「CANON LENS EF 14mm F2.8L II USM」は、キヤノンが2007年9月に発売したEFマウントの超広角単焦点Lレンズです。
焦点距離はわずか14mm。
35mm判フルサイズでは対角線画角114°という非常に広い範囲を写し込むことができ、風景、建築、室内撮影などで一般的な広角レンズとは大きく異なる迫力ある画面を作れます。
さらに開放F値はF2.8。
超広角でありながら明るさも確保した、プロ・ハイアマチュア向けの高級単焦点レンズです。
CANON EF 14mm F2.8L II USMとは
EF14mm F2.8L II USMは、1991年に発売された「EF14mm F2.8L USM」の後継モデルです。
キヤノンは2007年のII型で光学系を全面的に見直し、特に周辺部の描写性能を向上させました。
主な仕様は以下のとおりです。
- 焦点距離:14mm
- 開放F値:F2.8
- レンズ構成:11群14枚
- 絞り羽根:6枚・円形絞り
- 最小絞り:F22
- 最短撮影距離:0.2m
- 最大撮影倍率:0.15倍
- 画角:水平104°・垂直81°・対角114°
- フィルター:後部挟み込み式
- 最大径:80mm
- 全長:94mm
- 重量:約645g
- 発売年月:2007年9月
- 発売時価格:307,000円
キヤノンのカメラミュージアムでも、発売時価格は307,000円と記録されています。
標準レンズでも望遠レンズでもありません。
14mmという極端な広角を高画質で使うための特殊なLレンズです。
14mmはどれくらい広い?
フルサイズで14mmを使用した場合、対角線画角は114°。
24mmや28mmの広角レンズでも十分広く感じますが、14mmになると別世界です。
目の前の建物だけでなく、その周囲まで一気に画面へ入ります。
そのため、
- 建築物
- 室内
- 雄大な風景
- 星空
- 狭い場所
- 大胆な遠近感を生かしたスナップ
などに向いています。
キヤノン自身も、このレンズについて広いパースペクティブを生かした風景写真や、被写体と背景の距離感を強調したポートレートなどを用途として挙げています。
「広く写る」だけではない
14mmの面白さは、単に大量の情報を画面へ入れられることだけではありません。
カメラに近いものは非常に大きく、遠いものは急激に小さく見えるため、
遠近感を大胆に強調できます。
たとえば人物へ思い切って近づいて撮れば、その人物を大きく見せながら周囲の景色まで広く入れることができます。
ただし逆に言えば、構図が少しずれるだけで不要な物まで画面へ入りやすいレンズです。
超広角ほど撮影者の構図作りが問われます。
2枚の非球面レンズを採用
14mmのような超広角レンズでは、画面周辺の像が崩れたり、直線が歪んだりする収差への対策が重要になります。
EF14mm F2.8L II USMでは、
大口径・高精度ガラスモールド非球面レンズを2枚
採用しています。
これによって歪曲収差などを抑え、画面周辺まで高い描写性能を目指した設計になっています。
巨大な前玉が単なる見た目の迫力ではなく、14mm F2.8を成立させるための本気の光学設計というわけです。
UDレンズも2枚使用
さらにII型ではUDレンズを2枚採用しています。
UDは「Ultra Low Dispersion」の略で、色収差を抑えるための特殊低分散ガラスです。
特に広角レンズでは画面周辺で色のズレが目立ちやすくなります。
EF14mm F2.8L II USMでは2枚のUDレンズによって倍率色収差を抑え、画面全体で高解像・高コントラストな描写を狙っています。
つまりII型では、
非球面レンズ2枚+UDレンズ2枚
という豪華な光学構成が採用されています。
Lレンズらしい設計です。
初代EF14mm F2.8L USMとの違い
初代EF14mm F2.8L USMは1991年12月に発売されました。
初代の主な仕様は、
- 10群14枚
- 絞り羽根5枚
- 最短撮影距離0.25m
- 最大撮影倍率0.1倍
- 77×89mm
- 重量560g
でした。
一方、II型は、
- 11群14枚
- 円形絞り6枚
- 最短撮影距離0.2m
- 最大撮影倍率0.15倍
- 80×94mm
- 重量645g
となっています。
II型になって若干大型・重量化しましたが、その分、新しい光学系や防塵・防滴構造などが採用されています。
最大の進化点はやはり画質。
初代の単なる外装変更ではなく、光学設計そのものを作り直した後継モデルです。
最短撮影距離はわずか20cm
EF14mm F2.8L II USMの最短撮影距離は0.2mです。
これは撮像面から約20cmなので、レンズ先端から被写体までの距離はさらに短くなります。
超広角レンズでここまで寄ると、
手前の被写体を巨大に写し、その後ろへ広大な背景を入れる
という独特な表現ができます。
花や小物などへ近づき、背景の風景まで画面へ入れる。
望遠レンズの圧縮効果とは正反対の世界です。
最大撮影倍率は0.15倍なのでマクロレンズではありませんが、14mmならではの近接撮影を楽しめます。
USMによる高速AF
レンズ名にある「USM」はUltrasonic Motor、つまり超音波モーターを意味します。
EF14mm F2.8L II USMではリアフォーカス方式とUSMを組み合わせ、高速なオートフォーカスを実現しています。
ピント合わせの際にもレンズ全長が変化しません。
またAF後にフォーカスリングを回すことで、そのままマニュアルで微調整できるフルタイムマニュアルフォーカスにも対応しています。
14mmでは被写界深度が深くなりやすいとはいえ、F2.8開放や近距離撮影では正確なピント合わせが必要です。
AFとMFをすぐ切り替えられるのは実用的です。
前玉が大きく張り出している
EF14mm F2.8L II USMを見て最初に目を引くのが、大きく前へ張り出した前玉です。
超広角レンズらしい特徴的な外観です。
一般的なレンズなら前面に、
「77mm」
「82mm」
などのフィルターをねじ込めます。
しかし、このレンズには通常の前面フィルター径がありません。
キヤノンの仕様表でもフィルターは後部挟み込み式となっています。
普通の丸型フィルターは装着できない
つまり、
「とりあえず前に保護フィルターを付けておこう」
という一般的な使い方ができません。
超広角の画角を確保するため、前玉が大きく湾曲し、前面へ張り出した構造になっているためです。
フィルターを使用する場合はレンズ後部のフィルター機構を利用します。
中古品を扱う場合、この前玉の状態は特に重要です。
通常のレンズ以上に、
- 傷
- 拭き傷
- コーティング劣化
- 打痕
などを慎重に確認したいところです。
固定式フードも特徴的
前玉の周囲には花形のフードが一体化しています。
通常の交換レンズのように、
「フードを外して収納」
という構造ではありません。
大きく張り出した前玉をある程度保護する役割も持っています。
しかし、それでもレンズ前面は非常に露出しています。
テーブルへ置いたりバッグへ収納したりするときには、専用フロントキャップをしっかり装着しておきたいレンズです。
中古で購入する場合は、専用フロントキャップの有無も確認しておくとよいでしょう。
キヤノンでは専用品として「レンズキャップ14」が設定されています。
防塵・防滴構造を採用
II型では防塵・防滴構造も採用されています。
キヤノンは、砂塵や水滴などが侵入しにくい構造としています。
風景撮影では、
- 雨
- 雪
- 砂埃
- 海辺
- 山岳地帯
など厳しい環境で使用する可能性があります。
プロ向けLレンズとして、こうした環境での信頼性も意識されています。
ただしキヤノン自身も、砂塵や水滴の侵入を完全に防ぐものではないと注意しています。
中古品を「防滴だから雨ざらしでもOK」と考えるのは避けましょう。
手ブレ補正は搭載されていない
EF14mm F2.8L II USMにはIS、つまり光学式手ブレ補正機構は搭載されていません。
14mmという超広角では望遠レンズほど手ブレが目立ちにくいことに加え、F2.8という明るさもあります。
ただし暗所や夜景ではシャッタースピードが低下するため、必要に応じて三脚を使用したいところです。
特に星空撮影や建築写真で低感度・高画質を狙う場合、三脚との組み合わせは現在でも有効です。
EOSフィルムカメラでも楽しめる
EF14mm F2.8L II USMが発売された2007年はすでにデジタル一眼レフの時代ですが、マウントはキヤノンEFマウントです。
そのため対応する35mmフィルムEOSボディと組み合わせれば、フィルムでも14mmの超広角撮影を楽しめます。
EOS-1Vなどの後期フィルムEOSと組み合わせれば、
AF対応の14mm F2.8超広角Lレンズを35mmフィルムで使う
という非常に贅沢なシステムになります。
デジタル時代に設計された高性能EFレンズをフィルムへ持ち込めるのも、EFシステムの面白さです。
APS-Cでは約22.4mm相当
APS-CサイズのキヤノンEOSデジタル一眼レフへ装着すると、35mm判換算で約22.4mm相当の画角になります。
キヤノン自身もAPS-C機で約22.4mm相当の超広角として使用できることを案内しています。
もちろん14mm本来の圧倒的な画角を味わうなら、35mmフィルムまたはフルサイズデジタル機との組み合わせが本領でしょう。
中古で確認したいポイント
EF14mm F2.8L II USMは高級Lレンズですが、2007年発売なので初期個体ならかなり年数が経過しています。
中古で購入する際は、
- 前玉の傷
- 前玉のコーティング状態
- レンズ内部のカビ
- レンズ内部のクモリ
- AF動作
- USMの異音
- フォーカスリング
- 電子接点
- マウント部
- 固定フードの破損
- 専用フロントキャップの有無
などを確認しましょう。
特に重要なのは前玉です。
このレンズには一般的な保護フィルターを装着できないため、長年使用された個体では前玉へ直接傷が付いている可能性があります。
また、超広角レンズでは画面周辺まで使用するため、レンズの偏芯などが疑われる個体では左右の解像感にも注意したいところです。
初代とII型を間違えないように注意
中古市場には、
EF14mm F2.8L USM
と
EF14mm F2.8L II USM
の両方が存在します。
初代は1991年発売、II型は2007年発売です。
名称が非常によく似ているため、中古品の商品名だけではなく鏡筒の「II」表記まで確認しましょう。
II型は光学系が刷新され、防塵・防滴や円形絞りなども追加されています。
中古価格だけを比較して、
「同じ14mm F2.8Lなのに、こっちだけ安い」
と思ったら初代だった――ということも十分考えられます。
まとめ
CANON LENS EF 14mm F2.8L II USMは、2007年に登場したEFマウントの超広角単焦点Lレンズです。
フルサイズ使用時の対角線画角は114°。
14mmという極端な超広角でありながらF2.8という明るさを実現しています。
さらに、
- 高精度ガラスモールド非球面レンズ2枚
- UDレンズ2枚
- USM
- リアフォーカス
- フルタイムマニュアルフォーカス
- 円形絞り
- 防塵・防滴構造
など、Lレンズらしい本格的な仕様を備えています。
一方で大きく張り出した前玉のため、一般的なねじ込み式フィルターは使用できません。
645gという重量もあり、小型軽量な広角レンズとは対極にある存在です。
しかし、このレンズの目的は携帯性ではありません。
「14mmという圧倒的な画角を、高い画質で撮ること」。
その目的のために巨大な前玉と特殊レンズを投入した、EF時代を代表する超広角Lレンズのひとつです。
風景や建築を正攻法で撮るのもよし。
被写体へ数十センチまで寄って遠近感を爆発させるのもよし。
普通の広角レンズでは物足りなくなった撮影者にとって、
「14mmまで行けば世界の見え方そのものが変わる」
ことを体験できる一本です。









