





Canonflex RMは、35mmフィルムを使用するマニュアルフォーカス一眼レフカメラです。
金属製の重厚なボディーに、機械式シャッター、セレン光電池式露出計、キヤノンRマウントを搭載しています。
露出計は内蔵されていますが、自動露出ではありません。撮影者がシャッター速度を選び、露出計が示す絞り値をレンズへ設定して撮影します。
後年のキヤノンFL・FDマウント機とは異なる独自性があり、キヤノン初期の一眼レフを楽しみたい人に向いた一台です。
Canonflex RMとは
Canonflex RMは、1962年4月に発売された35mm判一眼レフカメラです。
1959年に登場したキヤノン初の一眼レフ「Canonflex」から続くシリーズの後期モデルであり、Canonflexシリーズとしては最後の製品となりました。
Canonflexの基本構造を受け継ぎながら、ファインダーを固定式とし、露出計とフィルム巻き上げレバーをボディー上部へ組み込んでいます。標準レンズ付きの発売時価格は、R50mm F1.8付きが4万9,500円、R58mm F1.2付きが6万9,000円でした。
大きく平らな軍艦部が特徴
Canonflex RMは、ペンタプリズムを低い位置へ配置し、その周囲を大きな上部カバーで覆った独特な形状をしています。
一般的な一眼レフでは中央のファインダー部分が大きく盛り上がっていますが、Canonflex RMは軍艦部全体が高く、ファインダーの突出が目立ちにくいデザインです。
大型のシャッター速度ダイヤル、露出計の表示窓、上部へ移された巻き上げレバーが一体となり、ほかのCanonflexとは異なる外観を形成しています。
セレン光電池式露出計を内蔵
Canonflex RMの大きな特徴が、カメラ前面に組み込まれたセレン光電池式露出計です。
1960年に発売されたコニカFに続き、国内で2番目に露出計を内蔵した一眼レフカメラとされています。それ以前のCanonflexでは、必要に応じて外付けの露出計を装着していました。
露出計用の電池は不要
セレン光電池は、受けた光を利用して自ら電気を発生させます。
そのため、Canonflex RMの露出計には電池が必要ありません。すでに生産されていない水銀電池や、電圧を調整する変換アダプターを用意せずに使えることは、古いカメラとして大きな利点です。
一方、セレン素子は経年劣化することがあります。明るい場所でも指針が動かない個体や、反応しても正しい値を示さない個体もあります。
TTL測光ではない
Canonflex RMの露出計は、撮影レンズを通過した光を測るTTL方式ではありません。
カメラ前面にある受光部へ直接入る光を測定する外光式です。レンズへフィルターを装着した場合や、接写器具を使用した場合の光量低下は、自動的には測光結果へ反映されません。
フィルターを使用するときは、フィルターの露出倍数に応じて絞りやシャッター速度を補正する必要があります。
露出計が適切な絞り値を表示する
Canonflex RMの露出計は、大型のシャッター速度ダイヤルと連動しています。
使用するフィルムの感度を設定し、シャッター速度を選択すると、露出計が撮影時に適した絞り値を表示します。測光範囲はISO100でEV6~17、設定できるフィルム感度はISO10~800です。
自動露出ではなくマニュアル露出
露出計が適切な絞り値を示しても、レンズの絞りは自動的には設定されません。
撮影者が表示を読み取り、レンズの絞りリングを対応する数値へ合わせます。
基本的な撮影手順は次のとおりです。
- 使用するフィルムの感度を設定する
- 被写体の動きや明るさに応じてシャッター速度を選ぶ
- カメラを被写体へ向ける
- 露出計が示す絞り値を確認する
- レンズの絞りリングを設定する
- ファインダーを見ながらピントを合わせる
- シャッターを切る
露出計は撮影を補助する装置であり、シャッター速度と絞りの最終的な設定は撮影者が行います。
キヤノンRマウントを採用
Canonflex RMは、Canonflexシリーズ専用のキヤノンRマウントを採用しています。
マウント外周に3つの爪を持つバヨネット式で、レンズ側の固定リングを回して装着するブリーチロック方式です。レンズとボディーの接合面をこすらずに固定できるよう設計されています。
レンズ側のリングを回して固定する
一般的なバヨネットマウントでは、レンズ本体を回転させて取り付けます。
Rマウントでは、レンズを所定の位置へ合わせた後、後部の固定リングを回してボディーへ締結します。レンズ本体を大きく回転させないことが特徴です。
レンズを外すときも、無理にレンズ全体を回さず、固定リングを解除してから取り外します。
標準レンズはR50mm F1.8とR58mm F1.2
Canonflex RMの標準レンズとして、次の2本が用意されました。
- Canon R50mm F1.8
- Canon R58mm F1.2
R50mm F1.8は標準的な画角と明るさを持つレンズです。R58mm F1.2は非常に明るく、暗い場所での撮影や浅い被写界深度を生かした表現に向いています。
FL・FDレンズとの違いに注意
Canonflex RMで基本的に使用するのは、Canonflex用のRレンズです。
後継機のCanon FXでは、新しい絞り連動機構を持つFLマウントが採用されました。さらに後年にはFD、New FD、EF、RFなどのマウントが登場しています。
外観が似ているFL・FDレンズでも、Canonflex RMとは自動絞りの連動方式が異なります。単に取り付けられそうに見えるからといって、互換性があるとは判断できません。Canonflex RM用として設計されたRレンズを選ぶのが基本です。
自動絞り機構を搭載
対応するRレンズには、「Super Canomatic」と呼ばれる自動絞り機構が採用されています。
通常はレンズを開放状態に保ち、明るいファインダーでピントを合わせられます。シャッターを切ると、レンズが設定した絞り値まで自動的に閉じて撮影されます。
撮影後の絞り復帰に注意
古い自動絞り式カメラでは、巻き上げやシャッターチャージの状態によって、レンズが開放へ戻るタイミングが現在の一眼レフと異なることがあります。
中古品を確認するときは、シャッターを切った瞬間に絞り羽根が閉じ、次の撮影準備をした際に開放状態へ戻るか確認しましょう。
絞り羽根に油が付いている、動きが遅い、設定した位置まで閉じない場合は、露出に影響します。
最高1/1000秒の機械式シャッター
Canonflex RMは、横走り式の布幕フォーカルプレーンシャッターを搭載しています。
シャッター速度は、Bと1秒から1/1000秒まで。大型のシャッター速度ダイヤルは回転しない構造で、選択した速度が所定の位置に表示されます。
設定できる主なシャッター速度は次のとおりです。
- B
- 1秒
- 1/2秒
- 1/4秒
- 1/8秒
- 1/15秒
- 1/30秒
- 1/60秒
- 1/125秒
- 1/250秒
- 1/500秒
- 1/1000秒
シャッターは機械式なので、露出計が故障していても撮影できます。外部露出計やスマートフォンの露出計アプリを使えば、絞りとシャッター速度を手動で決められます。
フラッシュ同調は約1/55秒
Canonflex RMは、FP接点とX接点を備えています。
電子フラッシュを使用する場合のX同調速度は約1/55秒です。実際の操作では、シャッター速度ダイヤルのX位置を使用します。
現在の電子フラッシュを接続する場合は、カメラ側の接点だけでなく、フラッシュのトリガー電圧にも注意が必要です。
固定式ペンタプリズムファインダーを搭載
初代Canonflexではファインダーを交換できましたが、Canonflex RMは固定式のアイレベルペンタプリズムファインダーを採用しています。
ファインダー倍率は、R50mmレンズ装着時で約0.8倍、R58mmレンズ装着時で約0.9倍です。撮影範囲の表示率は縦約92%、横約94%となっています。
複数のフォーカシングスクリーンが存在する
Canonflex RMには、中央にスプリットイメージを備えたタイプなど、3種類のフォーカシングスクリーンが用意されました。
スプリットイメージでは、中央でずれて見える被写体の像が一直線につながるようにフォーカスリングを調整します。
中古品では、標準とは異なるスクリーンへ交換されている可能性があります。どのスクリーンが装着されているかによって、ピントの合わせ方や見え方が変わります。
上部に収納された巻き上げレバー
初代Canonflexには、カメラ底部から突き出したトリガー式の巻き上げ装置が採用されていました。
Canonflex RMでは底部巻き上げを廃止し、軍艦部の溝に沿って動く上部レバーへ変更されています。巻き上げ角は約120度で、1回の操作によってフィルム送りとシャッターチャージを行います。
通常の一眼レフに見られる外側へ大きく張り出したレバーではなく、軍艦部へ半ば埋め込まれたような独特の形状です。
フィルムカウンターは自動復帰式
フィルムカウンターは撮影するたびに数字が増え、裏蓋を開けると自動的にリセットされます。
表示部分には約1.5倍の拡大レンズが設けられ、軍艦部の窓から撮影枚数を確認できます。
Canonflex RMの基本スペック
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 発売年月 | 1962年4月 |
| カメラ形式 | 35mm判一眼レフカメラ |
| 使用フィルム | 35mm・135フィルム |
| 画面サイズ | 24×36mm |
| レンズマウント | キヤノンRマウント |
| 標準レンズ | Canon R50mm F1.8/R58mm F1.2 |
| ピント合わせ | マニュアルフォーカス |
| 測光方式 | セレン光電池式外光測光 |
| 露出設定 | マニュアル |
| 測光範囲 | ISO100でEV6~17 |
| フィルム感度 | ISO10~800 |
| シャッター | 横走り布幕フォーカルプレーン |
| シャッター速度 | X、B、1秒~1/1000秒 |
| フラッシュ同調 | FP・X、X同調約1/55秒 |
| ファインダー | 固定式アイレベルペンタプリズム |
| ファインダー倍率 | 約0.8倍・R50mm使用時 |
| フィルム巻き上げ | 上部レバー式・約120度 |
| セルフタイマー | あり |
| 電源 | 撮影・露出計ともに電池不要 |
| サイズ | 約145×92×47mm |
| ボディー重量 | 約940g |
スペックはキヤノン公式資料に基づきます。レンズを装着すると、総重量は1kgを超える場合があります。
初代Canonflexとの違い
Canonflex RMと1959年発売の初代Canonflexには、次のような違いがあります。
露出計を内蔵した
初代Canonflexの露出計は外付け式でしたが、Canonflex RMではセレン光電池式露出計がボディーへ組み込まれました。
シャッター速度ダイヤルとも連動し、選択したシャッター速度に対する適切な絞り値を確認できます。
ファインダーが固定式になった
初代Canonflexではペンタプリズムを交換できました。
Canonflex RMでは固定式へ変更され、ファインダー交換による拡張性よりも、露出計を含めた一体的なデザインと実用性が重視されています。
巻き上げレバーが上部へ移動した
初代の特徴だった底部トリガー式巻き上げは、Canonflex RMでは廃止されました。
上部の溝に収納されたレバーを親指で操作する方式となり、構えた状態でも巻き上げやすい配置へ変更されています。
中古のCanonflex RMを購入するときの注意点
Canonflex RMは発売から60年以上が経過しているため、外観がきれいでも各機構が正常とは限りません。
セレン露出計の反応
屋外の明るい場所と暗い室内へ向け、露出計の指針が変化するか確認します。
指針が動いた場合も、外部露出計や正常なデジタルカメラと比較し、大きな誤差がないか確認しましょう。
セレン素子が劣化していても機械式シャッターは使用できますが、Canonflex RM本来の内蔵露出計は利用できません。
シャッター幕の状態
裏蓋を開け、布製シャッター幕に次の症状がないか確認します。
- ピンホールや破れ
- ひび割れ
- 強いしわ
- たるみ
- 油や汚れの付着
- 幕の端の剥がれ
小さな穴でもフィルムへ光が入り、撮影画像に白い線や光のにじみが現れる可能性があります。
低速シャッターの粘り
1秒、1/2秒、1/4秒などへ切り替え、設定に応じてシャッターの開いている時間が変化するか確認します。
古い機械式シャッターでは、低速時に途中で止まる、設定より長く開く、ミラーが上がったまま戻らないといった症状が起こります。
最高1/1000秒を含む高速側は、作動音だけで正確性を判断しにくいため、可能であればフィルムで撮影確認された個体を選びましょう。
巻き上げレバーの動作
巻き上げレバーを最後まで動かし、フィルム送り、シャッターチャージ、カウンターの更新が正常に行われるか確認します。
Canonflex RMの巻き上げレバーは軍艦部の溝に沿って動く独特な構造です。途中で引っかかる、極端に重い、元の位置へ戻らない場合は、無理に操作しないようにしましょう。
ミラーと自動絞り
シャッターを切り、ミラーが上がった後に正しい位置へ戻るか確認します。
対応するRレンズを装着し、撮影時に絞り羽根が設定値まで閉じるか、次の撮影準備で開放状態へ戻るかも重要です。
ミラーが戻らない場合は、シャッターだけでなく自動絞り機構にも不具合が生じている可能性があります。
Rレンズの有無と状態
Canonflex RMは、専用Rレンズの入手性が高いカメラではありません。
ボディーだけが安く販売されていても、使用できるレンズを別途探す必要があります。最初の一台として購入するなら、R50mm F1.8などの標準レンズが付属した個体のほうが扱いやすいでしょう。
レンズ内部のカビ、クモリ、傷に加え、固定リング、自動絞り機構、絞り羽根、ピントリングの動作も確認します。
ファインダーとスクリーン
ファインダー内のカビ、クモリ、プリズムの腐食、黒い線などを確認します。
中央のスプリットイメージが見えにくい個体では、ピント合わせが難しくなります。スクリーンに傷があっても撮影画像には写りませんが、操作性には大きく影響します。
セルフタイマーは無理に動かさない
古いセルフタイマーは、内部の油切れや固着が起きている場合があります。
レバーが極端に重い、途中で止まるといった個体を無理に作動させると、シャッターそのものが切れなくなる可能性があります。
実用上必要がなければ、動作未確認のセルフタイマーは操作しないほうが安全です。
Canonflex RMはどんな人に向いている?
Canonflex RMは、次のような人に向いています。
- キヤノン初期の一眼レフに興味がある人
- 電池を使わない機械式カメラを楽しみたい人
- セレン露出計付きのカメラを使いたい人
- キヤノンRレンズに興味がある人
- 金属製カメラの重さと操作感が好きな人
- 一般的なFL・FDマウント機とは違うカメラを探している人
- 1960年代の国産一眼レフを収集している人
一方、軽いカメラを持ち歩きたい人や、豊富な交換レンズを手軽に揃えたい人には向きません。
ボディーだけで約940gあり、専用Rレンズの選択肢や修理対応にも限りがあります。撮影の便利さより、初期一眼レフの構造と操作を味わうカメラです。
まとめ
Canonflex RMは、1962年に発売されたキヤノンRマウント採用の35mm一眼レフカメラです。
セレン光電池式露出計をボディーへ内蔵し、選択したシャッター速度に対する適切な絞り値を表示します。露出計にも機械式シャッターにも電池を必要としません。
固定式ペンタプリズム、最高1/1000秒の布幕シャッター、上部へ収納された巻き上げレバーなど、ほかのCanonflexとは異なる特徴を備えています。
中古で購入するときは、セレン露出計、シャッター幕、低速シャッター、巻き上げレバー、ミラー、自動絞り、ファインダー、専用Rレンズの状態を確認しましょう。
正常に整備された個体なら、後年のFL・FDマウント機とは異なる、キヤノン初期一眼レフならではの重厚な撮影感覚を楽しめます。









