CANON NewF-1

キャノンのフラッグシップモデルである、F-1です。こちらは後期モデルで、New F-1とも呼ばれます。セルフタイマーが前面になく、ファインダーの形状も前期モデルとは異なります。

Canon New F-1(キヤノン ニューF-1)は、35mmフィルムを使用するプロ向けのマニュアルフォーカス一眼レフカメラです。

1971年に登場した初代F-1の後継機として、1981年に発売されました。交換式ファインダー、交換式フォーカシングスクリーン、ハイブリッドシャッター、モータードライブなどを組み合わせ、撮影目的に応じて機能を拡張できる本格的なシステムカメラです。

標準状態では追針式のマニュアル露出が基本ですが、AEファインダーや専用ワインダーを追加すると自動露出にも対応します。単体のボディーだけを見て機能を判断しにくい点が、New F-1の面白さであり、中古購入時の注意点でもあります。

目次

Canon New F-1とは

Canon New F-1は、1981年9月に発売された35mmフォーカルプレーンシャッター式一眼レフカメラです。

初代Canon F-1の発売時、キヤノンは基本仕様を10年間変更しない方針を示していました。New F-1は、その約束どおり初代から10年後に登場した全面刷新モデルです。

単なる改良型ではなく、電子制御、測光システム、交換ファインダー、モータードライブなどを新しく設計しながら、初代F-1の利用者が違和感なく操作できるよう、基本的な操作系を受け継いでいます。発売時のボディー価格は、アイレベルファインダーFN付きで14万9,000円でした。

「F-2」ではなくNew F-1

初代F-1の後継機でありながら、製品名はF-2ではなく「New F-1」とされました。

これは、キヤノンのプロ向け一眼レフにおける「F-1」という名称を継承し、時代に合わせて新しい技術を取り込んだ最高級機であることを示しています。

初代F-1やF-1改とは別のカメラ

キヤノンのF-1系には、主に次の3種類があります。

モデル発売年位置づけ
Canon F-11971年初代モデル
F-1改・F-1N1976年初代F-1の部分改良型
Canon New F-11981年全面刷新された後継機

1976年のF-1改は、巻き上げ角、フィルム感度設定範囲、シンクロ端子などを改良したモデルです。基本構造は初代F-1を受け継いでいます。

一方、1981年のNew F-1は、ハイブリッドシャッターや新しい測光システムを採用した別設計のカメラです。

中古市場では、F-1改を「F-1N」、New F-1を「NewF-1」「ニューF-1」などと表記します。商品名だけでは混同されることがあるため、外観と仕様を確認しましょう。

機械式と電子式を組み合わせたハイブリッドシャッター

New F-1には、4軸式の金属幕横走行フォーカルプレーンシャッターが搭載されています。

シャッター速度は、Bと8秒から1/2000秒までです。すべてを機械式または電子式に統一せず、速度域によって制御方式を分けたハイブリッド構造が採用されています。

高速側は機械制御

次のシャッター速度は、機械制御で作動します。

  • 1/125秒
  • 1/250秒
  • 1/500秒
  • 1/1000秒
  • 1/2000秒
  • B
  • X・1/90秒

このため、電池が切れた場合でも、機械制御される速度を使用して撮影を続けられます。

低速側は電子制御

1/90秒から8秒までの低速側は、電子制御です。

電子制御によって長時間側の精度を高めながら、電池切れに備えて高速側を機械式で残しています。完全機械式と全速電子式の利点を組み合わせた、プロ機らしい設計です。

電池切れでも全速度が使えるわけではない

New F-1は「電池なしでも撮影できるカメラ」ですが、電池なしで8秒から1/60秒までの低速シャッターを使えるわけではありません。

中古品を確認するときは、電池を外した状態で高速側が作動することに加え、電池を入れた状態で低速側も正常に作動するか確認する必要があります。

追針式マニュアル露出が基本

標準のアイレベルファインダーFNを装着した状態では、TTL開放測光による追針式マニュアル露出が基本です。

ファインダー内には露出計の指針と追針が表示されます。絞りリングまたはシャッターダイヤルを操作し、2本の針が重なるように設定すると適正露出になります。測光素子にはSPCが使用されています。

撮影者が絞りとシャッター速度を決める

基本的な撮影手順は次のとおりです。

  1. フィルムのISO感度を設定する
  2. シャッター速度または絞り値を決める
  3. ファインダーを見てピントを合わせる
  4. 露出計を作動させる
  5. 指針と追針が重なるように露出を調整する
  6. シャッターを切る

露出計は適正値を示しますが、標準状態ではカメラが自動的に絞りやシャッター速度を変更するわけではありません。

AEファインダーで絞り優先AEに対応

標準のアイレベルファインダーFNを「AEファインダーFN」へ交換すると、絞り優先AEを利用できます。

撮影者がレンズの絞り値を選び、カメラが被写体の明るさに応じたシャッター速度を電子制御します。シャッターダイヤルをA位置へ合わせて使用するのが基本です。

背景のぼけを優先できる

F1.4やF2など絞りを開けば背景をぼかしやすくなり、F8やF11へ絞ればピントの合う範囲が広くなります。

絞りによる表現を自分で決めつつ、シャッター速度の調整をカメラへ任せたい場合に便利です。

アイレベルファインダーとAEファインダーは別物

中古品では、次のどちらが付属しているか確認しましょう。

  • アイレベルファインダーFN:マニュアル露出が基本
  • AEファインダーFN:絞り優先AEに対応

商品名に「AE」と記載されていても、実際には標準のアイレベルファインダーが付属している場合があります。ファインダー前面または側面の名称を確認することが重要です。

専用ワインダーでシャッター速度優先AEに対応

New F-1へ次のアクセサリーを装着すると、シャッター速度優先AEを利用できます。

  • AEパワーワインダーFN
  • AEモータードライブFN

撮影者がシャッター速度を選び、カメラと駆動装置が連動して適切な絞り値を設定します。レンズの絞りリングはA位置へ設定します。

AE機能がボディー単体で完結しない

New F-1の露出モードは、取り付けるアクセサリーによって変化します。

構成主な露出方式
アイレベルファインダーFNマニュアル露出
AEファインダーFN絞り優先AE・マニュアル
AEパワーワインダーFNシャッター速度優先AEに対応
AEモータードライブFNシャッター速度優先AE・高速巻き上げに対応

現在のカメラのように、ボディーのモードダイヤルだけですべての露出方式を切り替える設計ではありません。

プログラムAEも搭載されていないため、A-1やAE-1 Programとは操作思想が異なります。

フォーカシングスクリーンで測光方式が変わる

New F-1では、フォーカシングスクリーンを交換することで、ピント合わせの形式だけでなく測光範囲も変更できます。

13タイプ・合計32種類のスクリーンが用意され、次の3つの測光方式に対応します。

中央重点平均測光

画面全体の明るさを測りながら、中央部分を重視する方式です。

一般的なスナップ、風景、人物などに幅広く利用しやすい測光方式です。

中央部分測光

画面中央の約12%を測光します。

逆光の人物や、背景と主役の明るさが大きく異なる場面で、狙った被写体を基準に露出を決めやすくなります。

スポット測光

画面中央の約3%という狭い範囲を測光します。

舞台撮影、逆光、明暗差の大きな風景など、特定の場所を厳密に測りたい場面に適しています。

スクリーンの種類を確認する

中古品では、装着されているスクリーンの種類によって測光特性が異なります。

スクリーンを交換した事実を知らずに使用すると、中央重点平均測光のつもりでスポット測光を使ってしまう可能性があります。購入時にはスクリーンの型番と測光方式を確認しましょう。

交換式ファインダーを採用

New F-1はファインダーを取り外せる構造です。

標準のアイレベルファインダーFNやAEファインダーFNのほか、低い位置から撮影するためのウエストレベルファインダーなど、用途に応じたファインダーを使用できます。

アイレベルファインダーFN装着時の倍率は約0.8倍、視野率は約97%です。標準スクリーン中央にはニュースプリットプリズム、その周囲にはマイクロプリズムが配置されています。

ピント合わせはマニュアル

New F-1にはオートフォーカス機能がありません。

中央のスプリットプリズムで分かれて見える輪郭を一直線に合わせるか、周囲のマイクロプリズムのちらつきが消える位置までレンズのフォーカスリングを回します。

人物の目、建物の線、看板の文字など、輪郭がはっきりした部分を利用すると合わせやすくなります。

Canon FDマウントを採用

New F-1はCanon FDマウントを採用しています。

標準レンズとしてFD 50mm F1.2とFD 50mm F1.4が用意されました。この時期から、レンズ名称に付けられていた「New」の表記は公式には省略されています。

旧FDとNew FDを使用できる

New F-1では、旧FDレンズとNew FDレンズの両方を使用できます。

旧FDレンズは、レンズ後部の固定リングを回して装着するブリーチロック式です。New FDレンズは、レンズ本体を回して取り付けます。

装着方法が異なるため、旧FDレンズを無理にレンズ本体ごと回さないよう注意しましょう。

EF・EF-S・RFレンズは直接装着できない

後年のEOS用EF・EF-Sレンズや、ミラーレスカメラ用RFレンズは、New F-1へ直接装着できません。

New F-1で使用する場合は、基本的に絞りリングを備えたFD系レンズを選びます。

Canon New F-1の基本スペック

項目仕様
発売年月1981年9月
カメラ形式35mmフォーカルプレーンシャッター式一眼レフ
使用フィルム35mm・135フィルム
画面サイズ24×36mm
レンズマウントCanon FDマウント
ピント合わせマニュアルフォーカス
基本露出方式追針式マニュアル
AE機能絞り優先・シャッター速度優先にシステム対応
測光素子SPC
測光方式中央重点平均・中央約12%部分・中央約3%スポット
シャッター4軸式金属幕横走行フォーカルプレーン
シャッター速度B、8秒~1/2000秒、X
機械制御B、X・1/90秒、1/125~1/2000秒
電子制御8秒~1/90秒
フィルム感度ISO6~6400
ファインダー交換式
フォーカシングスクリーン13タイプ・32種類
露出補正±2EV
フィルム巻き上げレバー式・分割巻き上げ可能
多重露出対応
セルフタイマー電子音付き
電源4LR44または2CR-1/3N・6V電池1個
サイズ約147×97×48mm
重量約795g・アイレベルファインダーFN装着時

モータードライブによる高速連写に対応

AEモータードライブFNを装着すると、フィルム巻き上げとシャッターチャージを自動化できます。

キヤノンの公式資料では、New F-1システムは毎秒約5コマのモータードライブや、100コマ撮影用の長尺フィルム室などに対応していたと説明されています。

報道、スポーツ、動物撮影など、大量のフィルムを短時間で撮影するプロの用途を想定したシステムです。

High Speed Motor Drive Cameraは別モデル

1984年には、New F-1をベースにした「New F-1 High Speed Motor Drive Camera」が限定販売されました。

固定式ペリクルミラーと専用シャッターを備え、最高毎秒14コマで撮影できます。通常のNew F-1へ一般的なモータードライブを付けただけのモデルではありません。

中古品の商品名に「ハイスピード」と記載されている場合は、本物の専用モデルなのか、通常のNew F-1にモータードライブを付けたものなのか確認しましょう。

初代Canon F-1との違い

初代F-1とNew F-1は、どちらもFDマウントを採用したプロ向けシステム一眼レフです。

しかし、主要な機構には大きな違いがあります。

項目初代F-1New F-1
発売年1971年1981年
シャッター機械式機械・電子ハイブリッド
最高速度1/2000秒1/2000秒
基本測光中央部分測光スクリーンで3方式を選択
AE専用アクセサリーで対応ファインダー・駆動装置でシステムAE
フォーカシングスクリーン交換式交換式・測光方式も変更
ファインダー交換式新設計のFNシリーズ
本体重量約845g・後期型約795g・標準ファインダー付き

初代F-1用のファインダー、スクリーン、モータードライブなどは、New F-1用アクセサリーと基本的に別系統です。New F-1の高機能化に伴い、旧F-1システムとのアクセサリー互換性は維持されませんでした。

中古のCanon New F-1を購入するときの注意点

付属するファインダーを確認する

中古価格と機能を大きく左右するのがファインダーです。

アイレベルファインダーFNとAEファインダーFNは外観が似ていますが、利用できるAE機能が異なります。

ファインダーなしのボディーも流通しているため、次の点を確認しましょう。

  • ファインダーが付属しているか
  • アイレベルFNかAEファインダーFNか
  • 取り付けロックが正常か
  • 接点に腐食や汚れがないか
  • プリズムにクモリや腐食がないか
  • 露出情報が正しく表示されるか

フォーカシングスクリーンの種類

装着されているスクリーンの型番を確認します。

スクリーンによってピント合わせの方式だけでなく、中央重点平均、部分測光、スポット測光という測光特性も変わります。

スクリーンを取り外す場合は、表面へ直接触れないようにしましょう。わずかな接触でも傷が付きやすい部品です。

電池室の液漏れと腐食

電池室を開け、白色や緑色の付着物、端子の錆、蓋の破損がないか確認します。

New F-1は一部のシャッター速度を機械式で使用できますが、露出計と低速シャッターには電池が必要です。

新品の4LR44などを入れ、露出計、低速シャッター、セルフタイマー、AE機能が安定して作動するか確認しましょう。

機械制御側と電子制御側の両方を確認する

電池を外した状態で、1/125秒から1/2000秒、B、Xが作動するか確認します。

次に電池を入れ、8秒から1/60秒付近までの低速側が設定に応じて変化するか確認します。

高速側だけ、または低速側だけが動作していても、New F-1として完全な状態とはいえません。

金属製シャッター幕

裏蓋を開け、シャッター幕に次の症状がないか確認します。

  • へこみや変形
  • 強い傷
  • 油の付着
  • 幕同士の重なりの乱れ
  • 走行途中での停止
  • 指や工具で押された跡

シャッター幕は薄く、わずかな変形でも露光むらや走行不良につながる可能性があります。絶対に指で触れないようにしましょう。

露出計と追針

明るい場所と暗い場所へカメラを向け、露出計の指針が変化するか確認します。

絞り、シャッター速度、ISO感度、露出補正を変更したとき、追針や表示が連動することも重要です。

針が動いても測光値が正確とは限りません。正常な露出計やデジタルカメラと比較すると判断しやすくなります。

AEファインダーの動作

AEファインダーFN付きの場合は、シャッターダイヤルをAへ設定し、絞りを変えながら明るさの異なる場所へ向けます。

表示されるシャッター速度と実際の作動時間が変化するか確認しましょう。

ファインダーの表示だけ正常でも、ボディーの電子シャッターが正しく制御されていない場合があります。

AEワインダーやモータードライブ

駆動装置付きの場合は、電池室、接点、モーター、フィルム送りを確認します。

モーター音がしていても、次のコマへ正しく送られない、シャッターがチャージされない、シャッター速度優先AEが作動しない場合があります。

専用の底部カバーや接続部品が欠品していないかも確認しましょう。

FDレンズの自動絞り

FDレンズを装着し、シャッターを切った瞬間に絞り羽根が設定値まで閉じるか確認します。

撮影後には開放位置へ素早く戻る必要があります。

絞り羽根に油が付着している、動きが遅い、A位置へ固定できないレンズでは、マニュアル測光やシャッター速度優先AEの露出が不安定になります。

モルトと裏蓋

裏蓋周辺やミラー上部のモルトを確認します。

劣化したモルトは粉状に崩れたり、粘着質になったりします。裏蓋の遮光材が傷んでいると光線漏れ、ミラー受けが傷んでいるとミラーの停止位置や作動音へ影響する可能性があります。




Canon New F-1はどんな人に向いている?

Canon New F-1は、次のような人に向いています。

  • キヤノン最高級の機械式・電子式一眼レフを使いたい人
  • FDレンズをフィルムで楽しみたい人
  • マニュアル露出と追針式測光が好きな人
  • 電池切れでも一部の速度を使えるカメラを求める人
  • ファインダーやスクリーンを交換したい人
  • スポット測光や部分測光を利用したい人
  • モータードライブを含むシステムカメラに興味がある人
  • 重量感のあるプロ向け一眼レフが好きな人

一方、オートフォーカスやプログラムAEで手軽に撮影したい人には向きません。

AE機能を利用するには、対応するファインダーや駆動装置の知識も必要です。シンプルなマニュアル機として使うこともできますが、システム全体を理解するほど本来の魅力を味わえます。

まとめ

Canon New F-1は、1981年に発売されたキヤノンのプロ向け35mm一眼レフカメラです。

初代F-1の操作思想を受け継ぎながら、機械制御と電子制御を組み合わせたハイブリッドシャッター、交換スクリーンによる3種類の測光方式、交換ファインダーによる絞り優先AE、専用ワインダーによるシャッター速度優先AEなどを実現しました。

標準のアイレベルファインダーFNでは追針式マニュアル露出が基本です。AEファインダーFNやAEモータードライブFNなどを追加することで、用途に応じてカメラの機能を変化させられます。

中古で購入するときは、ファインダーとスクリーンの種類、機械・電子両方のシャッター、露出計、電池室、金属製シャッター幕、FDレンズの自動絞りを確認しましょう。

正常に整備された個体なら、重量感のある堅牢なボディーと、必要な機能を部品の組み合わせによって構築していく、プロ用システムカメラならではの撮影体験を楽しめます。

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