NIKON S3

NIKON S3

NIKON S3は、日本光学工業(現在のニコン)が1958年に発売した35mmフィルム用レンジファインダーカメラです。

1957年に登場した最高級機Nikon SPの基本構造を受け継ぎながら、ファインダー機構を簡略化したモデルとして登場しました。

しかし単なる廉価版ではありません。

35mm・50mm・105mmの3種類の交換レンズに対応する等倍ファインダーを搭載し、機械式フォーカルプレーンシャッター、交換レンズ式のNikon Sマウント、セルフタイマーなど、本格的な撮影機能を備えています。

さらに2000年にはニコン自身によって「Nikon S3 Year 2000 Millennium Model」として復刻されました。

半世紀近く経ってからメーカーが再生産するほど評価された、ニコンを代表するレンジファインダーカメラのひとつです。

目次

NIKON S3とは

Nikon S3は1958年3月に発売されました。

ニコン公式資料によれば、S3はNikon S2の後継として開発され、最高級モデルNikon SPより下の価格帯をカバーするために投入されたモデルです。

発売当時の国内価格は、NIKKOR-S.C 5cm F1.4と革ケース付きで86,000円。

これは旧モデルNikon S2と同じ価格でした。

S3の登場によってS2は役目を終え、1958年6月に生産終了となっています。

代表的な仕様は次のとおりです。

  • カメラ形式:35mm連動距離計式レンジファインダーカメラ
  • 使用フィルム:35mmフィルム
  • 画面サイズ:24×36mm
  • レンズマウント:Nikon Sマウント
  • シャッター:横走りフォーカルプレーンシャッター
  • シャッター速度:T、B、1秒~1/1000秒
  • ファインダー:等倍1:1
  • 内蔵フレーム:35mm、50mm、105mm
  • ピント合わせ:二重像合致式レンジファインダー
  • 露出計:なし
  • フィルム送り:手動レバー
  • フィルム巻き戻し:手動
  • セルフタイマー:あり
  • フラッシュ同調:約1/60秒以下
  • ボディサイズ:約136×81×43mm
  • ボディ重量:約590g

なおサイズや重量、シャッター仕様については、オリジナルS3を極力忠実に再現した2000年復刻版のニコン公式仕様を参照できます。復刻版ではフィルム感度表示や細部の材質などに変更がありますが、基本的なカメラ構造はオリジナルを再現したものです。

Nikon SPの弟分として登場

Nikon S3を理解するには、前年の1957年に登場したNikon SPとの関係を見るのが分かりやすいでしょう。

Nikon SPは当時の日本光学が持つ技術を投入した最高級レンジファインダーでした。

最大の特徴は、多数の焦点距離に対応する非常に複雑なファインダーです。

SPでは28mmから135mmまで幅広いレンズへ対応するため、複数のファインダー機構や切り替え式ブライトフレームを備えていました。

一方、S3ではそこを整理。

対応する内蔵フレームを、

35mm
50mm
105mm

の3種類へ絞りました。

これによってSPより構造を簡略化しながら、日常的によく使われる広角・標準・中望遠をボディ単体でカバーできるカメラになっています。

つまりS3は、

「SPほど全部入りではない。しかし実用上欲しいところはしっかり残した。」

というモデルです。

世界初の「35mm対応・等倍1:1ファインダー」

Nikon S3最大の特徴がファインダーです。

ニコン公式ではS3について、

35mmレンズに対応する世界初の等倍1:1ファインダー

を備えたレンジファインダーカメラと説明しています。

等倍1:1とは、ファインダーを覗いたときの像が肉眼とほぼ同じ大きさに見えるということです。

これはスナップ撮影で大きなメリットがあります。

右目でファインダーを見る。

左目はそのまま外を見る。

すると両目の像の倍率差が少ないため、周囲の状況とファインダー像を自然につなげて見ることができます。

慣れれば、

両目を開けたまま撮影

することも可能です。

街中で被写体の動きを見ながら構図を決めるようなスナップ撮影と非常に相性のよいファインダーです。

3種類のフレームが常時見える

S3のファインダーには、

  • 35mm
  • 50mm
  • 105mm

のブライトフレームが用意されています。

しかしSPのように選択した焦点距離だけを表示する方式ではありません。

S3では基本的に3種類のフレームがファインダー内へ表示されます。

そのため初めて覗くと、

「線が多い!」

と感じるかもしれません。

SPでは選択式フレームと自動パララックス補正機構を備える一方、S3は固定フレームとパララックス補助目盛りを使う、より簡素な仕組みです。

しかし35mm・50mm・105mmを頻繁に交換するユーザーなら、レンズ交換のたびに外付けファインダーを付け替える必要がないという大きなメリットがあります。

パララックスには注意

レンジファインダーカメラでは、撮影レンズとファインダーが別の位置にあります。

そのため近距離では、

ファインダーで見えた構図

と

実際にフィルムへ写る構図

にズレが発生します。

これがパララックスです。

最高級機SPでは距離計と連動してフレームを動かし、パララックスを自動補正する高度な仕組みを採用していました。

S3はそこを簡略化しているため、近距離撮影ではフレーム内の補助マークなどを参考に構図を補正する必要があります。

遠景や一般的なスナップでは大きな問題になりにくいものの、人物の顔を画面いっぱいに撮るような場合には意識したいポイントです。

一眼レフではない

現在「Nikon」と聞けば、

Nikon F
F2
F3
FM2

といった一眼レフを思い浮かべる人も多いでしょう。

しかしS3は一眼レフではありません。

レンジファインダーです。

撮影レンズを通してファインダーを見るのではなく、ボディに搭載された独立したファインダーを使用します。

ピント合わせはファインダー中央付近に見える二重像を一致させる方式です。

被写体を見る。

二重像を合わせる。

一致したところでシャッター。

この撮影方法は一眼レフとはかなり違います。

Nikon F登場直前のレンジファインダー

S3が登場したのは1958年。

その翌年、1959年には歴史的名機、

Nikon F

が発売されます。

つまりS3は、ニコンの主力高級カメラが、

レンジファインダー
↓
一眼レフ

へ切り替わる直前に登場したカメラです。

ニコン自身もSPやS3について、レンジファインダーカメラとして機構的にはほぼ完成域へ達していた一方、135mm以上の望遠レンズでは一眼レフ方式のほうが有利だったと振り返っています。

広角や標準ではレンジファインダーが小型で使いやすい。

しかし超望遠では撮影レンズそのものを覗ける一眼レフが圧倒的に便利。

この時代を境にプロ用カメラの主役がNikon Fへ移っていきます。

それでもS3は消えなかった

普通なら、

「Nikon Fが出たからS3は終了」

で歴史が終わりそうです。

ところが終わりません。

ニコンのレンジファインダー機は報道写真家などから根強い支持を受け続けました。

そして1965年には、

Nikon S3ブラック

が限定2,000台で再生産されています。

さらにニコン公式「ニッコール千夜一夜物語」では、この再生産S3用としてNIKKOR-S 50mm F1.4が用意された歴史も紹介されています。

一眼レフ時代になっても、

広角・標準レンズ用の小型レンジファインダー

には依然として価値があったわけです。

Nikon Sマウントを採用

S3はNikon Sマウントを採用しています。

これは後のNikon Fマウントとはまったく別規格です。

したがって、

Nikon S3にNIKKOR 50mm F1.4だから、Nikon F用レンズが付く

わけではありません。

SマウントはレンジファインダーNikon専用のバヨネットマウントです。

特徴的なのが、

内爪と外爪、2種類のバヨネットを持つこと。

標準50mmクラスでは内側のバヨネットを利用するレンズが多く、望遠や一部広角では外側のバヨネットを使用します。

50mmレンズにはピントリングがない?

S3用の標準NIKKORを見ると、初めての人は少し戸惑うかもしれません。

一部の50mmレンズには一般的なレンズのようなフォーカスヘリコイドや距離目盛りがほとんどありません。

なぜなら、

ピント合わせ機構がカメラボディ側にあるから。

です。

S3本体のマウント部分にはヘリコイドが組み込まれており、ボディ上面前方にあるギザギザのフォーカシングホイールを回すことで、内爪式レンズそのものを前後させます。

つまり、

普通のカメラ
→ レンズのピントリングを回す

Nikon S3+内爪50mm
→ カメラのギアを回す

です。

この独特な操作感もSシリーズの魅力です。

レンズ鏡筒を直接回してもピント合わせ可能

内爪式50mmレンズでは、ボディ側のギアだけでなくレンズ鏡筒そのものを回してピントを合わせることもできます。

距離目盛りはボディ側に設けられています。

慣れると非常に素早く操作できます。

特にS3の等倍ファインダーと組み合わせれば、

被写体を見る
↓
フォーカシングホイールで二重像を合わせる
↓
そのまま撮る

という軽快なスナップ撮影が可能です。

SマウントとContaxマウントは「似ているが同じではない」

ここは中古レンズで要注意です。

Nikon SマウントはZeiss Ikon Contaxのレンジファインダーマウントを参考にした機構で、物理的には非常によく似ています。

そのためレンズによっては装着できてしまいます。

しかし、

装着できる=正確にピントが合う

とは限りません。

NikonとContaxでは距離計・ヘリコイドの設計値にわずかな差があり、特に50mm以上のレンズでは近距離から無限遠まで正しくピントが合わない場合があります。

中古市場で、

「Contax RF/Nikon S対応」

などと書かれていても、どちら向けに調整されたレンズなのか確認したほうが安全です。

露出計は搭載されていない

Nikon S3にはTTL露出計も内蔵露出計もありません。

完全に機械式のカメラです。

撮影者自身が、

フィルム感度を把握
↓
露出計で測る
↓
シャッター速度を設定
↓
絞りを設定
↓
撮影

という操作を行います。

現在使う場合は、

  • 単体露出計
  • スマートフォンの露出計アプリ
  • Sunny 16などの経験則

を利用できます。

電池がなくてもシャッターそのものは動きます。

最高1/1000秒の機械式シャッター

S3は機械式フォーカルプレーンシャッターを採用しています。

2000年復刻版では、オリジナルの構造を再現したゴム引きシルク製の横走りシャッター幕が採用されました。

シャッター速度は、

T
B
1秒
1/2
1/4
1/8
1/15
1/30
1/60
1/125
1/250
1/500
1/1000秒

です。

電池不要で1秒から1/1000秒まで。

1950年代の機械式カメラとして非常に本格的な仕様です。

「ささやくような」シャッター

ニコンはS3復刻版について、オリジナルS3の布幕シャッターによる静かで柔らかな作動音まで再現したと説明しています。

英語資料では、

“whispering shutter”

と表現されています。

一眼レフのように大型ミラーが跳ね上がらないため、シャッター音は比較的控えめ。

街中でスナップを撮るレンジファインダーらしい特徴です。

35mm・50mm・105mm以外も使える

S3の内蔵ファインダーが対応するのは35mm、50mm、105mmですが、Sマウントにはそれ以外にもさまざまなNIKKORが存在します。

たとえば、

  • 21mm
  • 25mm
  • 28mm
  • 35mm
  • 50mm
  • 85mm
  • 105mm
  • 135mm

などです。

Sマウント用NIKKORはさらに超望遠まで展開されました。

ただしS3の内蔵ファインダーにない焦点距離を使う場合は、アクセサリーシューへ外付けファインダーを装着します。

当時は単焦点別ファインダーや、複数焦点距離へ対応するユニバーサルファインダーも用意されていました。

105mmまで内蔵フレームがある意味

S3で面白いのが105mmフレームです。

現在なら35mm・50mmの2本だけでも十分に思えます。

しかし当時のニコンにとって、

NIKKOR-P 10.5cm F2.5

は非常に重要な中望遠レンズでした。

後にNikon F用、さらに一眼レフ用105mm F2.5へ続いていく有名な焦点距離です。

S3ならその105mmを外付けファインダーなしで使用できます。

広角35mm。

標準50mm。

中望遠105mm。

この3本でかなり幅広い撮影をこなせます。

モータードライブにも対応

S3の上位システムとして面白いのが、モータードライブへの対応です。

当時のNikonレンジファインダーにはS-36モータードライブが用意され、対応仕様のボディではフィルムを自動巻き上げして連続撮影することができました。

1950年代のレンジファインダーでモータードライブ。

現在考えてもかなり本格的です。

ニコンがSシリーズを一般家庭用カメラだけではなく、報道・プロ用途まで視野に入れたシステムとして作っていたことが分かります。

S3Mという半切判の怪物も登場

S3から派生した非常に特殊なモデルが、

Nikon S3M

です。

1960年4月発売。

S3をベースに画面サイズを18×24mmへ変更した、いわゆるハーフ判モデルです。

しかし目的はフィルム節約ではありません。

高速連写です。

専用モータードライブ使用時には通常6コマ/秒、特別調整ではさらに高速な撮影まで可能とされました。

35mmフィルム1本で72枚撮影でき、スポーツなどの動作解析写真に利用されました。

S3という一台から、こんな特殊機まで派生しています。

1965年のブラックS3

オリジナルS3を語るうえで外せないのが、

1965年限定再生産のブラックモデル。

すでにNikon Fを中心とする一眼レフ時代になっていましたが、報道関係者などからレンジファインダーへの需要が残っていたため、S3が限定2,000台で再生産されました。

このモデルにはNIKKOR-S 50mm F1.4が組み合わされました。

現在では通常のクロームS3とは別に、コレクター人気の高い存在となっています。

そして2000年、本当に復刻された

S3最大級の逸話がこれです。

ニコンが2000年にもう一度作りました。

名称は、

Nikon S3 Year 2000 Millennium Model。

単なる外観コピーではありません。

ニコンはオリジナルの設計図を引っ張り出し、製造方法や部品調達まで改めて検討。

水戸ニコンを中心として本格的な再生産プロジェクトが進められました。

注文受付は2000年4月6日から6月30日。

同年10月から出荷され、

約8,000台

が販売されています。

希望小売価格はNikkor-S 50mm F1.4付きで、

480,000円。

復刻カメラとはいえ本気価格です。

「復刻風デザイン」ではなく、本当にS3を再現

S3 Millenniumのすごいところは、

「昔のカメラっぽい新型」

ではないことです。

ニコンはオリジナルS3を可能な限り忠実に再現しました。

等倍ファインダー。

フォーカシングギア。

布幕フォーカルプレーンシャッター。

操作部。

外観。

メーカー自身がほぼ同じカメラをもう一度製造したわけです。

とはいえ完全に同一ではなく、

  • ASA表示→ISO表示
  • フィルムカウンター表記変更
  • ストラップ金具の材質変更
  • 巻き戻し部分の細部変更
  • アクセサリーシューの細部変更
  • レンズをマルチコーティング化

など、2000年時点に合わせた変更も行われています。

2002年にはブラック復刻版まで登場

さらに終わりません。

2002年には、

Nikon S3 LIMITED EDITION BLACK

が登場します。

ブラッククローム仕上げで、

2,000台限定。

希望小売価格はNikkor-S 50mm F1.4付きで530,000円でした。

つまりS3には、

1958年オリジナル
↓
1965年ブラック限定再生産
↓
2000年ミレニアム復刻
↓
2002年ブラック復刻

という、かなり複雑な歴史があります。

中古で「Nikon S3」とだけ書かれていたら、何年のS3なのか確認することが非常に重要です。

オリジナルと復刻版を見分ける

2000年復刻版では、ニコン公式がオリジナルとの差異を公開しています。

比較しやすいポイントとして、

  • ボディ番号の前に「S3」表記
  • フィルム感度表示がISO
  • 距離目盛りがメートル表記へ統一
  • レンズに「Nikon」「MADE IN JAPAN」表記
  • 復刻50mm F1.4はマルチコーティング

などがあります。

1958年製と2000年製では40年以上違います。

当然、中古購入時の考え方も大きく変わります。

中古のNikon S3で確認したいポイント

オリジナルS3は1958年登場。

すでに60年以上経過しています。

特に確認したいのは、

  • シャッター幕
  • シャッター速度
  • 低速シャッター
  • レンジファインダー二重像
  • 距離計の縦ズレ・横ズレ
  • ファインダーのクモリ
  • ブライトフレーム
  • フォーカシングホイール
  • マウントヘリコイド
  • フィルム巻き上げ
  • 巻き戻し
  • セルフタイマー
  • フラッシュ接点
  • ボディ内部の腐食

などです。

シャッター幕は特に重要

S3は布幕フォーカルプレーンシャッターです。

古い個体では、

  • ピンホール
  • 硬化
  • シワ
  • 幕速不良

などが発生している可能性があります。

明るい場所でボディキャップを外し、裏蓋側から幕を確認すると小さな穴が見つかる場合もあります。

ただし無理にシャッター幕へ触れてはいけません。

状態が怪しい場合はレンジファインダーNikonを扱える修理店へ確認を依頼したほうが安全です。

距離計二重像も確認

レンジファインダーで最重要なのが二重像です。

無限遠の被写体へピントを合わせたとき、

二重像がきちんと一致するか

を確認します。

上下方向へズレている。

無限遠でも一致しない。

像が薄すぎる。

こうした症状があると正確なピント合わせが難しくなります。

50mm F1.4のような明るいレンズを開放付近で使うなら、距離計精度は特に重要です。

フォーカシングホイールの重さも確認

Nikon Sシリーズならではのチェックポイントです。

内爪式50mmレンズを装着し、ボディ側のフォーカシングホイールを回してみます。

極端に重い。

引っ掛かる。

途中で固まる。

という場合、ヘリコイドグリスが劣化している可能性があります。

軽快な操作感はS3の魅力なので、実用目的ならここもしっかり見たいところです。

ファインダーの状態で価値が大きく変わる

S3の魅力は何といっても等倍ファインダーです。

そのため、

ファインダーがクモっている。

二重像が薄い。

プリズムやミラーが劣化している。

という個体では魅力が大きく削がれます。

外装がピカピカでも、

ファインダーが見えないS3

では撮影機としてつらい。

中古では外観以上にファインダー内部を確認したいところです。

露出計故障の心配はない

一方、電子式露出計は最初からありません。

なので、

「露出計不動」

という故障項目も存在しません。

電池室の液漏れもありません。

露出は外部で測ればよく、カメラ本体は完全機械式。

適切に整備された個体なら、現在でも十分実写できます。

古い電子カメラとは違う強みです。

Nikon S3は今でも撮るためのカメラか?

もちろんです。

むしろS3はコレクションだけに閉じ込めるには惜しいカメラです。

35mmフィルム。

等倍ファインダー。

50mm F1.4。

機械式シャッター。

二重像式ピント。

フィルム巻き上げレバー。

露出計すらない。

現在のカメラと比べれば不便です。

しかしそのぶん、

撮影者が自分で決める部分が非常に多い。

距離を合わせる。

露出を決める。

構図を決める。

シャッターを切る。

この単純な撮影体験こそ、機械式レンジファインダーの魅力です。

SPではなくS3を選ぶ意味

最高級モデルが欲しいならNikon SPがあります。

対応ファインダーはSPのほうが高機能です。

パララックス補正も高度。

対応焦点距離も多い。

しかしS3にはS3ならではの魅力があります。

それが、

シンプルな等倍ファインダー。

特に35mmや50mmを中心に使うなら、S3のファインダーは非常に魅力的です。

SPの万能性より、

「35・50・105だけでいい。その代わり見やすくシンプルに」

という思想を好むならS3という選択肢があります。




まとめ

NIKON S3は、日本光学工業が1958年3月に発売した35mmレンジファインダーカメラです。

1957年の最高級機Nikon SPをベースに、ファインダー機構を簡略化したモデルとして登場しました。

しかし単なる廉価版ではありません。

最大の特徴は、

35mmレンズに対応する世界初の等倍1:1ファインダー。

そこへ、

  • 35mm
  • 50mm
  • 105mm

の3種類のフレームを備えています。

さらに、

  • Nikon Sマウント
  • 最高1/1000秒の機械式シャッター
  • 連動距離計
  • ボディ側フォーカシング機構
  • モータードライブ対応システム

など、当時のニコン高級機らしい本格的な機構を持っています。

そして何よりS3の歴史を特別なものにしているのが、その後です。

1965年にはブラックS3を2,000台限定で再生産。

2000年にはニコン自身がS3をほぼ丸ごと復刻し、約8,000台を販売。

2002年にはさらにブラック復刻版を2,000台限定で発売しました。

通常、古いカメラは生産終了すれば歴史になります。

Nikon S3は違いました。

ユーザーから忘れられなかったため、メーカー自身が40年以上後にもう一度作った。

それほど魅力を持っていたカメラです。

1958年。

一眼レフNikon F登場のわずか1年前。

レンジファインダーという方式が成熟しきった時代に生まれたS3は、

「ニコンのレンジファインダーが到達した完成形のひとつ」

と呼ぶにふさわしい一台です。

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