「CANON LENS FD 55mm F1.2 S.S.C.」は、キヤノンが1973年3月に発売したFDマウントの大口径標準レンズです。
焦点距離55mmという扱いやすい画角に、開放F値F1.2という非常に明るいスペックを組み合わせた一本。現在の感覚で見てもF1.2は十分にインパクトがありますが、1970年代のフィルム一眼レフ用レンズと考えれば、なおさら存在感のあるレンズです。
重厚な鏡筒、大きな前玉、そして赤文字で刻まれた「S.S.C.」の表記も、オールドキヤノンらしい魅力といえるでしょう。
CANON LENS FD 55mm F1.2 S.S.C.とは
CANON LENS FD 55mm F1.2 S.S.C.は、1973年3月発売のFDマウント用標準レンズです。発売時価格は50,000円でした。キヤノン公式資料によれば、レンズ構成は5群7枚、絞り羽根は8枚、最小絞りはF16となっています。
主な仕様は以下のとおりです。
- 焦点距離:55mm
- 開放F値:F1.2
- レンズ構成:5群7枚
- 絞り羽根:8枚
- 最小絞り:F16
- 最短撮影距離:0.6m
- 最大撮影倍率:0.109倍
- フィルター径:58mm
- 最大径×長さ:75.8×52.5mm
- 重量:565g
標準レンズとしてはかなり重量があり、565gという数字からも、このレンズが小型軽量を狙ったものではないことが分かります。
F1.2という大口径が最大の特徴
最大の魅力は、やはり開放F1.2です。
F1.4やF1.8の標準レンズと比較してさらに大きな開口を持ち、暗い場所でも光を取り込みやすいほか、浅い被写界深度を利用した撮影も楽しめます。
一方、F1.2ではピントの合う範囲がかなり狭くなるため、フィルム一眼レフで開放撮影を行う場合は正確なマニュアルフォーカスが求められます。
ピントリングをゆっくり回しながらファインダーで山を探す――そんな昔ながらの撮影操作そのものを楽しめるレンズともいえるでしょう。
「S.S.C.」とは何なのか
レンズ前面に記された「S.S.C.」は、キヤノンのSuper Spectra Coating(スーパー・スペクトラ・コーティング)を意味します。
キヤノンはS.S.C.について、カラーバランスを統一するために開発したコーティング技術であると説明しています。
1970年代のFDレンズには「S.C.」や「S.S.C.」という表記を持つモデルが存在し、この赤いS.S.C.文字はオールドFDレンズを象徴するデザインのひとつにもなっています。
FD55mm F1.2 S.S.C. ALとは別物
中古市場で探す際に特に注意したいのが、
FD55mm F1.2 S.S.C.
と
FD55mm F1.2 S.S.C. AL
は別のレンズだということです。
今回取り上げている通常のS.S.C.モデルは5群7枚構成で、1973年3月発売、当時の価格は50,000円です。
一方、同じ1973年3月に登場した「FD55mm F1.2 S.S.C. AL」は非球面レンズを採用した6群8枚構成で、価格は147,000円でした。
実に約3倍もの価格差です。
つまり、「55mm F1.2」「S.S.C.」まで同じでも、AL表記の有無でまったく違うモデルと考えたほうがよいでしょう。
中古品の商品名では、この2本が混同されないよう注意が必要です。
FDマウントを代表する大口径標準レンズ
FDマウントは、キヤノンが1970年代から展開した一眼レフシステムです。
キヤノンによれば、従来のFLマウントに続いて登場したFDマウントは開放測光に対応し、その後1979年には着脱操作を改善したNew FDマウントへ発展しました。
CANON LENS FD 55mm F1.2 S.S.C.は、その初期FDシステムを象徴する世代のレンズです。
実際、1973年に登場した改良型FTbである「FTb-N」では、FD55mm F1.2 S.S.C.が標準レンズの選択肢として用意されていました。
Canon F-1やFTbなどと組み合わせたい
FDレンズを代表するカメラといえば、プロ向け最高級機として1971年に登場したCanon F-1があります。
F-1ではFDマウントが採用され、発売当初から55mm F1.2を含む標準レンズが設定されていました。
また、同じ1971年に登場したFTbもFDレンズに対応し、55mm F1.2を標準レンズとして選択できました。
F-1やFTbとこの55mm F1.2を組み合わせると、ボディもレンズも金属感たっぷり。
現代のカメラとはまったく違う、1970年代のキヤノン一眼レフらしい重厚なスタイルを楽しめます。
現代でも楽しめるオールドFDレンズ
CANON LENS FD 55mm F1.2 S.S.C.は、フィルムカメラだけでなく、マウントアダプターを介してミラーレスカメラで楽しむこともできます。
デジタルで使用すれば撮影結果をすぐ確認できるため、F1.2開放でのピント合わせや描写の変化を試しやすいのもメリットです。
現在でもFD55mm F1.2 S.S.C.を好んで使用するユーザーは存在し、オールドレンズとして独特の描写や重厚な造りを評価する声も見られます。
ただし、製造から半世紀ほど経過したレンズだけに、中古品では個体の状態が重要です。
中古で確認したいポイント
購入する際は、特に次の部分を確認しておきたいところです。
- レンズ内部のカビ
- クモリ
- 傷やコーティング劣化
- 絞り羽根の油染み
- 絞りの作動
- ピントリングの重さ
- FDマウント部分の状態
- フィルター枠の変形
F1.2という大口径レンズは前玉も大きいため、表面の傷やコーティング状態もチェックしておきましょう。
また、「55mm F1.2 S.S.C. AL」と通常の「55mm F1.2 S.S.C.」を取り違えないことも重要です。
まとめ
CANON LENS FD 55mm F1.2 S.S.C.は、1973年に登場したキヤノンFDマウントの大口径標準レンズです。
55mmという標準域の焦点距離にF1.2という明るさを備え、565gの重厚な鏡筒には1970年代の高級レンズらしい存在感があります。
より高価な非球面レンズ採用モデル「FD55mm F1.2 S.S.C. AL」の陰に隠れがちな存在ではありますが、通常のS.S.C.モデルも十分に魅力的な一本です。
F-1やFTbと組み合わせてフィルム撮影を楽しむもよし、ミラーレスカメラに装着してオールドレンズとして楽しむもよし。
「F1.2の大口径」「赤文字のS.S.C.」「金属鏡筒のオールドFD」という三拍子がそろった、キヤノンFDレンズの時代を感じられる標準レンズです。









