








Nikon FMとは?完全機械式シャッターとAi対応を備えた名作フィルム一眼レフを徹底解説
Nikon FMは、35mmフィルムを使用するマニュアルフォーカス一眼レフカメラです。
1977年5月に発売され、当時の大型・重量級一眼レフから一転して、小型化を進めた新世代のニコンとして登場しました。ニコン公式Camera Chronicleでは、FMを既存機の単なる小型版ではなく**「ゼロから新設計されたカメラ」**と説明しています。海外市場から寄せられた「Nikon F2より一段下の、小型で扱いやすい一眼レフ」という要求も開発背景にありました。
最大の特徴は、シャッターが完全機械式であることです。
露出計には電池を使用しますが、シャッターそのものには電池を必要としません。
そのため電池が切れても、
- B
- 1秒
- 1/2秒
- 1/4秒
- 1/8秒
- 1/15秒
- 1/30秒
- 1/60秒
- 1/125秒
- 1/250秒
- 1/500秒
- 1/1000秒
のすべてを使用できます。純正取扱説明書でも、1秒~1/1000秒+Bの縦走行フォーカルプレーンシャッターとして明記されています。
さらに、
- Nikon Fマウント
- Ai開放測光
- 一部の非Ai Nikkorにも対応
- TTL中央重点測光
- +・○・-のLED露出表示
- 被写界深度プレビュー
- 多重露光
- セルフタイマー
- 1/125秒X同調
- モータードライブ対応
を備えています。
この記事では、Nikon FMの特徴、完全機械式シャッター、Aiシステム、露出計、旧Nikkorとの互換性、FE・FM2との違い、基本的な使い方、中古購入時に確認したいポイントまで詳しく解説します。
Nikon FMとは
Nikon FMは1977年の「日本カメラショー」で発表され、同年5月に発売されました。
この時期、ニコンは従来の露出計連動方式からAi(Automatic Maximum Aperture Indexing)システムへの移行を進めていました。
FMはその新しいAiシステムを前提に、ボディそのものから新設計されたカメラです。ニコン公式史では、FMについて「AI化」「小型化」「生産自動化」「VE」を積極的に取り入れた重要なモデルと評価しています。
後に、
- Nikon FE
- Nikon FM2
- Nikon FE2
- Nikon FA
などへ発展するコンパクトなニコン一眼レフシリーズの原点でもあります。
Nikon FMは1977年発売
ニコン公式資料によれば、FMは1977年5月発売です。
50mm F2付きの当時の希望小売価格は81,000円でした。
ニコンFやF2ほど巨大なプロ機ではない一方、単なる簡易カメラでもありません。
交換レンズ、モータードライブ、フラッシュ、接写用品など、Nikon Fシステムの幅広いアクセサリーを利用できる本格的な一眼レフとして設計されています。
純正説明書でも、FMをアマチュアだけでなくプロにも対応するコンパクトな35mm一眼レフとして紹介しています。
完全機械式シャッターが最大の特徴
Nikon FM最大の特徴は、シャッターを機械的に制御していることです。
電池を抜いてもシャッター速度は変わりません。
1秒から1/1000秒まで、シャッターダイヤルで直接選択できます。
これは電子制御のNikon FEとの決定的な違いです。
電池がなくても全速使える
たとえば山や旅行先で露出計用電池がなくなったとしても、
- 外部露出計
- スマートフォン露出計
- サニー16
などで露出を決めれば、そのまま撮影を続けられます。
「電池がなければ1/90秒だけ」
というタイプではありません。
全シャッター速度がそのまま生きています。
この単純さが、現在でもFMを実用品として選ぶ大きな理由です。
1秒~1/1000秒+B
シャッターダイヤルには、
- B
- 1
- 2
- 4
- 8
- 15
- 30
- 60
- 125
- 250
- 500
- 1000
が表示されています。
「2」は1/2秒、「125」は1/125秒という意味です。
最高速度は1/1000秒。Bではシャッターボタンを押している間シャッターが開き続けます。
電子フラッシュ同調は1/125秒
シャッターダイヤルの「125」は赤色で表示されています。
これは電子フラッシュを使用できる最高シャッター速度を示しています。
純正説明書では、電子フラッシュとの同期は1/125秒以下とされています。
後継FM2ではさらに高速化しますが、1977年当時の機械式一眼レフとしては実用的な仕様です。
Nikon FMはマニュアル露出専用
FMにAEはありません。
露出は、
- ISO感度を設定する
- シャッター速度を決める
- 絞りを決める
- 内蔵露出計を見る
- 適正になるよう調整する
という完全マニュアル方式です。
絞り優先AE、シャッター優先AE、プログラムAEはありません。
ここは翌年登場するNikon FEとの大きな違いです。
TTL中央重点測光
露出計はTTL方式です。
撮影に使用するレンズを通過した光を測ります。
純正取扱説明書では、フォーカシングスクリーン全体を測りながら、中央直径12mmの範囲を重視する中央重点測光と説明しています。
そのため一般撮影では、主要被写体を中央付近へ置いて測光すれば扱いやすくなります。
+・○・-のLED露出表示
FMのファインダー右側には、
- +
- ○
- -
の3つの露出指標があります。
それぞれに赤色LEDが対応します。
○だけ点灯
適正露出です。
+だけ点灯
1段以上の露出オーバー側です。
シャッター速度を速くするか、絞り込みます。
-だけ点灯
1段以上の露出不足側です。
シャッター速度を遅くするか、絞りを開きます。
+と○が同時点灯
わずかにオーバー側です。
○と-が同時点灯
わずかにアンダー側です。
純正マニュアルでは、○と+または○と-の組み合わせによって約1/5~1段のずれを示す仕組みが説明されています。
単なる三段階表示より細かく露出を追い込めます。
LED露出計は電池が必要
シャッターは電池不要ですが、露出計だけは電池が必要です。
純正説明書では1.5V酸化銀ボタン電池2個を指定しています。
現在では同等サイズの酸化銀電池を利用しやすいため、水銀電池専用カメラほど電源で困る機種ではありません。
重要なのは、
「電池切れ=撮影不能」ではなく、「内蔵露出計だけ使えなくなる」
ということです。
巻き上げレバーが露出計スイッチ
FMには独立した電源スイッチがありません。
フィルム巻き上げレバーをボディから約30度引き出すと、露出計がONになります。
ボディへ密着する位置へ戻すとOFFです。
非常に合理的な機構ですが、中古で初めて触ると、
「電池を入れたのに露出計が動かない!」
となりやすいポイントです。
レバーを出したまま保管しない
純正説明書では、巻き上げレバーをスタンドオフ位置のまま放置すると、数日で電池を消耗する可能性があると注意しています。
撮影終了後はボディへ戻しましょう。
ISO感度はASA12~3200
露出計の感度設定範囲はASA12~3200です。
現在のISO表記と通常の撮影では同じ数値として扱えます。
たとえば、
- ISO100 → ASA100
- ISO200 → ASA200
- ISO400 → ASA400
- ISO800 → ASA800
です。
DXコードによる自動設定はありません。
フィルム交換時には必ず手動で変更します。
Aiシステムを採用
FMはニコンのAi化を象徴するモデルです。
AiはAutomatic Maximum Aperture Indexingの略。
従来の「カニ爪」を使った絞り連動から、レンズ後部のメーター連動リッジによって開放F値を自動的に伝達する方式へ変更されました。
ニコン公式Camera Chronicleでも、FMをAiシステム導入期の歴史的に重要なモデルとして説明しています。
Aiレンズなら装着するだけで開放測光
Ai NikkorをFMへ取り付けると、レンズ側のメーター連動リッジとボディ側の連動レバーがかみ合います。
これによって絞りリングを変更しても、レンズ自体は開放のまま明るいファインダーで測光できます。
純正取扱説明書では、Aiタイプのレンズを装着すると最大絞り値が自動的に露出計へ伝達されることが説明されています。
Ai-Sレンズも使用可能
Ai-Sは後発規格ですが、基本的なAi連動を持つためFMで使用できます。
FMにはシャッター優先AEやプログラムAEがないため、Ai-S特有の追加連動機能を必要としません。
実用上はAi Nikkorと同じように、
- 絞りリング
- 開放測光
- 自動絞り
を利用できます。
非Ai Nikkorまで使える
初代FMの大きな魅力がここです。
ボディ側のメーター連動レバーを上へ跳ね上げて退避させることができます。
その状態なら、メーター連動リッジを持たない旧型Nikkorを装着できます。
ただし開放測光はできません。
絞り込み測光を使用します。純正取扱説明書でも、非Aiタイプなど連動リッジのないレンズを使う場合、連動レバーをロックアップし、絞り込み測光を行うよう指示しています。
非Aiレンズ装着前に必ず連動レバーを退避する
非常に重要です。
非Aiレンズをそのままねじ込むように装着すると、ボディ側のAi連動レバーと干渉する可能性があります。
必ず、
- メーター連動レバー解除ボタンを押す
- 連動レバーを上へ持ち上げる
- その後でレンズを装着する
という順序を守ります。純正マニュアルにも明確な警告があります。
中古FMでこのレバーが曲がっている個体は注意が必要です。
非Aiレンズでは絞り込み測光
非Aiレンズを使う場合は、撮影絞りまで実際にレンズを絞り、その状態で測光します。
絞るほどファインダーも暗くなります。
たとえばF8なら、
- F8へ設定
- 実際にF8まで絞る
- LEDが○になるようシャッター速度を調整
- 撮影
という方法です。
最新のレンズを便利に使えるだけでなく、古いNikkorまで残そうとしたところに、1977年当時のニコンらしさがあります。
一部の古い魚眼レンズは使用できない
Nikon FマウントだからすべてのNikkorが使えるわけではありません。
純正説明書では、
- Fisheye-Nikkor 6mm F5.6
- OP Fisheye-Nikkor 10mm F5.6
は使用できないと明記されています。
理由は、FMにミラーを上げたまま固定するミラーアップ機構がないためです。
古いNikkorを使う場合は、レンズごとの互換性も確認しましょう。
ファインダー内でシャッター速度を確認できる
設定したシャッター速度はファインダー左側へ表示されます。
さらに、ADR対応Nikkorでは絞り値もファインダー上部へ表示されます。
つまりファインダーから目を離さず、
- シャッター速度
- 絞り値
- +/○/-露出表示
を確認できます。
完全マニュアル機として非常に分かりやすい設計です。
ADRとは
ADRはAperture Direct Readout。
レンズの絞りリングにある小さな副目盛りをプリズム経由でファインダーへ直接読み込む方式です。
電子通信ではありません。
非常に単純な光学的仕組みですが、ファインダーから目を離さず設定を確認できます。
スプリットイメージ+マイクロプリズム
標準フォーカシングスクリーンは、中央にスプリットイメージ、その周囲にマイクロプリズムを備えています。
純正仕様では、Type Kに近い固定式スクリーンとされています。
スプリットイメージ
縦線などを中央へ入れ、上下の像が一本につながるようピントを合わせます。
マイクロプリズム
ピントが外れていると像がちらつき、合うと鮮明になります。
マット面
中央部を使いにくい被写体では周囲のマット面でも合わせられます。
ファインダー視野率約93%
ファインダーの画面カバー率は約93%です。
実際のフィルムにはファインダーで見える範囲より少し広く写ります。
後からプリント時に多少トリミングされることを前提とした、当時一般的な設計です。
被写界深度プレビュー
ボディ前面には被写界深度プレビューレバーがあります。
通常、レンズは明るいファインダーを保つため開放状態です。
プレビューレバーを押すと設定絞りまで実際に閉じるため、
- 背景がどこまでぼけるか
- 手前から奥までどの範囲にピントが合うか
を撮影前に確認できます。
F8やF11ではファインダーが暗くなるのが正常です。
約8~14秒のセルフタイマー
セルフタイマーは機械式で、約8~14秒の範囲で設定できます。
途中キャンセルも可能です。
集合写真や三脚撮影で利用できます。
ただし中古FMは製造から非常に長い年月が経っているため、未整備個体ではセルフタイマーを強引に動かさない方が安全です。
多重露光に対応
シャッターダイヤル付近の多重露光ボタンを使用すると、フィルムを送らずにシャッターだけ再チャージできます。
同じコマへ複数回露光できます。
たとえば、
- 月+風景
- 人物を複数配置
- 光跡
- シルエット
などの表現に利用できます。
フィルム巻き上げは135度
フィルム巻き上げレバーは1ストローク式。
実巻き上げ角は135度で、約30度のスタンドオフ位置があります。
1回の巻き上げ操作で、
- フィルム送り
- シャッターチャージ
- カウンター送り
を行います。
フィルムカウンターは自動復帰
裏蓋を開くとカウンターが「S」へ自動復帰します。
純正仕様ではSが0の2コマ前に相当し、空送り後に撮影開始位置へ進める構成です。
フィルムを装填した後は、巻き戻しクランクが巻き上げ時に回転することも確認しましょう。
これはフィルムが正常に送られている目安になります。
モータードライブMD-11に対応
純正取扱説明書では、Motor Drive MD-11が専用アクセサリーとして案内されています。
最高約3.5コマ/秒で連続撮影できます。
後のMD-12もFM系で広く使用されていますが、個体の前期・後期仕様やモータードライブ側の操作条件を確認してから組み合わせると安全です。
初期型と後期型で細かな違いがある
Nikon FMには製造途中の仕様変更があります。
ニコン公式Camera Chronicleでは、初期型にはシャッターボタン周囲へ回転式ロックリングがありましたが、後期型では巻き上げレバーによってシャッターをロックする構造へ変更されたと説明しています。
初期型
シャッターボタン周囲にローレット付きリングがあります。
後期型
このリングが簡略化され、巻き上げレバーをボディへ戻すことでシャッターをロックします。
巻き戻しノブ周辺のローレット加工についても製造途中で簡略化されています。
つまり中古で外観が少し違っていても、必ずしも部品交換や偽物ではありません。
メーカー自身による仕様変更が存在します。
FMはニコンの小型化を象徴したモデル
FM以前のNikon F2やNikomat系に比べ、ボディはかなりコンパクトです。
純正仕様は、
- 約142mm
- 約89.5mm
- 約60.5mm
- 約590g
です。
現在のプラスチック製AF一眼レフほど軽くはありませんが、金属主体の1970年代機としては扱いやすいサイズです。
Nikon FMとFEの違い
FEは1978年に登場したFMの兄弟機です。
ニコン公式自身がFEをFMのAE版として説明しています。
| 項目 | Nikon FM | Nikon FE |
|---|---|---|
| 発売 | 1977年 | 1978年 |
| 露出 | マニュアル | 絞り優先AE+M |
| シャッター | 機械式 | 電子制御主体 |
| 電池なし | 全速使用可能 | M90・Bのみ |
| 露出表示 | LED | ニードル |
| 最高速度 | 1/1000秒 | 1/1000秒 |
| X同調 | 1/125秒 | 1/125秒 |
| Aiレンズ | 対応 | 対応 |
| 一部非Ai | 絞り込み測光 | 絞り込み測光 |
「AEが欲しいか」「完全機械式を優先するか」が選択の中心です。
Nikon FMとFM2の違い
FM2は1982年に登場した後継機です。
最大の進化はシャッターです。
初代FMが1/1000秒・X同調1/125秒なのに対し、初期FM2は世界初の最高1/4000秒機械式シャッターと1/200秒X同調を実現しました。
1984年のNew FM2ではX同調がさらに1/250秒へ高速化されています。
| 項目 | Nikon FM | Nikon FM2 |
|---|---|---|
| 発売 | 1977年 | 1982年 |
| シャッター | 機械式 | 機械式 |
| 最高速度 | 1/1000秒 | 1/4000秒 |
| X同調 | 1/125秒 | 初期1/200秒 |
| New FM2 | ― | 1/250秒 |
| 非Ai対応 | 可倒レバーで対応 | 基本的に固定Aiレバー |
| 露出 | M | M |
性能だけを比較すればFM2が上です。
しかし初代FMには、可倒式Ai連動レバーによる旧Nikkorへの対応力という独自の魅力があります。
「FM2の下位版」とだけ考えるのはもったいない
現在ではFM2の方が圧倒的に有名です。
しかしFMは単にFM2よりシャッター速度が遅い旧型ではありません。
FMは、
- Aiシステム導入期
- 非Aiとの橋渡し
- 新しい小型ボディ
- 完全機械式
- LED露出計
という、1977年だからこその特徴を持っています。
ニコン公式もFMで採用した技術が、その後の一眼レフへさまざまな形で継承されたと評価しています。
Nikon FMの基本スペック
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| カメラ形式 | 35mm一眼レフ |
| 発売 | 1977年5月 |
| フィルム | 35mm |
| 画面サイズ | 24×36mm |
| マウント | Nikon F |
| ピント | マニュアルフォーカス |
| 露出 | 完全マニュアル |
| 測光 | TTL中央重点 |
| 測光 | 開放測光・非Ai等は絞り込み |
| 測光範囲 | EV1~18・ASA100/50mm F1.4 |
| 露出表示 | +・○・-LED |
| ASA感度 | 12~3200 |
| シャッター | 機械式縦走行フォーカルプレーン |
| シャッター速度 | B・1秒~1/1000秒 |
| X同調 | 1/125秒 |
| ファインダー | 固定ペンタプリズム |
| 視野率 | 約93% |
| スクリーン | スプリット+マイクロプリズム |
| 被写界深度確認 | あり |
| セルフタイマー | 約8~14秒 |
| 多重露光 | あり |
| 巻き上げ | 1ストローク・135度 |
| メーターON | レバー約30度引き出し |
| フィルムカウンター | 自動復帰 |
| フラッシュ | ホットシュー+シンクロ端子 |
| モータードライブ | MD-11など |
| 露出計電源 | 1.5V酸化銀電池×2 |
| シャッター電源 | 不要 |
| 寸法 | 約142×89.5×60.5mm |
| 重量 | 約590g・ボディのみ |
主要仕様はNikon FM純正取扱説明書およびニコン公式Camera Chronicleによります。
Nikon FMの基本的な使い方
露出計を使うなら電池を入れる
底面の電池室へ酸化銀ボタン電池2個を装着します。
電池がなくても撮影できますが、内蔵露出計は動きません。
フィルムを装填する
裏蓋を開き、35mmフィルムをフィルム室へ入れます。
フィルム先端を巻き取りスプールの溝へ入れ、パーフォレーションがスプロケットへ確実に掛かっていることを確認します。
空送りする
裏蓋を閉じたら、巻き戻しクランクでフィルムのたるみを取ります。
空シャッターと巻き上げを繰り返し、カウンターを撮影開始位置まで進めます。
巻き上げ時に巻き戻しクランクも回転すれば、正常にフィルムが送られている可能性が高くなります。
ASA感度を設定する
シャッターダイヤル周辺のASAリングを持ち上げながら回し、フィルム感度を設定します。
ISO400なら400へ合わせます。
Ai Nikkorを装着する
Aiレンズなら通常位置のメーター連動レバーへかみ合わせます。
装着した時点で開放F値が自動的に露出計へ連動します。
シャッター速度を決める
たとえば日中なら1/125~1/500秒程度から始めます。
絞りを決める
レンズの絞りリングからF値を選びます。
巻き上げレバーを引き出す
約30度のスタンドオフ位置へ出すと露出計がONになります。
ピントを合わせる
スプリットイメージ、マイクロプリズム、マット面を使います。
LEDを見る
+・○・-を確認します。
○だけになるようシャッター速度または絞りを調整します。
シャッターを切る
構図とピントを確認し、シャッターボタンを押します。
撮影後は巻き上げレバーを最後まで操作して次のコマへ進めます。
中古購入時に確認したいポイント
最大の利点は「電池なしで全速確認できる」こと
Nikon FMでは、まず電池を抜いた状態でも、
- B
- 1秒
- 1/2秒
- 1/4秒
- 1/8秒
- 1/15秒
- 1/30秒
- 1/60秒
- 1/125秒
- 1/250秒
- 1/500秒
- 1/1000秒
が作動することを確認できます。
動かない場合、単なる電池切れではありません。
機械系の不具合です。
低速シャッター
特に、
- 1秒
- 1/2秒
- 1/4秒
- 1/8秒
を繰り返し確認します。
古い機械式カメラでは、低速ガバナーの油脂劣化によって、
- 途中停止
- 極端な遅れ
- 速度差がなくなる
- 一度目だけ遅い
といった症状が出ることがあります。
1秒を数回連続で確認する
1回だけ正常でも安心できません。
5~10回程度動かし、毎回ほぼ同じ時間で作動することを確認しましょう。
1/1000秒
高速側は耳では正確に判断できません。
可能ならシャッターテスターを使います。
実写なら均一な壁や空を撮影し、
- 上下で濃度が違う
- 帯状に暗い
- 画面の一部だけ露出不足
がないか確認します。
シャッター幕
裏蓋を開き、シャッター部を目視します。
確認したいのは、
- 曲がり
- へこみ
- 油
- 異物
- 傷
- 不自然な隙間
です。
幕は非常に薄いので、指で絶対に押してはいけません。
ミラー復帰
全速度でシャッターを切り、ミラーが撮影直後に戻るか確認します。
- 上がったまま
- ゆっくり戻る
- 数回に一度止まる
個体は整備が必要な可能性があります。
ミラー受けモルト
ミラー上部のフォーム材を確認します。
経年で、
- 粉状に崩れる
- ベタつく
- ミラーへ付着する
場合があります。
交換自体は比較的一般的な整備ですが、劣化したまま使うのは避けたいところです。
裏蓋モルト
蝶番側や裏蓋溝の遮光材も確認します。
モルトがなくなっていると光漏れにつながります。
露出計LED
新品電池を入れ、巻き上げレバーを30度ほど引き出します。
ファインダー内のLEDが点灯することを確認します。
全LEDを確認する
露出設定を大きく変え、
- +
- ++○
- ○
- ○+-
- -
という各状態が表示できるか確認します。
一部LEDだけ切れている個体では露出判断が難しくなります。
露出計精度
デジタルカメラまたは信頼できる単体露出計と比較します。
条件をそろえて、
- 晴天
- 日陰
- 室内
で確認しましょう。
「LEDが点く」ことと「正しい露出を示す」ことは別です。
巻き上げレバーとメータースイッチ
レバーを出すと露出計ON、戻すとOFFになることを確認します。
戻してもLEDが点灯したままなら、スイッチ接点の不具合によって電池を消耗する可能性があります。
電池室
確認するのは、
- 液漏れ
- 白い粉
- 緑青
- 接点の黒ずみ
- 蓋の固着
- ねじ山損傷
です。
シャッターには影響しなくても、露出計が使えなくなる可能性があります。
Ai連動レバー
非常に重要です。
マウント周囲の連動レバーが、
- スムーズに動く
- 曲がっていない
- バネで戻る
ことを確認します。
Aiレンズを装着して絞りリングを動かしたとき、正しく追従する必要があります。
Aiレバーの可倒機構
解除ボタンを押し、連動レバーを上へ退避できるか確認します。
初代FMの魅力の一つです。
固着や曲がりがあれば、非Aiレンズ対応能力が失われます。
非Aiレンズを無理に付けない
可倒レバーの動作を確認せず、古いレンズを強引に装着しないでください。
レバーを破損する可能性があります。
ADR表示
Ai Nikkorを装着し、ファインダー上部から設定F値を確認できるか見ます。
プリズムや小窓に汚れがあると表示が読みにくくなります。
シャッター速度表示
ファインダー左側に、設定した速度が正しく表示されることを確認します。
ダイヤルと表示が一致しない場合は過去の分解や連動部不調も疑います。
ファインダー
明るい壁へ向け、
- 曇り
- カビ
- 大きなチリ
- プリズム劣化
- 接眼部の傷
を確認します。
少量のチリは写真に写りませんが、FMはMF専用機なのでファインダー状態は重要です。
スプリットイメージ
遠くの建物や文字を使い、上下像がきれいにつながるか確認します。
実写ピント
ファインダーで合っていても、ミラーやスクリーン位置がずれていればフィルム面では外れます。
50mm F1.4など明るいレンズを開放付近で使い、
- 1m
- 2~3m
- 無限遠
を試写すると確認しやすくなります。
被写界深度プレビュー
レンズをF8などへ設定し、プレビューレバーを押します。
設定絞りまで閉じ、離すと開放へ戻ることを確認します。
レンズの絞り羽根
ボディだけでなく付属レンズも確認します。
- 油
- 粘り
- 戻りの遅さ
があれば、露出が狂う可能性があります。
フィルム巻き上げ
巻き上げレバーを最後まで操作します。
- 滑らか
- 引っ掛からない
- シャッターをチャージする
- スプロケットが回る
- カウンターが進む
ことを確認します。
フィルム送りを実際に確認する
不要な35mmフィルムを1本通せれば理想です。
シャッターが正常でもフィルム送りギアが不調という可能性があります。
巻き戻し
底面ボタンを押し、クランクでフィルムを巻き戻せるか確認します。
巻き戻し終了後、次の巻き上げで機構が通常状態へ復帰することも重要です。
フィルムカウンター
裏蓋を開けるとSへ戻り、巻き上げると順番に進むことを確認します。
多重露光
多重露光ボタンを操作し、フィルム送りを行わずシャッターだけチャージできるか確認します。
使用後は通常の巻き上げへ戻ることも確認します。
セルフタイマー
動作未確認個体では慎重に扱います。
少しだけ作動させ、
- 途中停止しない
- 最後にシャッターが切れる
ことを確認します。
60年代機ほど古くはありませんが、1977年製でも十分に経年しています。
ホットシュー
接点に、
- 腐食
- 曲がり
- 強い汚れ
がないか確認します。
X同調
電子フラッシュを使用するなら1/125秒以下で実写します。
フレームの一部が黒くならず、全面へフラッシュ光が届くことを確認します。
シンクロ端子
コード式フラッシュを使う予定なら前面端子も確認します。
初期型・後期型を故障と勘違いしない
シャッターボタン周囲や巻き戻しノブの外観が別個体と違っていても、ニコン自身が製造途中で仕様変更しています。
中古購入では、
「ネット写真とリング形状が違うから部品交換品」
と即断しないようにしましょう。
Nikon FMが向いている人
Nikon FMは次のような人に向いています。
- 完全機械式一眼レフを使いたい人
- 電池なしでも撮影を続けたい人
- マニュアル露出を学びたい人
- Ai・Ai-S Nikkorを使いたい人
- 非Ai Nikkorも一部活用したい人
- LED式露出計が好きな人
- 小型な1970年代Nikonを探している人
- 電子シャッターの経年故障を避けたい人
- FM2より古いNikonに魅力を感じる人
- 機械を操作して撮影する感覚を楽しみたい人
特に、
「露出計は便利だから欲しい。でもカメラの生命線であるシャッターは電気に任せたくない」
という人に非常によく合います。
Nikon FMが向かない場合
一方、次のような人には別モデルが扱いやすいでしょう。
- 絞り優先AEが欲しい人
- プログラムAEが欲しい人
- オートフォーカスが必要な人
- 1/2000秒以上が必要な人
- 高速フラッシュ同調が欲しい人
- 暗所でLEDよりニードル表示を好む人
- フィルム送りを自動化したい人
絞り優先AEならNikon FE。
1/4000秒ならFM2。
P・S・A・Mまで求めるならFA。
AFまで欲しければF-501以降のAF機が候補になります。
まとめ
Nikon FMは1977年5月に発売された35mmマニュアルフォーカス一眼レフです。
ニコン公式Camera Chronicleでは、Aiシステム、小型化、生産技術の刷新などを盛り込み、完全な新設計として作られた重要なモデルとされています。
主な特徴は、
- 24×36mmの35mm判
- Nikon Fマウント
- Ai対応
- 一部非Ai Nikkorも絞り込み測光で使用可能
- 完全マニュアル露出
- 完全機械式シャッター
- B・1秒~1/1000秒
- 電池なしでも全速作動
- TTL中央重点測光
- +・○・-LED露出表示
- ASA12~3200
- ファインダー内シャッター速度表示
- ADR絞り表示
- スプリットイメージ
- マイクロプリズム
- 被写界深度プレビュー
- 多重露光
- 約8~14秒セルフタイマー
- 1/125秒X同調
- モータードライブ対応
- 約590g
です。
中古購入時には、
「露出計が死んでいてもシャッターは普通に動く」
というFMならではの特徴を理解しておく必要があります。
逆に言えば、
「全速シャッターOK」
と、
「露出計も完動」
は別々に確認しなければなりません。
まず電池なしで1秒~1/1000秒をチェックする。
次に新品電池を入れ、巻き上げレバーを引き出して+・○・-LEDを確認する。
さらにAi連動レバー、非Ai用の可倒機構、ファインダー、モルト、フィルム送りまで見る。
ここまで確認できれば、実用品としての状態をかなり判断しやすくなります。
AEはない。
AFもない。
シャッターダイヤルを回し、レンズの絞りを回し、LEDが○になるところを探す。
そして、もし露出計の電池が切れても。
シャッターは何事もなかったように1/1000秒まで動く。
Nikon FMは、「写真を撮るための基本機能だけは電気に預けない」という思想を、小型ボディへ凝縮した1977年の純機械式Nikonです。









