Nikon F2は、35mmフィルムを使用するプロ向けのマニュアルフォーカス一眼レフカメラです。
1971年にNikon Fの後継機として登場し、最高1/2000秒の完全機械式シャッター、交換式ファインダー、交換式フォーカシングスクリーン、ミラーアップ、モータードライブ対応などを備えています。
露出計は装着するファインダーによって変わりますが、シャッターそのものは電池を使いません。電池が切れても、単体露出計などで露出を決めれば通常どおり撮影できることが大きな特徴です。
Nikon F2とは
Nikon F2は、日本光学工業が1971年9月21日に発売した35mmフォーカルプレーンシャッター式一眼レフカメラです。
一見すると初代Nikon Fの改良型に見えますが、シャッター駆動、巻き上げ、レリーズ、ミラーなどの主要機構は新たに設計されました。開発時には「より速く、より強く」を掲げ、操作性、耐久性、システム互換性の向上が図られています。(Nikon)
プロ用一眼レフの第二世代
Nikon Fは、交換式ファインダーやモータードライブを備えたシステムカメラとして高く評価されました。
F2ではその思想を受け継ぎながら、次のような部分が改良されています。
- 最高シャッター速度を1/1000秒から1/2000秒へ高速化
- フラッシュ同調速度を1/60秒から1/80秒へ向上
- 裏蓋を取り外し式からヒンジ開閉式へ変更
- シャッターボタンを操作しやすい位置へ移動
- 巻き上げレバーの形状を改善
- 長焦点レンズ使用時のファインダー像のケラレを軽減
- モータードライブの装着と巻き戻しを改良
初代Fの問題点を一つずつ見直し、外観だけでなく内部機構も大幅に作り直したモデルです。(Nikon)
電池不要の完全機械式シャッター
Nikon F2には、チタン幕を使用した横走りフォーカルプレーンシャッターが搭載されています。
シャッター速度は1秒から1/2000秒までと、B、T、X。1/80秒から1/2000秒の範囲では、中間速度も設定できます。(Orphancameras)
最高1/2000秒
最高速度の1/2000秒を使えば、晴天時でも大口径レンズの絞りを開きやすくなります。
人物撮影で背景をぼかしたい場合や、動いている被写体を止めたい場合に有効です。
ただし、製造から長い年月が経過した個体では、ダイヤルが1/2000秒へ設定できても正確な速度で作動しているとは限りません。高速側の露光むらは、実写またはシャッターテスターで確認する必要があります。
2秒から10秒の低速撮影
セルフタイマーを低速シャッター機構として利用すると、2秒から10秒までの長時間露光が可能です。
セルフタイマーの目盛りとシャッター設定を組み合わせる独特の方式で、夜景や暗い室内の撮影に利用できます。通常のセルフタイマーとしては、2秒、4秒、6秒、8秒、10秒の遅延を設定可能です。(Orphancameras)
チタン製シャッター幕
Nikon F2のシャッター幕には、非常に薄いチタン箔が使われています。
布幕と異なり、レンズを通った太陽光によって穴が開きにくいことが利点です。F2ではシャッター幕の走行速度が約10ミリ秒まで高速化され、電子フラッシュを1/80秒で同調できるようになりました。(Nikon)
シャッター幕には触れない
チタンは丈夫な金属ですが、シャッター幕は薄く作られています。
裏蓋を開いた状態で、次の行為は避けましょう。
- 指で押す
- 布や綿棒で拭く
- フィルム先端を強く当てる
- 強いエアを近距離から吹き付ける
- 変形を工具で直そうとする
小さな波打ちだけで直ちに故障とは限りませんが、深いへこみ、折れ、裂け、走行途中での停止がある個体には注意が必要です。取扱説明書でも、シャッター幕へ圧力を加えないよう案内されています。(Orphancameras)
交換式ファインダー
Nikon F2は、ファインダーを取り外して交換できるシステムカメラです。
アイレベルファインダー、露出計内蔵フォトミックファインダー、ウエストレベルファインダー、高倍率ファインダーなどが用意されました。ニコンの資料では6種類のファインダーに対応しています。(Nikon)
Nikon F2アイレベル
露出計を持たないDE-1アイレベルファインダーを装着した仕様です。
プリズム部分が小さく、F2本来の端正な外観を楽しめます。電池も露出計も必要なく、単体露出計や露出計アプリを使って撮影します。
中古市場で単に「Nikon F2」と呼ばれる場合、このアイレベル仕様を指すこともあれば、F2シリーズ全体を指すこともあります。
Nikon F2フォトミック
DP-1フォトミックファインダーを装着した初期の露出計内蔵仕様です。
中央重点測光を採用し、ファインダー内の指針を中央へ合わせて露出を決めます。レンズとの開放測光連動には、絞りリングの連動爪、いわゆる「カニ爪」を使用します。
Nikon F2S
DP-2フォトミックSファインダーを装着したモデルです。
露出表示を指針式からLED式へ変更し、暗い場所での測光範囲も拡大されました。専用EEコントロールユニットを組み合わせれば、シャッター速度優先式の自動露出にも対応します。(Nikon)
Nikon F2SB
DP-3ファインダーを装着した仕様です。
LED表示とSPD受光素子を採用し、応答性や低照度での測光性能を高めています。レンズとの連動には、従来型のカニ爪を使用します。
Nikon F2A
DP-11ファインダーを装着したAI対応モデルです。
レンズの絞りリングにあるAI連動部から開放F値を伝えるため、従来のようにレンズ装着後、絞りリングを往復させる操作が不要になりました。露出表示は指針式です。Nikon F2 Photomic Aは1977年に登場しています。(Nikon)
Nikon F2AS
DP-12ファインダーを装着したF2シリーズ後期の上位仕様です。
AI方式、SPD受光素子、LED露出表示を組み合わせています。F2Aと同様にAIレンズへ対応しながら、F2SB系の電子式表示と測光性能を受け継いだモデルです。
視野率約100%のファインダー
Nikon F2のアイレベルファインダーは、撮影画面をほぼ100%確認できる設計です。
一般的な一眼レフでは、ファインダーで見えた範囲より少し広く写ることがあります。F2では画面の端まで確認しやすく、報道、商品、複写、建築など、厳密な構図が必要な撮影に適しています。(Orphancameras)
大型ミラーで望遠レンズにも対応
F2では、ミラーの縦方向の長さがNikon Fの28mmから30mmへ拡大されました。
これにより、長焦点レンズを使用したときに、ファインダー上部が暗くなる現象を抑えています。ミラーアップにも対応しており、振動を抑えたい接写や望遠撮影、一部の特殊レンズの使用時に利用できます。(Nikon)
フォーカシングスクリーンを交換できる
Nikon F2では、フォーカシングスクリーンも交換できます。
標準のK型をはじめ、全面マット、方眼、マイクロプリズム、スプリットイメージ、透過型など、合計17種類が用意されました。(Orphancameras)
使用するレンズや撮影目的に応じて、次のように選択できます。
- 標準レンズ:スプリットイメージ・マイクロプリズム
- 望遠レンズ:全面マット
- 建築・複写:方眼入り
- 接写・顕微鏡撮影:専用スクリーン
- 暗いレンズ:中央部が暗くなりにくいスクリーン
スクリーン表面は傷つきやすいため、交換時に指で触れないよう注意しましょう。
Nikon Fマウントを採用
レンズマウントはNikon Fマウントです。
1959年のNikon Fから続くバヨネット方式で、当時のNIKKOR Auto、AI Nikkor、AI-S Nikkorなど、多数のマニュアルフォーカスレンズを利用できます。
ただし、露出計との連動方法は装着するファインダーによって異なります。
非AIレンズとAIレンズ
DP-1、DP-2、DP-3などの初期フォトミックファインダーは、レンズのカニ爪を使って露出計と連動します。
DP-11とDP-12はAI方式です。AIレンズなら装着するだけで開放F値が伝わります。
同じFマウントでも、次の点を確認しましょう。
- レンズにカニ爪があるか
- AI加工されているか
- ファインダー側の連動方式
- 絞りリングを操作できるか
- レンズ後部がミラーなどへ干渉しないか
特に電子絞り専用のEタイプレンズや、絞りリングのない一部のGタイプレンズは、F2で通常の絞り操作を行えません。
モータードライブへ対応
Nikon F2は、専用モータードライブMD-1やMD-2へ対応しています。
最高約5コマ/秒の連続撮影に加え、電動巻き戻しとフレームカウンターの自動復帰が可能です。初代Nikon F用モータードライブでは、ボディー側の調整が必要でしたが、F2では専用モータードライブを直接装着できるよう設計されました。(Nikon)
250枚撮りバックも使用可能
標準の裏蓋は取り外せるため、MF-1型250枚撮りフィルムバックなどへ交換できます。
報道、科学記録、監視、連続撮影といった専門用途を想定したシステムです。通常の裏蓋はヒンジ開閉式なので、日常的なフィルム交換はNikon Fより簡単になっています。(Orphancameras)
多重露出に対応
巻き戻しボタンを操作し、フィルムを送らずにシャッターだけをチャージすることで、同じコマへ複数回露光できます。
多重露出後は、巻き戻しボタンが解除されてフィルム送りが通常状態へ戻ったことを確認します。
多重露出では光量が加算されるため、2回重ねる場合は各露光を約1段ずつ減らすなど、露出調整が必要です。
Nikon F2の基本スペック
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 発売年月 | 1971年9月 |
| カメラ形式 | 35mmフォーカルプレーンシャッター式一眼レフ |
| 画面サイズ | 24×36mm |
| レンズマウント | Nikon Fマウント |
| ピント合わせ | マニュアルフォーカス |
| 露出方式 | 装着ファインダーによって異なる |
| 露出計 | アイレベル仕様は非搭載 |
| シャッター | チタン幕・横走り機械式 |
| シャッター速度 | T、B、1秒~1/2000秒、X |
| 中間速度 | 1/80~1/2000秒で設定可能 |
| フラッシュ同調 | 1/80秒以下 |
| ファインダー | 交換式 |
| ファインダー視野率 | 約100% |
| スクリーン | 交換式・17種類 |
| ミラーアップ | 対応 |
| 被写界深度確認 | 対応 |
| 多重露出 | 対応 |
| フィルム巻き上げ | 手動レバー・分割巻き上げ可能 |
| 巻き上げ角 | 120度 |
| 予備角 | 20度 |
| 裏蓋 | ヒンジ開閉・取り外し可能 |
| モータードライブ | MD-1・MD-2などに対応 |
| 電源 | 露出計のみ電池使用 |
| サイズ | 約152.5×98×56mm・アイレベル仕様 |
| 重量 | 約730g・アイレベル仕様 |
主な仕様はニコン公式資料とNikon F2取扱説明書に基づきます。ファインダーを交換すると、高さや重量が変わります。(Orphancameras)
Nikon Fとの違い
Nikon F2は、Nikon Fの基本思想とFマウントを継承しながら、操作性と撮影性能を高めています。
| 項目 | Nikon F | Nikon F2 |
|---|---|---|
| 発売年 | 1959年 | 1971年 |
| 最高速度 | 1/1000秒 | 1/2000秒 |
| X同調 | 1/60秒 | 1/80秒 |
| 裏蓋 | 背面・底部取り外し式 | ヒンジ開閉式 |
| 巻き上げ | レバー式 | 改良型レバー式 |
| モータードライブ | ボディー調整が必要な場合あり | 専用品を直接装着 |
| 長焦点時のファインダー | 上部が暗くなる場合あり | 大型ミラーで改善 |
F2はNikon Fの単なる高速化モデルではなく、プロから寄せられた要望を反映して基本機構から再設計されたカメラです。(Nikon)
Nikon F3との違い
1980年に登場したNikon F3では、電子制御シャッターと絞り優先AEが採用されました。
F2が全速機械式であるのに対し、F3は電子制御によって8秒から1/2000秒までの無段階自動露出を実現しています。(Nikon)
| 項目 | Nikon F2 | Nikon F3 |
|---|---|---|
| シャッター制御 | 機械式 | 電子制御式 |
| 自動露出 | 一部アクセサリー使用時 | 絞り優先AE内蔵 |
| 電池切れ時 | 全速使用可能 | 機械式予備速度のみ |
| 最高速度 | 1/2000秒 | 1/2000秒 |
| 露出計 | ファインダー内蔵 | ボディー内蔵 |
| 操作感 | 機械式 | 電子的で滑らか |
電池への依存を避けたい場合はF2、絞り優先AEや小型化されたボディーを重視する場合はF3が候補になります。
中古のNikon F2を購入するときの注意点
ファインダーの種類を確認する
まず、どのファインダーが装着されているか確認します。
同じF2ボディーでも、DE-1、DP-1、DP-2、DP-3、DP-11、DP-12によって、露出表示、受光素子、レンズ連動方式、重量が異なります。
商品名に「F2」「F2フォトミック」「F2A」「F2AS」が混在していることもあるため、正面や側面の機種表示だけでなく、ファインダーの型番を確認しましょう。
チタンシャッター幕
裏蓋を開き、深いへこみ、折れ、裂け、油、幕の重なりの乱れがないか確認します。
1秒から1/2000秒まで作動させ、低速で途中停止しないこと、高速で幕が完全に走行することを確かめます。
露出計
フォトミック仕様では、新しい適合電池を入れて測光を確認します。
- 明るい場所と暗い場所で表示が変わる
- ISO感度設定が反映される
- 絞りリングと連動する
- シャッター速度と連動する
- LEDまたは指針が安定している
- 外部の露出表示も作動する
表示が動いても精度が正しいとは限りません。単体露出計やデジタルカメラと比較しましょう。
ファインダー内のクモリや腐食
接眼部からのぞき、プリズムの腐食、クモリ、カビ、黒い線、二重像のような剥離がないか確認します。
フォトミックファインダーは内部に露出計や連動機構を備えるため、アイレベルファインダーより修理箇所が多くなります。
巻き上げとフィルム送り
巻き上げレバーを操作し、次の部分を確認します。
- 1回または分割巻き上げができる
- シャッターが確実にチャージされる
- スプロケットと巻き取り軸が回る
- カウンターが進む
- 裏蓋を開くとカウンターが戻る
- 巻き戻しボタンが解除される
テスト用フィルムを入れて確認するのが理想です。
ミラーとモルト
シャッターを切り、ミラーが上がって正しい位置へ戻るか確認します。
ミラー受けのモルトが劣化していると、ミラーの停止位置や作動音へ影響する可能性があります。裏蓋周辺のモルトも、粉状または粘着質になっていないか確認しましょう。
Nikon F2はどんな人に向いている?
Nikon F2は、次のような人に向いています。
- 電池不要のプロ用機械式一眼レフを使いたい人
- NIKKORのマニュアルフォーカスレンズを楽しみたい人
- 最高1/2000秒の機械式シャッターを求める人
- ファインダーやスクリーンを交換したい人
- 視野率約100%で厳密に構図を決めたい人
- モータードライブや特殊アクセサリーを楽しみたい人
- 重量感のある金属製カメラが好きな人
- Nikon Fシリーズの歴史に興味がある人
一方、オートフォーカスやボディー内蔵の自動露出を求める人には向きません。
ファインダーによって対応レンズや測光方法が異なるため、購入前にF2シリーズの仕様を理解しておく必要があります。
まとめ
Nikon F2は、1971年に登場したNikon Fシリーズ第二世代のプロ用35mm一眼レフです。
最高1/2000秒のチタン幕機械式シャッター、交換式ファインダー、交換式フォーカシングスクリーン、視野率約100%のファインダー、ミラーアップ、多重露出、モータードライブ対応などを備えています。
最大の特徴は、露出計を使用しない限り電池を必要としないことです。フォトミックファインダーの電池が切れても、シャッターは1秒から1/2000秒まで機械的に作動します。
中古で購入するときは、F2、F2フォトミック、F2S、F2SB、F2A、F2ASの違いを確認し、チタンシャッター幕、低速・高速シャッター、露出計、ファインダー、巻き上げ、ミラーを点検しましょう。
正常に整備された個体なら、機械式一眼レフとしての高い完成度と、Nikon Fシステムの豊富な交換レンズ・アクセサリーを存分に楽しめる一台です。









