅くなる。
正常な電子露出系なら、光量によって明らかにシャッター動作時間が変化するはずです。
どんな明るさでも同じ。
常に開きっぱなし。
途中で止まる。
まったく開かない。
という場合は電子系統の不具合を疑います。
シャッターが切れるだけでは安心できない
ここは重要です。
電子シャッター式中古カメラでは、
「カチッと動いたから正常!」
とは限りません。
プログラムAEが狂っていれば、
シャッターは動く。
でも露出は全部オーバー。
あるいは全部アンダー。
という可能性があります。
可能なら実写確認済み個体。
難しければ複数の明るさでシャッター挙動を比較したいところです。
フラッシュマチック機構を搭載
ELNICA Fはフラッシュ撮影にも自動化を取り入れています。
リコー公式資料では、
距離に応じて絞りが設定されるフラッシュマチック機構
を特徴として挙げています。
フラッシュ撮影では、
ガイドナンバー。
被写体距離。
絞り。
の関係から適正露出を計算する必要があります。
フラッシュマチックでは、ピント合わせによる撮影距離情報を利用して、適切な絞りへ連動させます。
ピント合わせがフラッシュ露出にも関係する
通常撮影では、
フォーカスリング
→ ピント
です。
フラッシュマチックではさらに、
フォーカスリング
→ 撮影距離
→ 絞り設定
へ関係します。
つまり距離計でピントを合わせることが、フラッシュ露出制御にも使われるわけです。
電子制御だけでなく、機械的な連動も活用した1970年代らしい自動化です。
内蔵フラッシュではない
ELNICA Fそのものに現在のコンパクトカメラのような大型内蔵フラッシュが飛び出してくるわけではありません。
アクセサリーシューへ外付けフラッシュを装着して使用します。
この点は、
「完全自動コンパクト」
へ到達する少し前の時代を感じさせます。
露出は自動。
距離計あり。
でも暗ければ外付けフラッシュ。
1974年です。
セルフタイマーも電子式
ELNICA Fにはセルフタイマーも備えています。
リコー公式では、電子シャッターとともにセルフタイマー付きとして記録されています。
三脚へカメラを置き、
自分も写真へ入る。
集合写真を撮る。
シャッターボタンを直接押すことによるブレを避ける。
といった用途に使えます。
こちらも中古では正常に動作するか確認しておきたい機能です。
400gという軽さ
ELNICA Fの重量は約400g。
現在のデジタルコンパクトと比較すれば重く感じるかもしれません。
しかし1970年代の金属ボディを主体としたレンジファインダーとしては十分コンパクト。
特にELNICA 35の520gと比べれば、120gもの軽量化です。
カメラを首から下げて一日歩くなら、この120g差は無視できません。
横幅111mmというコンパクトボディ
サイズは、
111×71×58mm。
ELNICA 35は129×77×61mmでした。
特に横幅が18mm短縮されています。
数字だけだと小さく見えますが、カメラの横幅18mmはかなり違います。
手の中での収まり。
バッグへの入りやすさ。
持ち運び。
すべてに効きます。
発売価格は25,000円
発売時価格は25,000円。
ケースは2,000円でした。
ELNICA 35の29,800円より安価です。
つまり、
小さく。
軽く。
安く。
する一方、
連動距離計。
電子シャッター。
プログラムAE。
フラッシュマチック。
は残しています。
単純な廉価機ではなく、機能と携帯性のバランスを狙ったモデルです。
右側の電子シャッターマークが識別ポイント
リコー公式資料には中古で役立つ識別方法まで残っています。
ELNICA Fでは、正面から見たボディ右側の革張り部分に、
電子シャッターを示すシンボルマークのプレート
があります。
似た時代のリコーコンパクトが並んでいて型番が見えにくい場合、このプレートが判別材料になります。
ELNICA 35Mとも別物
さらに紛らわしいのが、
RICOH ELNICA 35M。
こちらはELNICA Fと同じ1974年ですが、10月発売です。
35Mは1972年のELNICA 35をベースに、専用フラッシュ使用時の自動発光などフラッシュ機能を強化したモデルです。
レンズもELNICA 35と同じ、
COLOR RIKENON 40mm F1.8。
4群6枚。
シャッターも約2秒~1/1000秒。
サイズ129×77×61mm。
重量520gです。
つまり、
ELNICA F
=小型軽量な別設計
ELNICA 35M
=ELNICA 35をベースにフラッシュ自動化
です。
1974年には2系統のELNICAが並んだ
ここが面白いところです。
1974年3月。
ELNICA F。
1974年10月。
ELNICA 35M。
同じ「ELNICA」でも思想が違います。
35MはF1.8大口径レンズを維持。
ELNICA FはF2.8へ抑え、小型軽量化。
リコーは同じ時代に、
高性能寄り
と
携帯性寄り
を並行して展開していたわけです。
RICOH 500Gとの関係
リコー自身はELNICA Fを、
「500Gにはじまる軽量コンパクトシリーズの頂点をめざした」
と説明しています。
つまりELNICA Fを単独で見るより、
1970年代前半のリコーが進めていた、
35mmレンジファインダーの小型軽量化
という流れの中で見ると分かりやすくなります。
大口径レンズや豪華装備だけを競うのではなく、
「毎日持ち歩けるサイズへ」
という競争も始まっていました。
1970年代コンパクト競争の真っただ中
この時代には各社から、
Olympus 35シリーズ。
Minolta Hi-Matic。
Konica C35。
Yashica Electro。
Canon Canonet。
など、多数の小型35mmカメラが販売されていました。
メーカー各社は、
より小さく。
より簡単に。
より自動で。
を競います。
ELNICA Fはその中でリコーが、
電子シャッターと小型軽量ボディを組み合わせた回答
のひとつです。
中古で確認したいポイント
現在ELNICA Fを購入する場合、発売から50年以上経過しています。
中古では、
- RIKENONレンズのカビ
- クモリ
- 拭き傷
- コーティング状態
- 距離計
- 二重像
- ファインダー
- 電子シャッター
- プログラムAE
- 電池室
- セルフタイマー
- フォーカスリング
- フラッシュマチック
- フィルム巻き上げ
- 巻き戻し
- 裏蓋
- 遮光材
などを確認しましょう。
最優先は電子シャッター
このカメラで最も重要なのは、
電子シャッターが正常か。
です。
完全機械式カメラなら、露出計が故障していても撮影できる場合があります。
ELNICA Fでは電子制御そのものが中心です。
したがって、
「レンズがきれいだから買う」
だけでは危険。
電池を入れて実際にシャッターが制御されるか
まで確認したいカメラです。
距離計の二重像も重要
レンジファインダーなので、
遠景で無限遠が一致するか。
上下方向へズレていないか。
二重像が十分見えるか。
を確認しましょう。
F2.8開放で近距離撮影する場合、距離計がずれていればそのままピンボケになります。
AF機ではないので、
距離計の精度=ピント精度
です。
ファインダーのクモリ
1970年代のコンパクトレンジファインダーでは、ファインダー内部のクモリもよくあります。
多少のホコリなら撮影画像には写りません。
しかし、
距離計二重像が薄い。
ブライトフレームが見えにくい。
全体が白く曇る。
となると撮影自体が苦痛になります。
外装よりも実際に覗いて確認するほうが重要です。
RIKENON 40mm F2.8の状態
レンズは固定式。
交換できません。
そのため、
カビ。
強いクモリ。
バルサム劣化。
深い傷。
があると、
「あとで別のレンズへ交換」
という逃げ道がありません。
ボディの状態と同じくらいレンズ状態が重要です。
電池室がきれいな個体はうれしい
ELNICA Fでは水銀電池を使用していたため、長期放置個体の電池室状態には大きな差があります。
電池が抜かれて保管されていた個体。
液漏れしたまま数十年経過した個体。
では、電子系統の生存率がまったく違います。
中古写真に電池室が掲載されていなければ、確認したいところです。
巻き上げ・巻き戻しも確認
フィルム送りは手動。
電子シャッター機ですが、フィルムまで自動で送ってくれるわけではありません。
撮影。
↓
レバーを巻く。
↓
次の撮影。
フィルムを撮り終えたらクランクで巻き戻します。
このあたりは昔ながらの機械式カメラ操作です。
巻き上げレバーが引っ掛かる。
カウンターが進まない。
巻き戻しボタンが戻らない。
といった不具合がないか確認しましょう。
電子なのに操作感はしっかりアナログ
ELNICA Fの面白さはここにあります。
露出は電子制御。
しかし、
フィルム装填。
巻き上げ。
巻き戻し。
ピント合わせ。
フラッシュ。
は人間が操作します。
完全機械式カメラと1980年代以降の全自動コンパクトの中間にいる存在です。
現代で使うと「半自動」が新鮮
現在ならスマートフォンを向ければ、
露出。
ピント。
顔認識。
HDR。
手ブレ補正。
全部自動。
ELNICA Fでは、
まず被写体を見る。
距離計でピントを合わせる。
シャッターを押す。
露出だけは電子回路が処理。
巻き上げる。
またピントを合わせる。
この、
人間とカメラが半分ずつ仕事をする感覚
が現在ではむしろ新鮮です。
ELNICA Fは高級機なのか
リコー公式では「軽量コンパクトシリーズの頂点をめざした高性能カメラ」とされています。
ただし、
F1.8大口径。
最高1/1000秒。
といったスペック競争ではELNICA 35のほうが上です。
したがってELNICA Fの「高性能」は、
巨大化せず、必要な機能を小さなボディへまとめたこと
にあると考えたほうがよいでしょう。
「小さい高性能」を狙ったリコーらしい一台
後のリコーを見ると、
FF-1。
GRシリーズ。
など、小型ながら実用性を重視したカメラを数多く送り出しています。
ELNICA Fも、
大きなレンズ。
豪華なボディ。
大量の機能。
で勝負するのではなく、
小さなカメラへ必要な撮影機能を押し込む
という方向を向いています。
後年のリコーコンパクトへつながる思想を感じられる一台です。
まとめ
RICOH ELNICA Fは、1974年3月に発売された35mmレンジファインダーカメラです。
主な特徴は、
- 24×36mm判
- RIKENON 40mm F2.8
- 3群4枚
- 連動距離計
- 採光式フレームファインダー
- SEIKO ESF B電子シャッター
- 約4秒~1/500秒
- プログラム自動露出
- フラッシュマチック
- セルフタイマー
- 約400g
- 111×71×58mm
という構成です。
そしてELNICA Fの本質は、
ELNICA 35をさらに高性能化したカメラではない
というところにあります。
1972年のELNICA 35は40mm F1.8。
最高1/1000秒。
520g。
横幅129mm。
一方ELNICA Fは40mm F2.8。
最高1/500秒。
400g。
横幅111mm。
レンズの明るさや最高速度を少し抑え、
小型軽量へ大きく振った。
さらに単なる小改良ではなく、電子シャッターを中心としてボディそのものを新規設計しました。
ピントはレンジファインダーで人間が合わせる。
露出は電子回路へ任せる。
暗所ではフラッシュマチック。
撮影後は自分でフィルムを巻く。
完全機械式でもない。
完全自動でもない。
まさに1970年代前半、
カメラが本格的に電子化・自動化されていく途中
に生まれた一台です。
現在中古で使う場合には、水銀電池問題と電子シャッターの状態が最大の注意点。
しかし正常に動く個体なら、
40mmという自然な画角。
400gの小型ボディ。
距離計によるMF。
プログラムAE。
という組み合わせは、現在でも十分楽しめます。
RICOH ELNICA Fは、
「高性能カメラを大きくするのではなく、小さなカメラを高性能にする。」
そんな1970年代リコーのコンパクトカメラ思想がよく表れた、隠れた電子レンジファインダーです。









