OLYMPUS PEN-FTとは?世界初のハーフ判TTL一眼レフの特徴と中古購入時の注意点
OLYMPUS PEN-FTは、35mmフィルムを使用するレンズ交換式のハーフサイズ一眼レフカメラです。
1966年に登場し、オリンパス自身が**「世界初のハーフサイズTTL一眼レフ」**と位置づける歴史的なモデルです。1963年に発売された初代PEN-Fを発展させ、レンズを通った光を測るTTL露出計を小型ボディへ組み込みました。
一般的な35mmカメラが24×36mmの画面を1コマとして使うのに対し、PEN-FTは24×18mmのハーフ判を採用しています。36枚撮りフィルムなら約72枚、20枚撮りなら約40枚を撮影できます。
しかし、PEN EEシリーズのような簡単操作のハーフ判カメラではありません。
レンズ交換式一眼レフとして、
- TTL露出計
- マニュアル露出
- クイックリターンミラー
- 交換レンズ
- 被写界深度確認
- セルフタイマー
- B~1/500秒の機械式シャッター
- 全シャッター速度でのフラッシュ同調
といった本格的な機能を備えています。
一方、中古品では独特なロータリーシャッターやミラー機構、TTL露出計、フィルム送り、レンズの自動絞りなど、確認すべきポイントが多いカメラでもあります。
この記事では、OLYMPUS PEN-FTの特徴、TTL測光の使い方、PEN-Fとの違い、交換レンズ、中古購入時の注意点を解説します。
OLYMPUS PEN-FTとは
OLYMPUS PEN-FTは、24×18mmのハーフ判を採用したマニュアルフォーカス一眼レフです。
35mmフィルムを使用しながら1コマの幅を半分にすることで、一般的な35mmカメラの約2倍の枚数を撮影できます。
取扱説明書では、36枚撮りフィルムから72枚、20枚撮りフィルムから40枚を撮影できることが案内されています。
PEN-FTは単なる「フィルムを節約できるカメラ」ではありません。
オリンパスは、ハーフ判という小さな画面サイズを利用して、交換レンズ式一眼レフそのものを小型化しました。
1966年に登場した世界初のハーフ判TTL一眼レフ
初代OLYMPUS PEN-Fは1963年に発売されました。
オリンパスの公式開発史ではPEN-Fを世界初のハーフサイズ一眼レフとし、1966年に登場したPEN-FTについては世界初のハーフサイズTTL一眼レフと説明しています。
PEN-FTでは、初代PEN-Fの小型一眼レフシステムを受け継ぎながら、
- TTL露出計
- 1ストロークのフィルム巻き上げ
- セルフタイマー
- TTL測光用の新しい絞り表示
などが加えられました。当時の純正カタログも、PEN-FTを単なるPEN-Fの小改良ではなく、多くの新機構を盛り込んだモデルとして紹介しています。
1967年にはグッドデザイン賞を受賞しています。
ハーフ判なのに本格的な一眼レフ
ハーフ判カメラというと、小型コンパクトカメラを想像するかもしれません。
しかしPEN-FTは、撮影レンズを通った像をミラーとファインダーで直接確認する一眼レフです。
そのため、
- 撮影レンズそのものを通して構図を確認できる
- 交換レンズへ対応できる
- 望遠でも撮影範囲を確認しやすい
- 接写でもパララックスが発生しない
- 被写界深度をファインダーで確認できる
という、一眼レフならではの利点があります。
レンジファインダーや目測式ハーフ判カメラとは、撮影方法そのものが大きく異なります。
24×18mmのハーフサイズフォーマット
画面サイズは24×18mmです。純正カタログにも24×18mmと明記されています。
一般的な35mm判の24×36mmと比べ、面積は約半分です。
36枚撮りなら約72枚
フィルム1本から撮れる枚数が多いことは、PEN-FT最大の実用的メリットのひとつです。
36枚撮りフィルムなら約72枚。
現在のフィルム価格を考えても、1コマあたりのフィルム代を抑えられます。
一方、72枚を撮り切るには時間も必要です。
途中で違う種類のフィルムへ交換したい場合には、むしろ撮影枚数の多さが負担になることもあります。
横向きに構えると縦位置になる
ハーフ判では、1コマが通常の35mm判の半分の幅で配置されます。
そのため、一般的な構え方でカメラを横向きにすると、写真は縦位置になるのが基本です。
横長の風景を撮りたい場合は、カメラを90度回して縦向きに構えます。
現在のスマートフォン撮影では縦位置写真が一般的なので、現代の感覚では意外に扱いやすい特徴でもあります。
独特なフラットトップデザイン
PEN-FTの外観には、一般的な一眼レフに見られる大きなペンタプリズムの張り出しがありません。
ボディ上面は比較的平らです。
純正カタログでは、ファインダーにポロプリズム方式を採用し、標準レンズ使用時の倍率を約0.8倍としています。
一般的な35mm一眼レフとは明らかに異なるシルエットで、正面から見るとレンジファインダーのようにも見えます。
しかし内部にはミラーとフォーカシングスクリーンがあり、れっきとした一眼レフです。
水平方向へ動くクイックリターンミラー
純正カタログでは、ミラーは水平方向へ動くクイックリターン方式とされています。
一般的な一眼レフではミラーが上方向へ跳ね上がります。
PEN-FTでは小型化のために独自の光学系を採用しており、ミラーの動きも一般的な一眼レフとは異なります。
撮影後にはミラーが元の位置へ戻り、再びファインダー像を確認できます。
ロータリー式メタルフォーカルプレーンシャッター
PEN-FTを語るうえで外せないのが、独特なシャッターです。
一般的な一眼レフで使われる布幕や金属幕の横走り・縦走りシャッターではなく、回転式の金属製フォーカルプレーンシャッターを採用しています。
純正カタログでは「Olympus rotary metal focal-plane shutter」と記載されています。
シャッター速度は、
- B
- 1秒
- 1/2秒
- 1/4秒
- 1/8秒
- 1/15秒
- 1/30秒
- 1/60秒
- 1/125秒
- 1/250秒
- 1/500秒
です。取扱説明書ではダイヤル上の「1、2、4……500」が、それぞれ1秒、1/2秒、1/4秒……1/500秒を意味すると説明されています。
シャッターは機械式なので、露出計用電池がなくても撮影できます。
最高シャッター速度は1/500秒
最高速度は1/500秒です。
晴天時に絞りを開きたい場合や、人物・乗り物などの動きを止めたい場合に使用できます。
ただし、中古品ではダイヤルを1/500秒へ設定できることと、実際に正確な1/500秒が出ていることは別です。
高速側では実写またはシャッターテスターによる確認が理想です。
全シャッター速度で電子フラッシュ同調
PEN-FTのロータリーシャッターには、非常に珍しい利点があります。
純正取扱説明書では、電子フラッシュとフラッシュバルブを1/500秒まで全シャッター速度で同期可能としています。
一般的なフォーカルプレーンシャッター式一眼レフでは、電子フラッシュ同調速度が1/30~1/125秒程度に制限されることがあります。
PEN-FTでは1/500秒まで同調できるため、
- 明るい屋外での日中シンクロ
- 背景を暗く落とした人物撮影
- 動きを止めながら補助光を入れる撮影
などで大きな自由度があります。
電子フラッシュではX接点を使用します。M級フラッシュバルブ用のM接点も備えています。
TTL露出計を内蔵
PEN-FTの「T」を象徴する機能がTTL露出計です。
TTLはThrough The Lensの略で、撮影レンズを実際に通過した光を測定します。
取扱説明書の断面図では、セミトランスペアレントミラーから光の一部を露出計へ導く構造が示されています。
これにより、
- 交換レンズ
- 接写
- ベローズ
- 一部のアダプター
などを使用した場合でも、実際にレンズを通った光を測定できます。
PEN-FTでは、開放測光と絞り込み測光の両方に対応しています。
自動露出ではない
ここは非常に重要です。
PEN-FTにはTTL露出計がありますが、AEではありません。
シャッター速度と絞り値を自動的に変更する機能はなく、露出計の指示を見ながら撮影者自身が設定します。
したがって撮影は、
- シャッター速度を決める
- ファインダーで露出計を確認する
- レンズの絞りを調整する
- ピントを合わせる
- シャッターを切る
という完全マニュアル方式です。
独特な「TTLナンバー」方式
PEN-FTの露出計は、現在一般的な「+・○・-」表示とは異なります。
ファインダー左側に0~7のTTLナンバーが表示されます。
対応するPEN-FT用レンズの絞りリングにも、通常のF値とは別にTTLナンバーが刻まれています。
取扱説明書では、
- まずシャッター速度を決める
- ファインダーの指針が示すTTLナンバーを読む
- レンズのTTLナンバーを同じ数字へ合わせる
ことで適正露出を設定する方法が案内されています。
たとえば露出計が「4」を示したなら、レンズ側もTTLナンバー4へ設定します。
現代のカメラに慣れているとかなり独特ですが、慣れればファインダーから目を大きく離さず露出を設定できます。
通常のF値でも設定できる
PEN-FT用レンズには、TTLナンバーだけでなく通常のF値も表示されています。
絞りリング上面にはTTLナンバー、下面にはF1.8、F2.8、F4、F5.6などの通常の絞り値が刻まれています。
そのため、単体露出計を使った撮影や、露出計を使わないマニュアル撮影では普通のF値で設定できます。
古いPEN-Fレンズも使用できる
PEN-FT以前の交換レンズには、TTLナンバーが刻まれていない製品があります。
取扱説明書では、こうしたレンズでも絞り込み測光を利用できると説明しています。また、当時は古いレンズへTTLナンバー目盛りを追加するためのシールも用意されていました。
したがって、PEN-F用レンズだからPEN-FTで使えないわけではありません。
ただし、露出計の操作方法が異なる場合があります。
中古レンズでは、TTLナンバーの有無も確認しましょう。
1.3Vの水銀電池を使用
内蔵露出計の電源には1.3Vの水銀電池が使われます。
取扱説明書ではRM625、E625などの625型水銀電池が指定され、電池は露出計の電源であると説明されています。フィルム感度設定範囲はASA25~400です。
現在、水銀電池は一般販売されていません。
実用する場合は、
- 1.35V前後の空気亜鉛電池
- 電圧変換アダプター
- 1.5V電池に合わせて露出計を再調整した個体
- 内蔵露出計を使わず単体露出計を使う
などが候補になります。
電池がなくても撮影できる
電池は露出計専用です。
シャッター、巻き上げ、ミラー、自動絞りなどは機械的に動作します。
したがって、露出計が故障していても、単体露出計や露出計アプリを使えば撮影できます。
電子制御シャッター式カメラとは大きく異なる点です。
測光範囲
純正カタログでは、ASA100・F1.4標準レンズ使用時の測光範囲をEV3~17としています。
暗い室内から晴天屋外まで幅広く測光できますが、現在の中古品では受光部や内部抵抗が経年している可能性があります。
露出計の針が動くだけで精度が保証されるわけではありません。
ファインダー倍率は約0.8倍
純正カタログでは、標準レンズ使用時のファインダー倍率は約0.8倍です。
フォーカシングスクリーンにはマイクロプリズムと専用フレネルレンズを使用しています。
中央のマイクロプリズムがちらついている間はピントが合っていません。
ピントリングを回し、像がはっきり見える位置へ合わせます。取扱説明書でもマイクロプリズムによるピント合わせが説明されています。
TTL測光のためファインダー構造も特殊
PEN-FTでは、セミトランスペアレントミラーによって撮影レンズから入った光をファインダーと露出計へ分けています。
構造上、光のすべてをファインダーへ送るわけではありません。
中古品でファインダーが著しく暗い場合には、もともとの構造だけでなく、スクリーン、プリズム、ミラー、内部光学系の汚れや劣化も確認したいところです。
被写界深度確認ボタン
PEN-FT用レンズには自動絞り機構があります。
通常は絞りをF8などへ設定していても、ファインダーを明るく保つためレンズは開放状態です。
シャッターを切った瞬間だけ設定絞りまで閉じます。
レンズ基部のプレビューボタンを押すと、撮影前に設定絞りまで絞り込み、実際の被写界深度を確認できます。
風景、接写、建築などで役立つ機能です。
レンズ取り外しボタンはレンズ側
PEN-FTでは、レンズ取り外しボタンがボディではなくレンズ基部にあります。
赤い「L」表示のある解除ボタンを押しながらレンズを回して取り外します。装着時はボディとレンズの赤い指標を合わせます。
OMシリーズと同様、初めて使う人がボディ側のレンズ解除ボタンを探してしまいやすいポイントです。
標準レンズはF.Zuiko Auto-S 38mm F1.8
PEN-FTを代表する標準レンズが、F.Zuiko Auto-S 38mm F1.8です。
純正レンズ表では、
- 焦点距離:38mm
- 開放F値:F1.8
- 35mm判換算:約55mm
- レンズ構成:5群6枚
- 最短撮影距離:0.35m
- フィルター径:43mm
- 重量:約135g
とされています。
一般的な35mmカメラの50mm標準レンズに近い画角です。
人物、スナップ、静物、旅行など幅広い用途に使えます。
最短撮影距離0.35m
38mm F1.8は0.35mまでピントを合わせられます。
取扱説明書でも、標準レンズでアクセサリーなしに約35cmまで接近できることが特徴として紹介されています。
レンジファインダーでは近距離になるほどパララックスが大きくなりますが、一眼レフのPEN-FTでは実際の撮影レンズを通した像を確認できます。
花、料理、小物などにも使いやすい構成です。
明るい40mm F1.4や42mm F1.2も存在する
PEN-Fシステムには、さらに明るい標準レンズも用意されました。
純正資料では、
| レンズ | 35mm判換算 | 最短撮影距離 |
|---|---|---|
| H.Zuiko Auto-S 42mm F1.2 | 約60mm | 0.35m |
| G.Zuiko Auto-S 40mm F1.4 | 約58mm | 0.35m |
| F.Zuiko Auto-S 38mm F1.8 | 約55mm | 0.35m |
とされています。
42mm F1.2はハーフ判用として非常に明るい標準レンズです。
ただし中古市場では希少性によって高値になることがあります。
広角から超望遠・ズーム・マクロまで展開
PEN-Fシステムは単なる標準レンズ交換式ではありません。
純正資料には、
- 20mm F3.5
- 25mm F4
- 25mm F2.8
- 38mm F1.8
- 40mm F1.4
- 42mm F1.2
- 60mm F1.5
- 70mm F2
- 100mm F3.5
- 150mm F4
- 250mm F5
- 400mm F6.3
- 800mm F8ミラー
- 50-90mm F3.5ズーム
- 100-200mm F5ズーム
- 38mm F3.5マクロ
など、多数の交換レンズが掲載されています。
小型ハーフ判カメラでありながら、広角から超望遠、マクロまでシステムを組めることがPEN-Fシリーズの大きな魅力です。
1ストロークのフィルム巻き上げ
PEN-FTでは、フィルム巻き上げが1ストローク式です。
純正カタログでは巻き上げ角を約150度、取扱説明書では約137度の実巻き上げ角と約13度の予備角として説明しています。
レバーを停止位置まで確実に動かすと、
- フィルム送り
- シャッターチャージ
- カウンター送り
が行われます。
途中で無理に戻してはいけません。
フィルムカウンターは72まで
カウンターはSから始まり、72まで表示します。
目盛り自体は4コマ単位で数字が表示されますが、実際のフィルム送りは1コマずつ行われます。裏蓋を開けるとSへ自動復帰します。
36枚撮りフィルムを使用する場合は、72付近まで撮影できます。
フィルム終端で巻き上げレバーへ強い抵抗を感じた場合は、無理に操作してはいけません。取扱説明書も、フィルムを使い切ったときにレバーへ力を加えないよう警告しています。
約11秒のセルフタイマー
ボディ前面には機械式セルフタイマーがあります。
レバーを約90度動かし、中央のスタートボタンを押すと約11秒後にシャッターが作動します。
集合写真だけでなく、三脚撮影時にシャッターボタンを直接押す振動を減らす用途にも使えます。
ただし、古い個体ではセルフタイマー内部の油脂が固着している場合があります。
動作未確認品では無理にセットしない方が安全です。
38mm F1.8装着時で約600g
純正カタログでは、F.Zuiko 38mm F1.8装着時の寸法と重量を、
- 約127×69.5×62.5mm
- 約600g
としています。
40mm F1.4装着時は約630g、42mm F1.2では約720gです。
ハーフ判という小さなフォーマットを活用し、交換レンズ式一眼レフとしてシステム全体を小型化しています。
PEN-F・PEN-FT・PEN-FVの違い
PEN-Fシリーズには、主にPEN-F、PEN-FT、PEN-FVがあります。
オリンパスの公式開発史では、PEN-Fが1963年、PEN-FTとPEN-FVが1966年に登場したとされています。
PEN-F
シリーズの原点となるハーフ判一眼レフです。
1963年に登場し、オリンパスは世界初のハーフサイズ一眼レフとしています。
PEN-FT
TTL露出計を内蔵した発展型です。
世界初のハーフ判TTL一眼レフであり、1ストローク巻き上げ、セルフタイマーなども備えています。
PEN-FV
PEN-FTと同時期に展開された兄弟モデルです。
中古ではPEN-F、FT、FVが混在するため、前面のモデル名、露出計表示、セルフタイマー周辺などを確認しましょう。
実用品としてPEN-FTを選ぶ最大の理由は、やはりボディ内TTL露出計を利用できることです。
OLYMPUS PEN-FTの基本スペック
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| カメラ形式 | ハーフ判レンズ交換式一眼レフ |
| 登場年 | 1966年 |
| 使用フィルム | 35mmフィルム |
| 画面サイズ | 24×18mm |
| 撮影枚数 | 36枚撮りで約72枚 |
| レンズマウント | Olympus PEN-Fバヨネット |
| ピント合わせ | 一眼レフ式・マニュアル |
| 標準レンズ | F.Zuiko Auto-S 38mm F1.8など |
| シャッター | ロータリー式金属フォーカルプレーン |
| シャッター速度 | B、1秒~1/500秒 |
| 露出方式 | 完全マニュアル |
| 測光方式 | TTL測光 |
| 測光表示 | TTLナンバー0~7 |
| 測光範囲 | EV3~17・ASA100/F1.4 |
| フィルム感度 | ASA25~400 |
| ファインダー | ポロプリズム式 |
| ファインダー倍率 | 約0.8倍・標準レンズ |
| フォーカシング | マイクロプリズム・フレネル |
| ミラー | 水平作動クイックリターン |
| 被写界深度確認 | あり |
| フラッシュ | M・X接点 |
| 電子フラッシュ同調 | 1/500秒まで全速 |
| セルフタイマー | 約11秒 |
| 電源 | 1.3V水銀電池・露出計のみ |
| 38mm F1.8装着時 | 約127×69.5×62.5mm・600g |
基本仕様は当時のOLYMPUS PEN-FT取扱説明書および純正カタログに基づきます。
OLYMPUS PEN-FTの基本的な使い方
フィルムを装填する
巻き戻しクランクを引き上げて裏蓋を開きます。
35mmフィルムをフィルム室へ入れ、フィルム先端を巻き取りスプールの溝へ差し込みます。
パーフォレーションがスプロケットへ正しく掛かっていることを確認し、裏蓋を閉じます。
空送りしてカウンターを1へ合わせる
巻き上げと空シャッターを繰り返し、カウンターが1を示すところまで進めます。
巻き上げ時に巻き戻しクランクも回転していれば、フィルムが正常に送られている可能性が高くなります。
ASA感度を設定する
シャッターダイヤル部分の感度設定窓へ使用するフィルムのASA値を表示します。
設定範囲はASA25~400です。
ISO100ならASA100、ISO400ならASA400です。
シャッター速度を決める
屋外の一般撮影なら1/125秒や1/250秒、室内なら1/30秒や1/60秒などを目安に設定します。
シャッターダイヤルは中間位置で使用せず、数字を赤い指標へ確実に合わせます。
TTL露出計を確認する
ファインダーをのぞき、左側に表示される露出計の指針を確認します。
指針が示す0~7のTTLナンバーを読みます。
レンズ側を同じTTLナンバーへ合わせる
露出計が「4」なら、レンズの絞りリングもTTLナンバー4へ合わせます。
これでカメラが示す適正露出です。
ピントを合わせる
マイクロプリズム中央へ被写体を入れ、ピントリングを回します。
ちらつきや像の崩れがなくなり、被写体が最も鮮明に見える位置へ合わせます。
シャッターを切る
構図、露出、ピントを確認し、シャッターボタンを指の腹で静かに押します。
撮影後は巻き上げレバーを停止位置まで操作します。
中古購入時に確認したいポイント
PEN-FTであることを確認する
PEN-F、PEN-FT、PEN-FVは外観がよく似ています。
まず前面のモデル名を確認しましょう。
TTL露出計を使いたい場合は、必ずPEN-FTを選びます。
シャッターが全速度で作動するか
B、1秒から1/500秒まで順番に確認します。
特に、
- 1秒
- 1/2秒
- 1/4秒
- 1/8秒
では速度差を耳でも確認しやすくなります。
次の症状がある個体は注意が必要です。
- 低速で途中停止する
- 各速度の違いがない
- 1/500秒だけ作動しない
- シャッターが開いたままになる
- 撮影後にミラーが戻らない
ロータリーシャッターはPEN-F系独自の重要部品なので、正常動作を優先して選びましょう。
ロータリーシャッターへ触れない
取扱説明書では、シャッター部分は非常に薄い金属で作られているため触れないよう警告しています。
裏蓋側やレンズ側から状態を確認するときも、指や綿棒で押してはいけません。
傷や変形は重大な不具合につながる可能性があります。
高速側の精度
1/250秒、1/500秒は音だけで精度を判断できません。
可能ならシャッターテスターまたは実写で確認します。
均一な空や壁を撮影し、一部だけ極端に濃度が変わる場合はシャッター動作を疑います。
ミラーの復帰
シャッターを切った直後、ファインダー像が戻ることを確認します。
- ミラーが途中で止まる
- ファインダーが暗いままになる
- 何回かに1回戻らない
- 巻き上げるまで戻らない
といった症状がある個体は、シャッターとミラー連動の整備が必要な可能性があります。
ファインダーの明るさ
明るい壁や空へ向けてファインダーを確認します。
- 強い曇り
- カビ
- 黒い点
- 黄色や茶色の変色
- マイクロプリズムの見えにくさ
- 露出計表示の欠け
がないか確認しましょう。
PEN-FTはTTL測光のために光路の一部を露出計へ分岐する構造です。
そのため、もともとの特性に加えて内部光学系が汚れていると、さらにピント合わせが難しくなります。
TTL露出計が動くか
適切な電池を入れ、明るい場所と暗い場所へ向けます。
ファインダー内の指針が滑らかに動くことを確認します。
次に、
- ASA感度を変える
- シャッター速度を変える
- 絞り値を変える
ことで表示が変化するか確認します。
針が動くだけでは測光精度までは保証されません。
1.3V水銀電池問題
PEN-FTの露出計は1.3V水銀電池を前提にしています。
中古販売で「露出計OK」とされていても、
何Vの電池で確認したのか
まで見る必要があります。
実用するなら、適切な代替電池または調整済み個体を使用し、現代の露出計と比較しましょう。
電池室の腐食
底面の電池室を開けます。
- 白い粉
- 緑色の腐食
- 接点の黒ずみ
- 電池蓋の固着
- ねじ山の破損
がないか確認します。
古い電池の液漏れが内部配線へ達している場合、表面を清掃しただけでは直らないことがあります。
TTLナンバー表示
対応レンズを装着し、TTLナンバー0~6程度の表示が動かせるか確認します。
絞りリングが極端に重い、TTL数字とF値の位置関係がおかしい場合は、過去の分解や連動不良も考えられます。
古いレンズでは絞り込み測光も確認
TTLナンバーを持たない初期PEN-Fレンズを使う場合は、プレビューボタンを利用した絞り込み測光が正常に機能するか確認します。
自動絞り
レンズをF8やF11へ設定します。
通常状態では絞りは開放のままです。
シャッターを切った瞬間だけ設定絞りまで閉じ、その後すぐ開放へ戻る必要があります。
戻りが遅い場合は、レンズ内部の絞り羽根や連動機構に問題がある可能性があります。
被写界深度確認ボタン
レンズのプレビューボタンを押し、設定絞りまで閉じるか確認します。
離すと開放へ戻る必要があります。
絞り羽根の油
レンズを外し、絞り羽根を確認します。
- 油が付着していない
- 羽根が素早く動く
- 開口部がいびつでない
- 最小絞りまで閉じる
ことが重要です。
自動絞りの戻りが遅いレンズでは、露出が不安定になる可能性があります。
レンズのカビや曇り
38mm F1.8など付属レンズへ光を斜めから当てます。
確認したい項目は、
- カビ
- 白い曇り
- コーティング劣化
- バルサム切れ
- 前玉・後玉の傷
- 大きな異物
です。
ハーフ判はネガを大きく拡大して使用するため、レンズのコントラスト低下やピント不良が仕上がりへ表れやすくなります。
ピントリング
最短撮影距離から無限遠まで滑らかに動くか確認します。
38mm F1.8なら約0.35mまで合わせられます。
古いグリースが固着していると、回転が極端に重くなることがあります。
無限遠のピント
遠くの建物や電柱へ向け、レンズを無限遠へ合わせます。
ファインダー像が鮮明になるか確認します。
可能なら実写でも確認しましょう。
ファインダーで合っていてもフィルム面でずれている場合は、ミラー、スクリーン、レンズマウントなどの調整が必要です。
巻き上げレバー
1ストロークで最後まで滑らかに動くか確認します。
- 途中で止まらない
- 空回りしない
- シャッターがチャージされる
- フィルム送りが行われる
- カウンターが進む
ことが重要です。
極端に重い場合は無理に動かさないようにしましょう。
スプロケットとフィルム送り
不要なフィルムや裏紙で確認できれば理想です。
巻き上げレバーを操作したときに、
- スプロケットが回転する
- フィルムが一定量進む
- パーフォレーションを傷めない
ことを確認します。
72枚撮影できるカメラだけに、途中でコマ送りがずれると大量の写真を失う可能性があります。
フィルムカウンター
裏蓋を開けるとSへ戻り、巻き上げによって数字が進むことを確認します。
ハーフ判なので72まで表示されること自体は正常です。
「36を超えたから故障」ではありません。
裏蓋の遮光
裏蓋が確実に閉まり、ロックされるか確認します。
遮光材が劣化している場合は交換を検討します。
最初の試写では直射日光下でも撮影し、光漏れがないか確認すると安心です。
セルフタイマー
セルフタイマーは約11秒で作動します。
中古で動作未確認の場合は、いきなり最大まで作動させない方が安全です。
途中停止するとシャッター系統まで動かなくなる場合があります。
フラッシュ同調
電子フラッシュを使用する予定があるなら、X接点へ切り替え、各シャッター速度で発光を確認します。
PEN-FT本来の特徴である1/500秒同調まで正常かは、実写で画面全体に光が回るか確認するのが確実です。
OLYMPUS PEN-FTが向いている人
PEN-FTは、次のような人に向いています。
- ハーフ判を一眼レフで楽しみたい人
- フィルム1本から多く撮影したい人
- レンズ交換を楽しみたい人
- TTL露出計付きの機械式カメラを使いたい人
- マニュアル露出が好きな人
- 接写や望遠撮影も行いたい人
- 小型な一眼レフシステムを組みたい人
- 高速フラッシュ同調を活用したい人
- 独特な機械構造のカメラが好きな人
特に、「PENのハーフ判」と「本格的なシステム一眼レフ」の両方を求める人には魅力的です。
OLYMPUS PEN-FTが向かない場合
一方、次のような人には扱いにくい可能性があります。
- 自動露出を使いたい人
- オートフォーカスが必要な人
- 現行電池をそのまま使いたい人
- 大きく明るい現代的なファインダーを求める人
- 36枚撮りフィルムを早く撮り切りたい人
- 整備費用を掛けたくない人
- 特殊なシャッター機構を避けたい人
- 交換レンズを安価にそろえたい人
- 35mmフルサイズと同等のネガ面積を求める人
気軽さだけを求めるならPEN EE系、通常の35mm一眼レフならOM-1なども候補になります。
まとめ
OLYMPUS PEN-FTは、1966年に登場したレンズ交換式ハーフ判一眼レフです。
オリンパスが世界初のハーフサイズTTL一眼レフと位置づけるモデルで、PEN-Fシリーズの小型システムへTTL測光を組み込みました。
主な特徴は次のとおりです。
- 24×18mmのハーフ判
- 36枚撮りフィルムで約72枚
- PEN-Fバヨネットマウント
- TTL露出計
- 完全マニュアル露出
- TTLナンバー0~7による独自の露出表示
- B、1秒~1/500秒
- ロータリー式金属フォーカルプレーンシャッター
- 電子フラッシュは1/500秒まで全速同調
- ポロプリズム式ファインダー
- マイクロプリズムによるピント合わせ
- 水平作動クイックリターンミラー
- 自動絞り
- 被写界深度確認
- 1ストローク巻き上げ
- 約11秒セルフタイマー
- 1.3V水銀電池を露出計に使用
- 露出計が使えなくても機械式シャッターで撮影可能
中古品では、露出計の針が動くことだけでは合格とはいえません。
1.3V電池を前提とした測光精度、ロータリーシャッターの全速度、ミラー復帰、自動絞り、フィルム送り、ファインダー、レンズの状態まで確認する必要があります。
特にPEN-FTは、一般的な一眼レフとはシャッターもファインダーも測光表示も異なります。
しかし、その独自性こそが最大の魅力です。
35mmフィルムを半分ずつ使いながら、レンズを交換し、一眼レフで正確にピントを合わせ、TTLで光を測り、必要なら1/500秒でフラッシュまで同期させる。
OLYMPUS PEN-FTは、「ハーフ判だから簡易カメラ」という常識を真っ向から否定した、本格的な小型システム一眼レフです。









