Canon IIS2

キヤノン版バルナックライカのIIS2です。キャノンのこの手のモデルは非常に種類が多い上にそのモデルの見極めのポイントが非常に細かいです。モデル名が刻印されているわけではないので、各々の箇所(シャッターダイヤルや巻き上げレバーの形状等)をチェックした上でモデルを特定する必要があります。

Canon II S2(キヤノンII S2)は、35mmフィルムを使用するレンズ交換式のレンジファインダーカメラです。

1955年に登場したモデルで、二重像合致式の連動距離計、3段階に倍率を切り替えられるファインダー、最高1/500秒の機械式シャッター、FP・X接点によるフラッシュ同調機構を搭載しています。

露出計や自動露出はなく、絞り・シャッター速度・ピントを撮影者が手動で設定します。撮影に電池を必要とせず、1950年代のキヤノン製レンジファインダーらしい精密な機械操作を楽しめる一台です。

目次

Canon II S2とは

Canon II S2は、1955年4月に発売された35mmフォーカルプレーンシャッター式カメラです。

日本語のキヤノンカメラミュージアムでは「II S改(2S改)型」、英語版では「II S2」と表記されています。国内外の中古市場でも「Canon IIS2」「Canon II S2」「Canon 2S2」など、複数の名称が使われています。(Canon Global)

IV Sb2の普及型として登場

II S2は、当時の上位機「Canon IV Sb2」の普及姉妹機として開発されました。

IV Sb2と基本的な機構を共通化しながら、最高シャッター速度を1/1000秒ではなく1/500秒とすることで価格を抑えています。発売時価格は50mm F1.5付きで7万8,500円、50mm F1.8付きで6万8,000円でした。(Canon Global)

高級機の操作性やフラッシュ同調機構を引き継ぎつつ、より手頃な価格を目指したモデルといえるでしょう。

「S II」「II S」「II S2」は別のカメラ

キヤノンの初期レンジファインダーには、名称の非常によく似たモデルがあります。

  • Canon S II:1946年発売
  • Canon II S:1954年発売
  • Canon II S2:1955年発売

順番や数字が少し違うだけですが、それぞれ別の機種です。

Canon S IIは1946年の戦後初期モデル

Canon S IIは1946年に登場したカメラです。

ファインダーと連動距離計を一つの窓へまとめた、戦後初期のキヤノンを代表するモデルですが、II S2より約9年古く、シャッターやファインダー、フラッシュ機構なども異なります。(Canon Global)

Canon II Sは1954年の輸出向けモデル

Canon II Sは1954年に海外市場向けとして開発されました。

II Fをベースに、フラッシュバルブ用のFP接点だけでなく、電子フラッシュ用のX接点を追加したモデルです。最高シャッター速度は1/500秒で、II S2の前身にあたります。(Canon Global)

中古品の商品名だけでは取り違えやすいため、販売ページの写真、シャッターダイヤル、フラッシュ接点などを確認しましょう。

標準ねじ式マウントを採用

Canon II S2は、レンズをねじ込んで装着する標準ねじ式マウントを採用しています。

中古市場では、一般に次のような名称で扱われています。

  • L39マウント
  • LTM
  • ライカスクリューマウント
  • 39mmスクリューマウント

Canon 50mm F1.8など、同時代のキヤノン製レンジファインダー用レンズを装着できます。キヤノン公式仕様では、標準レンズとして50mm F1.8と50mm F2.8が挙げられています。(Canon Global)

レンズを回して装着する

レンズを取り付けるときは、マウントのねじ山を合わせ、レンズを時計回りに回して固定します。

斜めに入った状態で無理にねじ込むと、ボディーとレンズの両方のねじ山を傷める可能性があります。途中で強い抵抗を感じた場合は、一度取り外して最初から合わせ直しましょう。

当時の取扱説明書でも、レンズを装着する際は最初に少し反時計回りへ動かしてねじ山の位置を探し、その後に時計回りで取り付ける方法が案内されています。(Orphancameras)

距離計連動式のレンズを選ぶ

ねじ径が合うレンズでも、すべてがCanon II S2の距離計と正常に連動するとは限りません。

引き伸ばし用レンズ、接写専用レンズ、一部の特殊レンズなどは、装着できてもカメラ側の二重像が動かない場合があります。

通常の撮影では、35mmレンジファインダーカメラ向けに作られた距離計連動式のL39レンズを選ぶのが基本です。

二重像合致式の連動距離計を搭載

Canon II S2は、ファインダーと距離計を一つの光路へまとめた連動距離計式カメラです。

ファインダー中央付近に見える二重像を重ねることで、被写体へピントを合わせます。(Canon Global)

二重像を重ねてピントを合わせる

基本的な操作は次のとおりです。

  1. ピントを合わせたい被写体をファインダー中央へ置く
  2. 被写体が二重に見えることを確認する
  3. レンズのピントリングを回す
  4. 2つの像が重なる位置へ合わせる
  5. 構図を整えてシャッターを切る

建物の縦線、看板の文字、人物の目や眼鏡など、輪郭がはっきりした部分を利用すると合わせやすくなります。

撮影レンズを通した像ではない

一眼レフとは異なり、Canon II S2のファインダー像は撮影レンズを通したものではありません。

レンズの絞りをF8やF11まで閉じてもファインダーは暗くなりませんが、背景のぼけ方や被写界深度をファインダー上で直接確認することもできません。

撮影距離と絞り値から、おおよそのピント範囲をレンズの被写界深度目盛りで判断します。

3段階に倍率を変更できるファインダー

Canon II S2には、視野倍率を3段階に切り替えられる回転式の逆ガリレオファインダーが搭載されています。

カメラ背面の倍率切り替えレバーを操作し、装着レンズの焦点距離に合わせて見え方を変更します。II S2では従来モデルより接眼部も若干大型化されました。(Canon Global)

標準レンズではF位置を使用する

当時の取扱説明書では、50mmレンズを使用するときは倍率切り替えを「F」に設定するよう案内されています。ほかの位置は望遠レンズでのピント確認や構図決定を補助するために使われます。(Orphancameras)

ただし、現代の自動視野枠切り替え式レンジファインダーのように、装着レンズをカメラが判別して表示を変えるわけではありません。

使用するレンズの焦点距離とファインダー設定を、撮影者自身で確認する必要があります。

広角・望遠レンズでは外付けファインダーも使用する

カメラ内蔵ファインダーだけでは、すべての焦点距離の正確な撮影範囲を確認できません。

35mmなどの広角レンズや、100mm・135mmなどの望遠レンズでは、アクセサリーシューへ対応する外付けファインダーを取り付ける方法があります。

特に近距離では、ファインダーと撮影レンズの位置の違いによるパララックスが大きくなるため、構図へ余裕を持たせる必要があります。(Orphancameras)

2つのシャッターダイヤルを使用する

Canon II S2は、布幕横走り式の機械式フォーカルプレーンシャッターを搭載しています。

シャッター速度は、高速側と低速側の2つのダイヤルへ分けて配置されています。最高速度は1/500秒です。(Canon Global)

高速側のシャッター速度

カメラ上部の高速シャッターダイヤルでは、次の速度を選択します。

  • X
  • B
  • 1/30秒
  • 1/60秒
  • 1/125秒
  • 1/250秒
  • 1/500秒

高速側のダイヤルには中軸指標があり、シャッターを切った後でも設定速度を確認できる構造です。(Canon Global)

低速側のシャッター速度

カメラ前面の低速シャッターダイヤルでは、次の速度を設定します。

  • T
  • 1秒
  • 1/2秒
  • 1/4秒
  • 1/8秒
  • 1/15秒

低速シャッターを使う場合は、上部と前面のダイヤルを正しい組み合わせへ設定する必要があります。操作方法を誤ると、設定した速度で作動しない可能性があります。(Canon Global)

シャッターをチャージしてから速度を変更する

この時代のキヤノン製レンジファインダーでは、高速シャッター速度を変更する前にフィルム巻き上げとシャッターチャージを行うのが基本です。

取扱説明書でも、先に巻き上げノブを回したうえで高速シャッターダイヤルを持ち上げ、希望する速度へ合わせる手順が示されています。中間位置は使用できません。(Orphancameras)

古い機械式カメラなので、ダイヤルが固い場合に無理な力を加えないよう注意しましょう。

BとTによる長時間露光に対応

Canon II S2には、長時間露光用のBとTがあります。

Bシャッター

Bでは、シャッターボタンを押している間だけシャッターが開き、指を離すと閉じます。

ケーブルレリーズと三脚を使用することで、夜景や光跡などの長時間露光へ対応できます。

Tシャッター

Tでは、シャッターボタンを一度押すとシャッターが開いた状態で保持されます。

撮影終了時は低速シャッターダイヤルを操作してシャッターを閉じます。長時間シャッターボタンを押し続ける必要がないことが利点です。(Orphancameras)

FP接点とX接点を搭載

Canon II S2は、フラッシュバルブ用のFP接点と、電子フラッシュ用のX接点を備えています。

カメラ側面のフラッシュレールから、対応するキヤノン製フラッシュユニットへ直接同調信号を伝える構造です。(Canon Global)

現代のホットシューとは異なる

Canon II S2のアクセサリー取り付け部は、現在一般的な中央接点付きホットシューとは構造が異なります。

現代の電子フラッシュをそのまま載せるだけで使用できるとは限りません。専用アダプターやシンクロコードが必要になる場合があります。

古いフラッシュ装置や配線は絶縁が劣化している可能性もあるため、実際に使用する場合は端子と同調動作を確認しましょう。

フィルム装填は底部落とし込み式

Canon II S2は、現在の一眼レフのように背面の裏蓋全体を開く構造ではありません。

底蓋を取り外し、フィルムカートリッジと巻き取りスプールをカメラ下側から差し込む「底部落とし込み式」です。(Orphancameras)

フィルム先端をスプールへ固定する

基本的な装填手順は次のとおりです。

  1. 直射日光を避けた場所で底蓋を外す
  2. 巻き取りスプールを取り出す
  3. フィルム先端をスプールへ差し込む
  4. フィルムカートリッジとスプールを同時にボディーへ入れる
  5. パーフォレーションがスプロケットへ合っていることを確認する
  6. 底蓋を確実に閉じる
  7. 空送りして撮影開始位置まで進める

フィルム先端の形状や長さが合わないと装填しにくいため、必要に応じて先端を細長く整える作業が必要です。

巻き上げは回転ノブ式

フィルムはカメラ上部の巻き上げノブを回して送ります。

後年のCanon Pなどが採用するレバー式ではないため、撮影ごとの巻き上げにはやや時間がかかります。フィルム巻き戻しも上部の回転ノブを使用します。(Canon Global)

Canon II S2の基本スペック

項目仕様
発売年月1955年4月
日本語名称II S改・2S改型
海外名称II S2
カメラ形式35mmフォーカルプレーンシャッター式距離計連動カメラ
使用フィルム35mm・135フィルム
画面サイズ24×36mm
レンズマウント標準ねじ式マウント
標準レンズCanon 50mm F1.8/50mm F2.8
ピント合わせ二重像合致式連動距離計
ファインダー3段階倍率切り替え式
露出計なし
露出方式マニュアル
シャッター布幕横走りフォーカルプレーン
高速側X、B、1/30~1/500秒
低速側T、1秒~1/15秒
フラッシュ同調FP・X接点
フィルム装填底蓋取り外し式
フィルム巻き上げ上部回転ノブ式
フィルムカウンター手動セット式・0~39
電源不要
サイズ約140×72×70mm
重量約790g・50mm F1.8装着時

主な仕様はキヤノンカメラミュージアムに基づきます。(Canon Global)

Canon IV Sb2との違い

Canon IV Sb2は、II S2の上位に位置するモデルです。

両機の基本的なファインダー、フラッシュ同調、巻き上げ機構などは近い構成ですが、最高シャッター速度が異なります。

項目Canon II S2Canon IV Sb2
発売年1955年1954年
最高シャッター速度1/500秒1/1000秒
フラッシュ同調FP・XFP・X
ファインダー3段階倍率式3段階倍率式
位置づけ普及型上位型

II S2は1/1000秒を省略することで、IV Sb2の主要機能をより安価に提供したモデルです。(Canon Global)

Canon II D2との違い

同じ1955年には、Canon II D2も発売されました。

II D2は、II S2から内蔵フラッシュシンクロ機構を省いた廉価モデルです。フラッシュ撮影には外部同調式の専用装置が必要でした。(Canon Global)

通常撮影に関する基本構造は似ていますが、フラッシュを使用する予定がある場合は、II S2のほうが機能的に有利です。

中古のCanon II S2を購入するときの注意点

布製シャッター幕

底蓋を外して内部を確認し、布製シャッター幕に次の症状がないか見ておきます。

  • ピンホール
  • 破れ
  • 強いしわ
  • 幕のたるみ
  • 油や汚れ
  • 幕端の剥がれ
  • 走行途中での停止

幕へ小さな穴が開いていると、フィルムへ光が入り、写真に白い線や帯が現れる可能性があります。

布幕は非常に薄いため、指で押したり布で拭いたりしてはいけません。

高速・低速シャッター

1秒から1/500秒まで速度を変更し、設定に応じてシャッターの開いている時間が変わるか確認します。

特に古いカメラでは、次の不具合が起こりやすくなります。

  • 1秒や1/2秒で途中停止する
  • 低速側がすべて同じ速度になる
  • 幕が最後まで走らない
  • シャッターを切っても幕が開かない
  • 1/500秒で露光むらが出る

高速側は作動音だけでは精度を判断できません。可能であれば、フィルム撮影またはシャッターテスターで確認された個体を選びましょう。

2つのシャッターダイヤル

高速側と低速側の両方を操作し、クリック位置が明確であることを確認します。

ダイヤルが極端に重い、表示位置からずれている、途中で引っかかる場合は、内部機構が固着している可能性があります。

シャッターを巻き上げずに高速ダイヤルを無理に動かさないことも重要です。

距離計の二重像

ファインダーをのぞき、距離計像が十分な濃さで見えるか確認します。

レンズを近距離から無限遠まで動かし、二重像が滑らかに移動することも重要です。

遠方へ合わせても二重像が一致しない、上下方向にずれている、途中で像が動かなくなる個体では、距離計の調整が必要になります。

3段階ファインダー

倍率切り替えレバーを操作し、3つの位置へ正常に切り替えられるか確認します。

次のような症状がある個体には注意しましょう。

  • レバーが固い
  • 切り替えても見え方が変わらない
  • ファインダー内部が大きく曇っている
  • 一部の倍率だけ像が見えない
  • 接眼部にがたつきがある

ファインダーの汚れは写真へ直接写りませんが、構図とピント合わせに大きく影響します。

マウントのねじ山

ボディーとレンズのねじ山に変形、つぶれ、深い傷がないか確認します。

レンズを最後まで装着しても傾いている、途中で回らなくなる、装着後に大きながたつきがある個体は避けたほうが安全です。

巻き上げノブとフィルム送り

巻き上げノブを回し、次の動作を確認します。

  • ノブが滑らかに回る
  • 1コマ分で停止する
  • シャッターがチャージされる
  • スプロケットが回転する
  • 巻き取りスプールが動く
  • フィルムカウンターが進む
  • 巻き戻し切り替えが作動する

巻き上げが重い場合は、無理にペンチなどで回してはいけません。

底蓋と遮光状態

底蓋のロックが確実にかかり、変形や大きな隙間がないか確認します。

底部装填式では、底蓋の密閉状態が遮光性能へ直結します。ロック部分が緩んでいる、落下によって底蓋が変形している個体では、光線漏れが発生する可能性があります。



Canon II S2はどんな人に向いている?

Canon II S2は、次のような人に向いています。

  • 1950年代の国産レンジファインダーを使いたい人
  • 初期のキヤノンカメラに興味がある人
  • L39の交換レンズを楽しみたい人
  • 電池不要の機械式カメラを探している人
  • 二重像によるピント合わせを楽しめる人
  • 3段階式ファインダーを操作してみたい人
  • 巻き上げノブ式カメラが好きな人
  • Canon IV Sb2より手頃な姉妹機を探している人

一方、露出計、自動露出、オートフォーカス、レバー式巻き上げを求める人には向きません。

フィルム装填や2つのシャッターダイヤルにも慣れが必要なため、簡単さより機械操作そのものを楽しむためのカメラです。

まとめ

Canon II S2は、1955年に発売されたレンズ交換式の35mmレンジファインダーカメラです。

上位機Canon IV Sb2の普及姉妹機として、最高シャッター速度を1/500秒へ抑えながら、3段階倍率式ファインダー、二重像合致式距離計、FP・Xフラッシュ同調、低速シャッターなどを受け継ぎました。

日本語資料では「II S改(2S改)型」、海外では「II S2」と表記されます。1946年のS IIや1954年のII Sとは別のモデルなので、中古品では名称と外観をよく確認しましょう。

購入時には、布製シャッター幕、高速・低速シャッター、2つの速度ダイヤル、距離計、3段階ファインダー、ねじ式マウント、巻き上げノブ、底蓋を点検することが重要です。

正常に整備された個体なら、電池を一切使わず、1950年代のキヤノンが作り上げた精密なレンジファインダーの操作感をじっくり味わえます。

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