Nikon F60は、35mmフィルムを使用するオートフォーカス一眼レフカメラです。
1998年にNikon F50の後継機として登場し、中央1点のAF、プログラムAE、絞り優先AE、シャッター速度優先AE、マニュアル露出、内蔵フラッシュ、自動フィルム送りなどを搭載しています。
上級機のような多点AFや高速連写はありませんが、モードダイヤルを回すだけで撮影目的に合った設定を選べることが特徴です。フィルム一眼レフを初めて使う人でも扱いやすく、必要に応じて露出を自分で設定することもできます。
Nikon F60とは
Nikon F60は、1998年に発売されたモーター内蔵式の35mm AF一眼レフカメラです。
日本や欧州などでは「F60」、北米では「N60」の名称で販売されました。通常モデルのほか、写真へ日付や時刻を写し込めるF60Dも用意されています。
ニコン公式資料では、F50の後継機として、操作しやすい露出モードダイヤルとコマンドダイヤル、被写体の状態に応じて動作を切り替えるオートサーボAF、28mmレンズの画角をカバーする内蔵フラッシュを備えたモデルとして紹介されています。(Nikon)
モードダイヤルで簡単に撮影できる
F60の上面には、大型の露出モードダイヤルがあります。
全自動に近い一般撮影用プログラムから、撮影者が絞りとシャッター速度を設定するマニュアル露出まで、操作レベルに応じてモードを選択できます。
一般撮影用プログラム
一般撮影用プログラムでは、カメラが絞りとシャッター速度を自動設定します。
AFニッコールレンズを装着し、フィルムを入れてモードダイヤルを合わせれば、コンパクトカメラに近い感覚で撮影できます。
露出操作に慣れていない人や、旅行、家族写真、日常の記録などで素早く撮影したい場合に向いています。
P・S・A・Mを搭載
撮影者が設定へ介入できる、次の露出モードも備えています。
- P:オートマルチプログラム
- S:シャッター速度優先AE
- A:絞り優先AE
- M:マニュアル露出
Pモードでは、適正露出を維持したまま絞りとシャッター速度の組み合わせを変更するフレキシブルプログラムを利用できます。
Sモードでは30秒から1/2000秒までの速度を選び、カメラが絞りを設定。Aモードでは撮影者が絞りを選び、カメラがシャッター速度を決定します。Mモードでは両方を手動設定できます。(Orphancameras)
5種類のイメージプログラム
F60には、撮影する被写体に合わせた5種類の「イメージプログラム」があります。
| モード | 主な用途 |
|---|---|
| ポートレート | 背景をぼかした人物撮影 |
| 風景 | 広い範囲へピントを合わせる |
| クローズアップ | 花や小物などの近距離撮影 |
| スポーツ | 高速シャッターで動きを止める |
| 夜景 | 夜景や暗い場所の撮影 |
たとえばポートレートでは比較的絞りを開き、スポーツでは速いシャッター速度を優先するなど、カメラが撮影目的に応じた設定を選びます。(Orphancameras)
細かな数値を考えずに撮影できる一方、露出補正やフレキシブルプログラムなど、一部の機能はイメージプログラムでは使用できません。
オートサーボAFを搭載
F60は、TTL位相差検出方式のオートフォーカスを採用しています。
AF測距枠はファインダー中央にあり、シャッターボタンを半押しするとピント合わせが始まります。AF検出範囲はISO100の常温時でEV-1からEV19です。(Orphancameras)
静止・移動被写体を自動判別
オートサーボAFでは、被写体の状態に応じてカメラが次の動作を自動的に選択します。
- シングルサーボAF:静止した被写体へ合焦後、ピントを固定
- コンティニュアスサーボAF:動く被写体へピントを合わせ続ける
人物が止まっている場合と、スポーツや乗り物のように動いている場合をカメラが判断します。(Orphancameras)
ただし、AFポイントは中央のみです。画面の端へ人物を配置する場合は、一度中央でピントを合わせ、半押しを保ったまま構図を変更するフォーカスロックを使用します。
AF補助光に対応
暗い場所では、ボディー前面のAF補助光が自動的に点灯します。
24~200mm程度のレンズで、約0.5~3mの距離を補助する設計です。暗い室内で人物を撮影する場合などに役立ちます。(マニュアルスリブ)
Nikon Fマウントを採用
F60はNikon Fマウントを採用しています。
ただし、Fマウントならすべてのレンズを同じように使えるわけではありません。F60の全機能を利用するには、DタイプまたはGタイプを含むCPU内蔵AFニッコールが適しています。(Orphancameras)
ボディー内モーター式AFレンズに向く
F60はボディー内にAFモーターを備え、レンズを機械的に駆動します。
いわゆるスクリュードライブ式のAF NikkorやAF-D Nikkorとの組み合わせが基本です。1990年代に標準セットとして販売された28-80mmや35-80mmなどのAFズームレンズと相性のよいボディーです。
AF-SやAF-Iレンズは、F60ではオートフォーカスへ対応しません。装着できるレンズでも機能制限があるため、購入前にレンズとの互換性を確認しましょう。(マニュアルスリブ)
非CPUレンズは大幅な制限がある
AI Nikkorなどの非CPUレンズは、Mモードでのみ使用できます。
しかし、カメラ内蔵の露出計は作動しません。絞り値もボディー側から設定できないため、レンズの絞りリングと単体露出計などを使用して撮影します。(Orphancameras)
また、非AIレンズやF3AF専用レンズなど、装着するとカメラやレンズを損傷する可能性があるものもあります。無理に取り付けてはいけません。
3Dマルチパターン測光に対応
DタイプAFニッコールを装着した場合は、6分割センサーによる3Dマルチパターン測光が作動します。
画面内の明るさとコントラストに加え、レンズから伝えられる撮影距離情報を利用して露出を決定します。Dタイプ以外の対応CPUレンズでは、距離情報を使用しない6分割マルチパターン測光となります。(Orphancameras)
MモードまたはAEロック使用時には、ファインダー中央の直径12mm相当を重視する中央重点測光へ切り替わります。
露出補正は±3EVの範囲を1/2EV刻みで設定可能です。(Orphancameras)
最高1/2000秒の電子シャッター
F60には、電子制御式の金属幕縦走りフォーカルプレーンシャッターが搭載されています。
シャッター速度は30秒から1/2000秒。Mモードでは、30秒を超えてシャッターを開けておく長時間露光も利用できます。(Orphancameras)
電子制御式なので、電池がなければシャッターは作動しません。機械式の非常用速度も備えていないため、撮影時には予備電池を用意しておくと安心です。
ガイドナンバー15の内蔵フラッシュ
ファインダー上部には、ポップアップ式のスピードライトを搭載しています。
ガイドナンバーはISO100・メートルで約15。28mm以上のレンズ画角をカバーし、TTL調光に対応します。フラッシュ同調速度は最高1/125秒です。(Orphancameras)
主な発光モードは次のとおりです。
- 通常発光
- 赤目軽減
- スローシンクロ
- 赤目軽減スローシンクロ
CPUレンズとの組み合わせでは、背景の明るさとフラッシュ光を調整するマルチセンサー・バランス調光を利用できます。
なお、フラッシュは暗い場所で自動的に飛び出す方式ではありません。使用するときは、フラッシュロック解除ボタンを押して手動で上げます。
フィルム操作を自動化
DXコード付き35mmフィルムを装填して裏蓋を閉じると、フィルムは自動的に1コマ目まで送られます。
対応感度はISO25~5000です。感度を手動設定する機能はなく、DXコードのないフィルムは使用できません。(マニュアルスリブ)
撮影後は1コマずつ自動巻き上げされ、フィルム終端へ到達すると自動的に巻き戻します。途中巻き戻しにも対応し、連続撮影速度は約1コマ/秒です。(Orphancameras)
Nikon F60Dの日付写し込み
F60Dは、裏蓋へ日付写し込み機能を備えたモデルです。
次の表示から選択できます。
- 年・月・日
- 日・時・分
- 月・日・年
- 日・月・年
- 写し込みなし
データ機能にはCR2025電池1個を使用します。ただし、カレンダーのうるう年自動調整は2019年までです。現在の日付を正しく扱えるかは、実物の表示と設定範囲を確認しましょう。(Orphancameras)
Nikon F60の基本スペック
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 発売年 | 1998年 |
| 海外名称 | Nikon N60 |
| カメラ形式 | 35mm AF一眼レフ |
| 画面サイズ | 24×36mm |
| レンズマウント | Nikon Fマウント |
| AF方式 | TTL位相差検出・中央1点 |
| AFモード | オートサーボAF・MF |
| 露出モード | 一般撮影用、P、S、A、M、5種類のイメージプログラム |
| 測光方式 | 3D/6分割マルチパターン、中央重点 |
| 測光範囲 | ISO100・50mm F1.4でEV1~20 |
| 露出補正 | ±3EV・1/2EV刻み |
| シャッター | 電子制御金属幕縦走り式 |
| シャッター速度 | 30秒~1/2000秒、長時間露光 |
| フラッシュ同調 | 1/125秒以下 |
| 内蔵フラッシュ | GN15・ISO100 |
| ファインダー視野率 | 約90% |
| ファインダー倍率 | 約0.69~0.74倍 |
| フィルム感度 | DX・ISO25~5000 |
| 連続撮影 | 約1コマ/秒 |
| フィルム送り | 自動 |
| フィルム巻き戻し | 自動・途中巻き戻し可能 |
| セルフタイマー | 約10秒 |
| 電源 | CR123AまたはDL123Aを2本 |
| サイズ | 約148.5×96×69mm |
| 重量 | 約575g・電池別 |
主な仕様はNikon F60の取扱説明書に基づきます。(Orphancameras)
Nikon F50との違い
F60は、1994年に登場したF50の後継モデルです。
F50では液晶画面内のアイコンとボタンを使って設定する操作体系が採用されていました。F60では一般的なモードダイヤルとコマンドダイヤルへ変更され、撮影モードを直接選びやすくなっています。
また、F60ではオートサーボAFや28mm画角対応の内蔵フラッシュを採用し、初心者向け一眼レフとしての扱いやすさを高めました。(Nikon)
中古のNikon F60を購入するときの注意点
電池室
CR123A電池2本を入れる電池室に、液漏れ、接点の腐食、蓋の破損がないか確認します。
F60は電子シャッター、AF、露出計、フィルム送りのすべてを電池で動かします。表示だけが点灯しても、モーターへ負荷がかかると電源が落ちる個体もあるため、連続して動作させましょう。
オートフォーカス
対応するAF-Dレンズなどを装着し、近距離、中距離、遠景でAFを確認します。
モーターが空転する、合焦まで極端に時間がかかる、距離を変えてもレンズが動かない個体には注意が必要です。
電子シャッター
Mモードで30秒から1/2000秒まで速度を変え、作動時間が変化するか確認します。
高速側は音だけで精度を判断できません。可能であれば、実写またはシャッターテスターで露光むらを確認しましょう。
自動フィルム送り
テスト用フィルムを装填し、次の動作を確認します。
- 裏蓋を閉じると1コマ目まで送られる
- 撮影後に巻き上げる
- カウンターが進む
- フィルム終端で巻き戻す
- 途中巻き戻しができる
モーター音がしても、フィルムが正しく巻き取られているとは限りません。
内蔵フラッシュ
フラッシュを上げ、充電完了表示、発光、赤目軽減ランプを確認します。
発光しても光量が不足している場合があるため、可能であれば実写結果も確認しましょう。
付属レンズ
標準ズーム付きの場合は、カビ、クモリ、絞り羽根、AF駆動、ズームリングを確認します。
安価なセットではボディーよりレンズの状態が悪いこともあります。レンズ交換を前提としない場合は、光学系の状態を優先しましょう。
Nikon F60はどんな人に向いている?
Nikon F60は、次のような人に向いています。
- 初めてAFフィルム一眼レフを使う人
- モードダイヤルで簡単に撮影したい人
- AF-Dニッコールレンズを所有している人
- P・S・A・Mを使って露出を学びたい人
- 内蔵フラッシュ付きの一眼レフを探している人
- フィルム装填や巻き戻しを自動化したい人
- 比較的安価なNikon AFボディーを探している人
一方、マニュアルニッコールを中心に使いたい人、多点AFや高速連写を求める人、電池なしで撮影したい人には向きません。
まとめ
Nikon F60は、1998年にF50の後継機として登場した35mm AF一眼レフカメラです。
中央1点のオートサーボAF、P・S・A・M、5種類のイメージプログラム、6分割マルチパターン測光、最高1/2000秒の電子シャッター、GN15の内蔵フラッシュ、自動フィルム送りを搭載しています。
操作はモードダイヤルとコマンドダイヤルを中心にまとめられ、全自動に近い撮影からマニュアル露出まで段階的に楽しめます。
中古で購入するときは、CR123A電池室、AF、電子シャッター、自動フィルム送り、内蔵フラッシュ、付属レンズを確認しましょう。また、AF-Sや非CPUレンズなどには機能制限があるため、使用予定のレンズとの互換性確認も欠かせません。
正常に動作する個体なら、フィルム一眼レフの基本を学びながら、AFと自動露出による手軽な撮影も楽しめる入門向けの一台です。









