OLYMPUS SCは、35mmフィルムを使用するレンズ固定式のレンジファインダーカメラです。
明るいG.Zuiko 42mm F1.8レンズ、連動距離計、CdS式露出計、最高1/500秒のレンズシャッターを搭載しています。
なお、このカメラは製品としては「OLYMPUS SC」に分類されますが、軍艦部には「OLYMPUS-S」と刻印されています。中古市場では「OLYMPUS S」「OLYMPUS SC」「OLYMPUS 35 SC」など、複数の名称で扱われることがあるため注意が必要です。
OLYMPUS SCとは
OLYMPUS SCは、1963年に登場した35mm判レンジファインダーカメラです。
1962年発売の「OLYMPUS-S Electro Set」を発展させたモデルで、前モデルのセレン光電池式露出計から、暗い場所にも比較的強いCdS式露出計へ変更されました。1965年にOLYMPUS 35 LEが登場するまで生産されたとされています。
本体表記はOLYMPUS-S
少々ややこしいのが、製品名と本体の刻印が一致していないことです。
資料上の型式は「OLYMPUS-SC」ですが、カメラ上部には「OLYMPUS-S」と記されています。そのため、本体の表記だけを見ても、前モデルのS Electro Setなのか、後発のSCなのかを判別しにくくなっています。
見分ける際の大きなポイントが、カメラ前面にある露出計の受光部です。
- 大きなセレン受光部を持つもの:OLYMPUS-S Electro Set
- 小さな丸いCdS受光部を持つもの:OLYMPUS SC
中古品を調べる際は、商品名だけでなく正面の受光部も確認しましょう。
G.Zuiko 42mm F1.8を搭載
OLYMPUS SCには、G.Zuiko 4.2cm F1.8が固定装着されています。
4.2cmは現在の表記では42mmです。35mm判の標準レンズに近い焦点距離ですが、一般的な50mmレンズより少し広い範囲を写せます。
街中のスナップ、人物、旅行、日常の記録など、幅広い撮影に利用しやすい画角です。
7枚構成の明るい標準レンズ
G.Zuiko 42mm F1.8は、5群7枚構成のレンズです。
開放F1.8と明るく、日中だけでなく、室内や夕方など光量の少ない場面でも比較的シャッター速度を確保しやすくなっています。絞りはF1.8からF22まで設定できます。
開放付近では背景をぼかした撮影を楽しめますが、ピントの合う範囲は狭くなります。レンジファインダーの二重像を見ながら、慎重にピントを合わせる必要があります。
F5.6やF8程度まで絞れば、ピントの合う範囲が広くなり、日中のスナップや風景撮影に使いやすくなります。
レンズ交換はできない
OLYMPUS SCはレンズ固定式です。
一眼レフやレンズ交換式レンジファインダーのように、広角レンズや望遠レンズへ交換することはできません。
そのため、中古品ではボディーの外観以上に、G.Zuiko 42mm F1.8の状態が重要です。レンズに強いカビやクモリがあっても、別のレンズへ交換して解決することはできません。
連動距離計でピントを合わせる
OLYMPUS SCは、マニュアルフォーカス式の連動距離計を搭載しています。
ファインダー中央付近には、被写体が二重に見える距離計像が表示されます。レンズのピントリングを回し、二つの像が重なった位置でピントが合います。
ファインダー内の二重像を重ねる
基本的なピント合わせの流れは次のとおりです。
- ピントを合わせたい被写体をファインダー中央へ置く
- 被写体が二重に見えることを確認する
- ピントリングを回す
- 二つの像が完全に重なる位置へ合わせる
- 構図を整えてシャッターを切る
縦線や建物の角など、輪郭がはっきりした被写体を利用すると合わせやすくなります。
最短撮影距離は約0.9m
ピント合わせの範囲は約3フィート、メートル換算で約0.9mから無限遠です。
現在のコンパクトカメラほど近距離撮影には強くありません。料理や小物を大きく写そうとして被写体へ近づきすぎると、ピントを合わせられない可能性があります。
また、レンジファインダーカメラではファインダーと撮影レンズの位置が異なります。近距離では、ファインダーで見えた範囲と実際に写る範囲にずれが生じる点にも注意しましょう。
CdS式露出計を搭載
OLYMPUS SCには、CdS受光素子を利用した外光式露出計が搭載されています。
撮影レンズを通った光を測るTTL方式ではなく、カメラ前面にある丸い受光部へ入った光を測定する仕組みです。前モデルのセレン式より小さな受光部となり、露出計の作動には1.35Vの電池を使用します。
自動露出ではない
露出計が搭載されていても、OLYMPUS SCが自動で絞りやシャッター速度を決定するわけではありません。
露出計の指示を確認しながら、撮影者がシャッター速度と絞り値を設定します。
撮影の基本的な流れは次のとおりです。
- 使用するフィルムのASA感度を設定する
- 被写体の動きに合わせてシャッター速度を選ぶ
- 露出計の表示を確認する
- 適正露出になるよう絞りを調整する
- 距離計でピントを合わせる
- シャッターを切る
露出計は撮影を補助する装置であり、露出設定そのものはマニュアルです。
フィルター使用時は補正が必要
外光式露出計は、撮影レンズへフィルターを取り付けても、そのフィルターによる光量低下を直接測定できません。
NDフィルターや色付きフィルターを使用する場合は、フィルターの露出倍数に応じて絞りやシャッター速度を補正する必要があります。
水銀電池の代替品に注意
OLYMPUS SCの露出計には、1.35Vの水銀電池が指定されています。
資料ではPX625、MR-625Rなどの型番が挙げられていますが、これらの水銀電池は現在では一般的に販売されていません。
1.5V電池をそのまま使うと誤差が出る場合がある
形状の近い現在の電池には、1.5Vのアルカリ電池などがあります。
しかし、指定電圧より高いため、そのまま使用すると露出計の指示がずれる可能性があります。
代替方法としては、次のような選択肢があります。
- 1.35Vに近い空気亜鉛電池を使用する
- 電圧を調整する変換アダプターを使用する
- 1.5V電池に合わせて露出計を再調整する
- 内蔵露出計を使わず、外部露出計を使用する
電池を入れて針が動いた場合でも、正確な露出を示しているとは限りません。スマートフォンの露出計アプリや、正常なカメラの測光結果と比較すると安心です。
電池がなくても撮影自体は可能
露出計には電池が必要ですが、Copal-SVシャッターは機械式です。
シャッター、絞り、巻き上げ機構が正常であれば、内蔵露出計を使わずに撮影できます。外部露出計やスマートフォンのアプリで明るさを測り、手動で露出を設定すればよいでしょう。
Copal-SVレンズシャッターを搭載
OLYMPUS SCには、Copal-SVレンズシャッターが搭載されています。
シャッター速度はBと1秒から1/500秒までです。電子制御式ではなく、レンズ周辺の羽根が機械的に開閉してフィルムへ光を当てます。
低速から高速まで選択できる
主なシャッター速度は次のとおりです。
- B
- 1秒
- 1/2秒
- 1/4秒
- 1/8秒
- 1/15秒
- 1/30秒
- 1/60秒
- 1/125秒
- 1/250秒
- 1/500秒
低速シャッターでは暗い場所や長時間露光に対応でき、高速シャッターでは明るい屋外や動く被写体の撮影に利用できます。
1/30秒より遅い速度では手ぶれしやすいため、三脚や安定した台を利用するとよいでしょう。
レンズシャッターはフラッシュ撮影と相性がよい
レンズシャッターは、羽根が画面全体を一度に開く構造です。
そのため、フォーカルプレーンシャッターよりも高速シャッターでフラッシュを同調させやすい特徴があります。OLYMPUS SCにはXシンクロ接点が備わっています。
ただし、古いカメラではシンクロ接点や内部配線が劣化している可能性があります。フラッシュ撮影を行う場合は、事前に発光と同調を確認しましょう。
OLYMPUS SCの基本スペック
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 発売年 | 1963年 |
| 生産時期 | 1963~1965年ごろ |
| カメラ形式 | レンズ固定式35mmレンジファインダー |
| 使用フィルム | 35mm・135フィルム |
| 画面サイズ | 24×36mm |
| レンズ | G.Zuiko 42mm F1.8 |
| レンズ構成 | 5群7枚 |
| 絞り | F1.8~F22 |
| 最短撮影距離 | 約0.9m |
| ピント合わせ | 連動距離計式・マニュアル |
| 露出計 | CdS式外光露出計 |
| 露出設定 | マニュアル |
| フィルム感度 | ASA15~800 |
| シャッター | Copal-SVレンズシャッター |
| シャッター速度 | B、1秒~1/500秒 |
| フラッシュ同調 | X接点 |
| フィルム巻き上げ | レバー式 |
| 露出計用電池 | 1.35V水銀電池 |
| 本体表記 | OLYMPUS-S |
主な仕様は、OLYMPUS SCおよび前後のシリーズをまとめた資料に基づきます。
OLYMPUS-S Electro Setとの違い
OLYMPUS SCの前身が、1962年発売のOLYMPUS-S Electro Setです。
両機には、次のような共通点があります。
- G.Zuiko 42mm F1.8を搭載
- レンズ固定式レンジファインダー
- 連動距離計
- Copal系レンズシャッター
- マニュアル露出
大きな違いは露出計です。
Electro Setはセレン式
OLYMPUS-S Electro Setには、セレン光電池式露出計が搭載されています。
セレン式は電池を必要としませんが、受光部が大きく、経年劣化によって反応しなくなることがあります。
SCはCdS式
OLYMPUS SCでは、受光素子がCdS式へ変更されました。
小型の丸い受光部となり、暗い場所への対応力も向上しましたが、露出計を使うには1.35V電池が必要です。
OLYMPUS 35 LEとの違い
OLYMPUS SCの後継にあたるのが、1965年に登場したOLYMPUS 35 LEです。
35 LEは新しいデザインのボディーを採用し、G.Zuiko 42mm F1.7レンズと電子制御式の自動露出機構を搭載しました。
OLYMPUS SCが露出計の表示を見ながら手動で設定するカメラであるのに対し、35 LEは露出設定の自動化を進めたモデルです。
現在の中古市場では名称が似ているため、次の機種と混同しないようにしましょう。
- OLYMPUS-S Electro Set
- OLYMPUS SC
- OLYMPUS 35 LE
- OLYMPUS 35 LC
- OLYMPUS 35 SP
特に「OLYMPUS 35 SC」と記載された商品でも、正式な本体表記はOLYMPUS-Sである場合があります。
中古のOLYMPUS SCを購入するときの注意点
OLYMPUS SCは製造から60年以上が経過しています。
外観がきれいでも、シャッター、露出計、距離計、レンズがすべて正常とは限りません。
本当にSCなのか確認する
最初に、前面の受光部を確認します。
小さな丸いCdS受光部があるものがSCです。大きなセレン受光部を持つ個体は、前モデルのOLYMPUS-S Electro Setである可能性があります。
軍艦部に「OLYMPUS-S」と書かれていること自体は、SCでも正常です。
電池室の腐食
底部の電池室を開け、次の症状がないか確認しましょう。
- 白色や緑色の付着物
- 接点の錆
- 電池蓋の固着
- ねじ山の破損
- 内部配線の腐食
- 不自然な電池スペーサー
古い水銀電池が長期間入ったままだった個体では、液漏れによって露出計が動かなくなっていることがあります。
CdS露出計の反応
代替電池を入れ、明るい場所と暗い場所へカメラを向けます。
露出計の針が変化するか、フィルム感度やシャッター速度を変更した際に表示が変わるか確認しましょう。
針が動いても、正確性は別問題です。正常な露出計と比較して大きな誤差がないか確認する必要があります。
レンズシャッターの粘り
1秒から1/500秒まで速度を変更し、羽根の開いている時間が変化するか確認します。
古いレンズシャッターでは、次のような症状が見られます。
- 低速シャッターが途中で止まる
- 1秒に設定してもすぐ閉じる
- 羽根が開かない
- 羽根が閉じきらない
- すべて同じ速度で切れる
- シャッターチャージができない
動作が重い場合は、無理にレバーやリングを操作しないようにしましょう。
シャッター羽根と絞り羽根の油
レンズ前面から羽根を確認し、油が付着していないか見ておきます。
油が付いた羽根は、低温時や長期間使用していない場合に動きが遅くなることがあります。
外側から潤滑油を差すと、レンズ面やシャッター内部へ広がる可能性があるため避けましょう。
G.Zuikoレンズの状態
レンズを前後から光に透かし、次の症状を確認します。
- カビ
- 白いクモリ
- バルサム切れ
- 前玉・後玉の強い傷
- コーティングの劣化
- 内部への油の付着
レンズ固定式なので、光学系の状態が悪いとカメラ全体の実用性へ影響します。
距離計の二重像
ファインダーをのぞき、二重像が十分な濃さで見えるか確認します。
近距離から無限遠までピントリングを動かし、二重像も滑らかに移動するか見ておきましょう。
遠くの建物へピントを合わせた際、レンズの無限遠位置と距離計像が一致しない場合は、距離計の調整が必要です。
ファインダーの状態
ファインダー内部にカビ、クモリ、汚れがないか確認します。
ファインダーの汚れは撮影画像へ直接写りませんが、構図確認とピント合わせに影響します。特に距離計像が薄い個体は、暗い場所でのピント合わせが難しくなります。
フィルム巻き上げ機構
巻き上げレバーを操作し、次の動作を確認しましょう。
- レバーが滑らかに動く
- シャッターがチャージされる
- フィルムカウンターが進む
- スプロケットが回転する
- 巻き取り軸が回転する
- 巻き戻し機構が作動する
巻き上げが極端に重い場合は、無理に力を加えないようにします。
OLYMPUS SCはどんな人に向いている?
OLYMPUS SCは、次のような人に向いています。
- 珍しい国産レンジファインダーに興味がある人
- G.Zuiko 42mm F1.8を使ってみたい人
- 明るい固定レンズでスナップを撮影したい人
- マニュアル露出を楽しみたい人
- 機械式レンズシャッターが好きな人
- 1960年代のオリンパスカメラを収集している人
- OLYMPUS 35 SP以前のモデルに興味がある人
一方、自動露出やオートフォーカスを使いたい人には向きません。
露出計の電池問題や距離計の調整、レンズシャッターの整備など、古いカメラならではの注意点もあります。
まとめ
OLYMPUS SCは、1963年に登場したレンズ固定式の35mmレンジファインダーカメラです。
G.Zuiko 42mm F1.8、連動距離計、CdS式露出計、Bおよび1秒から1/500秒のCopal-SVレンズシャッターを搭載しています。
正式にはOLYMPUS SCとして扱われますが、本体の軍艦部には「OLYMPUS-S」と刻印されているため、前モデルのS Electro Setと混同されやすいカメラです。小さな丸いCdS受光部が、SCを判別する大きな手掛かりになります。
中古で購入するときは、電池室、CdS露出計、レンズシャッター、絞り羽根、G.Zuikoレンズ、距離計、ファインダー、フィルム巻き上げ機構を確認しましょう。
内蔵露出計が使えなくても、シャッターとレンズが正常なら外部露出計を利用して撮影できます。状態のよい個体なら、42mm F1.8の明るいレンズと、1960年代らしい金属製レンジファインダーの操作感を楽しめる一台です。









