PENTAX SVとは?セルフタイマーとM42マウントを備えた完全機械式一眼レフの特徴
PENTAX SVは、35mmフィルムを使用するマニュアルフォーカス一眼レフカメラです。
旭光学工業が1962年に発売したモデルで、現在のPENTAX公式史でも、1961年のASAHI PENTAX S3に続き、1962年のASAHI PENTAX SVとして記録されています。PENTAX公式はSVについて、セルフタイマーの搭載と、裏蓋の開閉に連動する自動復帰式フィルムカウンターの採用を特徴として挙げています。
レンズマウントはM42スクリューマウント。
露出は完全マニュアルで、シャッター速度、絞り値、ピントのすべてを撮影者自身が決定します。
ボディには露出計が内蔵されていません。
シャッターも機械式なので、電池がなくても撮影できます。
主な特徴は次のとおりです。
- 24×36mmの35mm判
- M42スクリューマウント
- 完全マニュアル露出
- 露出計非内蔵
- T・B・1秒~1/1000秒
- 機械式フォーカルプレーンシャッター
- クイックリターンミラー
- ペンタプリズムファインダー
- マイクロプリズム+フレネルスクリーン
- Super-Takumarの完全自動絞り
- 1ストローク巻き上げ
- 自動復帰式フィルムカウンター
- 約5~10秒の可変セルフタイマー
- FP・Xフラッシュ端子
- 電池不要
後のSpotmaticに外観がよく似ていますが、SVにはTTL露出計がありません。
「昔のSpotmaticっぽいから露出計も入っているだろう」
と思って購入すると、最初の初見殺しを食らいます。
この記事では、PENTAX SVの特徴、S2・S3からの進化、M42レンズ、セルフタイマー、外付け露出計、Super-Takumarとの組み合わせ、中古購入時に確認したいポイントを詳しく解説します。
PENTAX SVとは
PENTAX SVは、旭光学工業が1962年に発売した35mm一眼レフです。
PENTAX公式の歴史では、
- 1957年:ASAHI PENTAX
- 1958年:ASAHI PENTAX K
- 1959年:ASAHI PENTAX S2
- 1961年:ASAHI PENTAX S3
- 1962年:ASAHI PENTAX SV
- 1964年:ASAHI PENTAX SP
という流れが示されています。
この並びを見ると、SVの位置づけがよく分かります。
Sシリーズで培われた機械式一眼レフをさらに使いやすくし、その後TTL露出計を内蔵したSpotmaticへつながっていくモデルです。
PENTAX公式も、S3からSV、そしてSpotmaticへ至る時期を、一眼レフのTTL化・電子化へ向かう重要な時代として紹介しています。
S3をベースにセルフタイマーと自動復帰カウンターを追加
SV発売時に用意された純正の追加説明書では、SVとSuper S2について、
基本的にはASAHI PENTAX S3と同じで、SVには新たにセルフタイマーと自動ゼロ復帰式フィルムカウンターを搭載した
と説明されています。
つまりSVは、一眼レフの基本構造を大幅に変更したカメラではありません。
むしろS3で完成度を高めた機械式システムへ、日常撮影で便利な機能を加えた発展型です。
特にセルフタイマーはSVの外観上の大きな特徴となっています。
24×36mmの35mmフルサイズ
使用するフィルムは一般的な35mmフィルムです。
画面サイズは24×36mm。
純正取扱説明書にも35mmフィルム、24×36mmと明記されています。
36枚撮りなら通常約36枚、24枚撮りなら約24枚を撮影します。
PENTAX 17やOLYMPUS PENのようなハーフ判ではありません。
現在のデジタルカメラでいう「フルサイズ」とほぼ同じ画面寸法です。
M42スクリューマウントを採用
レンズマウントはM42スクリューマウントです。
バヨネット式のKマウントとは異なり、レンズをボディへ何回転かねじ込んで装着します。
純正取扱説明書でも、交換レンズ用のねじ込み式マウントを採用していることが記載されています。
レンズを最後までねじ込む
装着方法は単純です。
レンズのねじ山をボディ側へ合わせ、時計方向に回して、マウント面へ軽く接するまで締めます。
強い力で締め付ける必要はありません。
中古のM42ボディでは、ねじ山の変形、汚れ、過去の無理な着脱によってレンズが入りにくくなっている場合があります。
途中で引っ掛かる場合は無理に回さないようにしましょう。
M42だから交換レンズの選択肢が広い
純正取扱説明書では、当時すでに多数の交換レンズが装着可能であることがアピールされています。
純正Takumarだけでも、魚眼18mmから1000mm超望遠、マクロ、ズームまで幅広いシステムが展開されていました。
SVの取扱説明書に掲載されている主なレンズには、
- Fish-Eye Takumar 18mm F11
- Super-Takumar 28mm F3.5
- Super-Takumar 35mm F3.5
- Super-Takumar 35mm F2
- Super-Takumar 50mm F1.4
- Macro-Takumar 50mm F4
- Super-Takumar 55mm F2
- Super-Takumar 55mm F1.8
- Super-Takumar 85mm F3.5
- Super-Takumar 85mm F1.9
- Super-Takumar 105mm F2.8
- Super-Takumar 135mm F3.5
- Super-Takumar 200mm F4
- Super-Takumar Zoom 70-150mm F4.5
などがあります。
現在でも中古M42レンズは豊富です。
純正Takumarだけでなく、他社製M42レンズも楽しめることはSVの大きな魅力です。
標準レンズはSuper-Takumar 55mm F1.8
後期のSV/S1a純正取扱説明書では、SVの標準レンズとしてSuper-Takumar 55mm F1.8が掲載されています。
6枚構成、最小絞りF16、最短撮影距離0.45m、フィルター径49mmの完全自動絞りレンズです。
50mmよりわずかに長い55mmですが、35mm判では標準レンズとして扱いやすい焦点距離です。
用途は幅広く、
- スナップ
- 人物
- 旅行
- 静物
- 家族写真
- 街並み
- 風景
などに使えます。
Super-Takumarでは絞りが撮影後に自動復帰
S2時代の一部Auto-Takumarでは、撮影前に開放へセットし、シャッターを切ると絞り込むものの、撮影後は自分で再び開放へ戻す「半自動絞り」が使われていました。
SVで標準となったSuper-Takumarでは、完全自動絞りが使えます。
レンズのAUTO/MANレバーをAUTOにしておけば、
- 撮影前は開放
- シャッターを押す
- 設定F値まで瞬時に絞る
- 露光する
- 撮影終了後、再び自動で開放
という動作を行います。
純正取扱説明書にも、AUTO位置では撮影時だけ設定絞りまで閉じ、露光終了後は完全に開放へ戻ると説明されています。
これはS2からSVへ移ったときに、実用上かなり大きな進化です。
AUTOはオートフォーカスではない
Super-Takumarにある「AUTO」は、オートフォーカスを意味しません。
ピント合わせは完全なマニュアルです。
AUTOなのは絞り機構だけです。
現在の感覚では誤解しやすいため注意しましょう。
AUTO/MANレバーで被写界深度を確認できる
Super-TakumarにはAUTO/MAN切り替えがあります。
通常撮影ではAUTOを使用します。
MANへ切り替えると、絞りリングで設定したF値まで実際に絞られるため、ファインダー上で被写界深度を確認できます。
取扱説明書でも、被写界深度を確認する場合はレバーをMANへ移動し、絞りを変更しながらファインダー像を見る方法が案内されています。
たとえばF1.8では背景が大きくぼけ、F8やF11へ絞ると前後の広い範囲が鮮明に見えることを確認できます。
ただし、絞るほどファインダーは暗くなります。
確認後はAUTOへ戻しましょう。
マイクロプリズムでピントを合わせる
SVのファインダーには、フレネルレンズと中央マイクロプリズムが採用されています。
純正取扱説明書では、標準55mmレンズ使用時にほぼ等倍で像を確認できるペンタプリズムファインダーとして紹介されています。
中央のマイクロプリズムでは、ピントが外れていると像が細かく崩れたり、ちらついたりして見えます。
ピントリングを回し、
ちらつきがなくなり、像が最も鮮明になる位置
が合焦です。
周囲のマット面でもピントを確認できます。
スプリットイメージではない
現在中古でよく見かける一眼レフでは、中央の像を上下または左右へ分割し、それを一致させるスプリットイメージが一般的です。
SVは基本的にマイクロプリズム式です。
そのため、
「中央の線を一本につなげる」
のではなく、
像のざらつき・ちらつきが消えるところを探す
という感覚でピントを合わせます。
完全機械式シャッター
SVは機械式フォーカルプレーンシャッターを搭載しています。
シャッター速度は、
- T
- B
- 1秒
- 1/2秒
- 1/4秒
- 1/8秒
- 1/15秒
- 1/30秒
- X
- 1/60秒
- 1/125秒
- 1/250秒
- 1/500秒
- 1/1000秒
です。純正取扱説明書にも最高1/1000秒までの速度が明記されています。
シャッター駆動に電池は必要ありません。
最高1/1000秒
S2では通常モデルの最高速度が1/500秒でした。
SVでは1/1000秒まで利用できます。
晴天で大口径レンズを使用したい場合や、動く被写体を止めたい場合に有利です。
たとえばISO100フィルムで日中にF1.8~F2.8を使う場面では、1/1000秒があることで設定の自由度が高くなります。
ただし、60年以上前のカメラです。
ダイヤルに1/1000と書いてあることと、実際に1/1000秒が出ていることは別問題です。
中古品では高速側の精度確認が重要です。
TとBの違い
長時間露光用にTとBを備えます。
B
シャッターボタンを押している間だけシャッターが開きます。
指を離すと閉じます。
T
シャッターを押すと開いた状態を保持します。
シャッターボタンから指を離しても開いたままです。
撮影を終了するときは、シャッターダイヤルをT以外へ回してシャッターを閉じます。
数十秒、数分の長時間露光では、ボタンを押し続ける必要のないTが便利です。
1/30秒より遅い場合は三脚推奨
純正取扱説明書では、1/30秒より遅いシャッター速度ではカメラをしっかり固定するか、三脚を使用するよう案内されています。
手ブレ補正はありません。
55mm標準レンズなら、現在の感覚でも1/60秒以上を手持ち撮影の一つの目安とすると失敗を減らせます。
赤いシャッターチャージ表示
シャッターダイヤル横には小さな表示窓があります。
巻き上げレバーを最後まで操作してシャッターがチャージされると赤くなり、シャッターを切ると黒へ戻ります。
電子液晶ではありません。
機械的な表示だけで、
「今シャッターがチャージされているか」
を確認できます。
SVらしい楽しい機構のひとつです。
電池を一切使わず撮影できる
ボディ本体には撮影用電池がありません。
AFもAEも電子シャッターもありません。
したがって正常な個体なら、
- フィルム
- レンズ
- 外部で露出を測る手段
さえあれば撮影できます。
現在ではスマートフォンの露出計アプリを使えば、専用露出計を持っていなくても実用可能です。
露出計は内蔵していない
これはSVを買うときの重要ポイントです。
上面にASA表示がありますが、これは露出計用のISO設定ではありません。
フィルム種類を忘れないためのリマインダーダイヤルです。
純正取扱説明書でも「Film type reminder dial」と呼ばれ、現在装填しているフィルムのASA感度やカラー/モノクロの種類を記録するためのものと説明されています。
ASA100へ合わせても、カメラが自動的に露出を変更することはありません。
純正クリップオン露出計を装着できる
SVには、別売のASAHI PENTAX CLIP-ON EXPOSURE METERを装着できます。
ペンタプリズム周辺へ取り付け、シャッター速度ダイヤルと機械的に連動するタイプです。
純正資料では、
- CdS受光素子
- 受光角約30度
- ASA6~1600
- シャッターダイヤルへ直接連動
- 1.35V電池
という仕様が紹介されています。
ただし、これはTTL露出計ではありません。
撮影レンズを通った光ではなく、外付けメーター自身が外光を測ります。
外付け露出計にも電池問題がある
SV本体は電池不要ですが、純正クリップオンメーターには当時の1.35V電池が使われます。
現在中古でメーター付き個体を購入する場合は、
- 針が動くか
- 電池室が腐食していないか
- 現在使用している代替電池
- 測光精度
- シャッターダイヤルとの連動
を確認しましょう。
メーターが故障していても、SV本体の撮影には影響しません。
スポット露出計も純正アクセサリーとして存在
当時はASAHI PENTAX SPOT EXPOSURE METERも用意されていました。
純正資料では中央約1度の範囲を測光するCdS式スポットメーターとして紹介されています。
つまりSVの時代には、
露出計をカメラへ内蔵するのではなく、撮影目的に応じて外付けする
という発想も一般的でした。
その後、1964年のSpotmaticではTTL露出計がボディへ組み込まれることになります。
SV最大の新機能「セルフタイマー」
SVには機械式セルフタイマーがあります。
セルフタイマーは巻き戻しノブの下部にある大きなリング状のダイヤルです。
一般的な一眼レフで見られるボディ前面のレバー式とはかなり異なる外観です。
約5~10秒で調整できる
純正取扱説明書では、
- 最大まで巻く:約10秒
- 約50度だけ巻く:約5秒
として、約5~10秒の範囲で遅延時間を調節できると説明されています。
現代カメラの2秒/10秒セルフタイマーより、かなり機械的で自由度のある方式です。
シャッターをチャージしてからセルフタイマーを巻く
後期取扱説明書では、先に巻き上げレバーを操作してシャッターをチャージしてから、セルフタイマーを巻くよう案内されています。
中古カメラでセルフタイマーを使用する場合も、この順序を守るのが安全です。
中古ではセルフタイマーを無理に動かさない
製造から60年以上経っています。
機械式セルフタイマー内部の潤滑油が固まっている可能性があります。
動作未確認品で、
「よし、最大までギューッと巻いて試すぞ!」
は避けた方がよいでしょう。
途中停止したセルフタイマーがシャッター機構へ影響することも考えられます。
セルフタイマーを日常的に使わないなら、ボディ本体の状態を優先して購入してもよい部分です。
自動復帰式フィルムカウンター
もう一つのSVの新機能が、自動復帰式フィルムカウンターです。
初期の追加説明書では、裏蓋を開くとカウンターが自動的に「-2」へ戻り、2回空送りすると「0」になると説明されています。
後期取扱説明書でも、自動復帰式カウンターが主要機能として明記されています。
S2のように撮影者が毎回手動でカウンターを0へ合わせる必要がなくなりました。
小さな改善ですが、日常でフィルムを交換するたびに使うため実用性は高い機能です。
1ストローク巻き上げ
フィルム巻き上げは上面レバーで行います。
純正取扱説明書では、レバーを一度で停止位置まで操作すると、
- フィルムを1コマ送る
- シャッターをチャージする
とされています。
巻き上げは途中で止めず、最後まで操作しましょう。
メーカー自身もメンテナンス上の注意として「巻き上げレバーは必ず停止するところまで動かす」よう案内しています。
二重露光防止機構
通常撮影では、フィルム送りとシャッターチャージが連動し、意図しない二重露光を防止します。
ただしSVでは、巻き戻し機構を利用して意図的な多重露光を行う方法も純正取扱説明書に掲載されています。
つまり基本的には二重露光防止ですが、工夫すれば同じコマへ複数回露光できます。
手動で多重露光もできる
純正説明書では、
- 1回目を通常撮影
- 巻き戻しノブでフィルムのたるみを取る
- 巻き戻し解除ボタンを押す
- フィルムを送らずシャッターだけチャージ
- 2回目を撮影
という方法が紹介されています。
専用の多重露光レバーがあるわけではありません。
かなり機械式カメラらしい方法です。
FP・Xフラッシュ端子を搭載
ボディ前面には、
- FP
- X
の2種類のシンクロ端子があります。
電子フラッシュはX端子へ接続します。
電子フラッシュ同調は1/50秒
シャッターダイヤルには、1/30秒と1/60秒の間にX位置があります。
このX位置は1/50秒です。
純正取扱説明書では、電子フラッシュを使用できる最高速度として1/50秒と明記されています。
現在一般的な1/125秒や1/250秒同調より遅いため、明るい屋外でのフラッシュ撮影には制約があります。
ホットシューはない
ボディ上面にホットシューは内蔵されていません。
フラッシュなどのアクセサリーを載せるには、ファインダー周囲の溝へ別売アクセサリークリップを取り付けます。
純正資料にもアクセサリークリップが用意され、シュータイプのアクセサリーを装着できることが紹介されています。
ただし、アクセサリークリップ自体に発光接点はありません。
電子フラッシュの発光には前面X端子へコードを接続します。
ファインダー周辺には豊富なアクセサリー
ペンタプリズム接眼部には、
- クリップオン露出計
- アクセサリークリップ
- ライトアングルファインダー
- 拡大ファインダー
- 視度補正アダプター
などを装着できます。
SVは露出計すら内蔵しないシンプルなボディですが、周辺アクセサリーを追加して撮影システムを構築できる設計です。
マクロ撮影にも対応
純正システムには、
- エクステンションチューブ
- Bellows Unit I
- Bellows Unit II
- Slide Copier
- Reverse Adapter
- Microscope Adapter
なども用意されていました。
一眼レフなので、接写でレンズとファインダーの視差が生じません。
M42マウントとベローズを組み合わせた本格的なマクロ撮影にも対応できます。
PENTAX S2・S3・SV・Spotmaticの違い
初期PENTAXの流れを整理すると、SVの位置づけが分かりやすくなります。
| モデル | 年 | 最高速度 | 露出計 | セルフタイマー | カウンター |
|---|---|---|---|---|---|
| ASAHI PENTAX S2 | 1959 | 1/500秒 | なし | なし | 手動 |
| ASAHI PENTAX S3 | 1961 | 1/1000秒 | なし・外付けメーター対応 | なし | 従来式 |
| ASAHI PENTAX SV | 1962 | 1/1000秒 | なし・外付けメーター対応 | あり | 自動復帰 |
| ASAHI PENTAX SP | 1964 | 1/1000秒 | TTL内蔵 | あり | 自動復帰 |
PENTAX公式はS3で外付け露出計とのシャッターダイヤル連動、SVでセルフタイマーと自動復帰カウンター、SpotmaticでTTL測光の採用という進化を紹介しています。
つまりSVは、
「露出計を内蔵する一歩手前まで完成した、純機械式PENTAX」
と考えると非常に分かりやすいでしょう。
PENTAX S1aとの違い
SVと同時期には廉価版のS1aも存在します。
純正取扱説明書では、
- SV:Super-Takumar 55mm F1.8
- S1a:Super-Takumar 55mm F2
- SV最高速度:1/1000秒
- S1a最高速度:1/500秒
- SV:セルフタイマーあり
- S1a:セルフタイマーなし
と明記されています。
外観が似ているため、中古出品写真ではモデル名とシャッターダイヤルを確認しましょう。
海外ではH3vの名称もある
SVは海外の一部市場でHoneywell Pentax H3vなどの名称でも販売されました。
中古市場では「Pentax H3v」と記載された個体を見かけることがあります。
基本的にはSV系のモデルです。
コレクション目的でなければ、銘板よりも機械状態を優先して選ぶ方が実用的です。
初期型と後期型の違いにも注意
SVには製造途中の仕様変更が知られています。
二次資料では、後期型では大型の50mm F1.4レンズとの干渉を避けるためミラー周辺が改良され、巻き戻し部のオレンジ色または赤色の「R」表示が識別ポイントになるとされています。
また、純正取扱説明書にも、古いAuto-Takumar 55mm F1.8の一部について、SV/S1aの改良されたクイックリターンミラー・自動絞り機構と正しく動作しないため使用しないよう注意書きがあります。
古いM42レンズなら何でも完全互換、と単純に考えない方が安全です。
PENTAX SVの基本スペック
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| カメラ形式 | 35mmマニュアル一眼レフ |
| 発売年 | 1962年 |
| 使用フィルム | 35mmフィルム |
| 画面サイズ | 24×36mm |
| レンズマウント | M42スクリューマウント |
| 標準レンズ例 | Super-Takumar 55mm F1.8 |
| ピント合わせ | マニュアルフォーカス |
| 露出方式 | 完全マニュアル |
| 内蔵露出計 | なし |
| シャッター | 機械式フォーカルプレーン |
| シャッター速度 | T・B・1秒~1/1000秒 |
| X同調 | 1/50秒 |
| ファインダー | ペンタプリズム |
| スクリーン | フレネル+中央マイクロプリズム |
| ミラー | クイックリターン |
| 自動絞り | Super-Takumarで完全自動 |
| 被写界深度確認 | レンズAUTO/MAN切替 |
| 巻き上げ | 1ストロークレバー |
| 二重露光防止 | あり |
| 多重露光 | 手動操作で可能 |
| フィルムカウンター | 自動復帰式 |
| セルフタイマー | 約5~10秒 |
| フラッシュ | FP・X端子 |
| ホットシュー | なし |
| 電源 | 不要 |
| 外付け露出計 | 純正クリップオンメーターあり |
| 寸法 | 約140×92×50mm |
| 重量 | 約600g |
発売時期・主要機能はPENTAX公式史と純正取扱説明書に基づき、寸法・重量はPENTAX系データベースの公称値を参考にしています。
PENTAX SVの基本的な使い方
35mmフィルムを装填する
裏蓋ロックを引いて裏蓋を開きます。
巻き戻しノブを引き上げ、35mmフィルムを左側のフィルム室へ入れます。
フィルム先端を右側の巻き取りスプールへ差し込み、パーフォレーションが上下のスプロケットへ確実に掛かっていることを確認します。
裏蓋を閉じる
フィルムが正しく掛かっていることを確認したら裏蓋を閉じます。
巻き戻しノブを軽く回してフィルムのたるみを取っておくと、正常に送られているか確認しやすくなります。
空送りを2回行う
フィルム先端部分は装填時に光を受けているため撮影には使えません。
純正説明書では2回程度空送りを行います。
カウンターを確認する
SVでは裏蓋を開くとカウンターが自動的に初期位置へ戻ります。
空送り後、最初の撮影位置まで進んでいることを確認します。
外部露出計で光を測る
SVには露出計がありません。
スマートフォンアプリや単体露出計へ、装填しているフィルムのISO感度を設定します。
たとえばISO100フィルムならISO100として測光します。
シャッター速度を設定する
上面のダイヤルを希望する速度へ合わせます。
純正取扱説明書では、シャッターのチャージ前・後のどちらでも速度を設定できると案内されています。
絞りを設定する
レンズの絞りリングでF値を選びます。
Super-TakumarならAUTO位置で開放測距が可能です。
ピントを合わせる
中央のマイクロプリズムを利用し、像が最も鮮明になるまでフォーカスリングを回します。
シャッターを切る
両手でカメラを支え、シャッターボタンを静かに押します。
撮影後はミラーが元へ戻り、Super-Takumarなら絞りも開放へ復帰します。
次のコマを巻き上げる
巻き上げレバーを停止位置まで操作します。
赤いチャージ表示が現れれば次の撮影準備完了です。
中古購入時に確認したいポイント
まずSVなのかS1a・S3なのか確認する
初期PENTAXは外観がよく似ています。
SVでは、
- ボディ上面の「SV」表記
- 巻き戻しノブ周辺のセルフタイマー
- 1/1000秒
- 自動復帰カウンター
が主な識別ポイントです。
商品タイトルだけでなく、現物写真を確認しましょう。
シャッターを全速度で確認する
T、B、1秒から1/1000秒まで順番に作動させます。
特に重要なのは低速側です。
- 1秒
- 1/2秒
- 1/4秒
- 1/8秒
- 1/15秒
では、速度の違いを耳でもある程度確認できます。
次の症状がある個体は注意が必要です。
- 1秒が数秒開く
- 途中で幕が止まる
- 1/2秒と1/8秒がほぼ同じ
- ミラーが上がったままになる
- 一度切ると次に動かない
古い潤滑油の固着やガバナーの不調が考えられます。
低速が動いたから高速も正常とは限らない
1秒がきれいに切れていても、1/500秒や1/1000秒が正確とは限りません。
高速シャッターでは、先幕と後幕の走行差による露出ムラが起こることがあります。
可能ならシャッターテスターを使うか、均一な空や壁を試写しましょう。
1/1000秒の露出ムラ
高速側で試写し、
- 画面片側だけ暗い
- 縦方向に濃度差がある
- 1/1000秒だけ極端に暗い
場合は、シャッター幕の走行調整が必要な可能性があります。
布製シャッター幕
裏蓋を開け、シャッター幕を目視します。
確認したいのは、
- ピンホール
- ひび
- 波打ち
- しわ
- カビ
- 剥離
- たるみ
です。
純正取扱説明書も、シャッター幕には絶対に触れないよう警告しています。
指や綿棒で押してはいけません。
ピンホール確認
暗い部屋で裏蓋を開け、マウント側から弱めのライトを当てます。
シャッター幕から小さな光点が見えないか確認します。
ピンホールがあると、日中の撮影でフィルムへ光が漏れる可能性があります。
シャッター幕の走行
各速度で数回作動させます。
毎回同じように幕が走り、途中停止しないことが重要です。
1回だけ正常でも、数回に1回止まる個体は実用上危険です。
ミラーがすぐ戻るか
シャッターを切った直後、ファインダー像が復帰することを確認します。
正常ならクイックリターンします。
- ミラーアップのまま
- ゆっくり降りる
- 途中で止まる
- ボディを叩くと戻る
場合は整備が必要です。
ミラー表面
レンズを外して、
- 腐食
- 深い傷
- 銀面の劣化
- カビ
- 大きな汚れ
を確認します。
ミラーは表面鏡なので、不用意に布で磨くとコーティングを傷める可能性があります。
ミラー受けと遮光材
ミラー上部やボディ内部の遮光材を確認します。
- べたつく
- 粉状に崩れる
- ミラーへ付着している
場合は交換が必要です。
古い個体では過去の修理で材質が変更されていることもあります。
ファインダーの曇り
明るい壁や空を見ます。
- 白い曇り
- カビ
- 大量のチリ
- プリズムの腐食
- 黒い帯
- 接眼部の傷
を確認しましょう。
多少のチリは写真には写りません。
しかしSVはマニュアルフォーカスなので、強い曇りは撮影操作へ直接影響します。
マイクロプリズム
中央部へ細かな文字や建物を入れ、ピントを動かします。
ピントを合わせたときに、
- ちらつきが消える
- 像が鮮明になる
ことを確認します。
ファインダーと実写ピントの一致
ファインダーでピントが合っても、ミラー・スクリーン位置がずれていればフィルム面では合わない場合があります。
可能なら55mm F1.8を開放付近にして、
- 1m前後
- 2~3m
- 無限遠
を試写すると確認しやすくなります。
Super-Takumarの自動絞り
レンズをF8などへ設定します。
AUTO位置では、ファインダー確認中は開放のままである必要があります。
シャッターを切ると瞬時にF8まで閉じ、撮影後すぐ開放へ戻ります。
この動きを何度も確認しましょう。
絞り羽根の油
レンズを外し、絞り羽根を確認します。
- 油がない
- 瞬時に閉じる
- 瞬時に開く
- 開口部が整っている
ことが重要です。
粘りがあると、シャッターが開くまでに設定絞りへ到達せず、露出オーバーになることがあります。
AUTO/MAN切り替え
Super-TakumarのAUTO/MANレバーを操作します。
MANでは設定絞りまで閉じ、AUTOでは開放へ戻ることを確認します。
レバーが固着している中古レンズもあります。
古いAuto-Takumarとの互換性
純正説明書では、一部の古いAuto-Takumar 55mm F1.8について、SV/S1aの改良されたミラー・自動絞り機構と正しく作動しないため使用しないよう注意されています。
古いM42レンズを組み合わせる場合は、世代や仕様を確認しましょう。
M42ねじ山
レンズ着脱時に、
- スムーズに入る
- 途中で噛まない
- 最後まで密着する
- 斜めに入らない
ことを確認します。
アルミ製マウント部のねじを傷めると修理が面倒です。
巻き上げレバー
レバーを最後まで動かします。
- 滑らか
- 途中で引っ掛からない
- 空回りしない
- シャッターをチャージする
- スプロケットが回る
- カウンターが進む
ことを確認します。
メーカー自身も、巻き上げは必ず最後まで操作するよう説明しています。
赤いチャージ表示
巻き上げると赤くなり、シャッターを切ると黒へ戻ることを確認します。
表示だけ壊れていても撮影できる場合はありますが、SVの状態確認ポイントの一つです。
自動復帰式カウンター
裏蓋を開きます。
カウンターが自動的に初期位置へ戻ることを確認します。
その後、空送りとシャッター操作によって数字が正常に進む必要があります。
フィルム送り
不要な35mmフィルムを実際に通せれば理想です。
- パーフォレーションが正しく掛かる
- 1コマずつ送られる
- 巻き戻しノブが回る
- コマ間隔が極端にずれない
ことを確認します。
空シャッターだけではフィルム送りの不具合を発見できません。
巻き戻し機構
フィルムを巻き戻す際は底面の解除ボタンを押します。
クランクが滑らかに回ること、次回巻き上げ時に解除ボタンが正常復帰することを確認しましょう。
セルフタイマー
中古SVでは慎重に確認します。
シャッターをチャージしてからセルフタイマーを少量だけ巻き、
- 作動する
- 途中で止まらない
- 最後にシャッターが切れる
ことを確認します。
無理に最大まで巻く必要はありません。
セルフタイマーが5~10秒で変化するか
正常なら、巻き量を変えることでおおむね5~10秒の範囲で作動時間が変わります。
実際の秒数が少しずれていても撮影自体には大きな影響はありません。
途中停止しないことの方が重要です。
FP・X端子
電子フラッシュを使用する予定ならX端子を確認します。
腐食、緩み、接点不良がないか見ます。
実際にフラッシュを接続し、X位置1/50秒で発光するか確認できれば理想です。
外付け露出計
Clip-On Exposure Meter付きなら別機能として確認します。
- 電源
- 電池室
- 針
- シャッターダイヤル連動
- 測光精度
をチェックします。
露出計が壊れていても、SVボディ本体の評価とは分けて考えましょう。
裏蓋の変形
裏蓋が確実に閉まり、側面ロックが掛かるか確認します。
落下によって裏蓋が変形すると、フィルム室へ光が入る可能性があります。
フィルム圧板
裏蓋内側の圧板に、
- さび
- 深い傷
- 汚れ
- 変形
- ばねの弱り
がないか確認します。
フィルムを平らに保持できなければ、画面の一部でピントがずれる可能性があります。
三脚穴
純正取扱説明書では、三脚ねじを必要以上に長く差し込むと内部機構を傷める可能性があるため注意するよう案内されています。
中古では三脚穴のねじ山が潰れていないか確認しましょう。
実写テスト
最終的にはフィルムを1本通すのが確実です。
次の条件を混ぜて撮影すると、多くの不具合を発見できます。
- 1秒
- 1/15秒
- 1/60秒
- 1/250秒
- 1/1000秒
- F1.8
- F8
- 無限遠
- 1m前後
- 強い日差し
- 逆光
現像後に、
- 露出ムラ
- 光漏れ
- ピントずれ
- コマ重なり
- シャッター幕不良
を確認します。
PENTAX SVが向いている人
PENTAX SVは、次のような人に向いています。
- 完全機械式一眼レフを使いたい人
- 電池なしで撮影したい人
- M42レンズを楽しみたい人
- Super-Takumarが好きな人
- シャッター速度と絞りを自分で決めたい人
- 外部露出計を使える人
- クラシックな機械式カメラが好きな人
- 初期PENTAXの歴史に興味がある人
- Spotmaticよりさらにシンプルなボディを求める人
- セルフタイマー付きの初期Sシリーズを探している人
特に、
「露出計が壊れる心配すらしたくない」
という人には魅力があります。
PENTAX SVが向かない場合
一方、次のような人には別のカメラが扱いやすいでしょう。
- 内蔵露出計が必要な人
- AEを使いたい人
- オートフォーカスが必要な人
- 1/1000秒以上の高速シャッターが必要な人
- ホットシューを使いたい人
- 電子フラッシュを高速同調したい人
- 毎回外部露出計を使いたくない人
- 古い機械式シャッターの整備費用を避けたい人
M42マウントのままTTL露出計を使いたいならSpotmatic系が有力候補です。
まとめ
PENTAX SVは、旭光学工業が1962年に発売した35mmマニュアル一眼レフです。
PENTAX公式史でも、S3からSpotmaticへ至る途中の重要なモデルとして紹介され、SVでは新たにセルフタイマーと自動復帰式フィルムカウンターが採用されました。
主な特徴は次のとおりです。
- 24×36mmの35mm判
- M42スクリューマウント
- 完全機械式
- 電池不要
- 露出計非内蔵
- Super-Takumar 55mm F1.8が代表的標準レンズ
- 完全自動絞り
- T・B・1秒~1/1000秒
- 機械式フォーカルプレーンシャッター
- クイックリターンミラー
- ペンタプリズムファインダー
- 中央マイクロプリズム
- 1ストローク巻き上げ
- 赤いシャッターチャージ表示
- 自動復帰式フィルムカウンター
- 約5~10秒の機械式セルフタイマー
- FP・Xフラッシュ端子
- X同調1/50秒
- 純正クリップオン露出計に対応
中古購入時に重要なのは、
「シャッターがカチッと鳴った」だけで合格にしないことです。
1秒から1/1000秒まで確認し、布幕、ミラー復帰、フィルム送り、自動復帰カウンター、Super-Takumarの自動絞りまでチェックしましょう。
そしてSVには、露出計がありません。
それは欠点でも故障でもなく、このカメラ本来の姿です。
外で光を測る。
シャッターダイヤルを回す。
レンズの絞りを決める。
マイクロプリズムでピントを合わせる。
レバーを巻き、赤い表示を確認し、シャッターを切る。
電池も液晶も電子回路も必要ありません。
その翌々年、PENTAXはSpotmaticへTTL露出計を組み込みます。
PENTAX SVは、電子的な「光を測る機能」がボディへ入る直前に完成した、純機械式M42一眼レフのひとつの到達点です。









