NIKKOR-P 75mm F2.8とは?Zenza Bronicaを代表する6×6用標準Nikkorを徹底解説
NIKKOR-P 75mm F2.8は、Zenza Bronicaの初期6×6中判一眼レフシステム向けに日本光学工業、現在のニコンが供給した標準単焦点レンズです。
「NIKKOR-P」という名前だけを見るとNikon F用レンズのようにも見えますが、この75mm F2.8は主に、
- Zenza Bronica D
- Bronica S
- Bronica C
- Bronica S2
- Bronica S2A
- Bronica EC系
など、初期のフォーカルプレーンシャッター式Bronicaで使われた中判用Nikkorとして知られています。
ニコン公式の歴史資料にも、1959年に日本光学が新光堂へZenza Bronica中判一眼レフ用Nikkorを供給したことが記録されています。
そしてBronica S2の当時の純正説明書では、75mm F2.8を標準レンズとして明記。
仕様は、
- 4群5枚
- F2.8
- 最小絞りF22
- 画角55度
- 自動絞り
- 最短撮影距離0.6m
- 67mmフィルター
- 約230g
となっています。
6×6中判用F2.8標準レンズでありながら約230g。
そして鏡筒自体も驚くほど薄い。
巨大で重いBronica S2へ装着すると、
「ボディは戦車、レンズはパンケーキ」
とでも言いたくなる独特の姿になります。
この記事では、NIKKOR-P 75mm F2.8の歴史、光学構成、Bronica独特のフォーカシング機構、自動絞り、P.CやH.Cとの違い、中古購入時に確認したいポイントまで詳しく解説します。
NIKKOR-P 75mm F2.8とは
NIKKOR-P 75mm F2.8は、6×6判Zenza Bronica用の標準レンズです。
初期Bronicaではカメラメーカーとレンズメーカーが別でした。
Bronica本体を開発したのは新光堂・Zenza Bronica側。
レンズを供給したのが日本光学工業、つまり現在のNikonです。
ニコン公式史には1959年、Zenza Bronica中判一眼レフ用としてNikkorレンズを供給したことが記録されています。
そのため古いBronicaを見ると、
ZENZA BRONICAのボディにNIKKORが付いている
という、現在では少し不思議に感じる組み合わせを見ることができます。
しかし当時としては正式な純正システムです。
初期Bronicaの標準レンズ
Bronica S2純正説明書では、75mm F2.8を明確に「Standard lens」としています。
6×6判では75mmは自然な標準画角です。
公式仕様の画角は55度。
35mm判で75mmなら短い望遠ですが、6×6判は画面が大きいため、75mmでも標準域になります。
用途は非常に幅広く、
- 人物
- スナップ
- 風景
- 家族写真
- 静物
- 街歩き
- 商品撮影
などに使えます。
6×6 Bronicaを一本だけのレンズで使うなら、まさに基本となる焦点距離です。
「P」は5枚構成を意味する
古いNikkorでは、NIKKORの後ろに付くアルファベットがレンズ枚数を示していました。
ニコン公式の「NIKKOR – The Thousand and One Nights」では、
- T=3枚
- Q=4枚
- P=5枚
- H=6枚
- S=7枚
- O=8枚
- N=9枚
と説明されています。
したがって、
NIKKOR-P 75mm F2.8の「P」は5枚構成を示す
ということです。
実際、Bronica S2純正説明書でも4群5枚とされています。
名前と光学構成がきれいに一致しています。
4群5枚のシンプルな光学系
レンズ構成は4群5枚です。
現代の中判標準レンズでは10枚近いレンズを使用することもありますが、NIKKOR-P 75mm F2.8はわずか5枚。
かなりシンプルです。
専門資料ではクセノター系に近い設計として紹介されることもありますが、Bronica純正説明書では特定の光学形式名までは記載されていません。二次資料で設計タイプを語る場合は、メーカー公称仕様とは分けて考えた方が安全です。
確実に言えるのは、
4群5枚、F2.8、6×6判をカバーする標準レンズ
ということです。
開放F2.8
開放F値はF2.8。
最小絞りはF22です。
中判用標準レンズとして十分に明るい仕様です。
6×6判では撮像面が大きいため、75mm F2.8を近距離で使えば背景をかなりぼかせます。
特に、
- 人物
- 花
- 静物
- 半身ポートレート
などでは、中判らしい浅い被写界深度を楽しめます。
一方、開放ではピントがかなりシビアになります。
しかもBronica S2/S2Aではフォーカシングスクリーンやミラー位置の精度も実写ピントへ関係するため、レンズだけ正常なら安心というわけではありません。
この点は中古購入時に詳しく解説します。
最短撮影距離は0.6m
純正仕様では最短撮影距離60cmです。
中判75mm標準としてはかなり実用的です。
顔のアップ。
花。
料理。
小物。
机上の静物。
こうした被写体にも寄れます。
しかも6×6+75mm F2.8なので、0.6m付近では背景を大きくぼかすことができます。
フィルター径は67mm
フィルター径は67mm。
現在でも一般的なサイズなので、
- 保護フィルター
- UV
- ND
- PL
- モノクロ用フィルター
などを比較的探しやすいでしょう。
ただし古い個体ではフィルター枠が落下で歪んでいる場合があります。
購入時には実際に67mmフィルターが正常にねじ込めるか確認すると安心です。
重量わずか約230g
純正資料では重量約230gです。
これがかなり驚異的です。
6×6中判。
75mm。
F2.8。
金属鏡筒。
それでも230g。
理由のひとつが、NIKKOR-P 75mm F2.8には一般的な交換レンズのような大型フォーカシングヘリコイドが組み込まれていないことです。
ピント合わせ機構は、Bronica側にあります。
最大の特徴は「レンズに普通のフォーカスリングがない」
ここがNIKKOR-P 75mm F2.8最大の特徴です。
Bronica S2の純正説明書では、ピント合わせについて、
カメラ側のヘリコイドを回してフォーカシングスクリーン上の像を合わせる
と説明しています。
さらにカメラ側ヘリコイドには75mm、200mm、50mm、135mm用の距離目盛りが刻まれています。
つまりNIKKOR-P 75mm F2.8単体を見ると、
「あれ?ピントリングは?」
となります。
それで正常です。
Bronica S2/S2Aではカメラ側ヘリコイドでピントを合わせる
S2ではレンズ前方に大型のフォーカシングヘリコイドがあります。
75mm F2.8はそこへ装着します。
そしてカメラ側のリングを回し、レンズユニットそのものを前後させてピントを合わせます。
Bronica S2の資料では、ヘリコイドのストロークは14mm、回転角は250度とされています。標準75mmを含む50・75・135・200mmの距離目盛りにも対応しています。
専門修理資料でも、初期Bronica用Nikkorの多くはレンズ自身にフォーカシング機構を持たず、S2/S2Aの着脱式ヘリコイドを使用すると説明されています。
中古で「レンズだけ」を買う場合は要注意
これは非常に重要です。
オークションなどで、
NIKKOR-P 75mm F2.8 単品
とだけ出品されている場合、その写真を確認してください。
レンズ本体だけなら、フォーカシングヘリコイドが含まれていない場合があります。
S2/S2Aをすでに持っていてヘリコイドも付いているなら問題ありません。
しかし、
「このレンズを買えばS2にそのまま付けてピント合わせできる」
と思って購入すると、ヘリコイドまで別途必要になる可能性があります。
逆に中古店で、
「NIKKOR-P 75mm F2.8+大型フォーカスリング」
のような状態なら、レンズとBronica用ヘリコイドがセットになっている可能性があります。
レンズとヘリコイドを混同しない
中古販売では、ヘリコイド付き状態を一つの「レンズ」として扱うことがあります。
しかし構造上は、
光学レンズユニット
と、
Bronicaフォーカシングヘリコイド
は分離できます。
そのため、
「フォーカスリングが固い」
という症状も、実際にはNIKKOR-Pそのものではなくカメラ側ヘリコイドの古いグリースが原因という場合があります。
中古診断ではここを切り分けましょう。
完全自動絞り
NIKKOR-P 75mm F2.8は自動絞りに対応しています。
Bronica S2純正説明書では、75mmを含むNikkorについてinstant reopening automatic diaphragmsを備えると説明されています。
通常はF2.8開放状態。
これによってファインダーが明るく、ピント合わせしやすくなります。
シャッターを切る瞬間だけ設定したF値まで絞り込みます。
撮影が終われば、すぐF2.8開放へ戻ります。
現在の一眼レフ交換レンズでは当然に見える仕組みですが、1950~60年代の中判システムとして重要な機能でした。
絞り込みプレビューも可能
Bronica S2には被写界深度プレビューボタンがあります。
ボタンを押すと、レンズが設定F値まで絞り込まれます。
純正説明書でも、プレビュー時には絞りが設定値まで閉じ、通常のピント合わせと観察は開放で行うよう説明されています。
たとえばF8に設定してプレビューすると、
- 背景がどの程度鮮明になるか
- 手前から奥までどれくらいピントが合うか
をファインダーで確認できます。
中間絞りも使用できる
S2純正説明書では、絞りをクリック位置だけでなく、その中間位置にも設定できると説明されています。
つまり、
F4とF5.6の間、
F5.6とF8の間、
なども使用可能です。
現在でいう約半段程度の露出調整にも対応できるわけです。
レンズシャッターは内蔵していない
ここも後年のBronicaと混同しやすいポイントです。
NIKKOR-P 75mm F2.8にはレンズシャッターはありません。
シャッターはカメラボディ側です。
Bronica S2は縦走行フォーカルプレーンシャッターを搭載し、最高1/1000秒。電子フラッシュのX設定は1/40秒です。
したがって、この75mm F2.8単体を見てもシャッター速度リングはありません。
後年のBronica ETR・SQ・GS-1など、レンズシャッター式Zenzanonとはまったく異なるシステムです。
NIKKOR-P 75mm F2.8はBronica用
これは何度でも確認したいところです。
NIKKORという名称なので、
「Nikon Fに付くだろう」
と思ってはいけません。
ニコン公式史自身が、1959年にZenza Bronica中判一眼レフ用Nikkorを供給したことを記録しています。
今回の75mm F2.8はそのBronica系レンズです。
通常のNikon Fマウントではありません。
35mm用Nikonへはそのまま装着できない
Nikon F、F2、FM、FEなどへ直接装着することはできません。
同じNIKKORブランドでもマウント規格が異なります。
中古検索では、
NIKKOR-P 75mm F2.8
だけでなく、
Bronica Nikkor-P 75mm F2.8
として探す方が誤購入を防ぎやすくなります。
S2純正説明書では75mmが標準レンズ
Bronica S2のメーカー取扱説明書は、75mm F2.8について、
- standard lens
- 4 groups / 5 elements
- fully automatic preset diaphragm
と明記しています。
つまり後から勝手に組み合わされた他社レンズではありません。
Bronica S2システムの正式な標準Nikkor
です。
S・C系でも使用された
S2の当時資料ではNikkorレンズをBronica専用として設計し、Cタイプ・Sタイプでも使用できると説明しています。
その後のS2・S2AやEC系でも同系列のNikkorが使われ、中古市場でもNIKKOR-P 75mm F2.8はS2・EC系標準レンズとして流通しています。
ただしBronicaには後年、
- ETR
- SQ
- GS-1
- RF645
などまったく別のレンズシステムがあります。
「Bronicaなら全部装着可能」ではありません。
NIKKOR-P 75mm F2.8の世代違い
長期間使われた標準レンズなので、外観や刻印に複数のバリエーションがあります。
専門資料では、初期には、
Nippon Kogaku銘+7.5cm表記
の個体があり、その後、
Nikon銘+75mm表記
へ変化したとされています。
そのため、
- NIKKOR-P 7.5cm F2.8
- NIKKOR-P 75mm F2.8
を見つけても、焦点距離としては同じ75mmクラスです。
7.5cm=75mm
古いレンズでは焦点距離をcmで表示することがありました。
7.5cmは75mmです。
したがって初期型の、
NIKKOR-P 1:2.8 f=7.5cm
も、後期の75mm表記と同じ標準焦点距離です。
外観やコーティングなどの世代差はありますが、
「7.5cmだから別の焦点距離」
ではありません。
NIKKOR-P.C 75mm F2.8も存在する
後期にはNIKKOR-P.C 75mm F2.8も存在します。
専門資料では、P.C版はP版と同じ4群5枚系光学構成を維持しつつ、マルチコーティング化されたモデルとして紹介されています。これはメーカー一次資料ではなく、Bronica/Nikkor研究資料に基づく区分です。
中古でPとP.Cを比較する場合、
- 年代
- コーティング
- 外装
- 光学状態
まで確認しましょう。
NIKKOR-H.C 75mm F2.8は別設計
さらに、
NIKKOR-H.C 75mm F2.8
というレンズもあります。
「H」はニコンの旧命名規則では6枚構成を意味します。
二次資料でもBronica用H.C 75mm F2.8は4群6枚の別光学系として記録されています。
したがって、
NIKKOR-P 75mm F2.8
と、
NIKKOR-H.C 75mm F2.8
は同じ75mm F2.8でも別レンズです。
Zenzanon 75mm F2.8とも別物
NikonによるNikkor供給終了期には、Bronica用標準レンズとしてZenzanon 75mm F2.8も登場します。
こちらも4群5枚仕様とされるものがありますが、NIKKOR-Pそのものではありません。
中古では、
- Nikkor-P
- Nikkor-P.C
- Nikkor-H.C
- Zenzanon
を区別しましょう。
NIKKOR-P 75mm F2.8の基本スペック
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| レンズ形式 | 6×6中判用標準単焦点 |
| メーカー | 日本光学工業・Nikon |
| 主用途 | 初期Zenza Bronica |
| 焦点距離 | 75mm |
| 初期表記 | 7.5cmの個体あり |
| 開放F値 | F2.8 |
| 最小絞り | F22 |
| 光学構成 | 4群5枚 |
| 「P」の意味 | 5枚構成 |
| 画角 | 約55度 |
| ピント | MF |
| フォーカシング | Bronica側ヘリコイド |
| 最短撮影距離 | 約0.6m |
| 絞り | 自動絞り |
| 被写界深度プレビュー | ボディ側で可能 |
| フィルター径 | 67mm |
| 重量 | 約230g |
| シャッター | レンズ内にはなし |
| 対応シャッター | Bronicaボディ側FPシャッター |
| 対応例 | Bronica S/C/S2/S2A/EC系 |
| AF | なし |
| 電子接点 | なし |
主要仕様はBronica S2純正説明書によります。
NIKKOR-P 75mm F2.8の基本的な使い方
Bronicaへ装着する
S2/S2Aでは、ボディ側フォーカシングヘリコイドへレンズを装着します。
無理な力を掛けず、マウントが正しい位置で確実にロックされることを確認します。
絞りを設定する
F2.8からF22まで選びます。
必要ならクリックの中間位置も利用できます。
ピントはボディ側リング
レンズそのものではなく、カメラ前面の大型ヘリコイドを回します。
純正説明書では75mm用距離目盛りが白色で表示されています。
開放でピントを合わせる
通常、レンズはF2.8開放です。
ファインダーが明るい状態でピントを合わせます。
必要なら被写界深度プレビュー
プレビューボタンを押すと設定F値まで絞られます。
シャッターを切る
撮影時にレンズが設定絞りまで閉じます。
露光終了後は自動的に開放へ戻ります。
中古購入時に確認したいポイント
最初に「Bronica用」か確認する
中古で最初に見るべきポイントです。
NIKKOR-PというブランドだけでNikon F用だと判断しないようにします。
Bronica用75mm F2.8は6×6中判システム用です。
マウント部分の写真まで確認しましょう。
NIKKOR-PかNIKKOR-P.Cか
銘板を確認します。
- NIKKOR-P
- NIKKOR-P.C
- NIKKOR-H.C
では世代や光学構成が異なります。
今回の目的がPなら、余計な「C」「H」が付いていないか確認します。
ただし初期・後期でNippon Kogaku/Nikon、7.5cm/75mmなど表記差があります。
レンズだけか、ヘリコイド付きか
最重要級です。
S2/S2A用NIKKOR-P 75mm F2.8は、レンズ単体に通常のフォーカシングヘリコイドを持ちません。
商品写真に大型のフォーカスリングまで付いているか。
それとも薄いレンズユニットだけなのか。
必ず確認します。
レンズ単品でも故障とは限らない
小さく薄いNIKKOR-Pだけを見て、
「フォーカスリング欠品」
と判断しないようにしましょう。
それが本来のレンズ本体です。
ピント機構はBronica側です。
フォーカシングヘリコイド
ヘリコイド付きなら0.6m~∞まで回します。
確認するのは、
- 固着
- 極端な重さ
- ガリガリ感
- 部分的な引っ掛かり
- 大きなガタ
です。
古いグリースが固化している個体は少なくありません。
この症状はレンズの光学部ではなく、別体ヘリコイド側の問題である可能性があります。
無限遠
S2/S2Aへ装着し、遠くの建物などへ向けます。
ヘリコイドの∞付近でファインダー像が正しく合うか確認します。
ただし、ここで合わない場合も即座に「レンズ不良」と断定してはいけません。
Bronica S2/S2Aには別の有名な問題があります。
S2/S2Aのフォーカシングスクリーン支持材に注意
S2/S2Aではフォーカシングスクリーン周囲の古いフォーム材が劣化すると、スクリーン位置がずれてファインダー上のピントとフィルム面のピントが一致しなくなることがあります。
修理コミュニティでは非常によく知られた経年問題として報告されています。
つまり、
「75mmを付けたら無限遠が出ない」=75mmレンズ不良
とは限りません。
ボディ側を疑う必要があります。
開放F2.8で実写ピントを確認する
最も確実なのはフィルム実写です。
F2.8で、
- 0.6~1m
- 2~3m
- 無限遠
を撮ります。
狙った場所へピントが来ているか確認しましょう。
別レンズでも同じ方向へずれるなら、ボディ側スクリーンやミラー位置の可能性が高くなります。
レンズ内部のカビ
古い中判レンズなので重点確認です。
強いライトを斜めから当て、
- 糸状
- 蜘蛛の巣状
- 点から広がる模様
がないか見ます。
実際の中古流通でもNIKKOR-P 75mm F2.8に中玉曇りなどを記載した個体が存在します。
曇り
カビ以上に写りへ影響する場合があります。
白い霧のような曇りがあると、
- コントラスト低下
- 逆光で白くなる
- 黒が締まらない
- 立体感が弱くなる
原因になります。
少量のチリより、強い曇りを優先して避けたいところです。
前玉
斜めから反射させ、
- 深い傷
- 拭き傷
- コーティング劣化
- カビ跡
を確認します。
初期Nikkorは現代レンズより古いコーティング世代なので、清掃跡が多い個体もあります。
後玉
後玉は特に慎重に見ます。
- 傷
- 指紋
- カビ
- 曇り
を確認します。
リアキャップなしで保存されたレンズは要注意です。
レンズ接合部
4群5枚なので、独立した5枚すべてが空気間隔という意味ではありません。
レンズ接合部に、
- 虹色
- 周辺から白く広がる模様
- 不規則な剥離状模様
があれば接合異常の可能性があります。
修理費まで考えて判断しましょう。
絞りリング
F2.8からF22まで回します。
純正説明書ではクリックストップ間の中間絞りも利用可能です。
確認したいのは、
- 滑らか
- 異常に重くない
- ガタがない
- F2.8・F22両端まで動く
ことです。
絞り羽根
前後から覗きます。
F22側まで絞り、
- 羽根が均等
- 変形なし
- 一枚だけ遅れない
- 開口形状が極端に崩れない
ことを確認します。
絞り羽根の油
羽根表面に油がないか確認します。
NIKKOR-P 75mm F2.8は自動絞りなので、羽根が瞬時に動く必要があります。
油で動作が遅いと、実際の露光時に設定値まで閉じきらず露出がずれる可能性があります。
自動絞りの作動
Bronicaへ装着して確認します。
たとえばF8に設定。
ファインダー観察時はF2.8開放。
シャッターを切る瞬間だけF8。
露光終了直後にF2.8へ戻る。
これが正常です。
プレビューボタン
F8やF11へ設定し、ボディ側プレビューボタンを押します。
設定値まで絞られ、離すと開放へ戻るか確認します。
ここで戻りが遅ければレンズ側絞り機構を疑います。
マウント部
- 変形
- 強い打痕
- ねじ緩み
- 摩耗
- 削れ
を確認します。
特に過去に無理なアダプター改造をされた個体は注意が必要です。
マウント改造品に注意
古い中判Nikkorは現代デジタルへ流用されることがあります。
そのため、中古市場には独自アダプターや改造マウントが付いている場合があります。
コレクションやBronica実用目的なら、
オリジナルマウントが削られていない個体
を選んだ方が安心です。
67mmフィルター枠
実際に67mmフィルターを付けます。
途中で引っ掛かる場合、
- 落下
- 前枠変形
- ネジ山損傷
が考えられます。
外装のへこみ
薄い金属鏡筒なので、強く落下するとリング部分が変形する可能性があります。
外装傷そのものは写りに影響しません。
しかし、
へこみ+リングの動作不良
がセットなら避けたいところです。
フード
単層コーティング世代のPタイプでは、逆光時にフードを使用するメリットがあります。
P.Cなど後期コーティング版との比較資料でも、後期コーティングはフレアやコントラスト面の改善を目的としたものとされています。
純正または適切な67mm対応フードが付いていれば実用上プラスです。
レンズキャップ
フロント・リアキャップがあると保管しやすくなります。
特にこのレンズは薄いため、レンズ単体でバッグへ放り込むと後玉やマウントを傷めやすくなります。
S2とセットで買うならボディも確認する
NIKKOR-P 75mm F2.8はS2/S2Aとのセット販売が非常に多いレンズです。
その場合、レンズだけ見てはいけません。
特に、
- フォーカシングスクリーン
- ヘリコイド
- ミラー
- シャッター
- フィルム送り
- フィルムバック
- ダークスライド
まで確認します。
レンズが完璧でも、ボディ側で正確なピントが出なければ意味がありません。
フォーカシングスクリーンのピントずれは実写必須
S2/S2Aではファインダー像だけを信じず、可能ならフィルムで最終確認します。
フォーカシングスクリーン支持材の劣化によるピントずれは修理コミュニティで継続的に報告されています。
中判F2.8ではずれがかなり分かりやすく出ます。
NIKKOR-P 75mm F2.8が向いている人
このレンズは次のような人に向いています。
- Bronica S2/S2Aを使っている人
- 初期Bronicaを集めている人
- Nikon製中判レンズを使いたい人
- 6×6標準レンズを探している人
- 中判でF2.8を使いたい人
- コンパクトな中判レンズが好きな人
- 1950~60年代の国産光学機器に興味がある人
- BronicaとNikonの関係を楽しみたい人
特に、
「Bronica S2を手に入れた。まず一本何を使う?」
なら、この75mm F2.8こそ王道です。
NIKKOR-P 75mm F2.8が向かない場合
次のような人には別のレンズやシステムが扱いやすいでしょう。
- Nikon Fマウント用75mmを探している人
- AFが必要な人
- レンズ単体でフォーカスしたい人
- レンズシャッターが必要な人
- 高速フラッシュ同調を使いたい人
- 最新マルチコーティングを重視する人
- 超軽量なカメラシステムを求める人
スタジオで高速フラッシュ同調を重視するなら、後年のレンズシャッター式Bronicaシステムの方が便利です。
PとP.C、どちらを選ぶ?
オリジナル感を重視するならNIKKOR-P。
後期コーティングの実用性を重視するならP.Cも比較対象になります。
ただし中古レンズの場合、
コーティング世代より個体状態の方が重要
です。
曇ったP.Cより、透明度の高いP。
カビだらけの後期型より、きれいな初期型。
こちらを優先した方が実写では有利でしょう。
NIKKOR-H.C 75mm F2.8を選ぶ場合
H.Cは6枚構成の別設計として知られています。
希少性や描写違いを楽しむなら面白い選択です。
しかし、
「Bronica純正標準Nikkorの基本形」
という歴史性なら、NIKKOR-P 75mm F2.8は非常に重要な一本です。
まとめ
NIKKOR-P 75mm F2.8は、初期Zenza Bronica 6×6中判一眼レフを代表する標準Nikkorです。
ニコン公式史によれば、日本光学は1959年にZenza Bronica中判一眼レフ向けNikkorを供給しました。
Bronica S2の純正資料では、75mm F2.8を標準レンズとして、
- 4群5枚
- F2.8
- 最小F22
- 55度
- 自動絞り
- 最短0.6m
- 67mm
- 約230g
と明記しています。
そして「P」は、古いNikkor命名法で5枚構成を意味します。
しかし、このレンズ最大の特徴はスペック表だけでは分かりません。
ピントリングがレンズにない。
S2/S2Aではカメラ側の巨大なフォーカシングヘリコイドを回し、NIKKOR-Pそのものを丸ごと前後させてピントを合わせます。純正説明書にも75mm用の距離目盛りがヘリコイド側へ設けられています。
だから中古購入では、
- Bronica用か
- PかP.CかH.Cか
- レンズ単体かヘリコイド付きか
- カビ
- 曇り
- 前後玉
- 絞り羽根
- 自動絞り
- 67mmフィルター枠
- マウント
- ヘリコイド
- S2/S2A側のスクリーン位置
- 実写ピント
まで確認しましょう。
特にS2/S2Aでは、ボディ側フォーカシングスクリーン支持材の経年劣化によってファインダーとフィルム面のピントがずれる例が知られています。レンズだけを犯人扱いしないことが重要です。
6×6判。
75mm。
F2.8。
4群5枚。
230g。
そして、ボディ側の巨大なヘリコイドへ薄いNikkorを取り付ける。
シャッターはBronica。
ピント機構もBronica。
光をフィルムへ結ぶ核心部分だけをNikonが担当する。
NIKKOR-P 75mm F2.8は、Zenza Bronicaと日本光学という二つの日本メーカーが組んで作り上げた、初期国産6×6システムを象徴する標準レンズです。









