OLYMPUS PEN-Dとは?32mm F1.9と内蔵露出計を備えた高級ハーフ判カメラの特徴
OLYMPUS PEN-Dは、35mmフィルムを使用するレンズ固定式のハーフサイズカメラです。
初代OLYMPUS PENの小型軽量設計を受け継ぎながら、明るいF.Zuiko 32mm F1.9レンズ、最高1/500秒のレンズシャッター、内蔵露出計、距離調節式フォーカスを搭載しています。
ピント、シャッター速度、絞り値は、すべて撮影者が手動で設定します。
PEN EEシリーズのようにカメラ任せで撮るモデルではなく、露出計が示したEV値を読み取り、レンズ鏡筒のシャッター速度と絞りを自分で合わせる、本格的なマニュアルカメラです。取扱説明書でもPEN-Dは、PENシリーズの上位モデルとして、小型ボディへ高度な機能をまとめたカメラと説明されています。
一方、中古品では、内蔵露出計、低速シャッター、絞り羽根、ピント機構、フィルム送りなどの状態が実用性を大きく左右します。
この記事では、OLYMPUS PEN-Dの特徴、ハーフ判の仕組み、EV式露出計の使い方、基本操作、PEN-D2・D3との違い、中古購入時に確認したいポイントを解説します。
OLYMPUS PEN-Dとは
OLYMPUS PEN-Dは、一般には1962年に登場したとされる高級志向のハーフ判カメラです。
初代OLYMPUS PENは1959年に登場し、35mmフィルムを半分ずつ使用することで、小型化と撮影枚数の増加を実現しました。オリンパスは、PENシリーズが1960年代から1970年代にかけてハーフ判ブームを生み、PEN-Dを含むシリーズ全体が大きな成功を収めたと説明しています。
PEN-Dは、初代PENやPEN Sよりも明るいレンズと露出計を搭載した上位モデルです。
ただし、露出計がシャッター速度や絞りを自動的に変更するわけではありません。
露出計は適正露出を決めるための情報を表示するだけで、撮影者が各リングを操作して露出を設定します。
35mmフィルムを半分ずつ使うハーフ判
PEN-Dの画面サイズは18×24mmです。
一般的な35mmカメラが24×36mmの画面を使うのに対し、PEN-Dはその約半分の面積を1コマとして使用します。専用フィルムは必要なく、通常の35mmカラーフィルムやモノクロフィルムを装填できます。
一般的な撮影枚数の目安は次のとおりです。
| 35mmフィルム | 通常の35mmカメラ | PEN-D |
|---|---|---|
| 20枚撮り | 20枚 | 約40枚 |
| 24枚撮り | 24枚 | 約48枚 |
| 36枚撮り | 36枚 | 約72枚 |
取扱説明書では、20枚撮りフィルムから40枚を撮影できること、画面サイズが通常の35mm判の半分であることが説明されています。
横向きに構えると縦位置になる
PEN-Dでは、フィルム面が縦長になるよう配置されています。
そのため、カメラを通常どおり横向きに構えると、写真は縦位置になります。
横長の風景や集合写真を撮る場合は、カメラを縦向きに構えます。
スマートフォンで縦位置写真を多く撮る現在では、標準状態で縦写真になることを新鮮に感じる人もいるでしょう。
ハーフ判はフィルムを大きく拡大する
ハーフ判は35mmフルサイズよりネガ面積が小さいため、同じ大きさへプリントまたはスキャンすると、より大きな拡大が必要です。
フィルムの粒子、レンズの曇り、ピントずれ、手ブレなども拡大されやすくなります。
低感度フィルムを使い、露出とピントを正確に合わせれば、ハーフ判でも細部を十分に記録できます。
PEN-Dが明るい6枚構成レンズを搭載していることには、小さな画面から高画質を得ようとする狙いがありました。
F.Zuiko 32mm F1.9レンズ
PEN-Dには、F.Zuiko 32mm F1.9レンズが固定されています。
レンズは6枚構成で、絞り範囲はF1.9からF16です。取扱説明書では、35mmフルサイズの約45mmレンズに相当する画角と説明されています。
自然な画角の32mm
ハーフ判における32mmは、35mmフルサイズ換算で約45mm前後です。
広角レンズと標準レンズの中間に近い、自然な画角を得られます。
主な用途は次のとおりです。
- 日常のスナップ
- 人物撮影
- 街並み
- 旅行
- 室内
- 静物
- 家族写真
35mm換算50mmより少し広いため、人物だけでなく周囲の状況も画面へ入れやすくなっています。
開放F1.9の明るさ
開放F値はF1.9です。
PEN EE-2の28mm F3.5やTRIP 35の40mm F2.8より明るく、暗い場所でシャッター速度を確保しやすいレンズです。
ただし、開放F1.9では被写界深度が浅くなります。
PEN-Dには距離計がないため、被写体までの距離を目測して設定しなければなりません。
開放付近で近距離の人物や物を撮る場合は、距離の判断を誤るとピンぼけになりやすくなります。
ピント合わせは目測式
PEN-Dはオートフォーカスでも、連動距離計式でもありません。
フォーカシングレバーを動かし、被写体までの距離を目測して、距離目盛りへ合わせます。
設定範囲は0.8mから無限遠です。1.2mと3mにはクリックストップが設けられ、1.2mは近距離撮影、3mはスナップ撮影の目安として利用できます。
1.2mのクリックストップ
1.2mは、人物の上半身や近距離の物を撮る際の目安です。
取扱説明書では4フィート、約1.2m位置を近距離用の固定位置として利用できると説明しています。
3mのクリックストップ
3mは、街歩きや人物を含む日常スナップで使いやすい距離です。
F8前後まで絞れば、3mを中心に前後の広い範囲へピントが合って見えるため、素早い撮影が可能です。
距離を正確に測るためのフィルム面マーク
ボディ上面には、フィルム面の位置を示すマークがあります。
厳密な距離合わせが必要な場合は、このマークから被写体までの距離を測ります。
接写、商品撮影、開放絞りでの人物撮影では、レンズ先端ではなくフィルム面マークを基準にしましょう。
被写界深度を利用したスナップ撮影
目測式カメラでは、被写界深度を理解すると撮影しやすくなります。
絞りをF8やF11へ設定すると、ピント位置の前後へ広い範囲が鮮明に見えるようになります。
たとえば3mへ合わせてF8を選べば、取扱説明書の被写界深度表では約1.6mから30mを超える範囲がピント内に入ります。
一方、F1.9で1mへ合わせた場合のピント範囲は、約0.93~1.06mと非常に狭くなります。
開放F1.9は暗所で便利ですが、目測の誤差がそのままピンぼけへつながります。
日中のスナップではF5.6~F11へ絞り、被写界深度を利用する方が失敗を減らせます。
内蔵露出計を搭載
PEN-Dはボディ前面に露出計を内蔵しています。
露出計の指針はEV7から17までの数値を示します。使用するフィルム感度をレンズ鏡筒へ設定し、露出計が示したEV値をシャッターリングの小窓へ合わせます。
初代PEN-Dの露出計は、外部電池を必要としないセレン式として知られています。
PEN-D2やD3ではCdS受光素子と水銀電池へ変更されましたが、初代PEN-Dには電池室がなく、露出計の仕様にも電池の記載がありません。
露出計は自動露出ではない
露出計が動いても、カメラが自動的にシャッター速度や絞りを変更するわけではありません。
基本的な操作は次のとおりです。
- 被写体へカメラを向ける
- 露出計の針が示したEV値を読む
- シャッター速度リングまたは絞りリングを動かす
- 小窓へ同じEV値を表示させる
- 撮影目的に応じた速度と絞りの組み合わせを選ぶ
この操作方法は取扱説明書にも記載されています。
EV方式とは
EVはExposure Valueの略で、シャッター速度と絞り値の組み合わせをひとつの数字として扱う方式です。
PEN-Dでは、露出計が示したEV値を小窓へ合わせると、シャッター速度リングと絞りリングが連動します。
その後はEV値を維持したままリングを回し、
- 高速シャッターと開いた絞り
- 低速シャッターと絞り込んだ設定
を切り替えられます。
たとえば動く人物を止めたい場合は、速いシャッター速度側へ動かします。
風景で被写界深度を広げたい場合は、F8やF11側へ絞り、その分シャッター速度を遅くします。
選びたい設定が作れない場合
光量によっては、希望するシャッター速度と絞りの組み合わせを選べないことがあります。
取扱説明書では、EV値を小窓へ出せない場合、シャッター速度を1段速くまたは遅くして再設定するよう案内しています。
シャッター速度と絞りには物理的な限界があるためです。
露出計の対応範囲
PEN-Dの内蔵露出計はEV7~17を表示します。
カメラ全体としては、F1.9・1/30秒からF16・1/500秒までの範囲で露出を組み合わせられると説明されています。
ただし、カメラのシャッターには1/15秒、1/8秒、Bも搭載されています。
暗い場所では、内蔵露出計の測光範囲を外れる可能性があるため、単体露出計や露出計アプリを利用します。
ASA10~400に対応
フィルム感度はASA10から400まで設定できます。
現在のISOとASAは、通常の撮影では同じ数値として扱えます。
- ISO50:ASA50
- ISO100:ASA100
- ISO200:ASA200
- ISO400:ASA400
設定を間違えると、露出計が示すEV値もずれます。
フィルムを交換したときは、レンズ鏡筒下部のASA表示を必ず確認しましょう。
Copal Xレンズシャッター
PEN-DはCopal Xレンズシャッターを搭載しています。
シャッター速度は次のとおりです。
- B
- 1/8秒
- 1/15秒
- 1/30秒
- 1/60秒
- 1/125秒
- 1/250秒
- 1/500秒
シャッター速度はレンズ鏡筒前方のリングで選択します。
最高1/500秒
最高速度は1/500秒です。
晴天時に絞りを開けたい場合や、歩いている人物などの動きを止めたい場合に利用できます。
ただし、製造から長期間が経過した個体では、ダイヤルが1/500秒へ合うことと、実際に正確な速度が出ることは別です。
高速側では、シャッター羽根の粘りやばねの劣化によって露出オーバーになる場合があります。
Bで長時間露光
Bでは、シャッターボタンを押している間だけシャッターが開きます。
夜景や光跡などの長時間露光に利用できます。
三脚とケーブルレリーズを使用し、カメラへ触れる振動を抑えましょう。
レンズシャッターはフラッシュ全速同調
電子フラッシュは、Bを除く各シャッター速度で同調できます。
取扱説明書では、ストロボや電子フラッシュは全速度で使用可能とされています。
フォーカルプレーンシャッター式一眼レフのように、1/60秒や1/125秒以下へ制限されにくいことがレンズシャッターの利点です。
ただし、PEN-Dには内蔵ホットシューがありません。
フラッシュブラケットなどへ発光機を取り付け、カメラ前面のシンクロ端子とコードで接続します。
ブライトフレーム式ファインダー
PEN-Dはブライトフレーム式ファインダーを搭載しています。
ファインダー内の明るい枠を基準に構図を決めます。近距離用のパララックス補正マークも設けられています。
距離計や一眼レフではないため、ファインダーをのぞいてもピント状態は確認できません。
ファインダーは構図専用です。
近距離ではパララックスに注意
撮影レンズとファインダーは異なる位置にあります。
約1m以下の近距離では、ファインダーで見た範囲と実際に写る範囲のずれが大きくなります。
取扱説明書では、近距離撮影時はファインダー内の黄色い補正範囲へ被写体を入れるよう説明しています。
最短撮影距離0.8m付近では、画面端ぎりぎりへ被写体を配置しない方が安全です。
背面親指ホイールによるフィルム巻き上げ
PEN-Dは背面のフィルム巻き上げホイールを親指で回して、フィルム送りとシャッターチャージを行います。
ホイールを停止するところまで回すと、フィルムが次のコマへ進み、シャッターがチャージされます。
途中までしか巻かなければ、シャッターは切れません。
取扱説明書では、ホイールを毎回最後まで巻き切るよう注意しています。
撮影直後に巻き上げないという考え方
取扱説明書では、撮影直後ではなく、次の写真を撮る直前に巻き上げる方法を推奨しています。
シャッタースプリングを長時間チャージしたままにせず、精度を保つためです。
現在の実用では、シャッターがチャージされているか分からなくなるのを防ぐため、撮影者ごとに手順を統一するとよいでしょう。
残り枚数を表示するフィルムカウンター
PEN-Dのフィルムカウンターは、撮影済み枚数ではなく、残り撮影可能枚数を表示する方式です。
36枚撮りフィルムでは72、20枚撮りでは40へ合わせます。
撮影するたびに数字が減り、たとえば27を示している場合は、残り27枚を撮影できることを意味します。
一般的な順算式カウンターと逆なので、初めて使うと戸惑う部分です。
フィルム装填後の空送りが終わった段階で、使用するフィルムに応じた数字へ手動で合わせます。
フィルムバックを下へスライドして外す
PEN-Dは、一般的な蝶番式の裏蓋ではありません。
底面のロックを解除し、背面カバー全体を下方向へスライドさせて取り外します。
フィルム装填時には、フィルム先端を巻き取りスプールへ差し込み、パーフォレーションをスプロケットへ掛けます。
背面カバーを戻してロックし、空送り中に巻き戻しクランクが動くことを確認します。
フィルムの巻き戻し
撮影終了後は、底面の巻き戻しボタンを押し続けながら、上面の折り畳み式クランクを回します。
取扱説明書では、1秒に1回転程度の速度でゆっくり巻き戻すよう案内しています。
急速に巻き戻すと、フィルムと圧板の摩擦によって細かなほこりが発生し、フィルムへ付着する可能性があると説明されています。
OLYMPUS PEN-Dの基本スペック
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| カメラ形式 | 35mmハーフ判レンズ固定式カメラ |
| 使用フィルム | 35mmフィルム |
| 画面サイズ | 18×24mm |
| 撮影枚数 | 36枚撮りで約72枚 |
| レンズ | F.Zuiko 32mm F1.9 |
| レンズ構成 | 6枚 |
| 35mm判換算 | 約45mm相当 |
| 絞り範囲 | F1.9~F16 |
| ピント方式 | 目測式 |
| 撮影距離 | 0.8m~無限遠 |
| クリック位置 | 1.2m・3m |
| シャッター | Copal Xレンズシャッター |
| シャッター速度 | B、1/8~1/500秒 |
| 露出制御 | 完全マニュアル |
| 露出計 | 内蔵EV表示式 |
| 露出計範囲 | EV7~17 |
| フィルム感度 | ASA10~400 |
| ファインダー | ブライトフレーム・パララックス補正マーク |
| 巻き上げ | 背面親指ホイール |
| フィルムカウンター | 残り枚数表示 |
| フラッシュ | X接点・電子フラッシュ全速同調 |
| フィルター | 43mmねじ込み式 |
| フード | 45mmかぶせ式 |
| 電源 | シャッター撮影に電池不要 |
| 寸法 | 約108×67×50mm |
| 重量 | 約400g |
基本仕様はOLYMPUS PEN-Dの取扱説明書に基づきます。
PEN-D・PEN-D2・PEN-D3の違い
PEN-Dシリーズには、初代D、D2、D3があります。
外観と基本操作は似ていますが、露出計とレンズ仕様が異なります。
| 項目 | PEN-D | PEN-D2 | PEN-D3 |
|---|---|---|---|
| レンズ | 32mm F1.9 | 32mm F1.9 | 32mm F1.7 |
| レンズ構成 | 6枚 | 6枚 | F1.7大口径レンズ |
| シャッター | B、1/8~1/500秒 | B、1/8~1/500秒 | B、1/8~1/500秒 |
| 露出計 | EV式内蔵計 | CdS式 | CdS式 |
| 露出計範囲 | EV7~17 | EV3~17 | CdS式LV表示 |
| 露出計電源 | 外部電池不要 | 水銀電池 | 水銀電池 |
| ASA設定 | 10~400 | 10~400 | レンズ鏡筒で設定 |
| 重量 | 約400g | 約420g | D2に近い重量級 |
PEN-D2ではレンズとシャッターの基本仕様を保ちながら、露出計がCdS式へ変更され、測光範囲がEV3まで拡大されました。ボディ内部には露出計用の水銀電池室があります。
PEN-D3ではレンズが32mm F1.7へ明るくなり、CdS受光部と水銀電池室を引き続き搭載しています。
電池問題を避けたいなら初代PEN-D、低照度測光を重視するなら整備済みのD2、より明るいレンズを求めるならD3が候補になります。
OLYMPUS PEN-Dの基本的な使い方
フィルムを装填する
底面のロックを解除し、背面カバーを下へスライドさせて外します。
フィルム先端を巻き取りスプールへ差し込み、パーフォレーションをスプロケットへ掛けます。
フィルムを巻き上げ、巻き戻しクランクを軽く回してたるみを取ってから、背面カバーを戻します。
空送りを行う
巻き上げと空シャッターを数回繰り返します。
巻き上げ時に巻き戻しクランクが回転していれば、フィルムが送られている可能性が高くなります。
カウンターを設定する
36枚撮りフィルムなら72、20枚撮りなら40へカウンターを合わせます。
PEN-Dのカウンターは残り枚数表示なので、撮影するほど数字が減っていきます。
ASA感度を設定する
使用するフィルムのISO感度と同じASA値を設定します。
ISO100ならASA100、ISO400ならASA400です。
露出計でEV値を読む
被写体へカメラを向け、前面の露出計窓に表示されたEV値を読みます。
カメラを大きく下へ向けたり、指で受光部を覆ったりしないようにします。
EV値をレンズ鏡筒へ設定する
シャッター速度リングまたは絞りリングを回し、小窓へ露出計と同じEV値を表示させます。
その後、被写体の動きや被写界深度に応じて、速度と絞りの組み合わせを選びます。
距離を合わせる
被写体までの距離を目測し、フォーカシングレバーを動かします。
日常スナップなら3mのクリック位置、近距離の人物なら1.2mを目安にできます。
構図を決めて撮影する
ブライトフレーム内へ被写体を配置します。
近距離ではパララックス補正マークを考慮します。
カメラをしっかり支え、シャッターボタンをゆっくり押します。
中古購入時に確認したいポイント
PEN-DかD2・D3かを確認する
最初に正確なモデルを確認します。
初代PEN-Dには、D2やD3のような露出計用電池室がありません。
背面カバーを外し、内部に電池室がある場合はD2またはD3です。レンズ前面の開放F値がF1.9ならDまたはD2、F1.7ならD3を判断する手掛かりになります。
露出計の針が動くか
明るい窓と暗い場所へ向け、露出計の針が滑らかに動くか確認します。
初代PEN-Dでは、明暗を変えても針が動かない場合、セレン受光部、メーター、内部連動などの不具合が考えられます。
針が動いていても、測光精度が正しいとは限りません。
露出計の精度
信頼できる単体露出計やデジタルカメラと比較します。
ASA100など同じ感度へ設定し、晴天、日陰、室内でEV値を確認しましょう。
常に1段程度ずれるだけなら、ASA設定を意図的に変更して補正できる場合があります。
明るい場所では合うのに暗い場所では大きくずれる場合は、単純な補正では対応できません。
EV窓とリングの連動
露出計が示したEV値を小窓へ設定し、シャッター速度リングと絞りリングが正常に連動するか確認します。
- EV値を表示できない
- リングが極端に重い
- 一方のリングだけ空回りする
- 速度と絞りが一緒に動かない
- 数字と実際の設定がずれている
このような個体は、レンズ鏡筒内部の連動機構に問題がある可能性があります。
シャッターが全速度で動くか
B、1/8秒から1/500秒まで確認します。
特に低速側では、速度の違いが分かる必要があります。
- 1/8秒と1/15秒が同じに聞こえる
- 低速で途中停止する
- シャッター羽根が閉じない
- 数回に1回しか作動しない
- 高速側が極端に遅い
以上の症状がある個体は整備が必要です。
シャッター羽根の油
裏蓋を外し、シャッター羽根をフィルム面側から確認します。
羽根に油が付いていると、開閉が遅くなったり、完全に開かなかったりします。
シャッター羽根は非常に薄いため、指や綿棒で触れてはいけません。
絞り羽根
F1.9からF16までリングを動かし、開口部が変化するか確認します。
- 羽根に油がない
- 開口部がいびつでない
- F16まで閉じる
- F1.9まで開く
- 動きが滑らか
であることが重要です。
絞り羽根が設定値まで動かなければ、露出計が正確でも写真の露出はずれます。
レンズのカビや曇り
前玉と後玉へ光を斜めから当てます。
確認する項目は次のとおりです。
- 糸状のカビ
- 白い曇り
- コーティング劣化
- 深い傷
- 貼り合わせ面の剥離
- 大きな異物
PEN-Dはレンズ固定式なので、レンズだけを交換して解決することはできません。
ハーフ判ではネガを大きく拡大するため、曇りによるコントラスト低下も目立ちやすくなります。
ピントレバー
0.8mから無限遠までフォーカシングレバーを動かします。
全域で滑らかに動き、1.2mと3mでクリックを感じられるか確認します。
- 極端に重い
- 途中で固まる
- レバーが空回りする
- 距離目盛りとレンズが連動しない
- 無限遠まで到達しない
という個体は注意が必要です。
無限遠と近距離のピント
遠くの建物と、1.2m前後の被写体を試写します。
無限遠設定で遠景がぼける場合は、レンズ位置や過去の分解調整に問題がある可能性があります。
近距離では、フィルム面マークから正確に距離を測り、開放F1.9で試写するとピント精度を確認しやすくなります。
ファインダー
明るい壁へ向け、次の状態を確認します。
- 曇り
- カビ
- ブライトフレームの薄れ
- パララックス補正マークの消失
- 接眼窓の傷
- ファインダー窓の割れ
ファインダーの汚れは写真には直接写りませんが、構図確認を妨げます。
巻き上げホイール
背面の親指ホイールを回し、最後まで滑らかに動くか確認します。
- 途中で引っ掛からない
- 空回りしない
- シャッターがチャージされる
- シャッターを切るまで再巻き上げできない
- フィルム送りとスプロケットが連動する
ことを確認しましょう。
極端に重い場合は、無理に力を加えてはいけません。
フィルムカウンター
カウンターを72や40へ設定できるか確認します。
巻き上げとシャッターを繰り返し、数字が1コマずつ減ることが必要です。
一般的な順算式ではないため、販売者が故障と誤認している場合もあります。
背面カバー
背面カバーが滑らかに着脱でき、底面ロックが確実に掛かるか確認します。
カバーが変形している、隙間がある、ロックが緩い個体では光漏れの可能性があります。
フィルム圧板
背面カバー内側の圧板を確認します。
- さび
- 深い傷
- 変形
- 強い汚れ
- ばねの弱り
がないことが重要です。
フィルムが平らに保持されなければ、画面の一部でピントがずれる可能性があります。
シンクロ端子
フラッシュを使用する場合は、シンクロ端子の腐食を確認します。
コードを接続し、シャッターを切った際にフラッシュが発光するか確認しましょう。
フィルター枠
フィルターは43mmねじ込み式です。
落下によって前枠がへこんでいると、フィルターやレンズキャップを装着できません。
固着したフィルターが付いている場合は、無理に工具で外さない方が安全です。
OLYMPUS PEN-Dが向いている人
PEN-Dは、次のような人に向いています。
- ハーフ判を本格的なマニュアル操作で楽しみたい人
- 明るいF1.9レンズを使いたい人
- シャッター速度と絞りを自分で決めたい人
- 電池に依存しない機械式カメラを探している人
- 小型カメラで露出の基本を学びたい人
- 1本のフィルムで多く撮影したい人
- 金属製のクラシックカメラが好きな人
- 目測式フォーカスを楽しめる人
- 街歩きや旅行へ持ち出したい人
PEN EE系より操作は複雑ですが、その分だけ露出とピントへ撮影者の意図を反映できます。
OLYMPUS PEN-Dが向かない場合
一方、次のような人には別のカメラが適している可能性があります。
- 自動露出を使いたい人
- オートフォーカスが必要な人
- ファインダーでピントを確認したい人
- 距離を目測したくない人
- 撮影枚数が多すぎると困る人
- 35mmフルサイズと同等の粒状感を求める人
- 購入後すぐ確実に使えるカメラが欲しい人
- 露出計やシャッターの整備費用を掛けたくない人
簡単操作を優先するならPEN EE-2、距離計でピントを合わせたいなら35mmレンジファインダー、レンズ交換を楽しみたいならPEN Fシリーズなども候補になります。
まとめ
OLYMPUS PEN-Dは、35mmフィルムを18×24mmのハーフ判で使用するレンズ固定式カメラです。
主な特徴は次のとおりです。
- 36枚撮りフィルムで約72枚
- F.Zuiko 32mm F1.9
- 6枚構成の大口径レンズ
- 35mm判換算約45mm
- 0.8mから無限遠の目測式フォーカス
- 1.2mと3mのクリックストップ
- 内蔵EV式露出計
- シャッター速度と絞りは完全マニュアル
- Copal Xレンズシャッター
- B、1/8秒から1/500秒
- 電子フラッシュ全速同調
- ブライトフレーム式ファインダー
- 背面親指ホイール巻き上げ
- 残り枚数式フィルムカウンター
- 電池なしでシャッター撮影可能
- 約400gの小型金属製ボディ
PEN EE-2のように、構図を決めてシャッターを押すだけのカメラではありません。
露出計からEV値を読み、シャッター速度と絞りの組み合わせを選び、被写体までの距離を目測して撮影します。
中古品では、露出計の針が動くことだけで判断してはいけません。
露出精度、EVリングの連動、低速シャッター、高速シャッター、絞り羽根、ピント位置、フィルム送りまで確認する必要があります。
特に開放F1.9では、距離設定のわずかな誤差がピンぼけへつながります。
しかし、露出と距離を正しく設定できれば、小さなハーフ判ボディから本格的な撮影を楽しめます。
OLYMPUS PEN-Dは、ハーフ判を単なる節約カメラから、撮影者が光とピントを操る本格的な写真機へ引き上げた一台です。









