RICOH XR-P MULTI-PROGRAMは、35mmフィルムを使用するマニュアルフォーカス一眼レフカメラです。
1984年に登場し、3種類のプログラムAE、絞り優先AE、シャッター速度を基準とするAE、マニュアル露出、テレビ画面撮影用のTVモードなどを搭載しました。
撮影モードの豊富さに対して、フィルムの巻き上げと巻き戻しは手動式。電子制御と機械操作が混在する、1980年代らしい多機能一眼レフです。
RICOH XR-P MULTI-PROGRAMとは
RICOH XR-Pは、1984年7月に発売された電子制御式の35mm一眼レフです。ボディーのみの発売時価格は6万6,000円で、標準レンズとしてRikenon P 50mm F2や50mm F1.7などが用意されました。(RICOH IMAGING)
リコー公式資料では、3種類のプログラムを内蔵した世界初のマルチプログラム一眼レフとされています。単に露出をカメラ任せにするのではなく、被写体や表現に応じてプログラムの傾向を変更できることが特徴です。(RICOH IMAGING)
3種類のマルチプログラムAE
プログラムAEを使用する場合は、シャッターダイヤルを「A」、Rikenon Pレンズの絞りリングを「P」へ合わせます。そのうえで、ボディー上面のセレクターから次の3種類を選択します。(Butkus)
PD:被写界深度を優先
PDは絞りを小さくし、ピントが合って見える範囲を広げるプログラムです。
風景、建築物、集合写真、接写など、手前から奥まで鮮明に写したい場面に向いています。ただし、暗い場所ではシャッター速度が低下しやすくなります。
P:標準プログラム
Pは、絞りとシャッター速度を平均的に組み合わせる一般撮影用プログラムです。
旅行、街中のスナップ、家族写真など、特定の効果を強く求めない撮影に適しています。
PA:高速シャッター・開放側を重視
PAは、速いシャッター速度と開放寄りの絞りを選びやすいプログラムです。
スポーツや乗り物などの動体撮影に加え、背景をぼかした人物撮影にも利用できます。取扱説明書では、動体撮影とポートレートの両方に適したモードとして説明されています。(Butkus)
絞り優先AEにも対応
シャッターダイヤルを「A」に設定し、レンズ側で任意の絞りを選ぶと、絞り優先AEとして使用できます。
カメラが被写体の明るさに応じてシャッター速度を自動設定するため、背景のぼけ方や被写界深度を撮影者が管理できます。(Butkus)
オート時のシャッター速度は16秒から1/2000秒です。暗い場所では長時間露光になる可能性があるため、ファインダー内の低速警告を確認しましょう。(Butkus)
独特のシャッターバイアス・プログラム
Rikenon PレンズをP位置へ設定し、シャッターダイヤルから速度を選ぶと「シャッターバイアス・プログラム」を利用できます。
たとえば1/250秒へ設定すると、明るさに余裕がある場合は1/250秒以上の速度を使用します。光量が不足した場合は、露出不足を避けるため、設定値より遅い速度へ自動的に移行します。(Butkus)
そのため、選んだ速度へ完全に固定される一般的なシャッター速度優先AEとは少し異なります。「できるだけ指定速度より遅くしない」ことを優先するモードと考えると分かりやすいでしょう。
TVモードはテレビ画面撮影用
XR-Pの「TV」は、シャッター速度優先を意味する一般的なTvモードではありません。ブラウン管テレビやモニター画面を、走査線による横縞を抑えて撮影するための専用モードです。
プログラムセレクターとの組み合わせにより、次の速度が設定されます。
| 設定 | 用途 | シャッター速度 |
|---|---|---|
| TV+PD | PAL・SECAM | 1/25秒 |
| TV+P | NTSC | 1/30秒 |
| TV+PA | 静止画テレビ・モニター | 1/4秒 |
日本のNTSC方式では、基本的にTV+Pを使用します。いずれも低速になるため、三脚の使用が前提です。(Butkus)
液晶テレビや有機ELディスプレイでは表示方式が異なるため、現在の画面撮影で同じ効果が得られるとは限りません。
リケノンPマウントを採用
レンズマウントはリケノンPマウントです。
基本形状はKマウント系で、一般的なKマウントレンズも装着できます。ただし、通常のKマウントレンズでは絞り優先AEとマニュアル露出に限定され、プログラムAEは使用できません。(Butkus)
XR-Pの機能をすべて利用するには、絞りリングに「P」位置を備えたRikenon Pレンズが必要です。
中古購入時には、ボディーだけでなく、付属レンズが本当にP対応か確認しましょう。「XR Rikenon」でもP位置を持たないレンズがあります。
見やすさを重視したファインダー表示
ファインダーには、シャッター速度をメーターの指針のように表示するLCDが搭載されています。
設定速度、カメラが推奨する速度、プログラム、AEロック、露出補正、オーバー・アンダー警告、バッテリー警告などを確認できます。絞り値は光学窓から読み取る方式です。(Butkus)
ファインダー視野率は縦横約93%、倍率は50mm F1.4装着時で約0.88倍。中央にはスプリットイメージとマイクロプリズムが配置されています。(Butkus)
多重露出とインターバルタイマー
XR-Pには、専用レバーを使った多重露出機構が搭載されています。
レバーの第1位置では1回の追加露光後に通常状態へ戻り、第2位置では解除するまで同じコマへ繰り返し露光できます。(Butkus)
さらに、2秒・15秒・60秒のインターバルタイマーも内蔵しています。別売りのXRワインダー2またはモータードライブと組み合わせれば、植物の成長や定点観測などを一定間隔で連続撮影できます。XRワインダー2使用時の連写速度は約2コマ/秒です。(Butkus)
専用フラッシュによるTTL調光
専用のRICOH SPEEDLITE 300Pを使用すると、フィルム面から反射した光を測定するダイレクト測光式の自動フラッシュ撮影に対応します。
プログラムAEではシャッター速度と絞りが自動設定され、適正発光時にはファインダー内の表示が点滅します。一般的なフラッシュを使用する場合の同調速度は1/125秒以下です。(Butkus)
RICOH XR-Pの基本スペック
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 発売年月 | 1984年7月 |
| カメラ形式 | 35mm電子制御式一眼レフ |
| 画面サイズ | 24×36mm |
| マウント | リケノンPマウント |
| ピント合わせ | マニュアルフォーカス |
| 露出モード | マルチプログラムAE、絞り優先AE、シャッターバイアスAE、マニュアル、TV |
| 測光方式 | TTL開放・中央重点平均測光 |
| 測光範囲 | ISO100・50mm F1.4でEV0~18 |
| 露出補正 | ±2EV・1/3EV刻み |
| シャッター | 電子制御金属幕縦走り式 |
| オート時 | 16秒~1/2000秒 |
| マニュアル時 | B、TV、4秒~1/2000秒 |
| フラッシュ同調 | 1/125秒以下 |
| フィルム感度 | ISO12~3200・手動設定 |
| ファインダー視野率 | 約93% |
| ファインダー倍率 | 約0.88倍 |
| フィルム巻き上げ | 手動レバー |
| フィルム巻き戻し | 手動クランク |
| 多重露出 | 対応 |
| 電源 | LR44×4、SR44×4、CR-1/3N×2 |
| サイズ | 約136×88×51mm |
| 重量 | 約505g・ボディーのみ |
主な仕様はリコー公式資料と取扱説明書に基づきます。(RICOH IMAGING)
XR-20SPとの違い
1985年に登場したXR-20SPは、XR-Pから3種類のマルチプログラム機能を省略したコストダウンモデルです。
基本的なシャッター、リケノンPマウント、絞り優先AEなどは共通していますが、XR-P最大の特徴であるPD・P・PAの使い分けはできません。マルチプログラムを体験したい場合はXR-Pを選ぶ必要があります。(RICOH IMAGING)
中古で購入するときの注意点
電池室と電子シャッター
LR44またはSR44を4個入れ、電源、ファインダー表示、測光、シャッターを確認します。
液漏れや接点腐食がある個体では、表示が出てもシャッターが不安定になる可能性があります。オート時の低速から1/2000秒まで、明るさに応じて速度が変化することを確認しましょう。
ファインダー内LCD
シャッター速度表示に欠け、薄れ、液晶漏れがないか確認します。
AEロックボタンを押すと表示照明も作動するため、暗い場所で照明が点灯することも点検します。
Rikenon Pレンズとの連動
絞りリングがP位置へ確実に固定され、PD・P・PAで表示や絞りの動きが変化するか確認します。
通常のKマウントレンズだけでは、XR-Pのプログラム機能が正常か判断できません。
巻き上げと多重露出レバー
巻き上げレバー、フィルムカウンター、巻き取り軸、多重露出レバーを確認します。
多重露出機構が半端な位置で固着していると、フィルムが送られず、同じコマへ重ねて撮影してしまう可能性があります。
RICOH XR-Pはどんな人に向いている?
RICOH XR-Pは、3種類のプログラムAEを使い分けたい人、P・A・Mを備えたMF一眼レフを探している人、Rikenon Pレンズを活用したい人に向いています。
また、TVモード、多重露出、インターバルタイマーなど、1980年代の多機能化競争を象徴する仕組みに興味がある人にも魅力的です。
一方、電池なしで撮影できる機械式カメラや、単純な操作だけを求める人には向きません。
まとめ
RICOH XR-P MULTI-PROGRAMは、1984年に登場した多機能な35mm一眼レフです。
PD・P・PAの3種類のプログラムAEを中心に、絞り優先AE、シャッターバイアスAE、マニュアル露出、テレビ画面撮影用TVモード、多重露出、インターバルタイマーを搭載しています。
中古では電子シャッターとファインダー内LCD、電池室、Rikenon Pレンズとの連動、多重露出機構を重点的に確認しましょう。
正常に動作する個体なら、豊富な露出モードを選びながら、ピント合わせとフィルム操作は自分の手で行うという、電子化初期ならではの撮影を楽しめる一台です。









