Canon Canodate E(キヤノデートE)は、写真へ撮影日を直接写し込める35mmレンジファインダーカメラです。
1970年に登場し、年・月・日をフィルムへ記録するデート機構、40mm F2.8レンズ、二重像合致式距離計、プログラムEEを搭載。現在では珍しくない日付写し込み機能を、カメラ本体へ早い段階で組み込んだ先駆的なモデルです。
ただし、日付機構は現代までの使用を想定したものではなく、露出と電子シャッターには指定電池が必要です。中古で撮影に使う場合は、日付表示だけでなく電源系統と電子シャッターの状態を確認しましょう。
Canon Canodate Eとは
Canon Canodate Eは、1970年12月に発売された35mmレンズシャッター式カメラです。
正式な日本語名称は「キヤノデートE」。発売時価格は2万7,300円で、ケースは1,500円でした。キヤノンは本機を、年・月・日を撮影と同時に写し込める「デートカメラのパイオニア」と位置づけています。
Canonet系の技術を応用したデートカメラ
Canodate Eは、交換レンズ式カメラではありません。
レンズ、距離計、露出計、電子制御シャッターを一体化したレンズ固定式カメラです。撮影者が行う主な操作は、フィルム感度の設定、距離計によるピント合わせ、日付設定、フィルム巻き上げとなります。
絞りとシャッター速度はプログラムEEによって自動制御されるため、露出を細かく決めるカメラというより、家族写真、旅行、行事などを日付とともに記録する用途を想定したモデルです。
年・月・日をフィルムへ写し込める
Canodate E最大の特徴が、カメラ前面に組み込まれた日付写し込み機構です。
YEAR、MONTH、DAYの各ダイヤルを回して数字を設定すると、撮影時に画面右下付近へ日付が記録されます。ファインダー内には、日付が写し込まれる位置を示すマークも表示されます。
日付ダイヤルはカメラ前面に配置
日付表示部は、レンズの横に縦長に配置されています。
基本的な設定手順は次のとおりです。
- 日付ロック解除レバーを押す
- YEAR・MONTH・DAYの各ダイヤルを回す
- 表示窓へ希望する数字を出す
- 撮影前に設定内容を確認する
日付は写真へ上から年・月・日の順に写し込まれます。何も写したくない場合は、各ダイヤルの空欄を選択できます。
現在の西暦はそのまま設定できない
年表示は、発売当時に想定された1970~1989年を中心とする構成です。
そのため、2026年など現在の西暦をそのまま表示することはできません。下一桁のみを使う、年を空欄にして月日だけを記録する、数字やアルファベットを整理番号として利用するといった工夫が必要です。
説明書では、YEAR・MONTH・DAYの表示を組み合わせ、日付以外の整理番号として使う方法も案内されています。
40mm F2.8レンズを搭載
Canodate Eには、Canon 40mm F2.8レンズが固定装着されています。
40mmは50mm標準レンズより少し広く、35mm広角レンズほど画角が広すぎない焦点距離です。人物、旅行、街中のスナップ、家族写真などを一台で撮影しやすい画角といえます。
最短撮影距離は約0.8mで、レンズの距離リングには0.8m、1.5m、3m、5m、無限遠などの距離表示があります。
レンズ構成は公式資料間で表記が異なる
キヤノンカメラミュージアムでは40mm F2.8・4群5枚構成とされていますが、当時の公式説明書では3群4枚構成と記載されています。
公式資料同士で差があるため、レンズ構成を断定する場合には注意が必要です。焦点距離40mm、開放F2.8であることは両資料で共通しています。
二重像合致式の連動距離計
ピント合わせには、二重像合致式の連動距離計を使用します。
ファインダー中央の四角い部分では、ピントが外れていると被写体が二重に見えます。距離リングを回し、2つの像が一つに重なった位置でピントが合います。
ピント合わせの手順
- 被写体をファインダー中央へ入れる
- 中央の二重像を確認する
- 距離リングを回す
- 2つの像が重なる位置へ合わせる
- 構図を整えてシャッターを切る
人物の目、眼鏡、建物の線、看板の文字など、輪郭が明確な部分を使うと合わせやすくなります。
近距離ではパララックスに注意
ファインダーと撮影レンズは別の位置にあります。
被写体へ近づくほど、ファインダーで見える範囲と実際に写る範囲の差が大きくなります。約1m以内で撮影するときは、ファインダー内のパララックス補正マークを基準に構図を決めます。
完全自動プログラムEEを搭載
Canodate Eでは、レンズのEE・フラッシュ設定リングを「A」へ合わせると、カメラが絞りとシャッター速度を自動的に決定します。
測光素子はCdS式で、対応するフィルム感度はISO25~400。ISO100使用時の測光連動範囲はEV1~17です。暗い場所ではF2.8・数秒、明るい場所では絞りを閉じた高速シャッターまで自動制御します。
絞りやシャッター速度は選べない
Canodate EはプログラムEE専用機です。
撮影者がF2.8やF8を指定したり、1/60秒や1/500秒を選択したりする通常のマニュアル露出機能はありません。
背景のぼけや被写体の動きを細かく制御するより、露出をカメラへ任せて記録撮影を行うことに適しています。
シャッター速度にも公式資料間の差がある
キヤノンカメラミュージアムでは、プログラム範囲をF2.8・4秒からF16・1/500秒までとしています。
一方、当時の公式説明書には電子シャッターを4秒~1/800秒とする記載があります。レンズ構成と同様に公式資料間で差があるため、本記事では「EV1~17の電子制御プログラムシャッター」を基本仕様として扱います。
ファインダー内の警告ランプ
ファインダー内には、バッテリーチェック兼手ぶれ警告用の橙色ランプと、フラッシュ撮影を案内する黄色ランプがあります。
シャッターボタンを軽く押して橙色ランプが消えていれば、通常のEE撮影が可能です。点灯したままの場合はシャッター速度が遅くなるため、三脚を使用するかフラッシュを準備します。
専用フラッシュのCanonlite Dに対応
Canodate Eは、専用フラッシュ「Canonlite D」に対応しています。
Canonlite Dを装着した状態では、明るい場所では通常のEE撮影を行い、EV8未満の暗さになるとフラッシュ撮影へ自動的に切り替わります。フラッシュ撮影時には、ガイドナンバーと撮影距離に応じて絞りが制御されます。
ホットシューのほか、ドイツ型シンクロソケットも備えています。ただし、古いフラッシュは接点や内部コンデンサーが劣化している場合があるため、実際の発光と同調を確認しましょう。
電子シャッターには電池が必要
Canodate Eは、HM-N型水銀電池2個を使用します。
電池は露出計だけでなく電子制御シャッターにも関係するため、電池なしで通常撮影できる完全機械式カメラではありません。
指定水銀電池は現在入手困難
当時のHM-N型水銀電池はすでに一般販売されていません。
現代の電池を使う場合は、サイズ変換アダプターや代替電池が必要です。ただし、電圧や放電特性が異なると、露出や低速シャッターへ影響する可能性があります。
電池を入れてシャッターが切れたとしても、正確な露出で動作しているとは限りません。外部露出計との比較や実写確認を行うのが安全です。
Canon Canodate Eの基本スペック
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 発売年月 | 1970年12月 |
| カメラ形式 | 35mmレンズシャッター式距離計連動カメラ |
| 画面サイズ | 24×36mm |
| レンズ | Canon 40mm F2.8 |
| レンズ構成 | 公式資料間で3群4枚/4群5枚の差異あり |
| レンズ交換 | 不可 |
| 最短撮影距離 | 約0.8m |
| ピント方式 | 二重像合致式連動距離計 |
| 露出方式 | 完全自動プログラムEE |
| 測光素子 | CdS |
| 測光範囲 | ISO100でEV1~17 |
| フィルム感度 | ISO25~400 |
| シャッター | セイコーESF電子制御式 |
| シャッター範囲 | 公式資料間で最高1/500秒/1/800秒の差異あり |
| 日付機能 | 年・月・日の同時写し込み |
| ファインダー倍率 | 約0.6倍 |
| ファインダー視野率 | 約84% |
| セルフタイマー | なし |
| フィルム巻き上げ | 上部レバー式・分割巻き上げ可能 |
| 巻き上げ角 | 130度 |
| フィルム巻き戻し | 上部クランク式 |
| 電源 | HM-N型水銀電池2個 |
| サイズ | 約133×76×59mm |
| 重量 | 約580g |
主な仕様はキヤノン公式資料に基づきます。
Canodate E-Nとの違い
1973年3月には、改良型のCanodate E-Nが発売されました。
E-Nの「N」はNewを意味します。基本的なレンズ、プログラムEE、日付機構などは初代と共通ですが、外観と電源安全機構が変更されています。
主な見分け方は次のとおりです。
| 項目 | Canodate E | Canodate E-N |
|---|---|---|
| 発売年 | 1970年 | 1973年 |
| 距離リング | 白色系 | 黒色 |
| 正面のE文字 | 通常色 | 赤色 |
| 日付ダイヤル | 色入れなし | 色入れされ見やすい |
| 電池容量不足時 | 初期仕様 | シャッターロック機構あり |
中古市場では両機をまとめて「Canodate E」と表記する場合があります。正面の赤いEと黒い距離リングが、E-Nを見分ける分かりやすいポイントです。
中古のCanon Canodate Eを購入するときの注意点
電池室の腐食
HM-N電池を入れる電池室を開き、白色や緑色の付着物、接点の錆、蓋の固着を確認します。
液漏れが内部配線まで進んでいる個体では、代替電池を入れても電子シャッターが動かない可能性があります。
電子シャッターとプログラムEE
新品の適合電池を入れ、明るい場所と暗い場所でシャッターを切ります。
暗い場所では長く、明るい場所では短く作動することを確認しましょう。どの明るさでも同じ速度になる場合は、CdS素子、電子回路、シャッター機構に問題がある可能性があります。
日付写し込み機構
YEAR・MONTH・DAYの各ダイヤルが動き、表示窓の文字が切り替わるか確認します。
ダイヤルが固着している、表示が途中で止まる、写し込み窓が汚れている個体では、フィルムへ日付が正しく記録されない可能性があります。確実な判断には実写確認が必要です。
距離計の二重像
無限遠と1~2m程度の近距離で、二重像が一致するか確認します。
二重像が薄い、上下へずれている、距離リングを回しても動かない個体では、ファインダー清掃や距離計調整が必要です。
レンズのカビやクモリ
40mm F2.8レンズは固定式です。
カビ、白いクモリ、強い拭き傷、コーティングの劣化を確認しましょう。レンズ交換で解決できないため、光学系の状態はボディー以上に重要です。
フィルム巻き上げ
巻き上げレバー、巻き取りスプール、スプロケット、フィルムカウンターを確認します。
モーター式ではなく手動巻き上げ式なので、レバー操作によってフィルム送りとシャッターチャージが確実に行われる必要があります。
Canon Canodate Eはどんな人に向いている?
Canon Canodate Eは、次のような人に向いています。
- 初期のデートカメラに興味がある人
- 写真へ数字や月日を直接写し込みたい人
- 40mmレンズの画角が好きな人
- レンジファインダーでピントを合わせたい人
- 1970年代の電子制御カメラを楽しみたい人
- Canonet系のレンズシャッター機を収集している人
- 日付機構を整理番号として活用したい人
一方、絞りやシャッター速度を自由に設定したい人、電池なしで撮影できる機械式カメラを求める人には向きません。
まとめ
Canon Canodate Eは、1970年に発売された日付写し込み機構付きの35mmレンジファインダーカメラです。
年・月・日を写真へ直接記録できる先駆的なモデルで、40mm F2.8レンズ、二重像合致式距離計、CdS式プログラムEE、セイコーESF電子シャッターを搭載しています。
現在の西暦をそのまま設定することはできませんが、月日だけを使う、年を下一桁で表す、整理番号として利用するといった楽しみ方が可能です。
中古で購入するときは、HM-N電池の代替方法、電池室、電子シャッター、プログラムEE、日付ダイヤル、写し込み機構、距離計、40mmレンズを確認しましょう。
正常に動作する個体なら、写真へ日時や数字を焼き付けるという、デジタルカメラとは異なる「記録する楽しさ」を味わえる一台です。









