OLYMPUS 35-Sとは?1950年代のオリンパスを代表するレンジファインダーカメラの特徴と中古購入時の注意点
OLYMPUS 35-Sは、1955年に登場した35mmフィルム用のレンズ固定式レンジファインダーカメラです。
連動距離計、レバー式フィルム巻き上げ、セルフコッキング式レンズシャッターなどを備え、戦後の国産カメラが本格的に近代化していく時期に発売されました。
カメラ本体には露出計も自動露出機能もありません。シャッター速度、絞り、ピントを撮影者がすべて手動で設定する、完全機械式のカメラです。
一方、「OLYMPUS 35-S」という名称には、装着されているレンズやボディ形状の異なる複数の仕様が存在します。1957年ごろには改良型の35-S IIも登場しましたが、ボディ正面の表記が単に「OLYMPUS 35-S」となっている個体もあります。
そのため、中古品を購入するときは、商品名だけで初期型と後期型を見分けることができません。
この記事では、OLYMPUS 35-Sの特徴、レンズ違い、35-S IIとの違い、基本的な使い方、中古購入時に確認したいポイントを解説します。
OLYMPUS 35-Sとは
OLYMPUS 35-Sは、35mmフィルムへ24×36mmの画面を記録する、レンズ固定式の連動距離計カメラです。
初代モデルは1955年に発売されました。オリンパスが1948年に発売した同社初の35mmレンズシャッターカメラ「OLYMPUS 35 I」から続く、初期35mmカメラシリーズの発展型にあたります。オリンパスの公式年表にも、35 Iが1948年に登場した最初の35mmレンズシャッターカメラとして記録されています。(オリンパスグローバル)
それ以前の国産35mmカメラでは、フィルム巻き上げに上面のノブを回す方式も多く見られました。
OLYMPUS 35-Sではレバー式巻き上げを採用し、レバーを操作することでフィルム送りとシャッターチャージを同時に行えます。巻き上げレバーを最後まで動かすと、次の1コマが撮影可能になります。(Orphancameras)
現在の感覚では単純な構造ですが、1950年代半ばのカメラとしては、撮影動作を素早く行うための実用的な設計でした。
「35-S」はひとつの仕様ではない
OLYMPUS 35-Sを理解するときに、最も重要なのが仕様違いです。
初期の35-Sには、開放F値の異なる複数のレンズ付きモデルが存在しました。
さらに、1957年ごろにはボディとファインダーを改良した35-S IIが登場しています。しかし35-S IIの一部にも、カメラ正面には「OLYMPUS 35-S」としか書かれていません。
中古市場では、初期型、35-S II、各レンズ仕様がまとめて「OLYMPUS 35-S」と販売されることがあります。(カメラウィキ)
代表的な仕様を整理すると、次のようになります。
| 系統 | 代表的なレンズ | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 初期35-S | D.Zuiko 45mm F3.5 | 初期の基本モデル |
| 初期35-S | E.Zuiko 48mm F2.8 | やや明るい標準レンズ |
| 初期35-S | G.Zuiko 45mm F1.9 | 大口径レンズ付き上位仕様 |
| 35-S II | E.Zuiko 48mm F2.8 | 改良型ボディの標準仕様 |
| 35-S II | G.Zuiko 42mm F2 | 明るい42mmレンズ |
| 35-S II | G.Zuiko 42mm F1.8 | 大口径7枚構成レンズ付き |
製造時期や販売地域によって細部が異なり、資料によってレンズ名や焦点距離の分類に若干の違いもあります。
中古品ではモデル名の表記だけに頼らず、レンズ正面に刻印された焦点距離と開放F値を確認することが確実です。
初期35-Sと35-S IIの違い
初期35-S
1955年に登場した初期型は、比較的小さなファインダーと連動距離計を備えた、オーソドックスな外観です。
代表的なE.Zuiko 48mm F2.8仕様では、Seikosha-MXレンズシャッターを搭載し、Bおよび1秒から1/500秒まで使用できます。
露出計、ブライトフレーム、自動パララックス補正はありません。ファインダー中央の二重像を使ってピントを合わせます。(カジュアルフォトファイル)
初期モデルらしい簡潔な操作系と、クロームメッキを多用した外観が魅力です。
35-S II
35-S IIでは、ファインダーが大型化され、撮影範囲を示す採光式ブライトフレームと自動パララックス補正が採用されました。
大口径仕様には、5群7枚構成のG.Zuiko 42mm F1.8が搭載されています。ファインダー倍率は約0.6倍、最短撮影距離は約0.6mです。(Orphancameras)
外観や操作感は初期型と似ていますが、ファインダーの使いやすさやレンズの明るさでは、35-S IIの方が実用的です。
ただし、正面に「II」と明記されていない個体もあるため、見分けるにはレンズとファインダー窓の形状を確認する必要があります。
レンズ固定式のレンジファインダーカメラ
OLYMPUS 35-Sはレンズ交換式ではありません。
カメラへ組み込まれたZuikoレンズを、そのまま使用します。
レンズ交換ができないことは一見すると制約ですが、ボディ、距離計、シャッター、レンズを一体として設計できる利点があります。
また、レンズを持ち替える必要がなく、35-Sだけを持って街へ出れば、その画角で撮ることに集中できます。
初期の48mmレンズは、35mm判の標準レンズとして自然な画角です。
後期の42mmレンズは50mmより少し広く、人物と周囲の風景、建物と街並みなどを一緒に収めやすくなります。
連動距離計でピントを合わせる
OLYMPUS 35-Sは、二重像合致式の連動距離計を搭載しています。
ファインダー中央に表示される二重像の片方が、レンズのピント操作に合わせて左右へ動きます。
ピントを合わせたい被写体へカメラを向け、2つの像がひとつに重なれば合焦です。取扱説明書では、レンズ鏡筒のフォーカシングレバーを動かし、ファインダー中央の二重像を一致させる方法が案内されています。(Orphancameras)
次のような部分を利用すると、ピントを合わせやすくなります。
- 人物の目や眼鏡
- 建物の柱や窓枠
- 標識や看板の文字
- 木の幹
- 被写体の輪郭
模様のない壁や空、暗い場所では二重像を確認しにくくなります。
また、距離計がずれている個体では、ファインダー上で像が一致してもフィルム面でピントが合いません。中古購入時には無限遠と近距離の両方を確認する必要があります。
初期型のファインダーは撮影範囲が分かりにくい
初期35-Sのファインダーには、後期型のような明るいブライトフレームがありません。
ファインダーの視野全体をおおよその撮影範囲として使いますが、実際にフィルムへ写る範囲と完全には一致しません。(カジュアルフォトファイル)
特に近距離では、撮影レンズとファインダーの位置の違いによるパララックスが大きくなります。
画面の端ぎりぎりへ被写体を配置すると、一部が切れて写る可能性があります。近距離撮影では、周囲に少し余裕を持たせて構図を作る方が安全です。
35-S IIでは、撮影範囲を示す採光式フレームが追加され、ピント距離に応じてパララックスも自動補正されます。(Orphancameras)
実際の撮影のしやすさでは、35-S IIが大きく進歩した部分です。
完全マニュアル露出
OLYMPUS 35-Sには、自動露出機能がありません。
撮影者が次の項目を手動で設定します。
- フィルム感度
- シャッター速度
- 絞り
- ピント
初期型には電気式の露出計も搭載されていません。
露出は単体露出計、スマートフォンの露出計アプリ、別のカメラ、天候を基準にした露出表などで決めます。
ボディ背面に円形のライトバリューダイヤルが設けられた個体もありますが、これは光を測る露出計ではありません。
フィルム感度、季節、時間帯、天候から露出値を求めるための機械式計算盤です。取扱説明書にも、フィルム感度と天候条件に合わせてライトバリューを求める方法が記載されています。(Orphancameras)
ライトバリュー方式を採用したモデルがある
35-Sの後期仕様では、シャッター速度リングと絞りリングの間にライトバリューの数値が表示されます。
ライトバリューは、同じ露出量となるシャッター速度と絞りの組み合わせを、ひとつの数字で表す方式です。
たとえば、ある場面でライトバリュー14が適正だとします。
その場合は、
- 1/500秒・F5.6
- 1/250秒・F8
- 1/50秒前後・F16
など、同じライトバリューになる組み合わせから、撮影目的に合った設定を選べます。(Orphancameras)
動きを止めたい場合は速いシャッター速度を優先し、広い範囲へピントを合わせたい場合は小さな絞りを優先します。
シャッター速度と絞りは、それぞれ独立して動かせます。
現在の露出計内蔵カメラほど手軽ではありませんが、露出の仕組みを理解しながら撮影できる方式です。
電池を使わない完全機械式カメラ
OLYMPUS 35-Sは、シャッター、フィルム巻き上げ、距離計の作動に電池を必要としません。
電池室そのものがなく、電池切れによって撮影不能になることもありません。
現行の単体露出計やスマートフォンで露出を測れば、現在でも問題なく撮影できます。
ただし、電池不要だから故障しにくいとは限りません。
製造から約70年が経過しているため、シャッター内部の油脂、スプリング、距離計、フィルム送りなどが劣化している可能性があります。
機械式カメラでは、電気系統の代わりに機械部分の整備状態が重要です。
レンズシャッターを搭載
OLYMPUS 35-Sは、レンズ鏡筒内にシャッター羽根を配置したレンズシャッター式カメラです。
代表的なモデルではSeikosha-MXまたはSeikosha-MXLシャッターが使用されています。
シャッター速度はモデルによって若干異なりますが、主に次の範囲です。
- 1秒
- 1/2秒
- 1/5秒
- 1/10秒
- 1/25秒
- 1/50秒
- 1/100秒
- 1/250秒
- 1/500秒
- B
35-S IIのF1.8仕様も、Bおよび1秒から1/500秒までのSeikosha-MXLシャッターを備えています。
現在一般的な1、1/2、1/4、1/8、1/15、1/30という系列とは異なり、1/5、1/10、1/25、1/50などが並びます。
使用するときは、現代的なシャッター速度系列と読み間違えないよう注意しましょう。
Bで長時間露光ができる
シャッター速度をBへ設定すると、シャッターボタンを押している間、シャッター羽根が開いた状態になります。
夜景、室内、光跡などの長時間露光に利用できます。
長時間露光では、カメラを三脚へ固定し、ケーブルレリーズを使用するのが基本です。
シャッターボタンを指で直接押し続けると、カメラが動いて写真がぶれる可能性があります。
古いレンズシャッターでは、Bだけが正常でも通常速度が正確とは限りません。購入時にはBと各速度を別々に確認しましょう。
レンズシャッターは全速度でフラッシュ同調しやすい
レンズシャッターは、シャッター羽根が画面全体へほぼ同時に光を通します。
そのため、対応する電子フラッシュであれば、高速側を含む各シャッター速度で同調させやすいことが特徴です。
代表的な35-Sには、X、F、Mの切り替え接点があります。
- X:電子フラッシュ
- F:F級フラッシュバルブ
- M:M級フラッシュバルブ
現在の一般的な電子フラッシュを使う場合はXへ設定します。(カジュアルフォトファイル)
アクセサリーシューには発光用の電気接点がないため、フラッシュとカメラ前面のシンクロ端子をコードで接続する必要があります。
フィルム巻き上げでシャッターもチャージされる
巻き上げレバーを操作すると、フィルム送りとシャッターチャージが同時に行われます。
初期35-Sでは約180度、35-S IIでは約120度のレバー操作で1コマ分を巻き上げます。(Orphancameras)
巻き上げが完了する前にはシャッターを切れず、シャッターを切るまでは次の巻き上げができない二重露光防止機構も備えています。
ただし、35-S IIでは底面の巻き戻し解除ボタンを押しながら巻き上げることで、フィルムを送らずにシャッターだけをチャージできます。
この操作を利用すると、意図的な多重露光が可能です。(Orphancameras)
通常撮影中に誤って底面ボタンを押すと、同じコマへ重ね撮りする可能性があります。
自動復元式フィルムカウンター
フィルムカウンターは、裏蓋を閉じるとスタート位置へ戻ります。
フィルム装填後に空送りと空シャッターを2回行うと、3回目の巻き上げでカウンターが1を示します。(Orphancameras)
初期のカメラには、フィルムを交換するたびにカウンターを手動で合わせる製品もありました。
35-Sの自動復元式カウンターは、現在では当たり前に見える機能ですが、撮影準備を簡単にする改良でした。
中古品では、裏蓋を開けたときにカウンターがスタート位置へ戻るか確認しましょう。
迅速なフィルム巻き戻し機構
35-Sには、上面の巻き戻しノブから小さなクランクを引き出して使用する機構があります。
取扱説明書では、ノブの溝部分を動かすと、ばねの力で巻き戻しクランクが起き上がると説明されています。底面の巻き戻し解除ボタンを押し、クランクを回してフィルムをパトローネへ戻します。(Orphancameras)
ノブだけを指で回す方式より、素早くフィルムを巻き戻せます。
中古品ではクランクのばねが弱っている、格納部が固着している、軸が曲がっている場合があります。
ガラス製のフィルム圧板を採用した個体がある
初期35-Sの取扱説明書には、フィルムの平面性を保つため、ガラス製のフィルム圧板を採用したことが記載されています。
圧板表面には細かな突起があり、フィルムが密着して動かなくなることを防ぐ設計です。(Orphancameras)
フィルム面が平らに保たれないと、レンズが正しくピントを結んでも、フィルムの一部が焦点面からずれる可能性があります。
ただし、ガラス部品は衝撃に弱く、傷、欠け、割れが発生する場合があります。
中古購入時には裏蓋を開け、圧板の状態を確認しましょう。
35-S IIのG.Zuiko 42mm F1.8
35-S IIを代表するレンズが、G.Zuiko 42mm F1.8です。
「G」は7枚構成を示す当時のオリンパスの命名方法で、実際に5群7枚の光学系を採用しています。最小絞りはF16、フィルター径は43mm、最短撮影距離は約0.6mです。(Orphancameras)
開放F1.8は、1950年代のレンズ固定式カメラとして非常に明るい仕様でした。
暗い場所でシャッター速度を確保しやすく、被写体へ近づけば背景をぼかした撮影も可能です。
一方、現在の中古個体では、開放時の描写以前にレンズの曇りや距離計精度が実写結果を大きく左右します。
レンズの名称だけで選ばず、光学系と機械部分の状態を優先しましょう。
初期型のE.Zuiko 48mm F2.8
初期35-Sで比較的よく見られるのが、E.Zuiko F.C. 48mm F2.8です。
資料では3群5枚または4群5枚とされることがあり、製造時期による仕様変更や資料上の表記差が考えられます。
開放F2.8はF1.8仕様ほど明るくありませんが、レンズを小さくまとめやすく、標準レンズとして扱いやすい明るさです。
シャッター速度はBおよび1秒から1/500秒。最短撮影距離は約0.8mで、カメラの重量は約620gとされています。(カジュアルフォトファイル)
35-S IIの大口径モデルより簡素ですが、初期型らしいクローム仕上げと機械操作を楽しめます。
OLYMPUS 35-Sの基本スペック
35-Sは仕様が多いため、次の表は代表的なモデルを比較したものです。
| 項目 | 初期35-S 48mm F2.8 | 35-S II 42mm F1.8 |
|---|---|---|
| 使用フィルム | 35mm | 35mm |
| 画面サイズ | 24×36mm | 24×36mm |
| レンズ | E.Zuiko F.C. 48mm F2.8 | G.Zuiko 42mm F1.8 |
| レンズ構成 | 3群5枚または4群5枚とされる | 5群7枚 |
| 最小絞り | F16 | F16 |
| 最短撮影距離 | 約0.8m | 約0.6m |
| ピント合わせ | 二重像合致式連動距離計 | 二重像合致式連動距離計 |
| ファインダー枠 | なし | 採光式ブライトフレーム |
| パララックス補正 | なし | 自動 |
| シャッター | Seikosha-MX | Seikosha-MXL |
| シャッター速度 | B、1秒~1/500秒 | B、1秒~1/500秒 |
| 露出制御 | 完全マニュアル | 完全マニュアル |
| 露出計 | なし | なし |
| フィルム巻き上げ | レバー式 | レバー式 |
| 電池 | 不要 | 不要 |
| フィルター径 | 個体・仕様により確認 | 43mm |
| 重量 | 約620g | 約650g |
35-Sは個体差と仕様差が大きいため、中古品のレンズ刻印、シャッター表示、ファインダー形状を実物で確認してください。(カジュアルフォトファイル)
OLYMPUS 35-Sの基本的な撮影手順
フィルムを装填する
ボディ側面の裏蓋ロックを引き上げ、裏蓋を開きます。
巻き戻しノブを上へ引き、35mmフィルムのパトローネをフィルム室へ入れます。
フィルム先端を反対側の巻き取りスプールへ差し込み、パーフォレーションがスプロケットの歯へ正しく掛かっていることを確認します。(Orphancameras)
裏蓋を閉めて空送りを行い、カウンターを1へ合わせます。
巻き上げ時に巻き戻しノブが反対方向へ回っていれば、フィルムが正常に送られている可能性が高くなります。
露出を測る
カメラに露出計はないため、単体露出計や露出計アプリを使用します。
ISO100、1/250秒、F8という測定結果が出た場合は、シャッター速度リングを1/250秒、絞りリングをF8へ設定します。
ライトバリュー方式の個体では、測定結果をLVへ置き換えて設定することも可能です。
シャッター速度と絞りを設定する
シャッター速度リングと絞りリングはレンズ鏡筒周辺にあります。
設定値が指標へ正確に合っていることを確認します。
古いレンズシャッターでは、シャッターをチャージしたあとに速度を変更すると機構へ負担が掛かる場合があります。
取扱説明書でも、チャージ後に速度を変える必要がある場合は、一度ほかの速度へ動かしてから目的の速度へ合わせ、内部ばねの状態を整えるよう案内されています。
基本的には巻き上げ前にシャッター速度を決める方が安全です。
距離計でピントを合わせる
ファインダー中央の二重像へ、ピントを合わせたい被写体を入れます。
フォーカシングレバーまたはピントリングを動かし、二重像を一致させます。
35-S IIでは、移動するブライトフレームを基準に最終的な構図を決めます。
フィルムを巻き上げて撮影する
巻き上げレバーを最後まで動かします。
途中で止めず、規定の位置まで確実に操作しましょう。
シャッターとフィルム送りの準備が完了したら、カメラを安定させてシャッターボタンを押します。
中古購入時に確認したいポイント
正確な仕様を確認する
最初に確認すべきなのは、35-Sのどの仕様かという点です。
レンズ正面を見て、次の表示を確認します。
- D.Zuiko 45mm F3.5
- E.Zuiko 48mm F2.8
- G.Zuiko 45mm F1.9
- G.Zuiko 42mm F2
- G.Zuiko 42mm F1.8
同じ「OLYMPUS 35-S」という表記でも、焦点距離、最短撮影距離、ファインダー、レンズ構成が異なります。
商品説明より、レンズ刻印と実物写真を優先しましょう。
レンズの白濁や曇り
OLYMPUS 35-Sでは、レンズ内部が白っぽく曇った個体が報告されています。
特に後玉周辺や内部レンズ面の白濁は、単純な表面清掃では取れない場合があります。白濁した面を研磨して改善した事例もありますが、コーティングやレンズ面を傷める危険があるため、一般ユーザーが安易に行う作業ではありません。(nakajima akira’s photobook)
光を斜めから当て、次の症状がないか確認します。
- 全体が白くかすんでいる
- 後玉付近に曇りがある
- 糸状のカビがある
- コーティングが剥がれている
- レンズ面に強い拭き傷がある
- レンズの貼り合わせ面が劣化している
強い曇りはコントラスト低下、逆光時のフレア、黒の締まりの低下につながります。
レンズ交換ができないため、光学系の状態はボディ以上に重要です。
シャッター羽根の粘り
古いレンズシャッターでは、羽根へ油が回り、動きが遅くなることがあります。
裏蓋を開け、フィルム面側からシャッターを確認します。
- 羽根が完全に開く
- 指定時間後に閉じる
- 毎回同じ動作をする
- 羽根に油が付着していない
- 開閉途中で停止しない
以上を確認しましょう。
シャッター羽根は非常に薄いため、指や清掃用具で触れてはいけません。
低速シャッターの粘り
1秒、1/2秒、1/5秒などの低速側は、内部のスローガバナーに使用された油脂の劣化で不調になりやすい部分です。
次の症状がある個体は整備が必要です。
- 1秒が極端に長い
- 途中で止まる
- 1秒と1/2秒の違いが分からない
- 作動後に羽根が閉じない
- シャッターを何回か切ると動きが変わる
耳で確認できるのは大まかな変化だけです。
正確な速度が必要な場合は、シャッターテスターまたは実写で確認しましょう。
1/500秒が実際に出ているか
最高速度の1/500秒は、設定できるだけでは正常とは限りません。
ばねの劣化や羽根の粘りにより、実際には1/100秒程度しか出ていない個体も考えられます。
晴天時に均一な壁や空を撮影し、露出オーバーにならないか確認します。
リバーサルフィルムを使う場合は露出許容度が狭いため、シャッター速度の精度が特に重要です。
絞り羽根
絞りを開放からF16まで動かし、開口部が滑らかに変化するか確認します。
- 羽根に油が付着していない
- 開口部がいびつにならない
- F16まで十分に閉じる
- 絞りリングが途中で固まらない
- 指標と実際の開口部が一致する
といった点を確認しましょう。
絞りが十分に閉じない個体では、設定よりも多くの光が入り、露出オーバーになります。
距離計の二重像
ファインダーをのぞき、二重像が見えるか確認します。
遠くの建物や電柱にレンズを無限遠で合わせたとき、二重像が一致する必要があります。
次の症状がある場合は調整が必要です。
- 二重像が薄い
- 黄色い像がほとんど見えない
- 左右にずれている
- 上下にずれている
- 無限遠でも一致しない
- ピントを動かしても二重像が動かない
無限遠だけ一致していても、近距離で正確とは限りません。
可能であれば、約1mの被写体と遠景の両方で確認しましょう。
35-S IIのブライトフレーム
35-S IIでは、ファインダー内の明るいフレームが見えることを確認します。
採光窓が汚れている、内部ミラーが劣化している、ファインダーが曇っていると、フレームが暗くなります。
ピントリングを近距離側へ動かしたときに、フレームも移動してパララックスを補正するか確認します。
フレームが動かない場合、連動機構が固着している可能性があります。
ファインダーの曇りとカビ
初期型のファインダーはもともと小さく、現在のカメラと比べて暗く感じられます。
そこへ曇りやカビが加わると、構図確認やピント合わせがさらに難しくなります。
明るい壁へ向け、次の状態を確認しましょう。
- 全体が白くかすんでいない
- カビがない
- 接眼窓に傷がない
- 距離計像のコントラストが十分ある
- ファインダー内部に剥離がない
眼鏡を使用する場合は、金属製の接眼部が眼鏡レンズへ当たりやすい点にも注意が必要です。
巻き上げレバー
巻き上げレバーを操作し、途中で引っ掛からず最後まで動くか確認します。
巻き上げによって、
- フィルム送り
- シャッターチャージ
- カウンター送り
- 二重露光防止
が正常に行われる必要があります。
レバーを途中で止めると、フィルム送りが不完全になる場合があります。
極端に重いときは無理に動かさず、内部の固着やギア不良を疑いましょう。
フィルムカウンター
裏蓋を閉じた状態でカウンターがスタート位置にあるか確認します。
巻き上げとシャッターを繰り返し、数字が1コマずつ進むこと、裏蓋を開けると元へ戻ることを確認します。
カウンターが動かなくても撮影自体はできる場合がありますが、残り枚数を把握しにくくなります。
巻き戻しクランク
巻き戻しクランクが正常に起き上がり、滑らかに回るか確認します。
収納したときに浮いてしまう、ばねが戻らない、軸が曲がっている個体は注意が必要です。
底面の巻き戻し解除ボタンも押せることを確認しましょう。
裏蓋と遮光材
裏蓋の周囲や蝶番部分から光が入らないか確認します。
1950年代のカメラでは、後年のカメラほど大量のモルトを使用していない場合もありますが、遮光材や溝に劣化、変形、欠損があると光漏れの原因になります。
裏蓋がゆがんでいる、ロックが緩い、落下痕がある個体では、強い日差しの中で実写確認するのが安全です。
ガラス製圧板
ガラス製圧板を備えた個体では、割れ、欠け、深い傷がないか確認します。
圧板に異物が付着していると、フィルムへ傷が入る可能性もあります。
表面を強くこすらず、ブロアーなどで慎重に清掃しましょう。
フィルターとフード
35-S IIの42mm F1.8仕様は、43mmねじ込み式フィルターに対応します。専用フードはレンズ外周へかぶせる方式です。
初期型はレンズ仕様によって径が異なる可能性があります。
中古品を購入するときは、レンズ名だけでフィルターを注文せず、実物のねじ径や純正キャップを確認しましょう。
OLYMPUS 35-Sが向いている人
OLYMPUS 35-Sは、次のような人に向いています。
- 1950年代の国産カメラに興味がある人
- 電池を使わないレンジファインダーを探している人
- 露出、ピント、巻き上げをすべて手動で行いたい人
- 初期Zuikoレンズを楽しみたい人
- クローム仕上げの金属製カメラが好きな人
- 撮影だけでなくカメラ史や機械構造も楽しみたい人
- 修理や整備を前提に古いカメラと付き合える人
特に、オリンパスがPENやOMシリーズで広く知られるようになる以前のカメラへ興味がある人には、魅力的な一台です。
OLYMPUS 35-Sが向かない場合
一方、次のような人には扱いにくい可能性があります。
- 露出計内蔵カメラを求めている人
- 自動露出を使いたい人
- オートフォーカスが必要な人
- レンズ交換を楽しみたい人
- 近距離撮影を重視する人
- 眼鏡を掛けたまま大きなファインダーを使いたい人
- 購入後すぐ確実に撮影できるカメラが欲しい人
- 修理費用を掛けたくない人
実用性だけで比較すれば、1960~1970年代の露出計付きレンジファインダーの方が簡単に撮影できます。
OLYMPUS 35-Sの価値は、便利さよりも、1950年代の設計と操作を現在でも体験できることにあります。
まとめ
OLYMPUS 35-Sは、1955年に登場した35mmフィルム用のレンズ固定式レンジファインダーカメラです。
レバー式巻き上げ、連動距離計、セルフコッキング式レンズシャッターなどを採用し、オリンパスの初期35mmカメラを代表するモデルとなりました。
主な特徴は次のとおりです。
- 35mmフィルムを使用
- 24×36mmの画面サイズ
- 固定式Zuikoレンズ
- 二重像合致式の連動距離計
- Bから最高1/500秒までのレンズシャッター
- 完全マニュアル露出
- 電池不要
- レバー式フィルム巻き上げ
- 自動復元式フィルムカウンター
- 巻き戻しクランク
- 仕様によってライトバリュー方式を採用
ただし、「35-S」という名称だけでは正確な仕様を判断できません。
初期型にはF3.5、F2.8、F1.9などのレンズ仕様があり、後の35-S IIには42mm F2や42mm F1.8などが存在します。
中古購入時は、レンズの焦点距離と開放F値、ファインダー形状、ブライトフレームの有無を確認しましょう。
そして、最も注意したいのがレンズの状態です。
35-Sには白濁や曇りのある個体が見られます。シャッターが切れるだけで購入を決めず、レンズ内部、シャッター羽根、絞り、距離計、フィルム送りまで確認する必要があります。
便利でも、速くも、撮影結果を保証してくれるカメラでもありません。
露出を測り、鏡筒の小さな数字を読み、二重像を重ね、レバーを最後まで巻いてからシャッターを切る。
OLYMPUS 35-Sは、オリンパスの歴史を眺めるための展示品ではなく、その歴史を自分の指で動かせるカメラです。









