PENTAX SP BLACKとは?黒いSpotmaticの特徴と中古購入時の注意点を徹底解説
PENTAX SP BLACKは、旭光学工業が1964年に発売した35mm一眼レフカメラ「ASAHI PENTAX SP」のブラック仕上げモデルです。
PENTAX SPは一般に、
ASAHI PENTAX Spotmatic
または単に、
Spotmatic
と呼ばれています。
PENTAX公式の歴史資料では、1960年のフォトキナでTTL測光機構を内蔵した「スポットマチック」を参考出品し、その量産モデルとして1964年にASAHI PENTAX SPを発売したことが記録されています。量産型SPでは、撮影レンズを通った光を測る平均測光式TTL露出計が採用されました。
SPにはクローム仕上げの一般的なモデルだけでなく、オールブラック仕上げの個体も存在します。ブラック仕様も基本的な撮影機構は通常のSPと同じで、色によってシャッターや測光方式が変わる別モデルではありません。
主な特徴は、
- 35mmフィルム
- 24×36mm
- M42スクリューマウント
- 完全マニュアル露出
- TTL平均測光
- 絞り込み測光
- CdS受光素子
- B・1秒~1/1000秒
- 完全機械式フォーカルプレーンシャッター
- 電池は露出計専用
- マイクロプリズム式ファインダー
- クイックリターンミラー
- セルフタイマー
- FP・Xシンクロ端子
- 自動復元式フィルムカウンター
です。純正取扱説明書系資料では、M42・1~1/1000秒・0.88倍ファインダー・TTL露出計・ASA20~1600・1/60秒Xシンクロなどが確認できます。
現在中古で購入する場合は、
シャッター幕、低速シャッター、ミラー戻り、露出計、電池室、プリズム腐食、モルト、M42マウント
に加えて、BLACKならではの、
黒外装の擦れ・剥がれ・交換部品・再塗装の有無
も確認したいところです。
この記事では、PENTAX SP BLACKの歴史、SpotmaticのTTL測光、M42マウント、機械式シャッター、電池、Super-Takumarとの組み合わせ、後継Spotmaticとの違い、そして中古購入時の注意点まで詳しく解説します。
PENTAX SPは1964年発売
PENTAX公式史によれば、ASAHI PENTAX SPは1964年に発売されました。
そのルーツは1960年のフォトキナです。
旭光学はそこで「Spotmatic」と呼ばれるTTL測光内蔵一眼レフの試作機を発表しました。
そして4年後。
市販型として登場したのがASAHI PENTAX SPです。
1964年といえば東京オリンピック開催年。
PENTAX公式年表でもSP発売と東京オリンピックが同じ1964年の項目に並んでいます。
「Spotmatic」という名前なのにスポット測光ではない
ここはPENTAX SP最大の歴史的トリビアです。
1960年に発表された試作Spot-Maticではスポット測光が構想されていました。
しかし1964年に市販されたSPでは、実用性を重視して平均測光式TTLへ変更されています。
それでも製品名にはSpotmaticが残りました。
PENTAX公式も1964年型SPを、
平均測光式TTL露出計を初めて内蔵したモデル
として紹介しています。
したがって、
PENTAX SP=スポット測光カメラ
ではありません。
名称と実際の測光方式が異なります。
SP BLACKはブラック仕上げ仕様
PENTAX SPにはクロームとブラックの外装バリエーションが確認されています。
ブラック個体でも、
- M42マウント
- TTL測光
- 1/1000秒
- セルフタイマー
- 機械式シャッター
といった基本機能は通常SPと同じです。
したがって「PENTAX SP BLACK」は、
SPの高性能版
というより、
SPのブラックフィニッシュ仕様
と理解するのが基本です。
中古ではBLACKの外装状態も価値になる
シルバーSPなら多少の擦り傷を、
「実用品だからまあいいか」
と判断しやすいでしょう。
しかしBLACKの場合は話が少し変わります。
黒仕上げは、
- 巻き上げレバー周辺
- ストラップ金具周辺
- 底板
- ボディ角
- シャッターダイヤル周辺
- レンズマウント周辺
など、手や物が接触する場所の摩耗が目立ちやすくなります。
実用目的なら多少の摩耗は問題ありません。
むしろ長年使い込まれた雰囲気を魅力と感じる人もいるでしょう。
一方コレクション目的では、外装状態が価格へ大きく影響します。
BLACKだからといって高性能ではない
重要です。
黒だからシャッターが高速。
黒だからプロ仕様。
黒だから露出計が高性能。
という違いはありません。
撮影機能はSP。
外装がBLACK。
これが基本です。
したがって実用品として買うなら、
黒がきれいかより、シャッターと露出計が正常か
を優先しましょう。
35mm一眼レフ
使用フィルムは一般的な135・35mmフィルムです。
画面サイズは24×36mm。
現在でも、
- カラーネガ
- モノクロ
- リバーサル
を購入できます。
特殊な中判フィルムや廃規格フィルムを必要としません。
36枚撮りフィルムも普通に使える
一般的な35mmカメラなので、24枚撮り・36枚撮りなどのフィルムを使用できます。
DXコード読み取り機能はありません。
フィルム感度は自分でASAダイヤルへ設定します。
ASAは現在のISOとほぼ同じ数字で考えられる
SPの取扱説明書ではASA20~1600の設定範囲が記載されています。
現在なら、
ISO100 → ASA100
ISO400 → ASA400
として設定できます。
ただし初期製造個体では感度範囲に仕様差があるとする資料もあるため、実機のASAダイヤル表記を確認するのが確実です。
M42スクリューマウント
PENTAX SPのマウントは直径42mmのねじ込み式です。
いわゆる、
M42マウント
です。
取扱説明書にも42mm threaded lens mountと記載されています。
レンズはねじ込んで取り付ける
現代のバヨネット式のように、
合わせマークを合わせて少し回す、
という方式ではありません。
M42レンズは、
レンズそのものをクルクル回してボディへねじ込む
構造です。
取り外すときも逆方向へ回します。
極めてシンプルです。
Super-Takumarとの組み合わせが王道
SPと同時代の代表的な標準レンズには、
- Super-Takumar 50mm F1.4
- Super-Takumar 55mm F1.8
などがあります。
取扱説明書でも50mm F1.4や55mm系のSuper-Takumarが標準レンズとして扱われています。
PENTAX SP BLACK+Super-Takumar。
これは見た目の相性も非常によい組み合わせです。
M42なので他社レンズも多い
M42はPENTAXだけの完全独自規格ではありません。
そのため中古市場には、
- Takumar
- Carl Zeiss Jena
- Meyer-Optik
- Helios
- Mamiya/Sekor
- Fujinon
- Yashinon
など、多数のM42レンズがあります。
ただしすべてのM42レンズがSPの自動絞りや測光操作と完全に同じように連動するとは限りません。
特にピン連動・絞り方式を確認しましょう。
完全マニュアル露出
PENTAX SPに、
- プログラムAE
- 絞り優先AE
- シャッター優先AE
はありません。
撮影者自身が、
シャッター速度と絞り値を決めます。
露出計は、
「この組み合わせなら適正です」
と針で教えてくれるだけです。
シャッター速度を決める
例えば屋外なら1/125秒。
動く人物なら1/250~1/500秒。
暗い室内なら1/30秒。
などを選びます。
絞りリングを回して針を中央へ
露出計スイッチをONにすると、ファインダー右側の指針が動きます。
絞りリングを回し、指針が中央へ来れば適正露出です。
純正説明書でも、
メーター針を中央へ合わせる
という操作方法が説明されています。
針がプラス側なら露出過多。
マイナス側なら露出不足。
絞りまたはシャッター速度を変更して調整します。
TTL測光
Spotmatic最大の特徴です。
TTLはThrough The Lens。
撮影レンズを通った光をカメラ内部で測る方式です。
PENTAX公式は1964年型SPについて、撮影レンズを通った光を測定する平均測光式TTL露出計を内蔵したと説明しています。
外部露出計が不要になった
以前のカメラでは、
ボディ上に別体露出計を付ける。
単体露出計を手に持つ。
という方法も一般的でした。
SPならファインダーを覗いたまま測光できます。
レンズ交換をしても、そのレンズを通った光を測れます。
これは大きな進歩でした。
絞り込み測光
ただし後年のSpotmatic Fとは違い、初代SPは開放測光ではありません。
露出計スイッチをONにするとレンズが設定絞りまで絞り込まれます。
その状態で測光します。
取扱説明書でも、メータースイッチをONにすると自動絞りレンズが絞り込み状態へ切り替わり、シャッターを切ると再び自動絞りへ戻ることが説明されています。
絞るほどファインダーが暗くなる
F1.8ならそれほど変わりません。
しかしF8。
F11。
F16。
と絞るほどファインダーは暗くなります。
これが絞り込み測光の特徴です。
晴天下では問題になりにくいものの、室内でF11などへ絞るとピント確認が難しくなります。
基本は、
- 開放状態でピントを合わせる
- メータースイッチをON
- 絞り込んで測光
- 露出を合わせる
- 撮影
という流れです。
メータースイッチをONにしたままレンズ交換しない
これも重要な純正注意事項です。
取扱説明書では、メータースイッチONの状態でSuper-Takumarを装着・取り外しすると、自動絞り連動部を傷める可能性があるため、レンズ交換時は必ずメーターOFFにするよう注意しています。
中古PENTAX SPを使うなら覚えておきたい操作です。
シャッターは完全機械式
PENTAX SPの大きな長所です。
露出計は電池を使います。
しかしシャッターそのものは機械式です。
したがって、
電池がなくても撮影できます。
露出だけ別の方法で決めればよいのです。
スマートフォン露出計。
単体露出計。
デジタルカメラ。
サニー16。
どれでも構いません。
電池切れでカメラ全部が死ぬわけではない
電子シャッター式フィルムカメラでは、電池切れで撮影不能になるモデルがあります。
SPは違います。
電池は露出計専用。
シャッターとフィルム送りは機械式。
この構造が、現在でもSpotmaticが実用しやすい理由のひとつです。
シャッター速度はB・1秒~1/1000秒
純正仕様では、
- B
- 1秒
- 1/2
- 1/4
- 1/8
- 1/15
- 1/30
- 1/60
- 1/125
- 1/250
- 1/500
- 1/1000秒
です。
最高1/1000秒あれば、ISO100~400の一般撮影でかなり対応できます。
シャッター幕は布幕
取扱説明書では特殊ゴム引きシルクのシャッター幕を使用するとされています。
現在中古では、
- ピンホール
- しわ
- カビ
- 油
- 経年硬化
- 幕走行不良
がないか確認したい部分です。
絶対に指で触らないでください。
Bで長時間露光
Bではシャッターボタンを押している間、シャッターが開きます。
指を離すと閉じます。
メーカー説明書ではロック付きケーブルレリーズを使えば長時間露光にも利用できるとされています。
夜景。
星景。
長秒露光。
完全機械式なので電池残量を気にせず使えます。
X同調は1/60秒
PENTAX SPには、
- FP
- X
のシンクロ端子があります。
電子フラッシュではXを使用し、最高同調速度は1/60秒です。
後年の一眼レフと比べれば遅めですが、当時の横走り布幕FPシャッターでは一般的な仕様です。
ファインダー倍率0.88倍
純正仕様では50mmレンズ使用時約0.88倍です。
55mmレンズならほぼ等倍に近い視野となります。
現在のAF一眼レフよりファインダー倍率が大きく感じられる場合もあります。
中央マイクロプリズム
フォーカシングスクリーン中央にはマイクロプリズムがあります。
ピントが外れていると像がチラチラ・ギザギザして見えます。
ピントが合うと像が落ち着きます。
取扱説明書でも中央マイクロプリズムを利用したフォーカシングが案内されています。
スプリットイメージではない
後年の一眼レフによくある上下像を一致させるスプリットプリズムではなく、初代SPの基本スクリーンはマイクロプリズム中心です。
中古購入時、
「中央にスプリットがないから部品欠品?」
と思わないようにしましょう。
クイックリターンミラー
ミラーは撮影時に上昇し、露光終了後すぐ元の位置へ戻ります。
純正仕様でもinstant return typeとされています。
現在では当然ですが、PENTAXは一眼レフ初期からクイックリターンミラー開発で知られたメーカーです。
PENTAX公式史でも1954年のASAHIFLEX IIBでクイックリターンミラーを搭載したことが記録されています。
巻き上げレバー
巻き上げはレバー式。
約10°の予備角から160°ストロークでフィルム送りとシャッターチャージを行います。
シャッターがチャージされると、シャッターボタン付近の小窓へ赤い表示が現れます。
撮影すると表示は消えます。
フィルムカウンターは自動復帰
フィルムカウンターは裏蓋を開くと自動的にリセットされます。
前世代SVで採用された自動復元式カウンターがSPにも引き継がれています。
セルフタイマー
セルフタイマーはおよそ5~13秒の範囲で動作します。
レバーを十分に倒し、専用セルフタイマーリリースを押す方式です。
シャッターボタンを直接押すと遅延せず撮影されます。
現在中古ではセルフタイマー機構の油脂が固着している可能性があります。
無理に作動させるのは避けたいところです。
露出計用電池
純正指定はPX-400/RM-400-R系の水銀電池です。
取扱説明書では底面電池蓋をコインで開け、プラス側をカメラ上方向へして装填するよう説明されています。
当時の1.35V水銀電池は現在一般販売されていません。
現代では銀電池で代用しやすい
ここはSPのありがたいポイントです。
Spotmatic SP系の露出計はブリッジ回路を使用しており、電圧変化の影響を受けにくい設計として知られています。
PentaxForumsの技術解説では、SP・SPII・SPIIa・SP500・SP1000では1.55V銀電池を使用しても、1.35V純正水銀電池との電圧差が測光精度へ大きく影響しにくいと説明されています。
現在は394などの銀電池を、寸法調整用リングなどと組み合わせて使用する例があります。
ただし、
電池を交換しただけで50年以上前の露出計が正確になるわけではありません。
CdS、可変抵抗、接点、配線などの経年劣化は別問題です。
必ず外部露出計と比較しましょう。
BLACKとシルバーで電池や測光方式は変わらない
BLACKだから特殊な電池が必要ということもありません。
基本機構は通常SPと同じです。
ブラック仕上げは外観上のバリエーションです。
PENTAX SP BLACKの主な仕様
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| カメラ形式 | 35mm一眼レフ |
| 発売 | 1964年 |
| モデル | ASAHI PENTAX SP / Spotmatic |
| BLACK | ブラック外装仕様 |
| フィルム | 35mm |
| 画面サイズ | 24×36mm |
| マウント | M42・42mmスクリューマウント |
| フォーカス | MF |
| 露出 | 完全マニュアル |
| 測光 | TTL平均測光 |
| 測光方法 | 絞り込み |
| 受光素子 | CdS |
| ASA | 代表仕様20~1600 |
| シャッター | 機械式FP |
| シャッター幕 | 布幕 |
| シャッター速度 | B・1~1/1000秒 |
| ファインダー | ペンタプリズム |
| 倍率 | 約0.88倍・50mm使用時 |
| スクリーン | フレネル+マイクロプリズム |
| ミラー | クイックリターン |
| 巻き上げ | レバー式 |
| カウンター | 自動復元 |
| セルフタイマー | 約5~13秒 |
| フラッシュ | FP・X端子 |
| X同調 | 1/60秒 |
| 電源 | 露出計のみ水銀電池PX-400系 |
| シャッターの電池依存 | なし |
| ボディ重量 | 約621g |
| ボディ幅 | 約143mm |
| 高さ | 約92mm |
主要仕様はSpotmatic取扱説明書およびPENTAX公式史を基準としています。
PENTAX SPの基本的な使い方
フィルムを入れる
裏蓋を開き、35mmフィルムを装填します。
フィルム先端を巻き取りスプールへ掛け、パーフォレーションがスプロケットへ正常に噛んでいることを確認します。
巻き上げ時に巻き戻しノブを見る
正常にフィルムが送られていれば、巻き上げレバーを動かした際に巻き戻しノブも回転します。
純正説明書でもフィルム装填確認方法として案内されています。
ASAを設定する
ISO100フィルムならASA100。
ISO400なら400へ設定します。
シャッター速度を選ぶ
屋外なら1/125秒以上を基準にすると扱いやすいでしょう。
ピントを合わせる
露出計をOFFのまま、明るい開放ファインダーでピントを合わせます。
メータースイッチをON
レンズが設定絞りまで絞り込まれます。
ファインダー右側の針が動きます。
絞りを調整する
針が中央へ来るようF値を調整します。
中央へ来なければシャッター速度も変更します。
シャッターを切る
撮影するとメータースイッチが自動的にOFFへ戻り、レンズ絞りも開放へ戻ります。
巻き上げる
次のコマへ送ります。
この繰り返しです。
PENTAX SP BLACKの中古購入時に確認したいポイント
PENTAX SPは機械式カメラなので現在でも修理可能性が比較的高いモデルです。
しかし1964年登場。
個体によっては60年以上経過しています。
外観だけで判断してはいけません。
本当にSP BLACKか
まずモデル表記を確認します。
SPなら、
- プリズム前面:ASAHI PENTAX
- 前面:SPOTMATIC
- 上部:SP
などの表記を持つ個体があります。
ブラック仕様も確認されています。
Spotmatic II・SP Fと間違えない
Spotmaticシリーズには、
- SP
- SP II
- SP F
- SP500
- SP1000
などがあります。
見た目がよく似ています。
特に商品タイトルが単に、
「PENTAX Spotmatic Black」
となっている場合は実機の銘板を確認しましょう。
BLACKの外装摩耗
黒仕上げでは摩耗が目立ちます。
特に、
- 底板
- プリズム角
- 上カバー角
- ストラップ金具
- シャッターダイヤル
- 巻き上げレバー
- 巻き戻しノブ
を確認します。
実用品なら使用上問題ありません。
コレクションなら重要です。
再塗装に注意
極端に黒が均一。
刻印まで塗料が乗っている。
ネジ頭にも黒が厚く付いている。
本来摩耗するはずの部分まで不自然に新品同様。
こうした場合は再塗装の可能性も考えます。
再塗装が悪いわけではありません。
ただし、
オリジナルBLACKとしての価値
と、
再塗装された実用品
は分けて評価したいところです。
シルバー部品との交換歴
長い年月の中で、
- 底板
- 巻き戻しノブ
- レバー
- ネジ
などが他個体から移植されていることがあります。
BLACKの外装オリジナリティを重視するなら確認します。
シャッター幕
裏蓋を開けて幕を見ます。
確認したいのは、
- 穴
- しわ
- 波打ち
- カビ
- 油
- 傷
です。
強いライトを暗室側から当てれば、小さなピンホールを確認できる場合があります。
幕には触らないでください。
1秒
最初に試したい速度です。
毎回、
おおむね同じ時間で、
「カシャ……」
と開閉するか確認します。
1秒が明らかに長い。
途中で止まる。
数回に一度戻らない。
場合は低速機構の整備が必要な可能性があります。
1/2~1/15秒
この速度域も重点確認します。
古いグリース・油・汚れの影響で粘りやすい部分です。
1/1000秒
最高速も確認します。
音だけでは精度を判断できません。
実写で、
- 片側が暗い
- 帯状の露出不足
- コマの一部だけ写らない
場合はシャッター幕走行の不均一を疑います。
1/500と1/1000を比較する
明るい均一な壁などを撮影し、同じ露出になるよう絞りを1段変更して比較すると高速シャッター異常を見つけやすくなります。
ミラー戻り
シャッターを切り、
- ミラーが上がる
- シャッターが走る
- ミラーが即座に戻る
ことを確認します。
戻りが遅い。
上がったまま。
数回に一度引っ掛かる。
場合は整備が必要です。
Spotmatic系ではミラー・シャッター周辺機構の汚れや経年による動作不良が修理項目として挙げられています。
ミラー受けモルト
ミラーが当たる部分のフォーム材を確認します。
劣化すると、
- ベタベタ
- 粉状
- ミラーへ付着
- ミラー戻り不良
につながります。
交換履歴がある個体なら安心材料です。
プリズムの黒い線
Spotmatic中古で特に有名なポイントです。
ファインダーを覗き、
横方向または不規則な黒い線・染み
がないか確認します。
修理コミュニティでは、プリズム周辺に使用されたフォーム・接着材の劣化がプリズムの反射面を傷め、黒い線状の腐食・銀蒸着劣化を生じることがSpotmatic系で知られています。
プリズム腐食は写真には写らない
プリズムはファインダー用です。
撮影光はミラーが上がった後、そのままフィルムへ進みます。
したがってプリズムに黒線があっても、通常それ自体がフィルムへ写るわけではありません。
しかし、
- 構図が見づらい
- ピントが合わせづらい
- 見た目が悪い
という問題があります。
清掃だけでは直らないことがある
単なるゴミなら清掃できます。
しかし反射面の銀蒸着が腐食している場合、汚れを拭くだけでは戻りません。
プリズム交換や再蒸着が必要になる場合があります。
実際のカメラ修理事例でもSPの「ファインダーの黒い線」がプリズム腐食と診断され、プリズム交換されています。
ファインダー
黒線だけではありません。
明るい壁へ向けて、
- カビ
- 曇り
- 大量のチリ
- マイクロプリズム
- メーター針
を確認します。
多少のチリは写真には影響しません。
撮影の邪魔にならないなら過度に気にする必要はありません。
露出計
新品の適切な銀電池などを用意して確認します。
メータースイッチをON。
ファインダー右側の針が反応すること。
絞り・シャッター速度・光量を変更すると動くこと。
まずここを見ます。
電池チェック
純正手順では、
- シャッター速度B
- ASA100
- メーターON
として針の動きで電池容量を確認します。
針が動く=正確ではない
非常に重要です。
50~60年前の露出計です。
針が動いても、
1段。
2段。
それ以上。
ずれている可能性があります。
デジタルカメラや単体露出計と比較しましょう。
明るさを変えて確認
同じ設定で、
- 明るい窓
- 室内
- 暗い場所
へ向けます。
針が滑らかに変化するか確認します。
特定位置でジャンプする場合は接点汚れなども考えられます。
シャッター速度ダイヤルとの連動
1/30。
1/125。
1/500。
と変更し、針が適切に変化することを確認します。
ASAダイヤルとの連動
ASA100から400へ変え、測光値が変化することを確認します。
ダイヤル内部の接点劣化もあり得ます。
電池室
底面電池蓋を開けます。
確認するのは、
- 白い粉
- 緑青
- 黒い腐食
- 接点欠損
- 電池蓋の固着
- ネジ山
- 液漏れ跡
です。
修理事例でもSPの電池接点腐食による通電不良が報告されています。
電池蓋の溝
コインで開閉する構造です。
過去にドライバーなどで無理に回された個体では溝が潰れている場合があります。
BLACKでは底板外観にも影響するため確認しましょう。
メータースイッチ
レンズマウント脇のスイッチを上げます。
- カチッと入る
- レンズが絞り込まれる
- メーターが作動
- シャッター撮影後OFFへ戻る
ことを確認します。
スイッチが戻らない
撮影後もONのまま。
途中で引っ掛かる。
自動復帰しない。
場合は機構の整備が必要な可能性があります。
M42マウント
マウントねじを確認します。
- つぶれ
- 打痕
- 斜めねじ込み傷
- 汚れ
がないか見ます。
M42はレンズを何回転もさせるので、ねじ山の状態が重要です。
レンズが最後まで入るか
Super-Takumarなど正常なM42レンズを実際に装着します。
途中で急に固くなる場合は無理に締めないでください。
レンズ取り外しはメーターOFF
純正注意事項どおり、メータースイッチをOFFへ戻してからレンズを外しましょう。
自動絞り
Super-Takumarを装着し、レンズのA/MスイッチをAへ。
F8などへ設定します。
通常のファインダー観察時は開放。
シャッターを切る瞬間だけF8へ閉じる。
撮影後開放へ戻る。
この動作を確認します。
絞り込み測光
F8へ設定。
メーターON。
その瞬間にF8まで絞られることを確認します。
スイッチOFFで開放へ戻れば正常です。
フィルム巻き上げ
巻き上げレバーを操作します。
- 滑らか
- 最後まで進む
- 戻る
- シャッターをチャージする
ことを確認します。
極端に重い場合は無理に動かさないようにします。
赤いチャージ表示
シャッターチャージ後、シャッターボタン横の表示が赤くなり、撮影すると消えることを確認します。
フィルムカウンター
裏蓋を開くとリセット。
巻き上げると数字が進む。
これを確認します。
巻き戻し
テストフィルムを入れ、
- 底面巻き戻し解除
- 巻き戻しクランク
- スプール解放
が正常に動くことを確認します。
巻き戻し解除ボタン
純正仕様では底面の巻き戻し解除ボタンは巻き戻し操作中に回転します。
異常な引っ掛かりがないか見ましょう。
セルフタイマー
古いカメラで最も「触らなくてもいい」機能のひとつです。
動作保証済みなら確認しても構いません。
しかし未整備品でいきなり最大まで巻くと、固着して戻らなくなる可能性があります。
コレクションなら動作確認。
実用なら無理に使わない。
という判断もあります。
モルト
裏蓋の遮光材を確認します。
劣化して、
- 粉
- ベタつき
- 消失
していないか見ます。
交換自体は比較的一般的な整備です。
実写で光漏れ確認
現像したネガで、
- フレーム端の白い帯
- 赤・橙色の漏光
- 不規則な線
がないか確認します。
底板
BLACKでは特に確認したい部分です。
三脚使用や机への直置きで摩耗しやすい場所です。
- 大きなへこみ
- 塗装剥離
- 三脚穴周辺
- 電池蓋周辺
を見ます。
三脚穴
ネジ山が潰れていないこと。
底板が三脚穴周辺だけ歪んでいないことを確認します。
ストラップ金具
BLACKでは金具周辺の摩耗が目立ちます。
金具自体にも、
- 曲がり
- ガタ
- 亀裂
がないか確認します。
実写確認
最後はフィルム一本です。
できれば次の条件を混ぜます。
- 1/1000秒
- 1/500秒
- 1/125秒
- 1/30秒
- 1秒
- 開放
- F8
- 近距離
- 無限遠
- 逆光
- 明暗差のある場面
現像後、
- シャッター速度
- 露出
- ピント
- コマ間隔
- 光漏れ
- 画面ムラ
を確認します。
PENTAX SP BLACKが向いている人
PENTAX SP BLACKは次のような人に向いています。
- 機械式一眼レフが好きな人
- M42レンズを楽しみたい人
- Takumarが好きな人
- TTL測光黎明期のカメラに興味がある人
- 電池なしでも撮れるカメラが欲しい人
- 完全マニュアル露出を覚えたい人
- ブラックボディのクラシック一眼レフが好きな人
- 1960年代PENTAXを収集している人
- Spotmaticシリーズを揃えたい人
特に、
「露出もピントも自分で決めたい。でも内蔵露出計は欲しい」
という人には非常に分かりやすいカメラです。
向いていない場合
次のような人にはより新しいカメラが使いやすいでしょう。
- AEが欲しい
- AFが欲しい
- 開放測光が欲しい
- LED表示が欲しい
- 1/2000秒以上が必要
- ホットシューが欲しい
- レンズ交換を素早く行いたい
- 絞り込み測光が面倒
- プリズムやモルトなど経年整備を避けたい
開放測光を求めるならSpotmatic F。
絞り優先AEならES系。
Kマウントへ進みたいならKシリーズ。
という選択肢があります。
Spotmatic Fとの違い
初代SPと後年のSpotmatic Fは特に混同されます。
最大の違いは測光方式です。
初代SPは絞り込みTTL測光。
Spotmatic Fは対応するSuper-Multi-Coated Takumarとの組み合わせでTTL開放測光が可能になりました。
PENTAX公式史でもSP Fは1973年に登場したモデルとして記録されています。
初代SPでメータースイッチON時にファインダーが暗くなるのは故障ではありません。
仕様です。
SP500・SP1000との違い
SP500・SP1000はSpotmaticをベースに簡略化したモデルです。
資料ではSP500・SP1000ではセルフタイマーが省略される一方、基本機構はSPに近いものとされています。
中古では外観が非常に似るため、前面・上面の表記を確認しましょう。
PENTAX SP BLACKの魅力
SP BLACKの魅力は、単に「黒くて格好いい」だけではありません。
中身はSpotmatic。
1960年に未来のTTL一眼レフとして提示された構想が、1964年に市販された形です。
ファインダーを覗く。
Super-Takumarでピントを合わせる。
側面のメータースイッチを上げる。
レンズが絞り込まれ、ファインダーが少し暗くなる。
針が動く。
絞りリングを回し、針を中央へ。
シャッターを切る。
「カシャン」。
電池がなくてもシャッター自体は動く。
すべて自分で操作する。
それでいて露出だけはTTLメーターが助けてくれる。
完全機械式と電子測光が交差する時代のカメラです。
まとめ
PENTAX SP BLACKは、1964年発売のASAHI PENTAX SP、通称Spotmaticのブラック仕上げモデルです。
PENTAX公式史によれば、1960年にTTL測光内蔵のSpotmatic試作機をフォトキナで公開し、1964年に量産型ASAHI PENTAX SPを発売しました。
市販型SPでは平均測光式TTL露出計を採用しています。
主な特徴は、
- 35mm判
- M42スクリューマウント
- MF
- TTL平均測光
- 絞り込み測光
- CdS
- 完全マニュアル露出
- 機械式フォーカルプレーンシャッター
- B・1~1/1000秒
- X同調1/60秒
- 0.88倍ファインダー
- マイクロプリズム
- クイックリターンミラー
- 自動復元カウンター
- セルフタイマー
- 電池は露出計のみ
です。
BLACKも基本的な撮影仕様は通常SPと同じです。
そして現在中古で買う場合は、
- 本当に初代SP BLACKか
- 黒外装の摩耗・再塗装
- シャッター幕
- 低速
- 1/1000秒
- ミラー戻り
- プリズム腐食
- ファインダー
- 露出計
- 電池室
- メータースイッチ
- M42マウント
- 自動絞り
- フィルム送り
- 巻き戻し
- モルト
- 実写
まで確認しましょう。
特にプリズムの黒い線はSpotmatic中古で見逃したくないポイントです。
フォームや接着材の経年劣化に関連したプリズム反射面の腐食が修理コミュニティや実際の修理事例で確認されています。
そして露出計。
純正の水銀電池はもうありませんが、SP系のブリッジ回路は電圧差へ比較的強く、現代の銀電池を利用する方法が知られています。
もし露出計が故障しても。
電池がなくても。
SPは終わりません。
外部露出計で測る。
シャッター速度を決める。
絞りを決める。
ピントを合わせる。
そして撮る。
シャッターそのものは機械式です。
PENTAX SP BLACKは、黒いボディの格好よさだけでなく、TTL測光が一眼レフの標準装備へ向かっていった1960年代の転換点を、そのまま手の中で動かせる機械式Spotmaticです。









