CONTAX STは、35mmフィルムを使用するマニュアルフォーカス一眼レフカメラです。
1992年に登場し、CONTAX/YASHICAマウント、最高1/6000秒の電子シャッター、4種類の露出モード、中央重点平均測光とスポット測光、自動フィルム送りなどを搭載しています。
ピント合わせは手動ですが、露出制御とフィルム操作は大幅に自動化されています。Carl Zeiss T*レンズの操作感を残しながら、1990年代らしい電子機能を組み合わせた上級モデルです。(北原樹一フィルム撮影出張カメラマン)
CONTAX STとは
CONTAX STは、京セラがCONTAXブランドで展開した35mmフォーカルプレーンシャッター式一眼レフカメラです。
同時期に登場した機械式のCONTAX S2とは性格が大きく異なり、STでは電子シャッター、自動露出、モータードライブ、DX感度設定、TTLフラッシュ調光などを採用しています。
ボディーは精密ダイキャスト構造で、上部と底部の外装には真ちゅう系合金を使用。フィルムの平面性を保つため、裏蓋にはセラミック製の圧板が組み込まれています。(Icon Publications Ltd)
CONTAX/YASHICAマウントを採用
CONTAX STは、一般に「C/Yマウント」と呼ばれるCONTAX/YASHICA MMマウントを採用しています。
Carl ZeissのPlanar、Distagon、Sonnar、Tele-Tessar、Makro-Planar、Vario-Sonnarなどを装着可能です。対応するヤシカ製MLレンズも使用できます。(Orphancameras)
MMレンズでは4種類の露出モードを使える
STには次の露出モードがあります。
- 絞り優先AE
- シャッター速度優先AE
- プログラムAE
- マニュアル露出
シャッター速度優先AEとプログラムAEを利用するには、MMタイプのレンズを最小絞りへ設定します。AEタイプのレンズを装着した場合、TvまたはPを選択しても絞り優先AEとして作動します。(Orphancameras)
絞り優先AE
撮影者がレンズの絞りリングからF値を選ぶと、カメラがシャッター速度を自動設定します。
Carl Zeissレンズの絞りリングを直接操作できるため、背景のぼけや被写界深度を重視した撮影に向いています。
シャッター速度優先AE
撮影者がシャッターダイヤルから速度を選ぶと、カメラが適切な絞り値を設定します。
動く人物や乗り物を止めたい場合、反対に低速シャッターで動きを表現したい場合に利用できます。MMタイプのレンズが必要です。(Orphancameras)
プログラムAE
被写体の明るさに応じて、シャッター速度と絞り値の両方をカメラが決定します。
露出操作をカメラへ任せられるため、スナップや旅行など、シャッターチャンスを優先したい場面に適しています。
マニュアル露出
絞りとシャッター速度を撮影者が設定します。
ファインダー内には設定値と測光結果が表示されるため、意図的な露出補正や単体露出計を使った撮影にも対応できます。(Orphancameras)
中央重点平均測光とスポット測光
CONTAX STは、TTL中央重点平均測光とスポット測光を切り替えられます。
中央重点平均測光の測光範囲は、ISO100・F1.4レンズ使用時でEV0~20。スポット測光ではEV4~20です。(Orphancameras)
中央重点平均測光
画面中央を重視しながら、周辺を含めた明るさを測定します。
一般的な人物、風景、スナップなどで扱いやすく、画面内の明暗差が極端でなければ安定した露出を得やすい方式です。
スポット測光
ファインダー中央に表示される直径約5mmの円内を測定します。
逆光の人物、舞台、強い光が差し込む風景などで、露出の基準にしたい部分を狙って測れます。フォーカシングスクリーンにもスポット測光範囲を示す円が表示されます。(Orphancameras)
スポット測光AEロック
メインスイッチを「AEL」へ合わせると、スポット測光で得た露出値を固定できます。
被写体の顔を中央で測光してから構図を変更する場合や、連続する写真を同じ露出で撮影したい場合に有効です。(Orphancameras)
最高1/6000秒の電子シャッター
シャッターは、電子制御式の金属幕縦走りフォーカルプレーン方式です。
絞り優先AEとプログラムAEでは16秒から最高1/6000秒までを自動制御します。シャッター速度優先AEでは1秒から1/4000秒、マニュアル露出ではB、1秒から1/4000秒、Xの1/200秒を使用できます。(Orphancameras)
1/6000秒を使える条件
1/6000秒は、シャッターダイヤルから直接選択する速度ではありません。
絞り優先AEまたはプログラムAEで、被写体が明るく、カメラが必要と判断した場合に自動設定されます。ファインダーでは「4000」とオーバー側の表示が同時点灯し、1/6000秒であることを示します。(Orphancameras)
高速シャッターを利用すれば、晴天時でも大口径レンズの絞りを開きやすくなります。Planar T* 50mm F1.4や85mm F1.4などで背景をぼかしたい場合にも有効です。
A.B.C.オートブラケティング
CONTAX STは、露出を変えた3枚を自動撮影するA.B.C.機能を搭載しています。
A.B.C.はAutomatic Bracketing Controlの略で、標準露出、明るめ、暗めの順に撮影します。補正幅は±0.5EVまたは±1EVから選択可能です。(Orphancameras)
フィルム撮影では、その場で撮影結果を確認できません。明暗差の大きな場面や失敗できない写真で、露出違いを残すために役立ちます。
通常の露出補正も±2EVの範囲を1/3EV刻みで設定できます。(Orphancameras)
操作部を照明できる
STには、暗い場所で上面の表示やダイヤルを照らすイルミネーション機能があります。
ファインダー横の照明ボタンを押すと、次の部分が照らされます。
- 上面液晶パネル
- 露出モード表示
- シャッターダイヤルの目盛り
- 露出補正ダイヤルの目盛り
照明はボタンを離したあとも約16秒間点灯します。夜景、舞台、暗い室内などで設定を確認しやすい機能です。(Orphancameras)
明るいマニュアルフォーカス用ファインダー
ファインダーはロングアイポイント型のペンタプリズム式です。
視野率は約95%、倍率は50mmレンズを無限遠へ合わせた状態で約0.8倍。視度調整は+1~-3ディオプターの範囲に対応します。(Orphancameras)
標準のFW-1フォーカシングスクリーンには、水平スプリットイメージ、マイクロプリズム、マット面が配置されています。
5種類のスクリーンへ交換できる
STには、FW-1からFW-5まで5種類の交換スクリーンが用意されました。
標準のスプリットイメージ式だけでなく、全面マット、方眼、接写や顕微鏡撮影向けのスクリーンなどから用途に合わせて選択できます。各スクリーンにはスポット測光範囲を示す直径約5mmの円があります。(Orphancameras)
フィルム装填から巻き戻しまで自動
CONTAX STは、フィルム送り用モーターをボディーへ内蔵しています。
35mmフィルムの先端を所定位置まで引き出して裏蓋を閉じると、自動的に1コマ目まで送られます。撮影後の巻き上げ、フィルム終端での巻き戻しも自動です。途中巻き戻しにも対応します。(Orphancameras)
最高約3コマ/秒の連続撮影
ドライブモードは、1コマ撮影、連続撮影、セルフタイマーから選択できます。
連続撮影速度は最高約3コマ/秒。セルフタイマーの作動時間は約10秒です。(Orphancameras)
DXコードに対応
DXコード付きフィルムはISO25~5000の範囲で自動設定されます。
手動設定ではISO6~6400までを1/3段刻みで選べるため、DXコードのないフィルムや、増感・減感を前提とした撮影にも対応できます。(Orphancameras)
TTLダイレクト調光に対応
CONTAX TLAシリーズの対応フラッシュを装着すると、TTLダイレクト調光を利用できます。
フィルム面から反射したフラッシュ光を測定し、適正露光に達すると発光を停止する方式です。対応フラッシュでは充電完了時にシャッター速度が自動設定され、後幕シンクロにも対応します。(Orphancameras)
フラッシュ同調速度は1/200秒以下です。
標準装備のデータバック
CONTAX STの裏蓋には、クオーツ時計を内蔵したデータバックが組み込まれています。
日付や時刻は写真の画面内ではなく、コマとコマの間へ写し込まれます。そのため、撮影画像へ数字を重ねず、ネガ上で撮影日時を管理できます。(Orphancameras)
データバック用の電源にはCR2025リチウム電池1個を使用します。設定可能な年には上限があるため、現在の日付を正しく入力できるかは個体ごとに確認が必要です。
CONTAX STの基本スペック
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 発売年 | 1992年 |
| カメラ形式 | 35mm電子制御式一眼レフ |
| 画面サイズ | 24×36mm |
| レンズマウント | CONTAX/YASHICA MMマウント |
| ピント合わせ | マニュアルフォーカス |
| 露出モード | Av・Tv・P・M・B |
| 測光方式 | TTL中央重点平均・スポット |
| 測光範囲 | 中央重点EV0~20/スポットEV4~20 |
| 露出補正 | ±2EV・1/3EV刻み |
| ブラケティング | ±0.5EV/±1EV |
| シャッター | 電子制御金属幕縦走り式 |
| AE時最高速度 | 1/6000秒 |
| マニュアル最高速度 | 1/4000秒 |
| フラッシュ同調 | 1/200秒以下 |
| ファインダー倍率 | 約0.8倍 |
| ファインダー視野率 | 約95% |
| スクリーン | 交換式・5種類 |
| フィルム感度 | DX:ISO25~5000/手動:ISO6~6400 |
| フィルム送り | 自動 |
| 連続撮影 | 最高約3コマ/秒 |
| フィルム巻き戻し | 自動・途中巻き戻し可能 |
| セルフタイマー | 約10秒 |
| 電源 | 単4形アルカリ電池4本 |
| データバック電池 | CR2025 |
| サイズ | 約151.5×97.5×55mm |
| 重量 | 約800g・電池別 |
主な仕様はCONTAX STの取扱説明書に基づきます。(Orphancameras)
CONTAX S2との違い
CONTAX S2も1992年に登場したC/Yマウントのマニュアルフォーカス一眼レフですが、設計思想はSTと大きく異なります。
| 項目 | CONTAX ST | CONTAX S2 |
|---|---|---|
| シャッター | 電子制御式 | 機械式 |
| 露出モード | Av・Tv・P・M | マニュアルのみ |
| 測光 | 中央重点・スポット | スポット |
| 最高速度 | AE時1/6000秒 | 1/4000秒 |
| フィルム送り | 自動 | 手動レバー |
| 電池なし撮影 | 不可 | 可能 |
| 重量 | 約800g | 約565g |
露出とフィルム操作の自動化を重視するならST、電池に依存しない機械式カメラを求めるならS2が適しています。(カメラウィキ)
中古のCONTAX STを購入するときの注意点
電池室と電源
底部の電池室を開き、液漏れ、接点の腐食、蓋の破損を確認します。
新品の単4形アルカリ電池4本を入れ、液晶表示、露出計、シャッター、フィルム送りが安定して作動するか確認しましょう。
電子シャッター
明るい場所と暗い場所へ向け、絞り優先AEでシャッターの作動時間が変化するか確認します。
マニュアルでは1秒から1/4000秒までを順番に試します。高速側は音だけで精度を判断できないため、実写確認済みまたは点検済みの個体が安心です。
中央重点・スポット測光
測光方式を切り替え、同じ被写体でも表示値が変化することを確認します。
スポット測光では中央の狭い範囲へ明るい部分と暗い部分を交互に入れ、露出表示が反応するか試しましょう。AELによって測光値を固定できることも重要です。
上面液晶とイルミネーション
上面液晶に文字欠け、液晶漏れ、極端な薄さがないか確認します。
照明ボタンを押し、液晶、露出モード、シャッター速度、露出補正の各表示が点灯することも確認しましょう。
自動フィルム送り
テスト用フィルムを装填し、次の動作を確認します。
- 自動的に1コマ目まで送る
- 撮影ごとに巻き上げる
- 連続撮影が作動する
- カウンターが進む
- 終端で巻き戻す
- 途中巻き戻しができる
モーター音がしても、フィルムが正常に送られているとは限りません。
セラミック圧板
裏蓋のセラミック圧板に割れ、欠け、深い傷、浮きがないか確認します。
フィルムと接触する部分なので、汚れを工具で削ったり、強くこすったりしてはいけません。
ファインダーとスクリーン
ファインダーのカビ、クモリ、液晶表示の欠けを確認します。
フォーカシングスクリーンが正しく固定されていることも重要です。スクリーンの位置がずれると、ファインダー上で合ったピントとフィルム面のピントが一致しない可能性があります。
C/Yマウントの絞り連動
レンズを装着し、絞り値がファインダー内へ正しく表示されるか確認します。
シャッターを切ると絞り羽根が設定値まで閉じ、撮影後に素早く開放へ戻る必要があります。TvとPを使う場合は、MMレンズで絞りの自動制御も試しましょう。
CONTAX STはどんな人に向いている?
CONTAX STは、次のような人に向いています。
- C/YマウントのCarl Zeissレンズを使いたい人
- マニュアルフォーカスと自動露出を組み合わせたい人
- 中央重点測光とスポット測光を使い分けたい人
- 最高1/6000秒の高速シャッターを活用したい人
- フィルム巻き上げを自動化したい人
- A.B.C.ブラケティングを利用したい人
- 重量感のある高級一眼レフが好きな人
一方、電池なしで撮影できる機械式カメラや、小型・軽量なボディーを求める人には向きません。
まとめ
CONTAX STは、1992年に発売された電子制御式の35mmマニュアルフォーカス一眼レフです。
C/Yマウント、Av・Tv・P・Mの露出モード、中央重点平均・スポット測光、最高1/6000秒のシャッター、TTLフラッシュ調光、最高約3コマ/秒のモータードライブを搭載しています。
セラミック圧板、交換式フォーカシングスクリーン、暗所で操作部を照らすイルミネーション、コマ間へ日付を記録するデータバックなど、上級機らしい機能も特徴です。(Icon Publications Ltd)
中古で購入するときは、電池室、電子シャッター、露出計、液晶表示、イルミネーション、自動フィルム送り、セラミック圧板、レンズの絞り連動を確認しましょう。
正常に動作する個体なら、Carl Zeiss T*レンズのマニュアルフォーカスを楽しみながら、1990年代の高度な電子制御を利用できる、実用性の高いCONTAX一眼レフです。









