Nikon S4は、35mmフィルムを使用するレンズ交換式レンジファインダーカメラです。
1959年3月、上位機のNikon S3を簡略化したモデルとして発売されました。50mmと105mmのブライトフレーム、連動距離計、最高1/1000秒の機械式シャッターを備える一方、セルフタイマーやモータードライブ連動機構などを省いて価格を抑えています。(Nikon)
Nikon S4とは
Nikon S4が登場した1959年は、高級カメラ市場の中心がレンジファインダーから一眼レフへ移り始めた時期です。
当時は低価格なカメラの販売が伸び、初期の一眼レフも台頭していました。そこで日本光学工業は、S3をベースに機能を整理したS4を投入します。国内価格はNIKKOR-H.C 5cm F2とケース付きで5万2,000円でした。(Nikon)
同じ1959年にはNikon Fも登場しています。S4はニコンレンジファインダーの完成期に生まれながら、一眼レフ時代への転換点にも位置するモデルです。(Nikon)
Nikon S3から機能を省いた普及モデル
S4の基本構造はNikon S3と共通していますが、価格を下げるため、次の機能が省略されました。
- 35mmレンズ用ブライトフレーム
- セルフタイマー
- フィルムカウンターの自動復帰
- モータードライブ連動機構
外観では、ボディー前面にセルフタイマーレバーがないことが、S3との分かりやすい識別点です。フィルムカウンターは裏蓋を開けても自動的に戻らないため、フィルム装填時に手動で合わせます。(Nikon)
機能は簡略化されていますが、距離計、交換レンズマウント、シャッターなど、撮影に必要な基本性能は維持されています。
50mmと105mmに対応する等倍ファインダー
Nikon S4のファインダーには、5cmと10.5cm用のブライトフレームが常時表示されます。
S3には3.5cm、5cm、10.5cmの3本が表示されますが、S4では3.5cmフレームが省略されました。35mmレンズを使用する場合は、外付けファインダーをアクセサリーシューへ装着するのが基本です。(Nikon)
ファインダー倍率は約1倍で、片目でファインダーをのぞきながら、もう片方の目も開けて被写体を見る撮影方法に向いています。
ただし、S4の50mm・105mmフレームには撮影距離に連動する自動パララックス補正がありません。近距離では、ファインダーで見えた範囲と実際に写る範囲にずれが生じるため、構図へ余裕を持たせる必要があります。(Nikon)
二重像合致式の連動距離計
ピント合わせには、ファインダー内の二重像を重ねる連動距離計を使用します。
ピントが外れていると中央部分の被写体が二重に見え、フォーカシングホイールまたはレンズ側のピントリングを回すと像が移動します。二つの像が重なった位置でピントが合います。
一眼レフのように撮影レンズを通した像を見る方式ではないため、絞りによる背景のぼけ方や被写界深度はファインダー上では確認できません。一方、撮影時にファインダー像が消えず、シャッターの時間差も短いことがレンジファインダーの利点です。
内爪と外爪を備えたNikon Sマウント
レンズマウントには、Contax型を基礎とするNikon Sバヨネットマウントが採用されています。(Nikon)
マウントには内爪と外爪があり、一般的な50mmレンズは内爪へ装着します。内爪用レンズは独立したヘリコイドを持たず、ボディー側のフォーカシングホイールでピントを調節する仕組みです。
広角や望遠などの多くは外爪へ取り付け、レンズ鏡筒のフォーカスリングを操作します。(Nikon Museum)
代表的な交換レンズには、次のようなNIKKORがあります。
- NIKKOR-H 5cm F2
- NIKKOR-S 5cm F1.4
- W-NIKKOR 3.5cm F2.5
- NIKKOR-P 8.5cm F2
- NIKKOR-P 10.5cm F2.5
- NIKKOR-Q 13.5cm F3.5
50mmと105mm以外では、焦点距離に対応する外付けファインダーが必要になる場合があります。ニコンはSシリーズ用として広角から望遠まで多数の交換レンズを展開していました。(Nikon)
最高1/1000秒の機械式シャッター
S4には、横走り式のフォーカルプレーンシャッターが搭載されています。
シャッター速度はT、B、1秒から1/1000秒まで。露出計や電子制御を備えていないため、電池を使わずに撮影できます。(Nikon)
S4のシャッター幕には布幕が使用されました。同時期の一部Nikon SPやS3ではチタン幕が採用されていますが、S4は布幕仕様として製造されています。(Nikon)
露出計は内蔵されていません。単体露出計、スマートフォンの露出計アプリ、または経験値からシャッター速度と絞りを設定します。
Nikon S4の基本スペック
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 発売年月 | 1959年3月 |
| カメラ形式 | 35mmレンジファインダーカメラ |
| 画面サイズ | 24×36mm |
| レンズマウント | Nikon Sバヨネットマウント |
| ピント合わせ | 二重像合致式連動距離計 |
| ファインダー | 等倍アルバダ式 |
| ブライトフレーム | 50mm・105mm |
| 露出計 | なし |
| 露出方式 | マニュアル |
| シャッター | 横走り布幕フォーカルプレーン |
| シャッター速度 | T、B、1秒~1/1000秒 |
| フィルム巻き上げ | 手動レバー |
| フィルム巻き戻し | 手動クランク |
| フィルムカウンター | 手動復帰式 |
| セルフタイマー | なし |
| モータードライブ | 標準状態では非対応 |
| 電源 | 不要 |
主な仕様はニコン公式資料に基づきます。(Nikon)
Nikon S3・SPとの違い
| 項目 | Nikon S4 | Nikon S3 | Nikon SP |
|---|---|---|---|
| ファインダー枠 | 50・105mm | 35・50・105mm | 28~135mm |
| セルフタイマー | なし | あり | あり |
| モータードライブ | 連動部なし | 対応 | 対応 |
| カウンター復帰 | 手動 | 自動 | 自動 |
| 位置付け | 簡略モデル | 標準モデル | 上位モデル |
S4は機能面では下位モデルですが、ファインダー内の情報が少なく、50mmを中心に使う場合はかえって構図へ集中しやすいとも考えられます。
一方、35mmを頻繁に使用するならS3、複数の焦点距離を外付けファインダーなしで使いたいならSPのほうが便利です。(Nikon)
中古で購入するときの注意点
布製シャッター幕
裏蓋を開き、シャッター幕に穴、ひび割れ、しわ、カビ、強い劣化がないか確認します。
明るい場所で幕を透かし、小さな穴から光が漏れていないか調べましょう。低速で幕が途中停止する個体や、高速で露光むらが出る個体は整備が必要です。
距離計
遠景へピントを合わせ、レンズの無限遠位置で二重像が一致するか確認します。
縦方向のずれ、二重像の薄さ、フォーカシングホイールの固着にも注意が必要です。大口径の5cm F1.4を使用する場合は、わずかな距離計のずれもピンぼけにつながります。
ファインダー
ファインダーのクモリ、カビ、ブライトフレームの薄れを確認します。
S4は50mmと105mmのフレームが常時見える構造です。どちらかが極端に見えにくい個体は、内部の汚れや反射面の劣化が考えられます。
フィルム送りとカウンター
テスト用フィルムを装填し、巻き上げレバー、スプロケット、巻き取り軸、巻き戻しクランクを確認します。
カウンターは自動復帰しないため、装填後に手動で0へ合わせられることも確認しましょう。
Nikon S4はどんな人に向いている?
Nikon S4は、NIKKORのレンジファインダー用レンズを使いたい人、50mmを中心にシンプルな撮影を楽しみたい人、電池不要の機械式カメラを求める人に向いています。
また、Nikon Fと同じ1959年に登場した、レンジファインダー時代末期のニコンを収集したい人にも魅力的です。
一方、内蔵露出計、セルフタイマー、35mm用フレーム、自動パララックス補正を求める人には向きません。
まとめ
Nikon S4は、1959年に登場したNikon S3の簡略モデルです。
50mmと105mmに対応する等倍ファインダー、連動距離計、Nikon Sマウント、最高1/1000秒の機械式布幕シャッターを備えながら、35mmフレーム、セルフタイマー、カウンターの自動復帰、モータードライブ連動機構を省略しました。
中古では、布幕の穴や走行不良、距離計のずれ、ファインダーのクモリ、フィルム送りを重点的に確認する必要があります。
正常に整備された個体なら、シンプルな操作と明快な等倍ファインダーを通じて、ニコンレンジファインダー末期の精密な機械操作を味わえる一台です。









