OLYMPUS 35DC

オリンパスの35mmフィルムコンパクトカメラです。レンズはF1.7の大口径のものを使用しています。

OLYMPUS 35DCとは?40mm F1.7とプログラムAEを搭載したレンジファインダーカメラの特徴

OLYMPUS 35DCは、1971年に発売された35mmフィルム用のレンズ固定式レンジファインダーカメラです。

明るいF.Zuiko 40mm F1.7レンズ、連動距離計、プログラムAEを小型ボディへまとめた高級コンパクトカメラで、シャッター速度と絞り値はカメラが自動的に決定します。

「DC」は「Deluxe Compact」を意味します。

オリンパスは35DCについて、暗い場所から明るい場所まで対応するプログラムAE、逆光補正、さらにフラッシュ撮影でも自動露出を行うフラッシュマチック機構を備えた、簡単操作と高画質を両立するカメラとして紹介しています。

ただし、露出を完全に自動化したカメラであるため、撮影者がシャッター速度や絞り値を自由に選ぶことはできません。

また、露出計とプログラムシャッターの作動には電池が欠かせず、現在では製造されていない1.35Vの水銀電池を前提としていることも、中古で使ううえで重要なポイントです。

この記事では、OLYMPUS 35DCの特徴、基本的な使い方、フラッシュマチック機構、35RC・35RDとの違い、中古購入時に確認したいポイントを解説します。

目次

OLYMPUS 35DCとは

OLYMPUS 35DCは、35mmフィルムへ24×36mmのフルサイズ画面を記録するレンジファインダーカメラです。

レンズは固定式で、F.Zuiko 40mm F1.7を搭載しています。

撮影者が行う主な操作は、次の3つです。

  • フィルム感度を設定する
  • 距離計でピントを合わせる
  • 構図を決めてシャッターを切る

露出は、カメラ前面のCdS受光素子で測定した明るさに応じて、シャッター速度と絞り値の両方が自動的に決まります。

現在の感覚ではオート露出のコンパクトカメラですが、ピント合わせはオートフォーカスではありません。

ファインダー中央に見える二重像を重ねる、連動距離計方式です。

露出操作をカメラへ任せつつ、ピントと構図には撮影者が関与するという、全自動カメラと完全マニュアルカメラの中間的な撮影スタイルを楽しめます。

「Deluxe Compact」を意味するDC

35DCの「D」はDeluxe、「C」はCompactを意味します。

単なる普及型コンパクトカメラではなく、大口径レンズや連動距離計、高度な自動露出機構を小型ボディへ収めた高級コンパクトとして企画されました。

オリンパスは35DCを、プログラムAEによって簡単な操作と高画質を両立し、「簡単に確実な写真を撮れるカメラ」として支持された製品と紹介しています。

ボディは一眼レフより小型ですが、金属製部品を多く使った1970年代らしい外観です。

シルバーの上部カバー、黒い貼り革、大きなレンズ、横長のファインダー窓が組み合わされ、コンパクトながらも高級感があります。

40mm F1.7の大口径レンズ

OLYMPUS 35DCには、F.Zuiko 40mm F1.7が固定されています。

レンズ構成は4群6枚です。

40mmは、35mmレンズより狭く、50mmレンズより広い画角です。

標準レンズらしい自然な遠近感を保ちながら、50mmよりも周囲の状況を画面へ取り込みやすいため、次のような撮影に向いています。

  • 街歩きや日常のスナップ
  • 旅行先の風景
  • 家族や友人の記念撮影
  • 人物を含めた街並み
  • 室内での撮影
  • カフェや店舗の記録

広角レンズほど被写体へ近づく必要がなく、50mmほど画面が狭くもならないため、1本だけで歩くカメラとの相性に優れています。

開放F1.7は暗い場所でも有利

開放F値はF1.7です。

F2.8やF3.5のコンパクトカメラと比べて多くの光を取り込めるため、室内、夕方、曇天などでもシャッター速度を確保しやすくなります。

被写体へ近づき、背景との距離を取れば、背景をぼかした撮影も可能です。

ただし、35DCでは撮影者がF1.7を直接選択することはできません。

カメラが被写体の明るさに応じて、F1.7からF16までの絞り値とシャッター速度を自動的に組み合わせます。

暗い場面ではF1.7側、明るい場面では絞り込む側が選ばれるという仕組みです。

プログラムAEを採用

OLYMPUS 35DCの露出方式は、完全自動のプログラムAEです。

撮影者がシャッター速度を選ぶシャッター優先AEでも、絞り値を選ぶ絞り優先AEでもありません。

カメラがシャッター速度と絞り値の両方を同時に決めます。

取扱説明書では、露出の組み合わせは次の範囲で自動制御されるとされています。

  • 暗い側:F1.7・1/15秒
  • 明るい側:F16・1/500秒

測光範囲はISO100でEV5.5~17です。

撮影者はシャッター速度と絞りの組み合わせを考える必要がなく、ピント合わせと構図へ集中できます。

一方、被写体の動きを止めるために1/500秒を選ぶ、背景をぼかすためにF1.7を選ぶといった操作はできません。

35DCは、表現のために露出を積極的に操作するカメラではなく、失敗を減らしながら素早く撮影することを重視したカメラです。

シャッター速度は1/15秒から1/500秒

35DCのプログラムシャッターは、最長1/15秒から最速1/500秒まで作動します。

一般的なカメラのように、シャッター速度を示すダイヤルはありません。

カメラ内部では、被写体の明るさとフィルム感度に応じて、シャッター速度と絞り値の組み合わせが選択されます。

最長速度が1/15秒なので、数秒間シャッターを開く夜景撮影や長時間露光には対応していません。

BやTも搭載されていないため、三脚を使用して数十秒露光するような撮影はできません。

一方、最長速度が1/15秒に制限されていることで、極端に長い露光による手ブレを避ける設計となっています。

光量が自動露出範囲を下回ると、シャッターボタンがロックされます。

シャッター速度と絞り値をファインダーで確認できる

シャッターボタンを軽く押すと、ファインダー内の指針が動き、カメラが選択しようとしているシャッター速度と絞り値の組み合わせを表示します。

指針が1/30秒以下へ近づいた場合は、手ブレや被写体ブレに注意が必要です。

さらに暗くなり、自動露出可能範囲を外れると指針が赤い領域へ入り、シャッターボタンがロックされます。

完全自動露出ではありますが、撮影前に設定をある程度確認できる点が35DCの特徴です。

たとえば指針が1/15秒付近を示していれば、カメラを壁へ押し当てる、両脇を締める、フラッシュを使うといった判断ができます。

暗い場所ではシャッターがロックされる

35DCには、露出不足になる場面でシャッターを切れなくする安全機構があります。

被写体が暗すぎて、F1.7・1/15秒でも適正露出を得られない場合、ファインダーの指針が赤い領域へ入り、シャッターボタンがロックされます。

これは故障ではありません。

露出不足の写真を撮影してフィルムを無駄にしないための機能です。

暗い場所でシャッターが切れない場合は、次の方法を試します。

  • レンズキャップを外す
  • より明るい場所へ移動する
  • 高感度フィルムを使用する
  • フラッシュを使用する
  • 電池と露出計の状態を確認する

フィルム装填時にレンズキャップが付いたままだと、空シャッターも切れず、カウンターを1へ進められない場合があります。

そのため、35DCにはシャッターロック解除ボタンが用意されています。

ただし、これはフィルム装填などのためにロックを解除する機能です。暗い場所で適正露出を無視して撮影するための通常機能ではありません。

逆光補正用のBLCボタン

35DCには、BLCと表示された逆光補正ボタンがあります。

BLCはBack Light Controlの略です。

強い空や窓を背景に人物を撮影すると、露出計が背景の明るさへ反応し、人物の顔が暗く写ることがあります。

BLCボタンを押しながら撮影すると、通常の測光値より約1.5段多く露光され、逆光下の人物を明るく写しやすくなります。

主な使用場面は次のとおりです。

  • 明るい空を背景にした人物
  • 窓を背にした室内撮影
  • 日陰から明るい場所を撮影する場面
  • 雪景色や砂浜を背景にした被写体
  • 被写体の背後に強い照明がある場面

BLCボタンは、撮影者が直接露出補正を行うための数少ない操作部です。

ただし、通常の順光撮影で押すと露出オーバーになる可能性があります。

ISO感度は25から800

使用するフィルムの感度は、レンズ周囲のASA設定リングで指定します。

設定範囲はASA25~800です。

現在のISOとASAは、通常の撮影では同じ数値として扱えます。

  • ISO100フィルム:ASA100
  • ISO200フィルム:ASA200
  • ISO400フィルム:ASA400
  • ISO800フィルム:ASA800

フィルム感度を間違えると、全コマの自動露出がずれます。

たとえばISO400フィルムを入れた状態でASA100へ設定すると、カメラは実際より低感度のフィルムだと判断し、約2段多く露光します。

フィルムを交換したときは、必ずASA設定を確認しましょう。

また、ASAリングを中間位置で使用せず、クリックのある数値へ確実に合わせる必要があります。

二重像合致式の連動距離計

35DCのピント合わせは手動です。

ファインダー中央に見える二重像へ被写体を入れ、ピントリングを回します。

2つの像がひとつに重なった位置でピントが合います。

最短撮影距離は0.85mです。

次のような線や輪郭を利用すると、ピントを合わせやすくなります。

  • 人物の目
  • 眼鏡のフレーム
  • 建物の柱
  • 窓枠
  • 看板の文字
  • 木の幹

オートフォーカスはありませんが、ピントリングの移動量が比較的小さく、街中のスナップでは素早く合わせられます。

あらかじめ3m前後へ合わせておき、被写体がその距離へ来たところで撮影する方法もあります。

ブライトフレームとパララックス補正マーク

ファインダー内には、実際に写る範囲を示すブライトフレームがあります。

撮影レンズとファインダーは別の位置にあるため、近距離撮影ではファインダーで見た構図とフィルムへ写る範囲にずれが生じます。

これをパララックスと呼びます。

35DCのファインダーには近距離撮影用のパララックス補正マークがあり、近い被写体では補正マークの内側を基準に構図を決めます。

最短撮影距離付近で人物や物を画面の端ぎりぎりへ配置すると、一部が切れて写る可能性があります。

近距離では少し余裕を持った構図が安全です。

世界初とされた自動フラッシュマチック機構

35DCには、フラッシュ撮影時の絞り値をピント距離に応じて自動的に設定するフラッシュマチック機構が搭載されています。

オリンパスは、プログラム撮影と組み合わせた自動フラッシュマチック機構を世界初と説明しています。

使用するフラッシュのガイドナンバーをカメラへ設定すると、ピントリングの距離情報に連動して適切な絞り値が選ばれます。

たとえば被写体へ近づくと絞り込み、離れると絞りを開くことで、フラッシュ光の強さを調整します。

撮影者がガイドナンバーを距離で割って絞り値を計算する必要がありません。

ガイドナンバーは10~40に対応

フラッシュマチックで設定できるガイドナンバーは、メートル表示で10~40、フィート表示で32~130です。

フラッシュ本体や説明書に記載されたガイドナンバーを確認し、レンズ周囲の設定部へ合わせます。

ガイドナンバーは、使用するフィルム感度によって変わります。

フラッシュに「GN20・ISO100」と書かれている場合でも、ISO400フィルムでは実質的なガイドナンバーが大きくなります。

フィルム感度とガイドナンバーの関係を確認したうえで設定しましょう。

日中シンクロにも対応

35DCのレンズシャッターは、電子フラッシュと同期させることができます。

アクセサリーシューには中央接点があり、対応するフラッシュをコードなしで発光できます。側面にはシンクロコード用の端子も備わっています。

明るい屋外で人物の顔へ影が出る場合は、フラッシュを補助光として利用できます。

カメラは自然光とフラッシュ光を考慮しながら露出を決めるため、背景を残しつつ人物の顔を明るくする日中シンクロが可能です。

ただし、古いフラッシュには高いトリガー電圧を持つ製品があります。

別のデジタルカメラとフラッシュを共用する場合は、フラッシュ側の仕様を確認しましょう。

1.35Vの水銀電池を使用する

35DCは、1.3~1.35VのPX625型水銀電池を前提に設計されています。

取扱説明書では、PX625、RM-625R、E625などの電池が指定されています。

現在、水銀電池は環境上の理由から一般販売されていません。

実際に使用する場合は、主に次の方法があります。

  • 1.35V前後の空気亜鉛電池を使用する
  • 電圧を下げる変換アダプターを使用する
  • カメラを1.5V電池へ対応するよう調整する
  • 修理店へ電池と露出計の校正を依頼する

同じ形状に近い1.5V電池をそのまま使用すると、露出計の指示やプログラムAEがずれる可能性があります。

さらに、CdS受光素子や内部抵抗も経年劣化しているため、適切な電圧の電池を入れただけで露出が正確になるとは限りません。

必ず信頼できる露出計やデジタルカメラと比較しましょう。

電池がなければ正常な自動露出を利用できない

35DCは、シャッター速度と絞りの決定を露出計へ依存しています。

そのため、電池がない、電圧が足りない、電池室が腐食している、CdS受光素子が劣化しているといった状態では、通常のプログラムAEを信頼できません。

完全機械式カメラのように、電池がなくても任意のシャッター速度と絞りを設定して撮影することはできません。

中古品を選ぶときは、単にシャッターが切れるかではなく、電池を入れた状態で光量に応じてシャッターと絞りが変化するかを確認する必要があります。

前期型と後期型が存在する

中古市場では、35DCに前期型と後期型と呼ばれる仕様差が見られます。

バッテリーチェックボタンや表示灯の位置、外装部品などに違いがありますが、基本的な名称はどちらもOLYMPUS 35DCです。(Alex Kunz Taipei)

販売ページの商品名だけでは区別できないことがあります。

コレクション性を重視する場合は、ボディ前面、背面、底面、バッテリーチェック部の写真を確認しましょう。

実用品として選ぶ場合は、前期型・後期型という分類よりも、露出計、プログラムシャッター、距離計、レンズの状態を優先する方が安全です。

OLYMPUS 35DCの基本スペック

項目内容
カメラ形式35mmレンズ固定式レンジファインダーカメラ
発売年1971年
使用フィルム35mmフィルム
画面サイズ24×36mm
レンズF.Zuiko 40mm F1.7
レンズ構成4群6枚
絞り範囲F1.7~F16・自動選択
シャッターセイコープログラムシャッター
シャッター速度1/15~1/500秒・自動選択
露出方式完全自動プログラムAE
測光素子CdS
測光範囲EV5.5~17・ISO100
逆光補正BLCボタン・約+1.5EV
フィルム感度ASA25~800
ピント合わせ二重像合致式連動距離計
最短撮影距離0.85m
フラッシュ自動フラッシュマチック
ガイドナンバー10~40m
フラッシュ接続ホットシュー・シンクロ端子
セルフタイマー約10秒
フィルター径43mm
電源1.3~1.35V PX625型水銀電池
寸法約114×71×57mm
重量約490g

基本仕様は、オリンパスの製品史および35DCの取扱説明書に基づきます。

OLYMPUS 35DCの基本的な撮影手順

電池を入れる

底面の電池室を開き、適切な1.35V相当の電池または電圧変換アダプターを入れます。

プラス・マイナスの向きを確認し、蓋を確実に閉めます。

長期間使用しない場合は、液漏れを防ぐため電池を外しておきましょう。

フィルムを装填する

裏蓋を開き、35mmフィルムをフィルム室へ入れます。

フィルム先端を巻き取りスプールへ差し込み、パーフォレーションがスプロケットの歯へ掛かっていることを確認します。

裏蓋を閉めたら、巻き上げレバーとシャッターを交互に操作し、カウンターを1へ進めます。

暗い場所やレンズキャップを付けた状態ではシャッターロックが働く場合があります。

フィルム装填時にロックされた場合は、明るい方向へ向けるか、取扱説明書に従ってロック解除ボタンを使用します。

ASA感度を設定する

レンズ周囲のASA設定リングを、使用するフィルム感度へ合わせます。

設定を誤ると、カメラが全コマで不適切な露出を選びます。

リングは目盛りの中央ではなく、クリック位置へ確実に合わせます。

ファインダーでピントを合わせる

被写体へカメラを向け、ファインダー中央の二重像を確認します。

ピントリングを回し、2つの像を完全に重ねます。

近距離ではパララックス補正マークを考慮し、構図に少し余裕を持たせます。

シャッターボタンを軽く押す

シャッターボタンを半押しし、ファインダー内の指針を確認します。

1/30秒以下では手ブレに注意し、赤い領域へ入ってシャッターがロックされた場合は、フラッシュまたはより明るい場所が必要です。

逆光ではBLCボタンを使用する

被写体の背後が強く明るい場合は、BLCボタンを押しながらシャッターを切ります。

通常より約1.5段多く露光され、人物の顔などが暗くなるのを抑えられます。

撮影後にフィルムを巻き上げる

シャッターを切ったら、巻き上げレバーを停止位置まで操作します。

1回の大きなストロークだけでなく、複数回の小刻みな操作でも巻き上げられます。

最後まで巻き上げなければ、次のシャッターを切れません。

35DCと35RCの違い

OLYMPUS 35RCは、シャッター速度を撮影者が選び、カメラが絞り値を決めるシャッター優先AEと、完全マニュアル露出の両方に対応します。

35DCがプログラムAE専用であるのに対し、35RCは露出を自分で操作できることが大きな違いです。

一方、35DCは40mm F1.7の明るいレンズを搭載しています。

35RCは露出の自由度、35DCは明るいレンズと簡単操作を重視したモデルと考えられます。

撮影者がシャッター速度や絞りを積極的に選びたいなら35RC、露出をカメラへ任せて素早く撮りたいなら35DCが向いています。

35DCと35RDの違い

OLYMPUS 35RDは、35DCと同じ40mm F1.7・4群6枚のレンズを搭載しながら、シャッター優先AEと完全マニュアル露出に対応します。

シャッター速度もB、1/2秒から1/500秒まで撮影者が選択できます。(ManualZilla)

35RDは35DCの明るいレンズと、35RC系の露出操作を組み合わせたようなモデルです。

ただし、35RDは35DCより操作項目が多く、内部機構も複雑です。

簡単操作を優先するなら35DC、露出表現の自由度を求めるなら35RDが候補になります。

中古購入時に確認したいポイント

電池室の液漏れと腐食

最初に電池室を開けて確認します。

古い水銀電池が長期間入ったままだった個体では、電池から漏れた液によって接点や配線が腐食している場合があります。

確認したい症状は次のとおりです。

  • 白色や緑色の付着物
  • 端子の黒ずみ
  • 接点の欠損
  • 電池蓋の固着
  • ねじ山の破損
  • 電池を入れても露出計が動かない

軽い表面腐食なら清掃で改善することもありますが、内部配線まで腐食している場合は修理が必要です。

35DCでは電池と露出計が撮影機能の中心なので、電池室の状態は非常に重要です。

現行電池で露出が正確か

適切な代替電池を入れ、信頼できる露出計やデジタルカメラと比較します。

明るい屋外、日陰、室内など、複数の明るさで確認しましょう。

常に1段程度ずれている場合は、ASA設定で補正できる可能性があります。

しかし、明るい場所では合うのに暗い場所では大きくずれる場合、CdS受光素子や回路の劣化が考えられます。

単純な感度設定だけでは補正できません。

光量によってプログラムが変化するか

裏蓋を開け、フィルム面側からシャッターと絞りを確認できる状態にします。

明るい場所と暗い場所でシャッターを切り、シャッターの開いている時間と絞りの大きさが変化するか確認します。

正常であれば、

  • 明るい場所:速いシャッター・小さな絞り
  • 暗い場所:遅いシャッター・大きな絞り

となります。

どの明るさでも同じ動きしかしない場合は、CdS受光素子、露出回路、プログラムシャッターなどに不具合がある可能性があります。

低照度ロックが働くか

暗い場所またはレンズキャップを付けた状態でシャッターボタンを押し、露出不足時にロックされるか確認します。

次に明るい方向へ向け、ロックが解除されることを確認します。

常にロックされる場合は、電池切れ、接触不良、受光素子の不調、ASA設定リングの故障などが考えられます。

反対に、どれほど暗くてもロックされない場合も、自動露出機構が正常とは限りません。

シャッター羽根

裏蓋を開け、シャッター羽根の動きを確認します。

  • 完全に開く
  • 指定時間後に閉じる
  • 毎回同じ動作をする
  • 羽根に油が付着していない
  • 開閉途中で停止しない

以上を確認しましょう。

シャッター羽根は薄いため、指や清掃用品で触れてはいけません。

羽根に油が回っていると、露出が不安定になったり、シャッターが開かなくなったりします。

絞り羽根

35DCには手動の絞りリングがありませんが、プログラムAEとフラッシュマチックのための絞り羽根が組み込まれています。

光量やピント距離を変えながらシャッターを切り、絞りの開口部が変化することを確認します。

羽根に油が付いている、開口部がいびつになる、毎回同じ位置で止まらない場合は注意が必要です。

レンズのカビや曇り

F.Zuiko 40mm F1.7へ光を斜めから当て、内部を確認します。

  • 糸状のカビ
  • 白い曇り
  • コーティングの劣化
  • 前玉や後玉の傷
  • レンズの貼り合わせ面の劣化
  • 大きな異物

レンズ固定式カメラなので、レンズだけを交換して解決することはできません。

強い曇りやカビは、コントラスト低下、逆光時のフレア、色の濁りにつながります。

ボディが美しくても、レンズ状態が悪い個体は慎重に判断しましょう。

距離計の二重像

遠くの建物や電柱へ向け、ピントリングを無限遠に合わせます。

二重像が左右・上下とも一致することを確認します。

次に1m前後の被写体へ合わせ、近距離でも正確に一致するか確認します。

  • 二重像が薄い
  • 左右にずれている
  • 上下にずれている
  • ピントリングを回しても像が動かない
  • 無限遠まで回しても一致しない

このような個体は距離計調整が必要です。

ファインダーで像が一致していても、実際のフィルム面とずれている場合があります。

可能なら開放F1.7で実写確認しましょう。

ピントリングの動作

ピントリングを0.85mから無限遠まで動かします。

全域で滑らかに回り、途中で重さが変化しないことを確認しましょう。

長期間使用されていない個体では、ヘリコイドグリースが固まり、ピントリングが重くなっている場合があります。

無理に回すと距離計連動機構を傷める可能性があります。

BLCボタン

逆光補正ボタンを押し、スムーズに動いて戻るか確認します。

押した状態で露出計の指針やプログラムが変化することも重要です。

ボタンが沈んだまま戻らない、押しても露出が変化しない場合は、機械連動または電気接点の不具合が考えられます。

ASA設定リング

ASA25から800までリングを動かし、各数値でクリックがあるか確認します。

固着、空回り、途中停止がある個体は注意が必要です。

ASA設定リングは露出回路と連動しているため、数字だけ動いて内部抵抗が変化していない可能性もあります。

複数のASA値で露出計の指示が変わることを確認しましょう。

フラッシュマチック機構

ガイドナンバーを設定し、ピントリングを近距離から遠距離へ動かします。

距離に応じて絞り値が変化することを確認します。

近距離では小さく絞り、遠距離では開くのが正常です。

フラッシュを使用しない場合でも、連動機構の固着がほかの操作へ影響する可能性があります。

ホットシューとシンクロ端子

対応するフラッシュを装着し、発光するか確認します。

ホットシューの中央接点が腐食している、レールが変形している、フラッシュを最後まで差し込めない個体は注意が必要です。

側面のシンクロ端子も接触不良がないか確認します。

セルフタイマー

セルフタイマーは約10秒で作動します。

ただし、古いカメラでは内部油脂が固まり、途中で停止することがあります。

販売店が動作未確認としている場合は、購入直後に無理に最大まで作動させない方が安全です。

セルフタイマーが途中で止まると、シャッターまで切れなくなる可能性があります。

ファインダーの状態

明るい壁へ向け、ファインダー内部を確認します。

  • 曇り
  • カビ
  • 距離計像の薄れ
  • ブライトフレームの消失
  • 接眼窓の傷
  • 指針の固着
  • 赤い警告領域が見えない

距離計像と露出表示の両方をファインダーへ表示するため、内部の曇りは操作性へ大きく影響します。

清掃だけで改善できる場合もありますが、ハーフミラーや蒸着面が劣化している場合は部品交換が必要です。

フィルム巻き上げ

巻き上げレバーを最後まで動かし、シャッターがチャージされるか確認します。

レバーは1回のストロークまたは複数回の小刻みな操作に対応します。

確認したいポイントは次のとおりです。

  • レバーが途中で引っ掛からない
  • 最後まで動く
  • シャッターを切るまで再巻き上げできない
  • シャッターを切ると次の巻き上げが可能になる
  • カウンターが1コマずつ進む
  • 裏蓋を開けるとカウンターが戻る

極端に重い場合は無理に操作せず、内部ギアや油脂の固着を疑いましょう。

モルトと光漏れ

裏蓋周辺の遮光材を確認します。

劣化したモルトは、粉状に崩れる、粘着質になる、完全に消失するといった状態になります。

モルトが劣化すると、写真の端へ赤色や白色の光が入り込む可能性があります。

交換後も、最初のフィルムでは強い日差しの下で撮影し、光漏れがないか確認しましょう。

フィルター枠

フィルター径は43mmです。

落下によって前枠が変形していると、フィルターやフードを取り付けられません。

ねじ山が潰れている、フィルターが斜めに入っている、固着したフィルターが付いている個体は注意が必要です。



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OLYMPUS 35DCが向いている人

OLYMPUS 35DCは、次のような人に向いています。

  • 露出操作をカメラへ任せたい人
  • 明るいレンズ付きのコンパクトカメラを探している人
  • レンジファインダーのピント合わせを楽しみたい人
  • 40mm前後の自然な画角を好む人
  • 街歩きや旅行で素早く撮影したい人
  • 1970年代の金属製カメラが好きな人
  • 逆光補正を簡単に行いたい人
  • フラッシュ撮影を簡単に行いたい人

露出計が正常であれば、シャッター速度と絞りを考える必要がありません。

フィルム感度を設定し、二重像でピントを合わせてシャッターを切るだけなので、マニュアル露出に不慣れな人でも撮影しやすいカメラです。

OLYMPUS 35DCが向かない場合

一方、次のような人には別のカメラが適している可能性があります。

  • シャッター速度や絞りを自分で選びたい人
  • 電池なしで撮影したい人
  • 長時間露光を行いたい人
  • レンズ交換を楽しみたい人
  • オートフォーカスが必要な人
  • 0.85mより近くで撮影したい人
  • 整備されていない電子式カメラを避けたい人
  • 露出補正を細かく設定したい人

露出を自由に操作したい場合は、35RCや35RDなど、マニュアル露出に対応するモデルが向いています。

35DCは、撮影者が露出を作り込むカメラではなく、カメラの判断を信頼して素早く撮影するためのカメラです。

まとめ

OLYMPUS 35DCは、1971年に登場したレンズ固定式の35mmレンジファインダーカメラです。

「Deluxe Compact」の名称どおり、小型ボディへ明るいF.Zuiko 40mm F1.7、連動距離計、プログラムAE、逆光補正、自動フラッシュマチック機構を収めています。

主な特徴は次のとおりです。

  • F.Zuiko 40mm F1.7を搭載
  • 4群6枚のレンズ構成
  • 完全自動プログラムAE
  • 1/15秒・F1.7から1/500秒・F16まで自動制御
  • 二重像合致式の連動距離計
  • 最短撮影距離0.85m
  • ファインダー内に露出情報を表示
  • 露出不足時のシャッターロック
  • 約+1.5EVのBLC逆光補正
  • 自動フラッシュマチック機構
  • ASA25~800に対応
  • ホットシューとシンクロ端子
  • 約490gの小型ボディ

中古購入時に最も重要なのは、電池を入れてシャッターが切れることだけではありません。

明るさに応じてシャッター速度と絞り値が変化するか、露出不足でロックされるか、BLCが作動するか、現行電池で測光精度が出ているかまで確認する必要があります。

さらに、レンズのカビ・曇り、距離計、シャッター羽根、絞り羽根、ASAリング、モルトも確認しましょう。

完全マニュアルカメラのように、撮影者が露出を支配することはできません。

しかし、40mm F1.7のレンズを被写体へ向け、二重像を重ね、露出の判断をカメラへ委ねてシャッターを切る操作には、35DCならではの軽快さがあります。

人が決めるのは距離と構図。光をどう受け止めるかは、カメラが決める。

OLYMPUS 35DCは、自動化によって撮影を簡単にしながら、レンジファインダーらしい操作感を残した、1970年代の高級コンパクトカメラです。

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