Nikon F-501は、35mmフィルムを使用するオートフォーカス一眼レフカメラです。
1986年に登場し、Nikon F3AFで採用されたレンズ内モーター方式ではなく、カメラ本体のモーターからレンズを駆動する方式を採用しました。後に長く続くニコンAF一眼レフシステムの基礎を築いた、重要なモデルです。
AFだけでなく、プログラムAE、絞り優先AE、マニュアル露出、自動フィルム装填、内蔵モーターによる巻き上げ、DXコード対応なども搭載しています。一方、内蔵フラッシュと自動巻き戻しはありません。
Nikon F-501とは
Nikon F-501は、1986年4月に発売された35mmフォーカルプレーンシャッター式AF一眼レフです。北米では「Nikon N2020」の名称で販売されました。
発売時価格はボディーのみ8万9,000円。1985年発売のMF一眼レフ「Nikon F-301」を基本としながら、TTL位相差検出方式のAFとボディー内AFモーターを加えています。(Nikon)
ニコン初の本格的なボディー駆動AF機
ニコンは1983年にNikon F3AFを発売していましたが、F3AFでは専用レンズ側にモーターを搭載していました。
F-501ではボディー内のモーターからマウント部のカップリングを介してレンズを動かす、いわゆるスクリュードライブ方式を採用しています。レンズを小型化しやすく、複数のAFレンズでボディー側モーターを共用できる方式です。(Nikon)
AFレンズとカメラの間では、マウントの電気接点を通じてCPU同士が情報を交換します。ニコンは新しいAFシステムを導入しながらもFマウントを維持し、従来レンズとの互換性にも配慮しました。(Nikon)
シングルサーボとコンティニュアスサーボAF
F-501は、TTL位相差検出方式のAFを採用しています。測距素子には96個のCCDが使われ、ファインダー中央の測距枠でピントを検出します。
S:シングルサーボAF
シングルサーボAFでは、シャッターボタンを軽く押すとピント合わせが始まります。
合焦するとピントが固定され、合焦表示が出るまで原則としてシャッターを切れないフォーカス優先方式です。静止した人物、風景、建物、商品などの撮影に適しています。
C:コンティニュアスサーボAF
コンティニュアスサーボAFでは、シャッターボタンを半押ししている間、カメラがピント検出を続けます。
被写体が動いている場合や、撮影者との距離が変化する場面に向いたモードです。シングルサーボとは異なり、合焦表示が出ていない状態でもシャッターを切れます。
現在のAF一眼レフと比べると測距点は中央のみですが、静止被写体用と動体用を切り替えられる点は、初期のAF一眼レフとして本格的な仕様です。
マニュアルフォーカスとフォーカスエイド
フォーカスモードを手動へ切り替えれば、通常のMF一眼レフとしても使用できます。
対応レンズでは、ファインダー内の左右の矢印と合焦表示を見ながらフォーカスリングを回すフォーカスエイドを利用可能です。取扱説明書では、AFニッコールのほか、原則として開放F4.5以上の明るさを持つ対応ニッコールやシリーズEレンズで利用できるとされています。
フォーカシングスクリーンは中央測距枠付きのB型クリアマットが標準です。別売りのE型やJ型へ交換することもできます。
5種類の露出モード
F-501には、次の露出モードが搭載されています。
- P DUAL:焦点距離などに応じて制御するデュアルプログラム
- P:標準プログラム
- P HI:高速シャッターを優先するプログラム
- A:絞り優先AE
- M:マニュアル露出
プログラムAEでは絞りとシャッター速度をカメラが設定します。Aモードではレンズの絞りリングでF値を選び、カメラがシャッター速度を決定。Mモードでは絞りとシャッター速度の両方を撮影者が設定します。
シャッター速度を優先し、カメラが絞りを決める通常のシャッター速度優先AEは搭載していません。
中央重点測光を採用
測光素子にはSPDを使用しています。
マニュアル露出ではTTL開放中央重点測光を行い、ファインダー内のLEDで設定速度と適正速度を比較できます。AE撮影では撮影時の光量をフィードバックし、露出を制御する方式です。測光範囲はISO100・F1.4レンズ使用時でEV1~19となっています。
露出補正は最大±2EVの範囲を1/3EV刻みで設定できますが、使用するフィルム感度によって実際の補正範囲が変わります。
最高1/2000秒の電子シャッター
F-501には、電子制御式の金属幕縦走りフォーカルプレーンシャッターが搭載されています。
AE撮影では1秒から1/2000秒までを無段階制御し、マニュアル露出では1秒から1/2000秒までとBを選択できます。シャッターボタンは電磁式です。
電子制御式なので、撮影には電池が必要です。電池を使わずにシャッターを切れる機械式予備速度はありません。
Nikon Fマウントとレンズ互換性
レンズマウントはNikon Fマウントです。
AF撮影には、ボディー内モーターで駆動できる初期のAFニッコールが適しています。F-501と同時期には、50mm F1.8、35-70mm F3.3-4.5、70-210mm F4などのAI AF Nikkorが展開されました。(Nikon)
AI・AI-SニッコールやシリーズEレンズも、対応範囲内でマニュアルフォーカス撮影に使用できます。ただし、レンズによってプログラムAEやフォーカスエイドに制限があります。取扱説明書には装着できない旧型レンズも記載されているため、非AIレンズを無理に取り付けてはいけません。
後年のAF-S、Gタイプ、Eタイプなども、AFや絞り操作に制限が生じる場合があります。Fマウントというだけで判断せず、レンズごとに互換性を確認しましょう。
自動装填と最高約2.5コマ/秒の巻き上げ
裏蓋を閉じてシャッターボタンを押すと、フィルムが自動的に1コマ目まで送られます。
撮影後の巻き上げもモーター式で、1コマ撮影と連続撮影を切り替えられます。撮影条件によって異なりますが、最高速度は約2.5コマ/秒です。
フィルム終端では自動的に巻き上げが停止しますが、巻き戻しは上部クランクによる手動式です。F-501は「装填と巻き上げは自動、巻き戻しは手動」という過渡期らしい構成になっています。
DXコード付きフィルムはISO25~5000を自動設定し、非DXフィルムはISO12~3200の範囲で手動設定できます。
内蔵フラッシュは非搭載
F-501にはポップアップ式フラッシュがありません。
アクセサリーシューには中央接点、TTL接点、レディライト接点を備え、対応するニコン製スピードライトではTTL自動調光を利用できます。電子フラッシュの同調速度は1/125秒以下です。
AF補助光を備えた専用スピードライトとしてSB-20も用意されました。
Nikon F-501の基本スペック
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 発売年月 | 1986年4月 |
| 北米名称 | Nikon N2020 |
| カメラ形式 | 35mm AF一眼レフ |
| 画面サイズ | 24×36mm |
| レンズマウント | Nikon Fマウント |
| AF方式 | TTL位相差検出・中央1点 |
| AFモード | シングルサーボ・コンティニュアスサーボ |
| MF補助 | フォーカスエイド |
| 露出モード | P DUAL・P・P HI・A・M |
| 測光方式 | TTL中央重点測光など |
| シャッター | 電子制御金属幕縦走り式 |
| シャッター速度 | B、1秒~1/2000秒 |
| フラッシュ同調 | 1/125秒以下 |
| ファインダー倍率 | 約0.85倍 |
| ファインダー視野率 | 約92% |
| フィルム感度 | DX:ISO25~5000/手動:ISO12~3200 |
| フィルム装填 | 自動 |
| フィルム巻き上げ | 内蔵モーター |
| 連続撮影 | 最高約2.5コマ/秒 |
| フィルム巻き戻し | 手動 |
| セルフタイマー | 電子式・約10秒 |
| 電源 | 単4形電池4本 |
| サイズ | 約148.5×97.5×54.5mm |
| 重量 | 約610g・ボディーのみ |
別売りのバッテリーホルダーMB-3を装着すると、単3形電池4本も使用できます。
Nikon F-301との違い
F-301は、F-501の前年に登場したマニュアルフォーカス一眼レフです。
両機とも自動フィルム装填、モーター巻き上げ、DXコード、複数のAEモードを備えていますが、F-501にはボディー駆動式AF、シングル/コンティニュアスサーボ、フォーカスエイドが追加されています。(Nikon)
MFレンズを中心に使うならF-301、初期のAFニッコールとAF一眼レフの発展史を楽しみたいならF-501が候補になります。
中古のNikon F-501を購入するときの注意点
単4形電池室
底部の電池室を開き、液漏れ、白色や緑色の腐食、接点の錆、電池ホルダーの割れを確認します。
F-501はAF、露出計、シャッター、フィルム巻き上げのすべてを電池で動かします。液晶やLEDが点灯しても、AFや巻き上げ時に電源が落ちる個体には注意が必要です。
ボディー内AFモーター
対応AFニッコールを装着し、近距離、中距離、遠景でAFを試します。
モーターの空転、極端に遅い駆動、途中停止、レンズを認識しない症状がないか確認しましょう。SとCの両モード、フォーカスロック、ファインダー内の合焦表示も点検します。
電子シャッター
Mモードで1秒から1/2000秒まで速度を変え、作動時間が変化するか確認します。
高速側は音だけで精度を判断できません。可能であれば実写またはシャッターテスターで、画面の一部が暗くなる露光むらを確認しましょう。
自動フィルム送り
テスト用フィルムを入れ、自動装填、1コマ送り、連続撮影、カウンター、終端での停止、手動巻き戻しまで確認します。
モーター音がしていても、スプロケットや巻き取り軸が正常に動いているとは限りません。
Nikon F-501はどんな人に向いている?
Nikon F-501は、次のような人に向いています。
- 初期のニコンAF一眼レフを体験したい人
- スクリュードライブ式AFニッコールを所有している人
- S/CのAFモードを使い分けたい人
- プログラムAEと絞り優先AEを利用したい人
- 自動巻き上げと手動巻き戻しの操作を楽しめる人
- F3AFからF4へ続くAF技術の変遷に興味がある人
一方、内蔵フラッシュ、軽量なボディー、多点AF、完全自動巻き戻しを求める人には向きません。
まとめ
Nikon F-501は、1986年に登場したニコン初の本格的なボディー駆動式AF一眼レフです。
TTL位相差検出AF、シングル/コンティニュアスサーボ、フォーカスエイド、3種類のプログラムAE、絞り優先AE、最高1/2000秒の電子シャッター、自動フィルム装填とモーター巻き上げを搭載しました。
Fマウントを維持したまま、ボディーとレンズのCPU通信、AFカップリング、DXコードなどを導入したことは、後のニコンAF一眼レフへつながる重要な一歩です。
中古で購入するときは、電池室、ボディー内AFモーター、合焦表示、電子シャッター、自動フィルム送りを重点的に確認しましょう。正常に動作する個体なら、1980年代半ばならではのAF技術と、ニコンらしいFマウントの継続性を楽しめる一台です。









