Canon L1

キャノンのレンジファインダーカメラです。当時のキャノンのレンジファインダーカメラのレンズはスクリューマウントといって、ねじ込み式となっています。

Canon L1は、35mmフィルムを使用するレンズ交換式のレンジファインダーカメラです。

1957年に発売され、二重像合致式の連動距離計、3段階可変式ファインダー、最高1/1000秒の機械式シャッター、上部巻き上げレバーを搭載しています。

同時期のCanon VT Deluxeが底部トリガー式の巻き上げを採用していたのに対し、L1は一般的な上部レバー式を採用。突起物の少ない端正なデザインも評価され、キヤノンの8mmシネカメラ「8T」とともに、第1回グッドデザイン賞を受賞しました。(Canon Global)

目次

Canon L1とは

Canon L1は、1957年5月に発売された35mmフォーカルプレーンシャッター式距離計連動カメラです。

発売時価格はボディーのみで4万8,000円、Canon 50mm F1.2付きで8万7,000円でした。露出計や自動露出は搭載されておらず、絞り、シャッター速度、ピントを撮影者が設定します。(Canon Global)

VT Deluxeと同時に登場

L1は、同じ1957年5月に発売された上位機Canon VT Deluxeと基本設計を共有しています。

VT Deluxeがカメラ底部のトリガーを引いてフィルムを巻き上げるのに対し、L1では上部の回転レバーへ変更されました。さらにセルフタイマーを省略し、正面から見たときに突起部品の少ない、すっきりとした外観に仕上げられています。(Canon Global)

ねじ式レンズマウントを採用

Canon L1は、レンズを回して装着するねじ式マウントを採用しています。

中古市場では「L39」「LTM」「ライカスクリューマウント」などと呼ばれることが多く、同時代のキヤノン製レンジファインダー用レンズを装着できます。

標準レンズは50mm F1.2と50mm F1.8

キヤノン公式資料では、L1の標準レンズとして次の2本が挙げられています。

  • Canon 50mm F1.2
  • Canon 50mm F1.8

50mm F1.2は、当時としては非常に明るい大口径標準レンズです。暗い場所での撮影や、背景をぼかした人物撮影に利用できます。50mm F1.8は、F1.2より小型で扱いやすい標準レンズです。(Canon Global)

距離計連動式レンズを選ぶ

ねじ径が同じでも、すべてのレンズがL1の距離計と正しく連動するとは限りません。

引き伸ばし用レンズ、接写用レンズ、特殊用途のレンズなどは、装着できてもファインダー内の二重像が動かない場合があります。

通常撮影では、35mmレンジファインダーカメラ用として設計された距離計連動式レンズを選ぶのが基本です。

二重像合致式の連動距離計

Canon L1では、ファインダー中央に見える二重像を重ねてピントを合わせます。

基本的な操作は次のとおりです。

  1. 被写体をファインダー中央へ入れる
  2. 中央に見える二重像を確認する
  3. レンズのピントリングを回す
  4. 2つの像が重なる位置へ合わせる
  5. 構図を整えてシャッターを切る

人物の目、看板の文字、建物の縦線など、輪郭が明確な部分を使うと合わせやすくなります。

一眼レフとは見え方が異なる

レンジファインダーでは、撮影レンズを通した像ではなく、専用のファインダーから被写体を見ます。

レンズをF8やF11まで絞ってもファインダー像は暗くなりません。その一方で、背景のぼけ方や被写界深度を撮影前に直接確認することはできません。

また、ファインダーと撮影レンズの位置が異なるため、近距離撮影では実際に写る範囲との間にパララックスが発生します。

3段階可変式ファインダー

L1は、二重像合致式距離計と3段階に倍率を変更できる逆ガリレオ式ファインダーを一つの光路へまとめています。

背面の切り替え機構を操作することで、構図確認やピント合わせに適した見え方へ変更できます。装着レンズをカメラが判別し、対応するブライトフレームを自動表示する後年の方式とは異なります。(Canon Global)

外付けファインダーのパララックス補正に対応

広角や望遠レンズを使用する場合は、アクセサリーシューへ焦点距離に合った外付けファインダーを装着できます。

L1のアクセサリーシュー部分には、レンズの繰り出しと連動するパララックス補正ピンがあります。対応する外付けファインダーを使用すれば、撮影距離に応じた構図のずれを補正できます。(Canon Global)

最高1/1000秒の機械式シャッター

Canon L1には、横走行式フォーカルプレーンシャッターが搭載されています。

シャッター速度は高速側と低速側の2つのダイヤルに分けて配置され、B、T、1秒から1/1000秒までを使用できます。シャッターボタンの不用意な作動を防ぐ安全ロック機構も備えています。(Canon Global)

高速側の設定

上部のシャッターダイヤルでは、次の速度を選択します。

  • X
  • B
  • 1/60秒
  • 1/125秒
  • 1/250秒
  • 1/500秒
  • 1/1000秒

低速側の設定

前面の低速ダイヤルでは、次の速度を選択します。

  • T
  • 1秒
  • 1/2秒
  • 1/4秒
  • 1/8秒
  • 1/15秒
  • 1/30秒

低速シャッターを使用する場合は、高速側と低速側のダイヤルを適切に組み合わせます。

現代のカメラとは操作方法が異なるため、ダイヤルが動かない場合に無理な力を加えてはいけません。

BとTで長時間露光ができる

Bでは、シャッターボタンを押している間だけシャッターが開きます。

Tでは、一度シャッターを切ると開いた状態が保持されます。夜景や光跡など、長時間露光を行う際に利用できます。

初期型と後期型でシャッター幕が異なる

Canon L1の発売当初には、ゴム引き布製のシャッター幕が使われていました。

その後、生産途中から耐久性に優れた薄いステンレス製シャッター幕へ変更されています。ステンレス幕は、レンズへ直射日光が入った際に布幕へ穴が開く「太陽焼け」を防ぐ目的もありました。(Canon Global)

布幕仕様

初期の布幕仕様では、次の症状に注意します。

  • ピンホール
  • 破れ
  • 強いしわ
  • 幕のたるみ
  • ゴム引き部分の劣化
  • 幕端の剥がれ

ステンレス幕仕様

後期のステンレス幕では、次の状態を確認します。

  • へこみ
  • 深い折れ
  • 強い波打ち
  • 油の付着
  • 幕の重なりの乱れ
  • 走行途中での停止

薄いシャッター幕は非常に傷つきやすいため、布幕・金属幕のどちらも指で触れてはいけません。

電池不要の完全機械式カメラ

Canon L1には露出計がなく、シャッターも機械式です。

撮影に電池は必要ありません。露出は単体露出計やスマートフォンの露出計アプリなどで測り、シャッター速度とレンズの絞り値を手動で設定します。

露出計がないことは初心者には不便ですが、電池の入手性や液漏れを心配せずに使用できます。

FP・M-F・Xフラッシュシンクロに対応

Canon L1は、FP、M-F、Xのフラッシュ接点を搭載しています。

使用するフラッシュに合わせて、ボディー側のレバーで接点を切り替えます。接続端子には、ボディー側面の直結バヨネット式ソケットが採用されています。(Canon Global)

現在一般的な中央接点付きホットシューとは異なるため、現代の電子フラッシュを載せるだけでは使用できません。

実際にフラッシュ撮影を行う場合は、対応するコードやアダプターを用意し、発光だけでなくシャッター幕全体へ光が当たっているか確認しましょう。

上部レバー式のフィルム巻き上げ

L1では裏蓋を開き、35mmフィルムを装填します。

フィルム先端を巻き取りスプールへ差し込み、パーフォレーションをスプロケットへかみ合わせます。巻き上げはカメラ上部のレバーで行い、1回の操作だけでなく小刻みな分割巻き上げにも対応しています。(Canon Global)

手動セット式の逆算カウンター

フィルムカウンターは0から39までの逆算式です。

フィルム装填後、撮影可能枚数に合わせて手動で設定します。撮影するごとに数字が減り、残り枚数を確認できる仕組みです。

フィルムの給送・巻き上げ確認機構も備えています。(Canon Global)

巻き戻しは折り畳みクランク式

撮影終了後は、上部の折り畳み式クランクを使ってフィルムをパトローネへ巻き戻します。

埋め込み型ノブを回すL2より素早く巻き戻しやすい構造です。L1とL2を見分ける際にも、最高シャッター速度と巻き戻し機構が手掛かりになります。(Canon Global)

Canon L1の基本スペック

項目仕様
発売年月1957年5月
カメラ形式35mmフォーカルプレーンシャッター式距離計連動カメラ
画面サイズ24×36mm
レンズマウントねじ式マウント
標準レンズCanon 50mm F1.2/50mm F1.8
ピント合わせ二重像合致式連動距離計
ファインダー3段階視野倍率可変式
露出計なし
露出方式マニュアル
シャッター2軸式横走行フォーカルプレーン
シャッター速度T、B、1秒~1/1000秒、X
シャッター幕初期は布幕、後期はステンレス幕
フラッシュ同調FP・M-F・X接点
セルフタイマーなし
フィルム装填裏蓋開閉・スプール差し込み式
フィルム巻き上げ上部レバー式・分割巻き上げ対応
フィルムカウンター手動セット逆算式・0~39
フィルム巻き戻し折り畳みクランク式
電源不要
サイズ約145×76×34mm
重量約915g・50mm F1.2装着時

主な仕様はキヤノンカメラミュージアムに基づきます。(Canon Global)

Canon L2との違い

Canon L2は、L1より2か月早い1957年3月に発売された普及モデルです。

項目Canon L1Canon L2
最高速度1/1000秒1/500秒
フラッシュ接点FP・M-F・XFPのみ
巻き戻し折り畳みクランクポップアップノブ
標準レンズ50mm F1.2/F1.850mm F1.8/F2.8
セルフタイマーなしなし
位置づけ上級仕様普及型

L1は1/1000秒と複数のフラッシュ接点を備え、50mm F1.2との組み合わせも用意されました。L2は最高速度とシンクロ機能を簡略化し、価格を抑えた実用モデルです。(Canon Global)

Canon VLとの違い

1958年発売のCanon VLは、L1に近い上部レバー式の高級モデルです。

VLではステンレス製シャッター幕とセルフタイマーが標準採用され、ファインダー内のハーフミラーやプリズムも改良されました。最高シャッター速度はL1と同じ1/1000秒です。(Canon Global)

外観がよく似ているため、正面のセルフタイマーレバー、底部の機種表記、シャッター幕などを総合して判断しましょう。生産途中の仕様変更や部品交換があるため、一つの特徴だけで断定しないことが重要です。

中古のCanon L1を購入するときの注意点

シャッター幕の材質と状態

最初に、布幕仕様かステンレス幕仕様かを確認します。

布幕ではピンホールや硬化、ステンレス幕ではへこみや変形が主な確認ポイントです。どちらも高速撮影時に露光むらが出る可能性があるため、できれば実写確認済みの個体を選びましょう。

低速シャッター

1秒、1/2秒、1/4秒などを順番に作動させます。

設定に応じて開いている時間が変わること、シャッター幕が最後まで走行することを確認します。途中で止まる、すべて同じ速度になる個体は整備が必要です。

1/1000秒の動作

最高速度の1/1000秒は、音だけで精度を判断できません。

幕の走行が不均一だと、画面の左右で明るさが変わる露光むらが発生します。シャッターテスターまたは実写結果による確認が理想です。

距離計の二重像

遠方の建物へピントを合わせ、レンズの無限遠位置で二重像が一致するか確認します。

1~2m程度の近距離でも確認し、二重像が上下にずれていないこと、ピントリングに合わせて滑らかに移動することも重要です。

3段階ファインダー

倍率切り替え機構を操作し、それぞれの位置で見え方が変化するか確認します。

ファインダー内部のクモリやハーフミラーの劣化があると、距離計像が薄くなり、ピント合わせが難しくなります。

巻き上げレバーと巻き戻しクランク

巻き上げレバーが滑らかに動き、シャッターが確実にチャージされるか確認します。

巻き戻しクランクについても、引き起こせること、軸と連動して回ること、収納時に極端ながたつきがないことを確認しましょう。

レンズマウント

ボディーとレンズのねじ山に、つぶれや変形がないか確認します。

レンズが途中までしか入らない、最後まで締めても傾く、強いがたつきがある個体には注意が必要です。

Canon L1はどんな人に向いている?

Canon L1は、次のような人に向いています。

  • 1950年代の国産レンジファインダーを使いたい人
  • 電池不要の機械式カメラを探している人
  • ねじ式交換レンズを楽しみたい人
  • 最高1/1000秒のシャッターを使いたい人
  • 二重像によるピント合わせを楽しめる人
  • 上部レバー式の巻き上げを好む人
  • 初期のグッドデザイン受賞製品に興味がある人
  • 布幕とステンレス幕の仕様違いを楽しみたい人

一方、内蔵露出計、自動露出、オートフォーカスを求める人には向きません。

高速側と低速側に分かれたシャッターダイヤルや、手動セット式カウンターなど、現代のカメラとは異なる操作にも慣れる必要があります。

まとめ

Canon L1は、1957年にVT Deluxeと同時発売された35mmレンジファインダーカメラです。

底部トリガーではなく上部巻き上げレバーを採用し、セルフタイマーを省略した端正な外観によって、第1回グッドデザイン賞を受賞しました。

3段階可変式ファインダー、二重像合致式距離計、最高1/1000秒の2軸式機械シャッター、ねじ式レンズマウントを搭載。露出計はありませんが、電池を使わずに撮影できます。

また、生産初期には布製シャッター幕、後期にはステンレス製シャッター幕が使われているため、中古購入時には幕の材質と状態を確認することが重要です。

正常に整備された個体なら、50mm F1.2をはじめとするキヤノン製ねじ式レンズと組み合わせ、1950年代の高級国産レンジファインダーらしい精密な操作感を楽しめます。

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