ASAHI PENTAX S2

ASAHI PENTAX S2とは?M42マウントと完全機械式シャッターを備えた初期ペンタックス一眼レフ

ASAHI PENTAX S2は、35mmフィルムを使用するマニュアルフォーカス一眼レフカメラです。

旭光学工業が1959年に発売したモデルで、現在のリコーイメージングが公開するPENTAX HISTORYにも、1957年の初代ASAHI PENTAX、1958年のASAHI PENTAX Kに続くモデルとして記録されています。

S2は、後のSpotmaticより前に登場した初期のペンタックス一眼レフです。

M42スクリューマウントを採用し、シャッター速度、絞り、ピント、露出をすべて撮影者が決定します。

露出計はボディに内蔵されていません。

シャッターも露出制御も電池を必要としない完全機械式で、正常な個体なら電池なしで撮影できます。

主な特徴は次のとおりです。

  • 24×36mmの35mm判
  • M42スクリューマウント
  • 完全機械式フォーカルプレーンシャッター
  • T・B・1秒~1/500秒
  • 1つのダイヤルへ全シャッター速度を集約
  • クイックリターンミラー
  • フレネルスクリーン
  • 中央マイクロプリズム
  • 露出計非内蔵
  • 外付けPentax Meterに対応する後期型あり
  • Auto-Takumarの半自動絞りに対応
  • 電池不要

機構は非常にシンプルですが、製造から60年以上が経過しています。

中古購入では低速シャッター、布幕、ミラー復帰、巻き上げ、Auto-Takumarの絞り機構などを重点的に確認する必要があります。

この記事では、ASAHI PENTAX S2の特徴、M42マウント、シャッター、露出の決め方、S3・SV・Super S2との違い、中古購入時の注意点を解説します。

目次

ASAHI PENTAX S2とは

ASAHI PENTAX S2は、旭光学工業が1959年に発売した35mm一眼レフカメラです。

ペンタックス公式年表では、

  • 1952年:Asahiflex I
  • 1954年:Asahiflex IIB
  • 1957年:ASAHI PENTAX
  • 1958年:ASAHI PENTAX K
  • 1959年:ASAHI PENTAX S2
  • 1960年:ASAHI PENTAX S3

という流れが確認できます。

1957年の初代ASAHI PENTAXではペンタプリズムファインダーと直径42mmのレンズマウントが採用され、S2もこの系統を受け継ぎました。

後のSpotmaticシリーズと外観が似ていますが、S2にはTTL露出計がありません。

1960年にはTTL測光を内蔵するSpotmaticの試作機がフォトキナへ参考出品されましたが、S2はそれ以前の純粋な機械式一眼レフです。

初期ペンタックスを代表するシンプルな機械式一眼レフ

S2の構造は、後年の電子制御一眼レフと比べると非常に単純です。

撮影に必要なのは、

  1. フィルムを巻き上げる
  2. シャッター速度を決める
  3. 絞り値を決める
  4. ピントを合わせる
  5. シャッターを切る

という基本操作です。

AEもAFもありません。

露出を決めるには、

  • 単体露出計
  • 外付けPentax Meter
  • スマートフォンの露出計アプリ
  • サニー16などの経験則

を利用します。

カメラ本体が光を測ってくれるわけではありません。

M42スクリューマウントを採用

S2は直径42mm・ピッチ1mmのM42スクリューマウントを採用します。

1957年の初代ASAHI PENTAXで、それまでのAsahiflex用37mmスクリューマウントから42mmへ変更されたことが、ペンタックス公式史にも記録されています。

レンズをボディへねじ込んで装着する方式です。

現在一般的なバヨネットマウントのように、

「差し込んで少し回せばロック」

ではありません。

レンズ全体を数回回し、マウント面へ軽く接するまでねじ込みます。

M42レンズの選択肢は非常に多い

M42は旭光学専用規格ではありません。

当時のPentaxガイドでも、Takumarだけでなく、同じスクリューマウントを採用した他社レンズを装着できることが説明されています。

中古市場では、

  • Takumar
  • Auto-Takumar
  • Super-Takumar
  • Super-Multi-Coated Takumar
  • SMC Takumar

など、さまざまなペンタックス系M42レンズが流通しています。

さらに他社製M42レンズも豊富です。

ただし、絞り連動方式には世代差があります。

単に「M42だから装着できる」ことと、「ボディの自動絞り機構を完全に利用できる」ことは別です。

S2の標準レンズはAuto-Takumar 55mm F2系

1960年代に刊行されたPentaxガイドでは、S2の標準レンズとしてAuto-Takumar 55mm F2が案内されています。

Auto-Takumarは、後のSuper-Takumarとは絞り機構が異なります。

S2との組み合わせでは、

撮影前にレンズを開放へセットし、シャッターを切ると設定絞りまで自動的に閉じる

という半自動方式です。

中古市場では55mm F2やF2.2など複数のAuto-TakumarがS2と組み合わされており、販売地域や製造時期によってセット内容に違いが見られます。

したがって、

「S2には必ずこの55mmが付いていなければオリジナルではない」

と単純に決めつけるのは避けた方がよいでしょう。

「Auto-Takumar」のAUTOはAFではない

名称の「Auto-Takumar」はオートフォーカスを意味しません。

ピント合わせは完全なマニュアルフォーカスです。

AUTOが示すのは絞り機構です。

撮影前はレンズを開放状態へして、明るいファインダーでピントを合わせます。

シャッターボタンを押すと、ボディ側の連動機構がレンズ後部のピンを押し、絞りがあらかじめ設定したF値まで閉じます。

撮影後は自動で開放へ戻らない

ここはS2の重要なポイントです。

後のSuper-Takumarでは、撮影後に絞りが自動的に開放へ戻ります。

しかしS2時代の半自動Auto-Takumarでは、撮影後に自分でレンズ側のレバーを操作し、絞りを再び開放へ戻します。

ガイドでは、撮影前にレンズ側のレバーを操作して開放状態にし、シャッターを切ると設定絞りまで自動的に閉じる操作が説明されています。

つまり、

自動なのは「閉じるところまで」。

撮影後の開放復帰は手動です。

現在のカメラから使い始めると、かなり新鮮に感じる機構です。

完全機械式フォーカルプレーンシャッター

S2は布幕横走り式のフォーカルプレーンシャッターを搭載します。

Pentaxガイドでは、シャッター幕がフィルム面の直前を横方向へ走行するセルフキャッピング式フォーカルプレーンシャッターとして説明されています。

シャッター速度は、

  • T
  • B
  • 1秒
  • 1/2秒
  • 1/4秒
  • 1/8秒
  • 1/15秒
  • 1/30秒
  • 1/60秒
  • 1/125秒
  • 1/250秒
  • 1/500秒

です。

電池は使用しません。

最高シャッター速度は1/500秒

通常のASAHI PENTAX S2の最高シャッター速度は1/500秒です。

前年のASAHI PENTAX Kには1/1000秒がありましたが、S2では最高速度が1/500秒となりました。

ここは後述する「Super S2」を見分ける重要なポイントでもあります。

TとBを両方搭載

S2にはBだけでなくTもあります。

B

シャッターボタンを押している間だけシャッターが開きます。

ボタンを離せば閉じます。

T

シャッターを切ると、そのまま開いた状態を保持します。

シャッターダイヤルをT位置から動かすと閉じます。

当時のPentaxガイドにも、この操作方法が説明されています。

数秒から数分の長時間露光では、シャッターボタンを押し続ける必要がないTが便利です。

1つのシャッターダイヤルに全速度を集約

S2の歴史的な特徴のひとつが、全シャッター速度を1つのダイヤルへまとめたことです。

それ以前のASAHI PENTAX Kなどでは、高速側と低速側で別々のダイヤルを使用していました。

Kでは1秒~1/15秒の低速ダイヤルがボディ前面、1/30~1/1000秒の高速ダイヤルが上面に分かれていました。

S2ではT・B・1秒~1/500秒が上面の1つのダイヤルへ集約されています。

現在では当たり前に見える操作ですが、初期ペンタックスにおける操作系の進化を示すポイントです。

シャッターダイヤルが撮影時に回転しない

S2ではシャッターダイヤルが固定式となり、シャッター作動時にダイヤル自体が回転しません。

Pentaxガイドでも、全速度を設定する単一ダイヤルがシャッター作動中には回転しないと説明されています。

そのため撮影前後で設定速度を確認しやすくなっています。

シャッターチャージ表示窓

シャッターダイヤル近くには小さな表示窓があります。

フィルムを巻き上げてシャッターがチャージされると赤色になり、シャッターを切ると表示が消えます。

これにより、

「今シャッターを切れる状態なのか」

を上面から確認できます。

後年のカメラではレバー位置や電子表示で行う機能ですが、S2では非常に機械的な方法で示します。

クイックリターンミラー

S2は一眼レフなので、撮影時にはミラーが跳ね上がります。

露光が終了するとミラーは自動的に元の位置へ戻ります。

Pentaxの一般構造を解説した当時のガイドでも、撮影時にミラーが上がり、シャッター作動後すぐ元へ戻る「instant-return」構造が説明されています。

旭光学は1954年のAsahiflex IIBですでにクイックリターンミラーを採用しており、公式PENTAX HISTORYにもその記録があります。

S2はその流れを受け継いだモデルです。

ペンタプリズム式ファインダー

ASAHI PENTAXという名称の由来にも関わる特徴が、ペンタプリズムファインダーです。

1957年の初代ASAHI PENTAXでペンタプリズムが採用され、S2もアイレベル一眼レフとしてその構成を受け継ぎました。

レンズを通った像は、

  1. ミラー
  2. フォーカシングスクリーン
  3. ペンタプリズム
  4. 接眼部

を通って撮影者へ届きます。

そのため撮影レンズを交換しても、実際に写る画角をそのままファインダーで確認できます。

レンジファインダーのようなパララックスはありません。

フレネルスクリーンと中央マイクロプリズム

S2ではフレネルスクリーンと中央マイクロプリズムが採用されています。

Pentaxガイドでは、中央部にマイクロプリズムゾーンを持ち、その周囲には通常のマット面が設けられていると説明されています。

マイクロプリズムでピントを合わせる

ピントが外れていると、中央の像が細かくちらつき、崩れて見えます。

ピントリングを回し、ちらつきが消えて像が最も鮮明になったところが合焦です。

後年一般的になるスプリットイメージではありません。

直線を上下で一致させるのではなく、マイクロプリズムのちらつきを利用します。

露出計は内蔵していない

S2にはボディ内露出計がありません。

PentaxForumsの仕様資料でも「Metering: No light meter」とされています。

これは故障や欠品ではありません。

そもそもの設計です。

シャッター速度と絞りを決めるには外部測光が必要です。

現在ならスマートフォン露出計でも使える

S2を実用する場合、

  • 単体露出計
  • スマートフォン用露出計アプリ
  • デジタルカメラ
  • サニー16

などで露出を決定できます。

カメラ自体へ電池を入れる必要はありません。

後期S2は外付けPentax Meterに連動

S2には製造時期による違いがあります。

後期型では、上面のシャッターダイヤルに外付けPentax Exposure Meterの連動ピンを受ける切り欠きが設けられました。Pentaxガイドにも、後期モデルのシャッターダイヤルへ外付けメーター用カップリングが追加されたと記載されています。

専用メーターを装着すると、シャッター速度ダイヤルとの連動が可能になります。

ただし、現在中古でメーター付き個体を購入しても、

メーターが正確とは限りません。

古い受光素子や電気部品は経年劣化するため、別の露出計と比較して精度を確認しましょう。

フィルム感度ダイヤルは露出計ではない

巻き戻しノブ周辺にはフィルム感度やフィルム種類を記録するためのインジケーターがあります。

しかし、これはカメラの露出制御へ情報を伝えるものではありません。

あくまで、

「現在何のフィルムを入れているか忘れないためのメモ」

です。

ISO100へ合わせてもカメラが自動露出するわけではありません。

現在の電子カメラに慣れていると誤解しやすいポイントです。

フィルム巻き上げレバー

フィルムは上面の巻き上げレバーで送ります。

レバーを最後まで操作すると、

  • フィルムが1コマ進む
  • シャッターがチャージされる
  • フィルムカウンターが進む

という動作が行われます。

当時のガイドでは、巻き上げ後に赤いチャージ表示が現れ、撮影後に消えることも説明されています。

電子モーターはありません。

すべて機械式です。

フィルムカウンターは手動リセット

通常のS2では、フィルムカウンターは自動で0へ戻りません。

フィルムを装填して空送りを行った後、撮影者が手動で0へ合わせます。

Pentaxガイドでも、

  • フィルムを装填
  • 空送りを2回
  • カウンターを0へ設定

という手順が案内されています。

後のSVや一部Super S2などでは自動復帰式へ進化するため、中古個体のモデル判別ポイントにもなります。

フラッシュ用FP・X接点

ボディ前面にはフラッシュ用端子があります。

  • FP:フォーカルプレーン用フラッシュバルブ
  • X:電子フラッシュ

を使い分けます。

Pentaxガイドでは、電子フラッシュはX端子へ接続し、X表示の速度以下で使用する方式が説明されています。

S2の電子フラッシュ同調速度はおおむね1/50秒付近です。PentaxForumsの仕様資料でもX同調は1/50秒とされています。

ホットシューは内蔵していない

S2のペンタプリズム上部には、現在の一眼レフのようなホットシューはありません。

フラッシュを装着する場合は、接眼部の溝へ取り付ける別売アクセサリーシューなどを使用します。

当時のPentaxガイドにも、右アングルファインダー、フォーカシングマグニファイヤー、アクセサリーシューなどを接眼部へ装着できることが説明されています。

フラッシュの発光信号は前面のX端子から取ります。

セルフタイマーはない

通常のS2にはセルフタイマーがありません。

この点は後のSVとの違いのひとつです。

集合写真などで遅延撮影したい場合は、外付けの機械式セルフタイマーなどを利用する必要があります。

ASAHI PENTAX S2とS3の違い

S3は1960年に登場した後継モデルです。ペンタックス公式年表にもS2の翌年のモデルとして掲載されています。

主な違いは次のとおりです。

項目S2S3
登場1959年1960年
マウントM42M42
露出計なしなし
最高シャッター1/500秒1/1000秒
標準レンズ例Auto-Takumar 55mm F2Auto-Takumar 55mm F1.8
絞り機構半自動全自動方式へ進化
セルフタイマーなしなし

S3では1/1000秒が復活し、レンズ側も撮影後に開放へ自動復帰する方式へ進化しています。

日常撮影の使いやすさではS3が有利ですが、S2には初期ペンタックスらしい半自動絞り機構の面白さがあります。

ASAHI PENTAX S2とSVの違い

SVはさらに後の世代です。

PentaxガイドではSVについて、

  • 1/1000秒
  • 全自動絞り
  • セルフタイマー
  • 自動復帰式フィルムカウンター

を備えることが説明されています。

S2より撮影操作は大幅に現代的です。

一方、S2の方が構造がシンプルで、1950年代の機械式一眼レフらしい操作を楽しめます。

「Super S2」とは別物なので注意

中古市場で特に混乱しやすいのがSuper S2です。

通常のS2とは仕様が異なります。

当時の追加説明書ではSuper S2について、

  • Super-Takumar 55mm F2
  • 完全自動絞り
  • S3と同等の基本機能

を備えると説明されています。

さらにSuper S2には1/1000秒を備える個体があります。

つまり、

「S2のシャッターダイヤルに1/1000秒がある!」

からといって、通常S2のスペックが1/1000秒だったわけではありません。

Super S2や製造時期によるバリエーションを疑う必要があります。

中古出品では「S2」「S2 Super」が混同されることもあるため、商品写真のシャッターダイヤルを確認しましょう。

H2という名称でも販売された

S2は市場によって別名称でも販売されました。

Pentaxガイドでは、日本でS1・S2・S3と呼ばれたモデルが、海外の一部市場ではH1・H2・H3と呼ばれたことが説明されています。

PentaxForumsの資料では、

  • Asahi Pentax S2
  • Asahi Pentax H2
  • Heiland Pentax H2
  • Asahiflex H2

などの名称が確認されています。

したがって「H2」と刻印された個体でも、基本的にはS2系として扱えます。

ASAHI PENTAX S2の基本スペック

項目内容
カメラ形式35mmマニュアル一眼レフ
発売年1959年
使用フィルム35mmフィルム
画面サイズ24×36mm
レンズマウントM42スクリューマウント
ピント合わせマニュアルフォーカス
露出方式完全マニュアル
内蔵露出計なし
シャッター布幕横走りフォーカルプレーン
シャッター速度T・B・1秒~1/500秒
シャッターダイヤル単一固定式
ミラークイックリターン
ファインダーペンタプリズム
スクリーンフレネル+中央マイクロプリズム
自動絞りAuto-Takumarの半自動絞りに対応
チャージ表示赤色インジケーター
フラッシュFP・X端子
X同調約1/50秒
ホットシューなし・別売シュー
セルフタイマーなし
フィルムカウンター手動リセット
電源不要
ボディサイズ約143×92×47mm
ボディ重量約548g

発売年はPENTAX公式史、操作・シャッター仕様は当時のPentaxガイド、寸法・重量などはPentaxForumsのS2データベースを参照しています。

ASAHI PENTAX S2の基本的な使い方

フィルムを入れる

側面のロックを操作して裏蓋を開きます。

35mmフィルムをフィルム室へ入れ、先端を巻き取りスプールへ固定します。

パーフォレーションがスプロケットの歯へ正しく掛かっていることを確認して裏蓋を閉じます。

空送りする

巻き上げレバーを最後まで操作し、空シャッターを切ります。

これを2回程度繰り返します。

カウンターを0へ合わせる

S2のカウンターは手動リセットです。

空送り後、自分で0へ合わせます。

外部露出計で露出を測る

単体露出計または露出計アプリへ、

  • ISO感度
  • 周囲の明るさ

を入力して、シャッター速度と絞り値を求めます。

シャッター速度を設定する

上面ダイヤルを回し、希望する速度を指標へ合わせます。

S2ではシャッターをチャージする前でも後でも速度変更が可能と説明されています。

絞りを設定する

Auto-Takumarの絞りリングを回し、F値を設定します。

レンズを開放へする

半自動Auto-Takumarの場合は、レンズの絞り開放レバーを操作します。

これでファインダーが明るくなります。

ピントを合わせる

ファインダー中央のマイクロプリズムを確認します。

像のちらつきや崩れが最も少なくなるまでピントリングを回します。

シャッターを切る

シャッターボタンをゆっくり押します。

絞りが設定値まで閉じ、ミラーが上がり、シャッターが作動します。

次の撮影前にレンズを再び開放へする

半自動Auto-Takumarでは、撮影後に絞りが閉じたままになります。

次の撮影前にレバーを操作し、再び開放状態へ戻します。

これを忘れるとファインダーが暗いままになります。

中古購入時に確認したいポイント

まず通常S2かSuper S2か確認する

最初にシャッターダイヤルを確認します。

通常S2は最高1/500秒です。

1/1000秒がある場合はSuper S2など別仕様の可能性があります。

商品説明だけでなく現物写真を確認しましょう。

H2表記でもS2系

「H2」「Heiland Pentax H2」などと刻印されていてもS2系です。

名称違いを理由に偽物と判断しないようにしましょう。

シャッター全速度

T、B、1秒~1/500秒まで確認します。

特に古い機械式シャッターでは、

  • 1秒
  • 1/2秒
  • 1/4秒
  • 1/8秒

の低速側に粘りが出やすくなります。

確認したい症状は、

  • 1秒が数秒開いたまま
  • 低速が途中で停止
  • 1/2秒と1/8秒が同じように聞こえる
  • 一度切ると次に作動しない

などです。

1/500秒の精度

高速側は音だけでは判断できません。

可能ならシャッターテスターを使用するか、均一な壁・空を撮影します。

画面の左右で濃度が違う場合、先幕・後幕の走行速度が揃っていない可能性があります。

布製シャッター幕

裏蓋を開け、シャッター幕を目視します。

  • ピンホール
  • ひび
  • 波打ち
  • しわ
  • 剥離
  • カビ
  • 異物
  • 強い光漏れ跡

がないか確認しましょう。

シャッター幕は非常に薄いため、指で押してはいけません。

ピンホール確認

レンズを外し、裏蓋を開けます。

暗い場所で強いライトをレンズマウント側から当て、幕を透過する小さな光がないか確認するとピンホールを見つけやすくなります。

ただし長時間強い熱を当てないようにしましょう。

シャッター幕の走行

低速・高速を数回ずつ切り、幕が最後まで均一に走るか確認します。

途中で止まる個体や、幕がたるんでいる個体は整備が必要です。

初期Pentaxでは、長期間未整備の幕リボンや接着部に問題が出た例もユーザー・修理情報で報告されています。

ミラー復帰

シャッターを切った直後、ファインダー像がすぐ戻るか確認します。

  • ミラーが上がったまま
  • ゆっくり降りる
  • 途中で引っ掛かる
  • 巻き上げないと戻らない

個体は注意が必要です。

正常ならクイックリターンします。

ミラー受け

レンズを外し、ミラー上部の受け部分を確認します。

後年モルトへ交換されている個体もあります。

劣化したフォームが、

  • 粉状になる
  • べたつく
  • ミラーへ付着する

場合は交換を検討します。

ミラー表面

  • 腐食
  • 深い傷
  • カビ
  • 銀面剥離

がないか確認します。

ミラーの細かな汚れは写真には直接写りません。

ただし、表面鏡なので不用意な清掃で傷を付けないようにしましょう。

ファインダーの曇り

明るい壁や空へ向けて確認します。

  • 全体的な曇り
  • カビ
  • 大きなチリ
  • 黄色や茶色の変色
  • プリズムの剥離

がないか見ます。

1950年代のカメラなので、多少のチリは珍しくありません。

しかし強い曇りはピント合わせを難しくします。

マイクロプリズム

中央のマイクロプリズムが鮮明に見えるか確認します。

遠くの文字や建物へピントを合わせ、

  • ちらつきが消える
  • 像が鮮明になる
  • 無限遠で正しく合う

ことを確認します。

ファインダーと実写ピント

ファインダー上で合っていても、ミラーやスクリーン位置がずれているとフィルム面ではピンぼけになる可能性があります。

可能なら開放F2前後で、

  • 1~2m
  • 5m程度
  • 無限遠

を試写すると確認しやすくなります。

Auto-Takumarの絞り機構

付属レンズがAuto-Takumarなら、半自動絞りを確認します。

  1. 絞り値をF8などへ設定
  2. 開放レバーを操作
  3. レンズが開放になる
  4. シャッターを切る
  5. F8まで瞬時に閉じる

ことを確認します。

撮影後に閉じたままなのは正常

S2用の半自動Auto-Takumarでは、撮影後に絞りが自動的に開放へ復帰しないことがあります。

これは故障ではありません。

次の撮影前に再びレバーで開放へセットします。

後年のSuper-Takumarの動きと混同しないよう注意しましょう。

絞り羽根の油

Auto-Takumarの絞り羽根に油が付着していないか確認します。

油があると、

  • 絞り込みが遅い
  • 設定F値まで閉じない
  • レバーが戻らない

可能性があります。

シャッターより先に絞りが閉じなければ、露出オーバーになる場合があります。

M42マウントねじ

レンズを着脱し、

  • 滑らかにねじ込める
  • 途中で引っ掛からない
  • 最後まで密着する
  • マウントに大きなガタがない

ことを確認します。

ねじ山が潰れた個体へ無理にレンズを取り付けると、レンズまで傷めます。

レンズが固着していないか

M42レンズを必要以上に強く締めると、固着することがあります。

中古でレンズ付きの場合は、通常の力で取り外せるか確認しましょう。

工具で無理に回すのは避けます。

巻き上げレバー

最後まで滑らかに動くか確認します。

  • 途中で重くならない
  • 空回りしない
  • シャッターがチャージされる
  • スプロケットが回る
  • カウンターが進む

ことが重要です。

赤いチャージ表示

巻き上げるとシャッターダイヤル横の窓に赤色が現れ、シャッターを切ると消えることを確認します。

表示窓だけの不具合なら撮影はできますが、S2らしい機構のひとつです。

フィルムカウンター

手動で0へ設定できるか確認します。

巻き上げるたびに1コマずつ進む必要があります。

裏蓋を開けても自動で0へ戻らないのは、通常S2では故障ではありません。

フィルム送り

可能なら不要な35mmフィルムを装填します。

  • 巻き上げる
  • 巻き戻しクランクが回る
  • 1コマずつ送られる
  • パーフォレーションを傷めない

ことを確認します。

シャッターだけ確認してフィルム送り不良を見落とさないようにしましょう。

巻き戻しボタン

底面のRボタンを押し、スプロケットが解除されるか確認します。

ガイドでは、押したボタンは次の巻き上げ操作で自動的に復帰する構造とされています。

戻らない場合は次のフィルム送りへ影響する可能性があります。

巻き戻しクランク

クランクを起こし、滑らかに回るか確認します。

軸が曲がっている、極端なガタがある個体は落下歴も疑います。

裏蓋

裏蓋が確実に閉まり、側面ロックが掛かるか確認します。

変形や隙間がある場合は光漏れにつながります。

遮光材

S2は後年のカメラとは遮光構造が異なる部分がありますが、過去の整備でフォーム材が追加・交換されている場合もあります。

最終的には実写で光漏れを確認するのが確実です。

外付け露出計

Pentax Meter付きの場合は、

  • 針が動く
  • シャッターダイヤルと連動する
  • 電池室に腐食がない
  • 現代の露出計と大きくずれない

ことを確認します。

ただし、メーターが故障していてもS2本体の撮影には影響しません。

アクセサリーシュー

別売シューが付属する個体では、接眼部へ正しく固定できるか確認します。

シュー自体に電気接点はありません。

フラッシュ発光には前面X端子とのコード接続が必要です。

FP・X端子

電子フラッシュを使う予定があるならX端子を確認します。

腐食や緩みがないか確認し、対応フラッシュで発光テストできれば理想です。




ASAHI PENTAX S2が向いている人

S2は次のような人に向いています。

  • 完全機械式一眼レフを使いたい人
  • 電池なしで撮影したい人
  • M42レンズを楽しみたい人
  • Takumarレンズが好きな人
  • 露出を自分で決めたい人
  • 外部露出計を使うことに抵抗がない人
  • 1950年代の国産一眼レフを楽しみたい人
  • 機械式シャッターの操作感が好きな人
  • 初期PENTAXの歴史に興味がある人

特に、

「露出計さえいらない。光を測るのも自分でやる」

という撮影スタイルにはよく合います。

ASAHI PENTAX S2が向かない場合

一方、次のような人には別のカメラが扱いやすいでしょう。

  • 内蔵露出計が欲しい人
  • AEを使いたい人
  • オートフォーカスが必要な人
  • 1/1000秒以上を使いたい人
  • セルフタイマーが必要な人
  • ホットシューを標準装備してほしい人
  • 撮影後に絞りを自動で開放へ戻したい人
  • メンテナンスなしですぐ使える古いカメラを求める人

M42レンズを使いつつ露出計が欲しい場合はSpotmatic系、より進化した初期型を楽しみたい場合はS3やSVも候補になります。

まとめ

ASAHI PENTAX S2は、1959年に登場した35mmマニュアル一眼レフです。

ペンタックス公式史でも、1957年の初代ASAHI PENTAX、1958年のPENTAX Kに続くモデルとして記録されています。

主な特徴は次のとおりです。

  • 24×36mmの35mm判
  • M42スクリューマウント
  • 完全機械式
  • 電池不要
  • 露出計非内蔵
  • T・B・1秒~1/500秒
  • 布幕横走りフォーカルプレーンシャッター
  • 全速度を1つのダイヤルへ集約
  • シャッター作動時にダイヤルが回転しない
  • クイックリターンミラー
  • ペンタプリズムファインダー
  • フレネルスクリーン
  • 中央マイクロプリズム
  • Auto-Takumarの半自動絞り
  • 赤いシャッターチャージ表示
  • FP・Xフラッシュ端子
  • セルフタイマーなし
  • 手動リセット式フィルムカウンター

中古購入時には、外観の美しさだけで判断してはいけません。

特に重要なのは、

布幕・低速シャッター・ミラー復帰・フィルム送り・Auto-Takumarの絞り

です。

さらに、通常のS2と1/1000秒を備えるSuper S2を混同しないことも重要です。

そしてS2を理解するうえで一番おもしろいのは、撮影のほぼすべてを撮影者と機械だけで行う点でしょう。

露出計はない。

電池もない。

レンズをねじ込み、外で光を測り、速度と絞りを決める。

Auto-Takumarを開放へセットし、マイクロプリズムでピントを合わせ、シャッターを切る。

すると絞りが閉じ、ミラーが跳ね、布幕が走る。

撮影が終わったら、もう一度レンズを開放へ戻す。

ASAHI PENTAX S2は、後のSpotmaticやKマウント機へ続いていくPENTAX一眼レフの操作体系が形を整え始めた、1959年の純機械式カメラです。

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